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人狼物語 三日月国


164 夏の想いのひとかけら【R18】

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視点:


【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[そうして、夏の終わりが次第に近付く。
 じっとり纏わり付く暑さはまるで手を抜かないけれど
 海の家に足を運ぶ人も、砂浜に見える人影も
 少しずつ減り始めたのは気のせいじゃないはず。

 荷物の片付けを少しずつ進めていって
 鹿ちゃんさんの用意してくれた線香花火を
 お裾分けしてもらったりして。
 夏の夕暮れ、水平線に沈む夕日。
 昼間より下がった風の温度に
 一日の終わりを感じて、さみしくなったり。

 流くんとは時間の許す限り何度も会ったと思う。
 わたしはつとめていつも通りの顔を“作って”、
 彼の前ではいつも通りに笑っていたけれど
 流くんはどんな顔をしていたかな。]
(147) 2022/08/10(Wed) 19:25:04

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[悲しくなることなんかわかりきってた。
 でも、だから、知らんぷりをしていた。

 ひとなつ荘を発つ今年最後の日まで――けど、
 思えばそんなに強くもないわたしが
 最後まで平気でいられたはずがなくて。

 流くんに駅まで見送りをお願いしたかもしれない。
 ついてきてくれたなら、我慢の決壊が切れたのは
 改札を渡ろうとした寸前、振り返ったときだった。]
(148) 2022/08/10(Wed) 19:25:35

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨



  ……じゃあ、ありがとうね、流くん。
  またすぐに連絡するね。
  あっ、電話もしようね?

  しばらく忙しくなるかもだけど、
  連休の時とかならぜんぜん会いに来れるし!

  だから、あの、っ……元気で――


[堪えて、あと少し。少しだったんだけどな。
 張り詰めた水膜は意図に反して零れ落ちる。
 声は次第に震えを伴って、あと少しが言えなかった。
 泣き顔なんて見せたくはなかったのに
 わたしはまた、彼に甘えてしまったかもしれない。*]
(149) 2022/08/10(Wed) 19:26:23

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[距離のぶん、はっきり見られなくて良かった。
 そんな強がりを抱えるくせに、届いた声が嬉しくて。
 わたしは足を止めたままで彼の姿に釘付けられる。

 ほんとうに、いつだって嘘偽りなく真っ直ぐだった。]


  流くん……っ


[周囲の人は驚いて目を向けたかもしれない。
 笑う人だっていたかもしれない、それなのに
 躊躇いのない大きな声は確かに耳に届いていた。]

  
  ふふ、……うん、そうだね。
  わたしも——離れててもずっと、
  流くんのこと、好きだから……!


[思わず零れた泣き笑い。それから深く息を吸って
 返したのは、負けないくらいの大きな声だった。]
(169) 2022/08/11(Thu) 1:35:54

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[そんなお別れも過ぎ去って、夏が終わる。
 残暑の抜けきらないままじきに後期が始まって
 毎晩のように電話をしては、近況を伝え合う。

 後期は意外と講義の数が少なかったこと。
 そろそろ研究室を決めなくちゃいけないこと。
 彼氏が出来たって報告したら、友達が驚いてたこと。
 他にもたくさん、たくさん——

 流くんの方は忙しそうだったけど
 とりあえず、元気そうで安心した。
 秋の連休になって久しぶりに会いに行って
 あのカフェか、また別の場所に足を運んで。

 そんな日々を送るうちに季節は流れていく。
 夏にはパパの賛成をもらってバイトへ行ったけど
 それが過ぎたら今度はわたしの方が
 卒業を控えてしばらく忙しくなった。]
(170) 2022/08/11(Thu) 1:36:12

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[冬になって年が明けて、論文も落ち着いた頃
 卒業の前に話をしようと決めたのは
 二人で相談してのことだった。

 やっぱり最初は気難しい顔がそこにあった。
 今までにないくらい、パパと話して緊張した。
 だけど流くんと二人で会いに行った後も
 何度かパパと話しをして、ママのフォローもあって
 「とりあえず、交際は認める。」
 ……その言葉に舞い上がった覚えがある。
 
 パパとママに内緒でお姉ちゃんに連絡した日もあった。
 「素直じゃないからね、あの頑固親父。」
 やけに楽しそうなその言葉に思わず笑ってしまった。]
(171) 2022/08/11(Thu) 1:36:32

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[季節が巡り、わたしたちは歳を重ねていく。
 流くんが大学を出て仕事も決まった頃、
 小さな変化が訪れていた。

 社会人としてのわたしはパパの会社にある部署で
 事務の仕事をしていたけれど
 家を出ることはなく実家暮らしだった。

 大きな不自由のない生活を送る中で、
 休日のママが今までより厳しくなった。

 「今までずいぶん甘やかしちゃったからね。」
 「家事も料理も出来るようにしておかないと
  ——お嫁に行ったとき困るでしょう?」

 そう言って、少し寂しそうに笑ってたっけ。]
(172) 2022/08/11(Thu) 1:36:39

【人】 社会勉強 早乙女 珠梨

[それから——そう長くはない時が経った、ある日。
 ドレスコートのあるお店に流くんと行ったのは
 これが初めてだったかもしれない。

 一日の終わりだった。二人で指輪を選んだ日の。
 改まって差し出された銀のリングを前にすれば
 わたしは晴れやかに微笑みを浮かべて。]


  ……もちろん。
  流くんのこと、世界で一番愛してるから。


[——まるで幸せなジュリエット。

 永遠の愛を誓い合うには一歩早いかもしれないけれど
 でも、そんな日も、きっとそう遠くはない。**]
(173) 2022/08/11(Thu) 1:37:09