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【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 渡りに船 ロメオ分けて欲しかったなあ、と同意して笑う。 実際のところ平均並みの身長は、気にする程は低くないはずなのだけれど。 「はあい。また来ますよお。」 レシートを避けてちょうどのお会計。 焼きたてのフォカッチャふたつ、ほくほく顔で受け取った。 「ぜひぜひ、お願いしますねえ。」 「それで増えたら儲けもんですからあ。」 ひらりと手を振る。 もし増えたところで、女がここに来る頻度はきっと変わらないだろうけど。 言わなくていいことは言わないまま、軽い足取りで立ち去っていった。 (-0) oO832mk 2023/09/11(Mon) 21:01:21 |
【影】 日差しにまどろむ ダニエラ夜になると、ときおり思い出すことがある。 はっきりと“いつ”と断言のできない幼少の記憶。 ひとりきりで眠る幼子の記憶。 幼すぎて覚えていないというわけではない。 ただただ、それが常だっただけ。 「……Madre」 夜の消灯は、その頃から苦手だ。 同じように明かりをつけたまま、同じように、呟いた。 (&0) oO832mk 2023/09/11(Mon) 21:44:12 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>3 ニコロ 「はあい。んー、カボチャ…カボチャいいなあ……」 悩むといいつつ気持ちはどうやら大分カボチャに向いている。 キノコ嫌いではないのだけれど、今日はそっちの気分のようで。 「ああー、チャバッタ。美味しいですよねえ。」 弾んだというには伸びた声音で頷いて、それでも明るいトーンに違いはない。 「いつも行くサンドイッチ屋さんもチャバッタを使ってるんですよお。」 「でも、オリーブオイルですかあ……」 「そういえばサンドイッチ以外で、あんまり食べてないかもしれません、あたしい。」 『poco a poco』に次行った時買ってみようかなあ、なんて呟くのは眼鏡の長身が店番をするベーカリーの名前。 2日に1度、彼女がフォカッチャを買う店だ。 #街中 (8) oO832mk 2023/09/11(Mon) 21:45:35 |
【念】 日差しにまどろむ ダニエラ三日月島の街中、大してひっそりとした場所でもないところに建つホテル。 ひと月ほど前から、この一室には宿泊者がある。 夜になっても、留守の時も消えない電灯。 いつ不在でいつ眠っているかなんて、外からでは決して分からない。 その時在室していた名義人の彼女は、のびやかにあくびなんぞ繰り広げていた。 「そうだ」と、本当に今そこで思い出したどうでもいいことのように。 「一応〜、教えてもらったこと、本当か調べてみたんですけどお」 「嘘じゃあなかったからあ。信用しますねえ」 あまりにも軽い。 そもそも、その腕を信用したから声をかけたのだけれど。 順序が逆で、ちぐはぐだ。その印象を抱いたなら、間違いではない。 (!0) oO832mk 2023/09/11(Mon) 21:54:04 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>11 ニコロ 「あ。ほんとおですかあ?」 「ふふ、店番のお兄さん、面白い人ですよねえ。」 知ってます?なんて訊ねたりして。 話を聞けば本当に美味しそうなものだから、次は是非ためそうと心に誓ってまた笑った。 「わあい。ありがとおございますう。」 そうしてカボチャのピザを手に入れるも、すぐに食べようとはせずその身をくるり。 「あとはあ、市民さんのさがしものでしたねえ。」 「すぐそこの公園にはベンチがありましたか。そこでいかがですかあ?」 その手にピザがあるからか、口許が緩んでいる。 #街中 (15) oO832mk 2023/09/11(Mon) 22:29:15 |
【念】 日差しにまどろむ ダニエラはあいと間延びをした返事。 「もしものときは、勿論知らん顔して逃げてくださいねえ。」 「…そもそもそんな道理の通った法令では、あんまりなさそうですけどお。」 実情を知る女は、そこでようやく眺めていたディスプレイから視線を外した。 ディスプレイに並ぶのは『反社会組織取締法』、通称マフィア取締法についての概要。 法という名の無法。率直な感想はそれだった。 「んー……」 さて、質問には悩む様子だった。 どうやら一言で答えるのは難しいらしく。 「多分、個人ですよお」 「誰かに命令されたとかじゃ、ありませんしい……」 「ただあたしは警察の、摘発チームの人間ですからあ。」 「……やれないことは、ないですよお。きっと。個人でも。」 内部に信用されているからこそのこの立場であると、女は嘯いている。 (!2) oO832mk 2023/09/11(Mon) 22:50:51 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>16 ニコロ 「そおですそおです、その人ですう。」 「ふふー。試してみますねえ、ニコロさんオリジナル〜」 料理名らしい。鼻歌混じりに告げながら。 「はあい。心ゆくまでお弾きくださあい。」 「静かあに、聴きますよお。」 ピザを抱えて公園へ。 辿り着いたそこは決して無人ではなかったけれど、運良くベンチは空いていた。 足早に寄って、ぺふりと腰掛ける。 #街中 #公園 (20) oO832mk 2023/09/11(Mon) 23:03:03 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>23 ニコロ 楽しみだなあと足を揺らして。 あなたがハーモニカを取り出すと、音色を邪魔しないよう静かにピザを取り出した。 カボチャの甘味にピザ生地やチーズの香ばしさ。 咀嚼しながら、その音に耳を澄ませる。 長閑な公園に緩やかなテンポで響くハーモニカ。 歌詞が頭に浮かぶくらい、よく聞き知った曲だった。 ご馳走になったピザを食べながら演奏を聴くなんて贅沢な時間だなあなんて。 そんなことを他人事みたいに思い浮かべながら、その穏やかな時間を揺蕩っている。 演奏が終わると控えめな拍手の音がした。 「お上手ですねえ」 なんて言って、膝上に一度置いたピザをまた持ち上げる。 #街中 #公園 (27) oO832mk 2023/09/11(Mon) 23:52:16 |
【念】 日差しにまどろむ ダニエラ「んー……」 「好き好んで。そおだねえ。」 またどうも、答えるのが難しいのか。 考えているような間のあいだ、女は両手を広げその爪を眺めている。 それぞれの小指にはマリーゴールドの色をしたエナメル。 黄金の花。太陽の色。 「愉悦感とか、達成感とかは、ないけどお…」 そうして眺めていると、右手のエナメルが欠けていることに気付いた。 塗り直さないとなと、ぼんやり。そうして徐に立ち上がった。 この日は自宅のアパルトメントに寄り、荷物を持ち帰っていた。 部屋の隅に置いたそんなに大きくもない箱を開く。 中から7色の缶を取り出した。フレーバー・ティーのアソートだ。 それを飲むでもなくディスプレイの横にとんと置く。 「同じように、罪悪感は、ないですよお。」 強いられているわけでもないから、当然。 そう女は言ったつもりだろうし、声音に特別な色はなかった。 けれど、それを答えるまでの間が、ひとつの事実を幽かに浮かべている。 ――きっと、あるのだ。罪悪感は。 そしてそれを女は、ないものにしたい。 あなたに隠すというよりは、もっと根本的な部分で。 女はそれを抱くことを、そんな自分を、許せない。 (!4) oO832mk 2023/09/12(Tue) 5:01:19 |
【念】 日差しにまどろむ ダニエラ「だけど調べたい人とかはいないから、そっちはいいですよお。」 続いた声には、幾らか感情が乗った。 それを押し殺そうという意思が女の口から消えたのだ。 「逆に調べなくていい人は、もしかしたら出るかもお。」 「結果を待つ前に動くかもとか、そういうのお。」 余計な手間はかけられないしいとぼやきながら、再度座った女は、欠けたエナメルを剥がしにかかった。 リムーバーをコットンに染みさせ、丁寧に拭いとる。 「だからあたしの目標はあ、お兄さんに共有しますねえ。」 「今狙ってるのは、パオロ巡査。そっちは数日中に。」 「あとは――」 「――ニーノ・サヴィア。」 「そこまでの予定は決まってますからあ。」 「手間をかけて調査するんでしたら、それ以外をおすすめしますう。」 綿棒にもリムーバーを染み込ませ、際や端のエナメルもおとしながら。 もう一度その声は事務的に、無感動に、変わっていく。 (!5) oO832mk 2023/09/12(Tue) 5:01:52 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ2日に1度。 偶数日のフォカッチャに、奇数日のサンドイッチ。 この日の女の朝はゆっくりでいいらしく、パラソルの張ったテラス席でサンドイッチを食べていた。 チャバッタに野菜、生ハムとチーズ。 変わらない具材に飽きることもなく齧りながら、やけに女は上機嫌だ。 鼻歌すらも浮かべるほどであったけれど、その鼻歌も、街中の喧騒に消えていく。 #街中 (30) oO832mk 2023/09/12(Tue) 6:12:45 |
【影】 日差しにまどろむ ダニエラホテルへと戻る前に、女は本来の自室であるアパルトメントに寄り道をした。 そこで荷物を受け取ると、包みを開こうともせず大事そうにそれを抱える。 暫しそうして満足した頃、ようやく大した大きさもなかろう箱を開いた。 中に並んだ7色を眩しそうに見つめ、知らずのうちに口元が緩む。 勿体なくて、まだ食べることの出来ずにいたチョコレート。 一緒に食べろということだろうけど、これもまた少し勿体なくて一度箱を閉じた。 いつもこうなのだ。 あの人が、色んな人に同じようにしていることはわかっている。 それなのにこんなにひとり喜んでいることは、自分だけのささやかな秘密なのだった。 (&1) oO832mk 2023/09/12(Tue) 6:14:05 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡『Si』 短い1文。 昨日の宅配物についても何も触れられないままの、それだけの応答を送る。 しかしこの日は、追伸があった。 『近々伺います』 そうしてあとはいつもと同じように、読み返して履歴を消した。 (-49) oO832mk 2023/09/12(Tue) 13:27:06 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>41 ニコロ 「子どもの頃からあ……ベテランさんですねえ。」 弧を描いた口元で感心を示す。 またひと口とピザを咀嚼すると、続いた言葉には悩むしぐさを見せた。 「あー、いいんですかあ。んー……」 「曲名がわかんないんですけどお、えっとお」 控えめに。 それでも照れは特になさそうな様子でハミングし主旋律を奏でる。 少し聞けばすぐ、レオンカヴァッロの『子守唄』だとわかるだろう。有名な曲だ。 「……こんな曲ですけどお、わかりますう?」 小首をこてり。 #街中 #公園 (53) oO832mk 2023/09/12(Tue) 15:21:11 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>55 ニコロ 「んふふー。」 「上を見たらきりがない〜ってやつでしょうかあ?」 控えめにくすくすと喉が鳴る。 あなたが曲名を口にすると、「あー。」と短い感嘆詞。 「そのまんま、子守唄なんですねえ。曲名。」 そんな短い感想だけ残し、また演奏に耳を澄ませる。 懐かしい旋律に、ハーモニカの音色。 いつの間にか、目を閉じて聴き入っていた女は、曲が終わると今度は拍手をしなかった。 「……思うんですけどお。」 「プロに劣ったとしても、いいと思うんですう。」 「ニコロさんのハーモニカ、あたしはすごおく好きですよお」 素直な感想に、照れはない。 いつの間にかほとんど食べてしまっていたピザの最後のひとくちを、ぱくりと頬張って飲み込んだ。 「ごちそおさまでしたあ。」 #街中 #公園 (58) oO832mk 2023/09/12(Tue) 16:25:18 |
【独】 日差しにまどろむ ダニエラ/* おれそういえばここでニコロさんの法令についての姿勢調べるつもりじゃなかったですっけ!?!? もう無理そお!!!!!!!! (-55) oO832mk 2023/09/12(Tue) 17:20:14 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 陽光の元で ニーノ「ねー」 電話番の、ゆるりとした時間。 相変わらずの気怠い声が、書類仕事に向き合うあなたに投げられた。 「署長代理?さん、ニーノくんお話とかしたあ?」 「どんな人だろおねえ」 たかだか巡査の身の上で、ご挨拶という立場でもない。 何やら漏れ聞こえる噂を聞くに、新たな法令を敷こうとしていることくらいしか、女は知り得ていなかった。 …とまあ、つまり。 いつも通り、暇を持て余しての雑談のようだ。 (-63) oO832mk 2023/09/12(Tue) 20:50:54 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ「こんにちはー。」 仕事帰りのジェラート店。 この日注文したものはカップのピスタッキオだった。 いつもはコーンだけれど、こういう日がたまに存在する。 「いただきまあーす。」 スプーンでジェラートをひとすくい。 女の、たまの楽しみのひとつだ。 (74) oO832mk 2023/09/12(Tue) 22:08:17 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡店員を通して、この日の女の注文があなたへと伝わる。 カップの注文は、『待ち合わせ』を意味していた。 味の数だけ綿密に決められた待ち合わせ場所。 あとはあなたから時間の指定さえあれば、その日時落ち合う運びとなる。 (-67) oO832mk 2023/09/12(Tue) 22:09:07 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 陽光の元で ニーノ「ええー?やだよお。もちろんー。」 「だって、仕事増えそうだしい。」 眉根を寄せての即答だ。 散らかり果てたデスクの上で、書類も気にせず頬杖をつく。 どうせもういらないものが殆どなのだから、問題ないらしい。 そんなデスクだというのに、同じ仕事を2度も3度もやりたくない女の作る書類にはいつも抜けがない。 それでいて何故かきっちり時間には帰る準備を整えているのは女の特技だ。 「ニーノくんはあ、賛成ー?」 雑談を投げてきたのもどうやら、己の仕事を終えたためらしい。 あとは、後輩の眉間の皺を見ての息抜きの提案か。 (-73) oO832mk 2023/09/12(Tue) 22:38:15 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡今日の指定は、或るマンションの地下駐車場。 白い明かりが天井から、打ちっぱなしの壁を照らす。 あなたの車が現れるのと同じ頃、女もその姿を見せた。 車の傍へと近付いて、乱視のレンズの向こうから、黒いレンズのその奥を映す。 後部座席のドアを開け、乗り込む。 ふうと息をついた女は、まず軽口を叩いた。 「喫茶店、開けてる時間じゃないんですかあ」 知りませんよおなんて続けて。 膝の上に、鞄を載せる。 (-80) oO832mk 2023/09/12(Tue) 23:21:17 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>79 ニコロ 「ほんとおですかあ?やったあ。」 「それじゃあまたの機会を楽しみにしてますねえ。」 立ち上がり、口元緩く。 「美味しいピザと素敵な演奏、ありがとうございましたあ、市民さん。」 「また何かお困りのことがありましたらあ、本官にお気兼ねなくご相談ください〜」 …どうやらこの演技、気に入ったらしい。 ふふ、と笑いながら最後に軽く手を振って。 「また明日。お会いしましょうねえ。」 その『明日』、女が非番であることも度々あるのだが、そんなことは些細だと言わんばかり。 いつもとおんなじ挨拶を残して、その場を立ち去っていく。 #街中 #公園 (83) oO832mk 2023/09/12(Tue) 23:29:32 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 陽光の元で ニーノ「そりゃそうだよお。」 「それよりお菓子とか食べてたいしい。」 けたけたと控えめに笑う。 足をゆらゆらと揺らしたせいか、椅子が軋むような音を立てた。 「んー。事情かあ〜。」 「でもお、一応世間的には悪い人なんだよお。」 「ニーノくんは、事情があったら悪いことしてもいいって思う〜?」 頬杖の手で頬を押し潰しながら。質問の内容の割に声色は軽い。 本当に世間話の延長の、素朴な疑問であるらしかった。 (-95) oO832mk 2023/09/13(Wed) 0:38:39 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡「知りませんよお。」 「ちょっとサボってる間にい、コーヒー入れるの下手になってもお。」 せっかくこの間は美味しかったのに、なんて。 そこまで言いはしないものの、多分にその意図は滲んでいる。 そんな女は小柄という程でもないが、決して大柄でもない。 そもそもそれ以前、狭い狭くないを気にする必要もなくこの車に乗るのは好きだった。 そう口に出したことはこれまで一度もなかったし、今後の予定にもないけれど。 「海辺にドライブですかあ。いいですよお。」 「あたしでよければ何なりと。お付き合いしますよお。」 だから本当は、その提案に見かけよりも喜んでいる。 それを素知らぬ様子に変換する、ひねくれた女であるだけで。 もしかしたらそれすら、あなたには筒抜けなのかもしれないけれど。 (-100) oO832mk 2023/09/13(Wed) 1:26:17 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡「あたしも困りますう。」 「…楽しみにしてるんですからねえ、 マスター 。」後部座席で、微かに口元が緩む。 無意識のそれはすぐに引きしめて、窓の外を向いた。 初めてこの車に乗った時、同じ疑問を抱いたことがある。 けれど女は訊ねなかった。 理由は至って単純だったが、お陰で今も訊けずにいる。 「まだでえす。」 「カルツォーネくらいつまもうとは思ったんですけどお。」 「…そおいうアレッサンドロさんこそ、ちゃんと食べてますかあ?」 するりと連想されたのは、半分ほどのホットドッグ。ソーセージなし。 元来の女は、表向きの顔ほど食に執着がない。 それでもその顔のお陰でしっかりと食べている部類にあった。 「…大変な時期なんですから、倒れないでくださいよお?」 部下としての思いを微かに乗り越えたお節介は、口にすると逆に胸の中が濁るようだった。 これに関しては今言うべきではなかったかもしれない。 少なくとも表の自分のときに言えば、そんなことも考えずに済んだのだが。 (-105) oO832mk 2023/09/13(Wed) 5:32:38 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 黒眼鏡流れる景色を眺めつつ、時たまちらりと運転席の後頭部に視線を向ける。 今のあなたしか知らない女は、母の言っていた昔の姿を想像もできやしない。 時折それに寂寥を抱くことがある。それもまた、いつまでも口にしないことのひとつ。 「仰せのままに。」 前述通りの女であるから、寄る先がどこでも何を買うでも文句は出ない。 短い返事で食事については切り上げて、濁った胸の中身を押し出すように吐息を落とした。 「んー。まあ大変は大変ですよお。」 「まだまだ下っ端ですからあ、大した仕事はありませんけどお、その分別の仕事もありますしい?」 「… そっち については、今のところ、ニーノ・サヴィアがあんまり善く思っていないことしか、調べもついていませんけどお。」進捗は芳しくないらしい。 無意識に口を尖らせると、そんな自分の顔が窓ガラスに映り込む。 (-153) oO832mk 2023/09/13(Wed) 15:32:32 |
【秘】 日差しにまどろむ ダニエラ → 陽光の元で ニーノ「そりゃあだってえ。おいしいし〜?」 さも当然と宣って。 そんな話をしていると、口寂しくもなってきたらしい。 引き出しを開け個包装のミニドーナツを取り出して、包みを開けて、ぱくり。 咀嚼のさなかあなたの言葉を聞いていた女は、同じくん〜と難しそうな声を上げる。 「変じゃないと思うけどお。」 「…ニーノくん、苦労しそお。」 これでも言葉を選ぼうとしたのだが、結局選びきれなかったような気がする。 指先についたシュガーの粒をごみ箱に払い落とす、そのしぐさに合わせて小指のエナメルがゆら、ゆら揺れて。 「……どんな事情があっても、悪いことは悪いことだよお」 「悪いことしたって事実はなくならないしい。」 「被害に遭った人に、『仕方なかったんです』なんて、通じないよお。」 「あたしたちは警察なんだから、それくらいでいいんじゃないかなあ。」 「…と、ダニエラ先輩は思うわけでしたあー。」 冗談めいた口調で締めて席を立つ。 個包装をひとつ、あなたのデスクにお裾分けした。 (-157) oO832mk 2023/09/13(Wed) 16:24:08 |
【念】 日差しにまどろむ ダニエラエナメルを剥がし終えた手を保湿する。 そうして漸く視線が上がった。鮮やかなミントブルー。 「…倒れませんよお。」 「そんな暇、ありませんしい?」 声に、多少の笑みが乗る。 お金のためであったとしても、その言葉は少し嬉しかった。 それでもその笑みに寂寥が乗ったのはきっと、続いたボヤきを聞いたからだ。 瞬きとともにその寂寥も、塗り潰して消えてしまったけれど。 「そお。あたしたちの可愛い後輩クン。」 さすが、名前くらいは知ってるんだねえと。 続いたその声は、少し明るい。 「新人だから、御しやすいとかあ。」 「同じことを署長代理も思ってるかもしれないとかあ。」 「…いろいろあるけど、1番は」 「ちょっと、個人的な事情。って、ことでえ。」 それに巻き込まれるあの子は本当に不憫だ。 だけど、煙が立つ前に日は消さねばならなかった。 (!8) oO832mk 2023/09/13(Wed) 17:02:26 |
【人】 日差しにまどろむ ダニエラ>>104 テオドロ 背後の声に振り返る。 見知った黒髪を認めると、へらり。 「テオドロさんじゃないですかあ。」 「ふふー。そちらを選ぶとはお目が高い〜。」 「あたしも大好きなんですよお。ぜひぜひご賞味くださいませえ。」 実際に、暫く同じ味ばかりを注文していたらしい。 そんな女も最近はイチゴに浮気しがちだったりする。 「今日はお休みでしたかあ?」 「それとも、休憩中でしょうかあ。」 そのどちらとも違う、ピスタッキオを戴きながら。 こういうことを聞いてくる時は、女のだる絡みの予兆である。 仕事中だと巻き込みにくいあなたのことも、オフなら巻き込めてしまうのではと、狙いを定めようとしている。 (109) oO832mk 2023/09/13(Wed) 17:41:34 |
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