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![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡――かつん。 廊下に一つの足音が響く。 牢の中にあなたはどんな格好でいるだろうか。 立っているなら堂々と見据えて、座っているなら冷めた目で見下ろして、あなたを見る一人の男が牢の前に立った。 いつもは客としてあなたの前に立っていたけれど、今日は違う。 警察として、多少の無理を通してここに訪れた。 そうでなければ、ここに堂々と来ることは出来まい。 「アレッサンドロ・”黒眼鏡の”・ルカーニア……いや」 つらつら語るはあなたの名前。 でもね、知っているんだ。お前の、正体。 「アリソン・カンパネッロ」 「……取り調べを……させてもらうよ」 ―――聞きたいことが、あるんだ。 (-511) 2023/09/20(Wed) 0:08:46 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「ぅ、わっ」 強く背中を抱かれて、膝立ちになる。 何も支えがなければベッドから落ちていたかも知れないけれど、あなたの腕と身体が男を包むから、しっかりと抱きとめられてしまった。 くっついた身体から、互いの熱が伝わる。お風呂上がりだから二人共きっとまだ温かいだろう。 くどいほど何度も繰り返される確認は、それだけで羞恥を掻き立てられて心臓に悪い。 無言でこくりと頷いたから、額がこつんとぶつかりそうになった。 解ってるよ。 ―――それが、肯定。 ……もう、これは決して従順な犬なんかではない。 獰猛で、震える獲物を狙う狼だ。 眼前に広がるのは、怖いほど貫いてくる金の瞳。 近づきすぎた自分の目には、ギラギラとしたそれしか映らなくて。 その中に映る自分の顔が見たくなくて。 きゅ、と花浅葱の花弁を閉じた。 それはもう、あなたにとってはただの合図にしかならないはずだ。 (-516) 2023/09/20(Wed) 1:17:48 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「僕に価値がなくなったとして、何が変わるっていうんだい。 初物は高いって言葉では聞くけど、別に、身売りしようなんて思ってない」 ただ、傷ついてもいいと、思っているだけ。 「わからないよ。身体は担保になるって話かい? そういう仕事を……してきたんだよね、キミはさ」 望まないし、要らない。そんなまやかしの三ヶ月は。 自分に甘くしてほしいなんて思ったことがないのだ、ましてや、夢にしたいなんて絶対に願わない。 弱みだって何も気づいてないけれど…… ただ、あなたに願うのは、置いて行かないで欲しい。 たった、それだけなのだ。 「キミを捕まえるのは僕だよ。 逮捕されるほどの……、正当な理由がないのに無理やり逮捕するなんて、間違ってる。 僕だってただで捕まえられるのは嫌だけど、アレの正体を掴んだなら、行かないわけにいかないだろ」 「捕らえられた後輩が居て、僕は先輩」 「キミは、たった一人の幼馴染で」 「僕は警察だ」 (_11) 2023/09/20(Wed) 7:41:38 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ―――嬉しい? それなら、よかった。 耳に届いた言葉と殆ど同時に、首筋に柔く歯が立てられた。 抱き寄せられ、覆いかぶさるように抱きすくめられた状態では、抵抗どころか身動きすらできそうもない。 遠い子供の頃の記憶に一度だけ、ゴールデンレトリバーを飼ってたけれど、よくこんな風に乗られては顔中舐められたっけ、なんて思い出したりしてしまった。 そんな事を思い出してる間にも、首には歯型か鬱血痕がついてしまったかもしれないが、男は別に、それでも構わない。 「……っ」 それよりも。 手なんて繋いだことなかったから、あなたの手がこんなに大きくて無骨だってことを今まで知らなかった。 服のサイズも、何もかも、今までこちらに合わせてくれていただけで大きな差があるということを、初めて知った。 やり場のない手を、そっとその背に回してしがみつくようにして、僕は。 その背の広さも違うということも、やはり、初めて知った。 (-558) 2023/09/20(Wed) 8:05:11 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「酷いツラだね、誰にやられたの?」 くすりと、笑う。 その様子では、クリアな視界ではないだろうから、どこまで自分の顔が見えてるかわからなくて。 男は牢の格子に手をかけて、その顔を寄せた。 「まぁ、答えずとも大体わかったけど……。 僕の大型犬の後輩が、随分と世話になったみたいだね」 正義感が強くマフィアを嫌う彼のこと。 自分が睡眠薬を買いに行った、それを見ただけで強い力で問い詰めてきたくらいだから、彼があなたを狙うのはおかしなことではない。 それでも、個人的な理由でもなければ、一人で突き進むなど。 こちらを止めておいて自分で行うなど、到底、許したくはないものだ。 「証拠なんてこれからいくらでも。……じゃあ、まずはひとつ」 「うちの大型犬……イレネオ・デ・マリアとはどういう関係なのかな」 (-560) 2023/09/20(Wed) 8:22:26 |
エルヴィーノは、今、牢屋の格子の前にいる。 (a21) 2023/09/20(Wed) 8:24:02 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「そんな風に言われたら、気になるだろ……」 何を面白がっているのかと、ジト目で見ながら考える。 自分が怒りそうな隠し事とは、一体なんだろう。 怒らない保証はないから、怒らないから言えとは、ちょっと言えない。 「…………」 「僕の望みはたった一つ。 もう二度と、居なくならないで欲しい……それだけだよ」 二度大事な人を失った時、どこかで捻れてしまった感情がある。 三度目が訪れたなら、その時自分自身がどうなるかわからないから、大事な人はもう作りたくない。 それでも、あなたは別なのだ。 再会した時どれほど嬉しかったか、あなたにはわかるまい。 だからあなたとは恋人になりたくないと言った。 傷つきたくは、ないから。 「逆に聞くけど……キミは、僕が傷つかずに居たら幸せかい?」 「キミの要求はひっくり返せば、僕には何の期待もないみたいだ」 別に、期待をしてほしいわけではないけれど。 キミにとっての僕は、僕にとってのキミほど、重くはないのかもしれないな。 「……、その理由を聞きに行くんだ」 「どうしてこんな法を作ってしまったのかも……全部ね」 「別に………素直に捕まってもらおうなんて、思ってない」 ただ、他の誰からも捕まらないでほしいと思っているだけだ。 (_13) 2023/09/20(Wed) 14:52:55 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「あ、…ぅ……」 最初はただ、くすぐったいだけだった。 噛む力も弱かったし、舌の感触がなんだかぞわぞわする感覚がして身を震わせた。 けれども強く噛まれはじめれば、それに耐えるような声を上げて、でもそんな声を上げるのには耐えられなくて唇を噛む。 苦しくはない。 強引なのも嫌いじゃない。 求めてくれるのは、好きだ。 求めてくれたなら、与えることができるから。 「……っ、」 腹を撫でる手に気づけば、今度は何をするのだろうかと。 期待なのだか不安なのだかよくわからないまま、背中を掴む手に力を込めた。 (-594) 2023/09/20(Wed) 15:07:36 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「それは失礼。 うちの犬は正義感が強すぎてね」 犬に転ばされてしまったのかい? と、あざ笑う。 「はぁ……、今のことを聞いてるわけじゃないのはわかってるだろ」 今の姿を見れば確かに加害者と被害者ではあるが。 けれどもそれは、お互い様なのだろうにと肩をすくめた。 「強引な男なのはわかってるけど、それでもたった一人で無茶をするには理由があるはずだ。 お前たちは、過去にも何かあったんじゃないのかい?」 (-595) 2023/09/20(Wed) 15:13:12 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ首輪に付けられた鎖は、一体何処に繋がっているんだろか 「一度居なくなった人が何言ってるんだか……」 牢屋の中に居る分には、確かにそうかもしれないが。 捕まえる以前に、捕まえなきゃいけなくなる程の事をしないでほしいのが前提だ。 しなくていいのなら、逮捕なんてしたくはない。 だって。 追いかけるのが自分なら、様々な自由が効く。 警察として褒められたことではないが、無理な逮捕をしないですむ、そんな一面の事を、考えていたから。 「………」 「それって、僕が暴力を振るわれていたら、キミは喧嘩をしてくれるってことかい?」 そうだとしたら、だめだ。 一つだけ、譲れないことがある。 僕だって、ルチアを傷つけるものは許さない。 僕が傷つくことで、ルチアが傷つくのなら、僕は「それ」を絶対に許しては駄目なんだ。 「キミは……どうしてそんな事を知ってるんだい。 その様子だと……アリソン・カンパネッロが誰だかも知ってるんだね」 「…………行かない、と約束はできないけど……、牢の外から、安全に会う事くらいは約束しても、いいよ」 それでは、駄目かい? (_15) 2023/09/20(Wed) 16:08:15 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ吸血鬼じゃあるまいし、何がそんなに首が美味しいのかわからないが、そうこうしてると首の両方が歯型や鬱血痕で彩られてしまっただろう。 もしかしたら、ボタンをきっちり止めていても見えるものがあるかもしれないが、耐えるばかりの男はそれに気づけない。 「……ん」 腹を弄る手が、熱くて、くすぐったくて、焦れったい。 想像してたよりずっと恥ずかしくて、その羞恥に呻いてしまいそうだ。 身を捩ってみても、抱きすくめられたままでは何の抵抗にもなれやしない。 恥ずかしいから焦らすな、なんて言えないから、あなたの好きなようにさせてしまっている。 ただただ、体温ばかりが上がっていってる気がした。 (-604) 2023/09/20(Wed) 16:27:45 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「キミにとってはそうでも……僕は」 もうどこかで死んでしまったんじゃないかとまで、言われていたんだ。 あなたとて、住所が変わってすぐは余裕もなく、会いに来るなんてことは出来なかっただろう。 たったそれだけの期間すらも、連絡も、詳しい事情も知ることもなく、足跡も分からず、生きてるのか死んでるのかも分からなかった事が、どれほど辛かったか。 今でこそ、連絡が少なくとも気にすることはないが。 それは、生きていてちゃんと足跡が残されているからにすぎないのだ。 「……わかった」 「危険が及ぶような会い方はしない。……はぁ、これついこの間後輩に言わされたばかりだな」 やれやれと肩をすくめた。 これはもう諦める他はない。 だって、男はあなたに傷ついて欲しいわけではないのだから。 「……じゃあ、二人が狙われた理由、教えてくれるかい? 代わりに、アリソン・カンパネッロの正体、教えるから」 (_17) 2023/09/20(Wed) 16:46:09 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ身体に溜まった熱は、どうしたって下腹部に集中してしまうものだろう。 直接それに触れられることなく、くすぐられるのは、明確に焦らされているということが理解できてしまって。 羞恥ばかりが込み上がって、再び見つめられたその顔を見返すのが難しくて、うつむいて視線を外した。 「……こ、こんな時ばかり何も聞かないの、ズルいだろ……」 「なんで焦らすんだよ…… 顔、見れな 」荒い息が、興奮を表してることくらい、わかるのに。 我慢されるほど、僕はか弱い存在じゃ、ないつもりだけどな。 (-607) 2023/09/20(Wed) 17:03:29 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「勿論、キミとの話が終わったら会いに行くさ。 その前にキミから色々聞いておかなければいけないなと思っただけで」 だからそこは、順番が違っただけだと、前置きをする。 あなたの話を、嘘なのか本当なのか。 じっくりと見定めるように聞いて、笑顔を見れば深々と息をついた。 ――― 個人的に 、ね。「僕に、キミから物を買うのはやめろって止めに来ておいてね……。 理由がなかったというなら、それはしつけのし直しが必要だな」 格子にかけた手は離れることなく、意識を変える。 この男はイレネオが邪魔だと思った、それ自体は本当だろう。 けれど、本当に聞かなければならないことは、そこじゃない。 「―――。 じゃあ、2つ目。ここからが本題だ。 アリソン・カンパネッロ なんて名前を偽装して法案を通したのは何故だ」 (-613) 2023/09/20(Wed) 17:37:49 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ笑い声が聞こえて、思わず顔を上げた。 この瞬間ギラギラした瞳が穏やかになって、澄んだ笑みをしていたから、思わず魅入ってしまった。 まさか本当に、そんなに愛されてるかもしれないなんて。 この時はまだ、ちゃんと理解はしてないけれど。 やっぱりまた羞恥を感じて視線を彷徨わせてうつむく。 その視線の先には、多分、張り詰めた熱がある。 「え? ………あ、」 何を、とは言われなくとも。 同じ男なんだから、それが何かなんてわからないはずがない。 戸惑いはすれど、人のものに触れた経験なんてないけれど、ある程度はどうしたらいいかはわかっている。 わかった、と頷いたなら、あなたはその手を導いてくれるだろうか。 なににしろ戸惑いながら、下着の上から触れることになるのだろう。 (-616) 2023/09/20(Wed) 17:50:33 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「両方の話を聞いておくのは大事なことだよ」 「心配を……かけたことは自覚してるけれど。 僕だって心配くらいするって話で……いや、その話はもう良い」 本題と違うことまで思い出してしまいそうで、頭を振った。 話に集中できなくなってしまう、これはいけない。 というかそのだらしない態度はよせ、とは思うのだが。 牢の外からしか会わないと、もうひとり、心配性の誰かと約束したから破れない。 態度の一つくらいは大目に見たって構わないだろう。 ツッコんではいけない。 「そんな事はわかってる。 マフィアのカポ・レジームが金出してまでマフィアを取り締まるのは何故かと聞いてるんだ。 これはマフィアにとって重大な……裏切り行為だろう?」 (-617) 2023/09/20(Wed) 17:58:40 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 黒眼鏡「あぁ、駄目だね」 「裁判になればその理由は必ず聞かれるし、刑量の判断材料になる。 自分の首を絞めるだけだし、納得の行く理由を話してほしいものだけど」 むしろ話してくれたほうが仕事は楽になるんだけど?と冷めた目を向ける。 けれど裏切ったということをあなたの口からちゃんと聞いたことで、なんとなく、心が痛くなった。 多分それは……消耗している大事な幼馴染が、あなたの部下にいるからで。 「…………」 「裏切った仲間は、大事ではなかったのかい?」 語る声色は少しだけ、トーンが落ちた。 (-622) 2023/09/20(Wed) 18:32:06 |
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