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人狼物語 三日月国


105 身内村

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プロローグ

【人】 とある書物

これはとあるありきたりな話。
(0) 2021/10/27(Wed) 22:35:10
到着: 夏越

【人】 夏越

[そう、これは本当に在り来りな話。

 一人の男が恋をして、
 だけれど彼は心の内を声に出す勇気が無くて、
 代わりに─────とんでもないことだけれど
 たった一人愛する人に拳を向けることにした。

 わかってほしい。
 どうか、この孤独を埋めて欲しい。
 どうか、僕の傍を去らないで。

 そんな気持ちを不機嫌なため息に、
 壁に投げつけたマグカップに、
 夢に向かってひたむきに歩き続ける、
 最愛の妻の顔へと振り下ろす拳に載せる。]
(1) 2021/10/27(Wed) 23:01:36

【人】 夏越


[それが大嫌いで、大嫌いな、
 もう一人の「僕」の話。]
 
(2) 2021/10/27(Wed) 23:02:38

【人】 ろぼ先生 夏越

  ー 夢の途中 ー

[小さなちゃぶ台の上で男は身をかがめながら
 モニターとにらめっこをしている。
 なにせモニターの画面いっぱいに、
 桃農家のご夫婦と息子さん、
 自治会長のおじいちゃんや小学生、
 思い出溢れる顔が並んでいるのだ。

 遠く離れた場所にいても
 向こうで過ごした時間や結んだ絆は消えない。
 桃農家さんとの月一のテレビ通話の時間に
 変わらず顔を出してくれる、“僕”の大事な人達。]


  あ、健太くん怪我治ったんだ!
  ……ふふ、良かった。入院生活は?
  え、病院にお化け?あはは……

  ……え?先生のビームで退治?
  出ないってば!もー!


[他愛のない話に花を咲かせて笑う
 このひとときが大好きだ。]
(3) 2021/10/27(Wed) 23:17:39

【人】 ろぼ先生 夏越

[彼らと過ごしたのは“僕”だ。
 よく似た「彼」じゃない。

 画面に向かってけらけら笑ったり、話を聞いたり。
 しばらくそうして過ごしたなら、
 男はモニターの電源を落として深く息をつく。
 傍らにあるコーヒーの入ったマグカップに口付けて。]
(4) 2021/10/27(Wed) 23:25:47

【人】 ろぼ先生 夏越

[そういえば、もうそろそろ自分用のマグがほしい。
 「お客さん用」じゃないやつ。
 男はそう考える。
 急いで山梨から出てきてしまったから
 慌ただしい日々の中ですっかり忘れてしまってた。

 清華にデートのおねだりをしてもいいのかな。
 “僕”のマグカップがもう一度欲しいんだ、って。]*
(5) 2021/10/27(Wed) 23:31:56
村の設定が変更されました。

到着:春野 清華

【人】 春野 清華



 これは、ありきたりな話。

 きっと、ごく普通に、ありふれた話。

 愛した人と、噛み合わなかっただけ。
 うまく、いかなかっただけ。
 誰も悪くない。わたしも、悪くない。
 彼も、悪くない。
 ただ、それだけの話。

 
(6) 2021/10/28(Thu) 1:06:24

【人】 春野 清華


 
 仕事を終えて帰ると、そこには小さな画面に向けて
手を振るW彼Wの姿があった。
相手は桃農園で出会った家族なのだろう。
綻んだ顔で、画面に向かって語りかけている。

その横顔をただ黙って、見つめていた。

 別れの言葉を告げて、電源が切られる。
かたん、と音がして、そばにあった
コーヒーのカップを持ち上げる。

それは『彼』のでもなくW彼Wのでもない
来客用の───他人のための、もの。

 
(7) 2021/10/28(Thu) 1:06:42

【人】 春野 清華



彼をこの家に連れてきたとき、その荷物の少なさに
驚きを覚えたものだけれど。
わたしが、何も知らない、何もわからない
彼のことを置いていったから。
あの日から今まで、彼の中で変わったことを
何を知ったのか、何がわかったのか
それすら知らないまま。
その荷物の少なさが、何かを物語っている気がして
ただそのなにかがわからなくて、
わかる、とはおもえなくて。

いまだにその距離を計りかねている。

 あの日別れを告げた彼にもう一度出会って。
どうしようもなくまた、焦がれてしまった。
ああやはり、私は《彼》から、離れられない。
そこから動くことができない。
触れたい。この人のことを、愛している。

 
(8) 2021/10/28(Thu) 1:06:59

【人】 春野 清華



W彼Wが『彼』と同じでないことはわかっている。
脳では理解していても、感情は追いつかない。
奇妙な感覚だ。わたしはあのとき、あの場所で
再び出会ったW彼Wを愛していると、
確かに言えるはずなのに。
『彼』のことも、未だに愛している。
忘れられるわけがない。
それが膿んだ傷だとしても、一生。

その横顔から視線を落とした。一歩踏み出す。


 「ただいま」


そう、声をかけた。

夢を見る。
おなじ、夢を見てくれる。

私と彼は今、どんな、関係なのだろう。*

 
(9) 2021/10/28(Thu) 1:07:17
離脱:ろぼ先生 夏越

到着:ろぼ先生 夏越 清正

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[くる、と振り向けば妻がいる。
 幸せな結婚をした記憶を持って生まれて1週間で
 一緒に市役所に緑の紙を出しに行ったはずの。

 男は彼女を愛している。
 空っぽの家に取り残された時や、
 自分を受け入れてくれる土地を探して
 心許ないままさまよった時ですら
 その想いは変わることはなく。
 ──アンドロイドとしての刷り込みが消えた今も。]
(10) 2021/10/28(Thu) 3:10:04

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  おかえり!


[そう、ふにゃりと笑う。
 もしかしたらさっきまでのテレビ通話を
 見られていたかもしれない照れを滲ませながら。]


  今ね、山梨のみんなとおしゃべりしてた。
  前の教え子だった健太が
  坂道を自転車で転げ落ちて骨折してたの、
  ようやく退院出来たんだって。


[季節のパフェの主役を飾る桃の作り手や、
 未だにロボットネタでからかってくる悪童共、
 その他同僚やらご近所やら、
 男の話には毎度登場する人々のことは
 清華もある程度は知っているだろう。

 それは確かに男が“ 僕 ”として生きて
 絆を獲得した人達。]
(11) 2021/10/28(Thu) 3:24:24

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[でね、それでね、と外出から帰った母親に
 矢継ぎ早に今日の出来事を報告する子どもみたいに
 面白おかしくさっきまでの話を聞かせたら
 清華はどんな反応をしてくれたろう。

 なんとなく子どもじみた甘え方をしてしまうのは
 再度の離別への恐怖ゆえか、
 それとも未だに「僕」と“僕”と彼女の関係の
 しっくりくる置きどころが分からないせいか。]


  お店は、どうだった? 
  新しいメニューの反応とか。


[もう桃や葡萄の盛る時期は過ぎた。
 カフェでも暖かなメニューが愛される時期だろうか。
 そんなことを考えながら、尋ねよう。

 自分の店を持って、たくさんの人を笑顔に。
 そんな大事な夢が「叶った」と思えるまで。]
(12) 2021/10/28(Thu) 4:07:28

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  それでね、あの…………。


[男は不意に言葉を区切って、
 握ったままのマグカップに視線を落とす。
 誰のものでもない「お客さん」のやつじゃなくて
 “僕”のマグカップが欲しい。
 前に買ったのはひどい騒動のせいで
 割れてしまったから。

 そう言おうとするのだけれど、
 誘うことで要らぬ傷を開きやしないか。
 少し心配で、頭の中で言葉を探す。
 
なるほど、言葉に出すのって照れくさいし難しい。



  あの、一緒に、お買い物行きたい。
  清華が、嫌じゃなければ。


[何度かつかえながらも、言った。
 ちゃんと目を見て。頑張った。
 ……“僕”は、「僕」とは違うのだから。]*
(13) 2021/10/28(Thu) 4:17:54
村の設定が変更されました。

【人】 春野 清華


 振り返って笑う、そのふにゃりとした表情を。
わたしはかつて、暮らしていたその人の
そんな表情を、うまく思い出せなかった。

思い出せないのならば、見ていないのと同じだろうか。
……それとも、思い出せないのではなくて、
本当はそんな表情、見せてくれたことは
なかったのかもしれない、とさえ。

 
(14) 2021/10/29(Fri) 1:04:13

【人】 春野 清華



嬉しそうに、楽しそうに話してくれる彼に
こちらも微笑みを浮かべて頷き返す。
 
その内容は確かにW彼Wの見つけて手にした、
大切な大切な日々のかけらだった。

W彼Wと「彼」が別のひとなのだと実感するたび
重ねてしまう罪悪感がつきんと痛む。
わかっているのに、うまく処理できない。


 「うん、そっか、いいね、」


 一生懸命話してくれる彼に微笑みを浮かべて、こくこくと頷きを返しながらエピソードを聞く。
その間も、つきん、つきん、刺すような痛みが。


 「あ……うん、順調。
  おいしかったって、好評だったよ」


 そう微笑みかけてから、彼の話を促した。
(15) 2021/10/29(Fri) 1:04:32

【人】 春野 清華


 ふと、彼の言葉が不自然に途切れる。


 「うん?」


 首を傾げてそちらを見れば、落とされた視線に
釣られるようにして、そちらをみる。
そこには他人用のマグカップがひとつ。
言葉を待って、それから微笑み返した。


 「……もちろん。…大丈夫、明後日お休みなの。
  マグカップ、買いに行こう。」


*
(16) 2021/10/29(Fri) 1:04:59

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[まるで、苦い粉薬を包みこんで飲み込ませる
 オブラートみたいに、薄い膜が間にあるよう。
 時々、清華と話す時に男はそう感じることがあった。
 近くにいることを許されては、いる。
 だけれどあと一歩のところで近付けない。

 だけれどそれに気付かないふりをして
 男は自分の大事な人達の話をする。

 いつか、お互いのベストな心の距離が見つかるまで
 いつまでもいつまでも待とう。
 ……そう、心に決めて。]
(17) 2021/10/29(Fri) 13:36:21

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[そして、獲得したデートの確約には
 素直にぴょい、と小躍りして。]


  わーい!ずっと欲しいのがあってね!
  一緒に来てくれたら、嬉しいな。


[いつか、黒い海がうねる街で選んだものは、
 男が使う間もなく割れてしまった。
 今度行きたいのは車で十数分ほどのところにある
 小さくて可愛いお店。
 男一人で入るには、ちょっと気恥しいのもあるし
 単に一緒に出かける理由が
 欲しかっただけかもしれない。]
(18) 2021/10/29(Fri) 13:47:15

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[「僕」とは違って、“僕”は感情を表にする。
 どうする「べき」か、じゃなくて
 どうし「たい」かを優先する。
 それが、清華が男に授けてくれた“意思”という宝物。

 だからデートの約束にけらけらと小躍りしながら
 ふと、清華の頬に手を伸ばして]


  …………ね、いい?


[肌に触れて、キスをする許可をもらうのも
 男がそう「したい」から。
 ……でもそれはお互いの意思確認が
 なきゃいけないことだから、小さな声で尋ねよう。]*
(19) 2021/10/29(Fri) 14:05:55

【人】 春野 清華




 名前のない関係を、私たちがどうしていくのか
それは、きっと互いにしかわからないこと。
それでいて、今はきっと、どちらにもわからないこと。

計りかねた距離が、この奇妙な関係を曖昧にする。
夫婦でも、友人でもない。名前をつけるなら、
W恋人Wが近いのかもしれないけれど、
そう呼ぶにはずいぶんとぎこちなかった。

「彼」との関係を進めた時、わたしは、
一目散にそちらに向かって走ることができたのに
今は、それがうまくできそうになくて。
それがどうしてかと尋ねられれば、
あの日々のことが……
───いいえ、それに繋げてしまった、
きっと、自分の中の何かがまた、W彼Wを
苦しませてしまうのではないか、と
思ってしまうからかもしれない。


(20) 2021/10/30(Sat) 7:07:19

【人】 春野 清華




あの日々の中、わたしも苦しかった。
彼もきっと、苦しんでいた。
何一つ、生み出さないあの時間を、
ただ互いに削り、疲弊し、枯渇したあの時を
また、繰り返すのだけは恐ろしくて。

彼のことを解放して、
私も自らを解放したかった、のかもしれない。
それがただの自己愛で、彼にとっては
苦しめるだけになるとわかっていたのに。


(21) 2021/10/30(Sat) 7:07:38

【人】 春野 清華



 微笑みを返すと、彼が子供のようにはしゃぐ。
「ずっと欲しいの」という言葉に、唇を結ぶ。 

また、気づけなかった。W彼Wの求めるもの。
あの頃のように、W彼Wは手を挙げることはない。
同じ顔。おなじ、声。同じ背丈だけれど、
彼はその人じゃない。
W彼Wは怒鳴らないし、手を上げない。
それでも、私が気づかないことばかりが続けば
いつか、その手が振り下ろされるんじゃないかと
フラッシュバックして身構えることもある。
頭では理解しているのに、この人は、
きっとそんなことしないって、わかってるのに。
どうしたって求めてしまう。
「彼」に望まれた自分になれないかと、いまだ。
囚われて、ばかりだ。

 
(22) 2021/10/30(Sat) 7:07:59