【秘】 宵闇 → ただいま 御山洗>>-38 沈黙。いつしか頬を撫でる風は潮風になっていた。 ──すこし遠くに、しずかな海が見える。 「なあ、」 ふいに見納める視線から逃げるように手が離れて行った。 男は少し先を歩くと、数歩先で振り返る。まっすぐ視線をやる。 「昔からって10年以上も俺のこと好きだったってことだよな。 やっぱりさ、この夢の終わりに語るには時間が足りないだろ」 「それに、まだ話は終わってない」 「俺は最初からこれを言うつもりでお前に会いに来た」 ──そして、楽し気に目を細めた。 「俺さ、驚いた、知らなかった、とは言ったけど お前の告白に対する返事をまだ"ちゃんと"してないんだよな。 ずっと考えてた……これは、本音だから真面目に聞いてくれよ」 「きっともう、ここ <同じ景色> には二度と帰ってこれないから」この場所に未練を残すのは勘弁だ。 せめて、おかしな夢だったと笑い飛ばしたい。 → (-39) DT81 2021/08/20(Fri) 19:52:35 |