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人狼物語 三日月国


42 【突発完全RP村】実になりてこそ、恋ひまさりけれ【誰歓】R18

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【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす

[万葉集を捲って、目に止まった一文を
 そっと舌の上に載せて、アルバイトは微笑んだ。

 「楽しく生きられるなら、
  来世は鳥や虫に生まれましょうか」なんて。

 随分とささくれた歌じゃないか、と
 詠み人の心境をなぞってみるだけで
 この短文ひとつで心が躍る。
 この本は、元はオーナーの持っていた本だけれど
 「それほど好きならば」と譲ってもらったのだ。

 お陰で端はぼろぼろだし、
 表紙にはフライヤーの油のシミがついて
 点々と黒く滲んでしまっている。

 それでも、この本を手放す気は、無い。]
(19) 2020/09/10(Thu) 19:25:35

【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす

[ふしゅるる、と興奮気味に喉を鳴らして
 カウンターの下に巻いたとぐろをうねらせて、
 アルバイトは思考をめぐらせている。

 もし、この句が詠まれた世界に
 今すぐ駆けていけるなら……
 お仕着せも全部かなぐり捨てて
 多分この店には一生戻ってこない。
 そうして気の向くまま、句を詠って過ごすのだ。

 ─────オーナーから
 「この万葉集の世界にお前が言ったら
  ヨウカイだ、って殺されちまうぞ」なんて
 聞かされたけど、多分それはこのバイトに
 男を縛り付けるための詭弁に違いない。]
(20) 2020/09/10(Thu) 19:33:00

【人】 やる気のないアルバイト でゅーーす

[いつか、桜を見てみたい。
 夏の夜に光る蛍や、萩の月に
 移ろう季節を感じてみたい。

 アルバイトはひとり、ふわぁ、と欠伸をすると
 代わり映えのしない店の中で
 ゆったりと尾を揺らしている。]*
(21) 2020/09/10(Thu) 19:35:20
到着:空腹な迷い人 レックス

【人】 空腹な迷い人 レックス

― 宵闇:田舎の町 ―

[ チカチカと、切れかけたガス灯の下。
  ゆらりと蠢く、人の形をした塊が、
  一歩、また一歩と、灯りの中へと進んでいく。

 それは、白く。
 それは、黒く。

 苦し気な息を吐きながら、
 今にも倒れそうな様子で、歩みを進めていた。]
(22) 2020/09/10(Thu) 20:06:56

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
  
――――アァ、お腹が……空いたなァ


[ 暗く湿った囁きは、誰の耳にも届きはしない。
 、、
 食事をしたのは、いつのことだったか。
 もう、大分前のこと過ぎて憶えていなかった。]
(23) 2020/09/10(Thu) 20:06:59

【人】 空腹な迷い人 レックス

[ 人気のない、誰もが寝静まった宵闇の中。
 白い髪に、薄紫の瞳の青年は、
 焦れるように空を、見上げた。
 
 
薄紫
が、ゆらりゆらりと、揺れて
 
ような紅が滲んでは、消えて]

   願いを、叶えに……いかなきゃ、
   僕が、……いかなきゃ、あの子との約束を、


[ ――――果たすために、]


[ その言葉は、音にならず。
 青年は、薄闇の中、ついに倒れた。]
(24) 2020/09/10(Thu) 20:07:02

【人】 空腹な迷い人 レックス

 
 
『おやおや、私の元に来る前に死ぬでしまうのかしら?
 それは、良くないわ、良くない。

 お前は、次のゲームに必要な駒なのだから』


[ 意識を失った青年の頭の中で、
 楽しそうに笑う女性の声が響く。

   
――――************


 最後に何か言っていた気がするが、それは聞き取れず、
 青年は微かに残っていた意識を、完全に手放した。]
(25) 2020/09/10(Thu) 20:07:06

【人】 空腹な迷い人 レックス

― 街のどこか ―

[ 何処かの街
――青年の知らぬ街。

 路地裏に、ガシャリと音を立てて、現れた青年は、
 痛む身体に薄らを目を開けて、周囲や匂いが
 自分が知る世界と違うことに気付く。]

  ……ここは、何処だ?

[ 田舎の澄んだ空気と違う。
 自分が目指していた、森と湖と、願いを叶えるための場所。

 そことも全く違う場所であることは分かったが、
 だからと言って、どうしたらいいのか分からず、
 空を見上げる。

 あんなに広かった空が、高い建物に挟まれて、とても狭い。

  お腹が空いているし、身体も痛いし、
  ここはどこかも分からない。

  最後に聞こえた女の声は、一体誰だったのか。


 うーん、うーん、と唸り声をあげながら、
 しばらくその場に蹲っていた。*]
(26) 2020/09/10(Thu) 20:07:14
空腹な迷い人 レックスは、メモを貼った。
(a4) 2020/09/10(Thu) 20:12:43

【人】 マリィ  

  ー 回想・あの日 ー


  はあっ?!いきなり?!


[アタシの悲鳴に、塩昆布みたいな顔した
 大家のオバサンは眉を顰めてみせた。]


  「そりゃあこのおんぼろアパートは
   あたしとどっこいどっこいの御歳さ。
   そろそろ建て替えか、って考えてたけど
   この土地買ってタワーマンションにするって
   丁度うまい話が来たんだ、
   いいチャンスだよ、まったくね。」


[「だから、何度、何を言われようと
  部屋は半年以内に引き払っとくれ」って。

 アタシの反論も聞かず、大家のオバサンは
 曲がった腰を擦りながらアパートを後にした。]
(27) 2020/09/10(Thu) 20:20:10

【人】 マリィ  

[身寄りのないゲイ……しかも水商売のアタシが
 新しい部屋を借りるのにどれだけ大変か
 きっとこの大家さんだけじゃない、
 タワーマンションの住人も、誰も知らない。

 収入があっても審査が通らない。
 家を買うどころか、部屋を貸してもくれない。
 半年以内に、と言われても
 すぐに次が見つかる保証も何も、無い。

 自分のセクシャリティに気が付いたのは
 中学生の時─────
 「何となく」覚えた違和感を確かめるために
 「何となく」出会い系サイトを使って
 悪い大人と身体を交えたら、
 思ったよりしっくりきて。


 そのまま自分をひた隠しに生きるより
 ゲイコミュニティで生きたいのだ、と
 この道に入って13年。
 あの時は、こんな茨の道だと知らなかった。]
(28) 2020/09/10(Thu) 20:22:26

【人】 マリィ  

[だから、ほんのちょっとでもいいから
 今の状況を笑い飛ばして欲しくって、
 お店でこの話をお客さんに話したの。]


  マジ、酷いったら無いじゃない?!
  オカマ路頭に迷わせてさぁ……
  街の風紀がどうとか言うなら
  アタシみたいないい女はキチンと
  家ん中仕舞っとかないと。


[あはは、なんて笑って見せたら
 カウンターに身を乗り出して、
 空いたシャツの襟からそっと
 平らな胸元を寄せてみせて……
 常連客にいつものおねだりしてみせるの。]
(29) 2020/09/10(Thu) 20:23:57

【人】 マリィ  



  アタシを飼ってくれる人、
  どっかに居ないかしら、ね?
  ……家賃?アタシが身体で払ったら
  お釣りを払うのはアンタの方よ?……なんて。


[強欲なオカマなんか、誰も親身になって
 懐に招き入れようとはしてくれなくて
 常連の建設会社の社長さんだけが
 アタシの髪をひと房すくって]


  「じゃあ、払うんだったら
   ガッツリ楽しまないと、損かな?」


[なんて、冗談めかして笑ってくれた。]
(30) 2020/09/10(Thu) 20:24:43

【人】 マリィ  

[正直、この五十絡みのオジサンに
 しこたま抱かれるくらいなら
 一人で死んだ方がマシかもしれない。

 女言葉を使って、しなを作ってみせたって
 アタシはどうしようもなく『男』だった。
 
 アタシの立たされている苦境の話は
 いつしか何も解決しないまま
 ずるずると鉄板ネタになっていった。

 笑うだけじゃ、何も解決しない。
 でも、道をひらくだけの脳みそもない。
 明るい未来も無ければ、夢もない。

 
そのくせ、オカマの仮面を脱ぎ捨てて
 誰かに必死に助けを求める勇気もなければ、
 その先を生きる気力もとっくに無かったの。


 そうして、期日の一週間前になっても
 夢も希望も、アパートの一部屋すらも
 アタシには見つけられなかった。]
(31) 2020/09/10(Thu) 20:27:55

【人】 マリィ  

[必死で部屋を見つけるのと、
 ここで全部終わりにするの、
 ……一体、どっちが楽かなって。

 店から家に帰る途中、
 夜の公園でぼんやりブランコを漕ぎながら
 アタシはぼんやり考えていたの。

 十二時なんかとっくに過ぎた真夜中に
 王子様なんか現れるわけがないのだもの。]*
(32) 2020/09/10(Thu) 20:31:10

【人】 環 由人


 
[ 律儀に合わせられた手を満足げに見て、
「どーぞ」と小さく返せば、
目の前の形のいい唇に吸い込まれていく
地味だのなんだのといわれるW残り物W。
ぼそぼそと落とされる独り言は、
なんだかんだいつも褒め言葉。
本を片手にほうじ茶をすすって、
ちら、とそちらを確認しては、
ほんのすこし、口元を緩めながら
またページをめくった。]

 
(33) 2020/09/10(Thu) 22:23:54

【人】 環 由人


[ あの日は、ただの気まぐれだった。

父が倒れたからと連絡があったから
都心のレストランをやめて帰ってきた
この小さな町の小さな惣菜屋で、
やっと少しずつ認めてもらえるようになった頃。

母がまた突拍子もないことを言い始めたのだ。
父の手の調子は相変わらずだし、
これを機に2人、田舎に引っ越そうと思う、と。

はじめこそ冗談だとしか思っていなかったが、
どうやら本気だったらしく、コツコツ貯めた
貯金で小さな古民家を買おうと思う、
ていうかもう買った、といわれたときには
そりゃあもう目の前がぐらぐら揺れた。

それから、あれよあれよという間に
店を己に任せて行ってしまった両親。
仕方なくアパートは解約して、
1人にしては広くて、がらんとした
実家に取り残されてしまった。]

 
(34) 2020/09/10(Thu) 22:24:37

【人】 環 由人



[ ああ、そうそう。それよりも少し前に、
『Edge』という店の存在を知った。
はじめて行った時のことなんかは
ひとまず割愛するけれど…
マイノリティとして、それをひた隠しにして
生きてきた己にとって、そこは、
曖昧にしていても許される場所だった。

時折行ってはカウンターの隅で酒を飲む。
そのひとときが、癒しになっていたのは
間違いなかった。

ママの声は結構通るし、大きい。
だから、カウンターの隅にいても
その話し声はよく聞こえた。
笑い話にされている、それも。>>29
知ってはいたけれど、W飼うW余裕など
あるわけもないし、そもそも
隠している己ができることではない。

頭のどこかで「関係のないこと」だと
ぼんやりおもっていた。あの時まで。]

 
(35) 2020/09/10(Thu) 22:24:58

【人】 環 由人

  ───あの日



[ 人のいない空間に落ちるラジオの声。
それは寂寞を増長させるような気がして。
一度切って、財布と携帯と鍵を持って家を出た。
『Edge』には引っ越し騒動があって、
もう1ヶ月ほど行けていない。

とくに目的があるわけじゃないのに、
コンビニにいこうと思ってしまうのは
なぜなのだろう。
…もしかしたら人に会いたいだけ
なのかもしれないな、なんて考えた。

ちゃり、ちゃり、と微かに
金属が擦れる音が人気のない夜道に落ちる。
街灯がちかちか点滅した。

やる気も愛想もない深夜バイトのいる
コンビニでビールと乾物を買って、
がさがさとビニール袋を鳴らしながら、
ぼんやり空を見上げて歩いていれば、
行きと違うルートを自然と選んでいた。]

 
(36) 2020/09/10(Thu) 22:25:36

【人】 環 由人



[ こっちの道には、公園がある。
夜の公園っていうのは昼の顔とは違って
少しばかり不気味にも思える。
誰もいないはずのブランコが、
風もないのに揺れていたり───
なんて、考えていたら、キィ、と
微かに甲高い音が響いた。

普段は覗き込んだりしない。
ただ、そのときはなんとなく───
ほんとうに、なんとなく、覗いたのだ。

さっき考えていたように、
誰もいないはずのブランコが揺れてる、だとか、
ボールがどこからともなく転がってくる、だとか
足のない子供が遊んでる、だとか
そんな怪談めいたことはなく。

そこにあったのは]
 
(37) 2020/09/10(Thu) 22:26:00

【人】 環 由人





   ───?


[ 見たことのあるシルエット。
けれど、それは己の知るものよりもずっと、
なんだか、───違っていて。

気まぐれだ。

普段なら話しかけようとはしない。
自分がそうコミニュケーションに
長けていないことはよく知っている。

だから、気まぐれだ。

そちらに足を向けて、歩み寄る。]

 
(38) 2020/09/10(Thu) 22:26:19

【人】 環 由人



[ ───歩み寄ったはいいけれど、
こんどはどうするつもりなのだ?と
自分に問いかけた。答えはない。
だって、持ち合わせていない。
格別常連なわけでも、仲が良いわけでもない。
ほとんど話したこともないのだ。
己のことなど覚えていないのでは
ないだろうか、とも思うけれど。

ここまできてしまったのだ、
なにもしないで立ち去るわけにもいかない。

とまあ頭の中でぐるっと考えた結果。]



   ───こんばんは



[ 普遍的すぎる挨拶を落としてしまうのだ。

もっと他になかったのか、と
ツッコミを入れるように、
握り直した手元のビニール袋が音を立てた。]*

 
(39) 2020/09/10(Thu) 22:26:40

【人】 マリィ  

[「こんばんわ」なんて挨拶だったから>>39
 アタシはてっきりお巡りさんかと思ったの。
 あー、久々の職質かぁ……なんて
 嫌な顔して振り向いたら、
 何度か見かけたような顔がそこにあった>>39


  あ、え……っと……、


[何度か、お店に来てくれた人。
 だけどいつもカウンターの片隅にいて>>35
 最初、どんな風に話しかけたらいいのか
 よく分からなかったのよ。
 ……だけど、誰かとの話の会話の端々に
 少し笑っていたりして
 ようやく「この人、場所が欲しいのかな」って
 思い至ったの。

 明日をよりよく生きるために
 笑いたい人もいれば、自分より下の生き物を
 見て安心したい人もいる。
 多分この人はどれでも無くて、
 安心して居られる場所が欲しいのかなって。

 笑った顔は優しかったし、
 おしゃべりは……壊滅的かもしれないけど
 でも、嘲笑うような感情も見えなかったから。]
(40) 2020/09/11(Fri) 0:07:11

【人】 マリィ  




  や、やだァ……えっと、
  ちゃんマキ、 だったかしら。
  こんばんわ、どうしたの?


[一度だけ呼んだきりのあだ名を
 記憶の中から引っ張り出して
 アタシはアイライナーの滲んだ顔で
 どうにか笑って見せたでしょう。

 「どうしたの?」って、
 深夜にコンビニ行きました、って格好の人と
 無人の公園でブランコ漕いでるオカマとじゃ
 どうしたの?選手権は勝負にもならない。

 ……ああ、気の利いた逃げの文句が
 もう、なんにも思いつかないのよ!]
(41) 2020/09/11(Fri) 0:08:05

【人】 マリィ  

[結局、少し迷った挙句、アタシは
 砂のついた革靴に視線を落としながら
 静かに口を開くでしょう。]


  …………アパートの退去期限、
  次が決まらないうちに、来週になっちゃってさ。
  「何とかなる」って生きてきたけど
  本格的に店に寝泊まりするか
  いいチンコに飼われるかしないと
  どうにもならないところまで、来ちゃって。


[ここで笑ってもらえたら、
 少しは気が楽になるかも……って思ったのに
 どうにも声が震えてしまって、
 いつも通りに笑えなかった。

 こんな、常連でもない客に
 ガチな悩みを見せるのは、正直
 裸になるより恥ずかしい。
 ざざ……と足元の砂に線を描きながら
 アタシは自分のつま先ばかり見つめている。]
(42) 2020/09/11(Fri) 0:09:10

【人】 マリィ  




  ……真っ当な道からは自分から離れたんだもの
  今更陽向に生きられる気はしないけど
  それでも、時々夜の闇に押し潰されて
  本当に、気が狂いそうになってしまうの。


[多分この人は昼に生きている人。
 ノンケかゲイかも分からない。
 言ったって、仕方ない。
 ─────分かって、いるのに。
 剥げかかった赤い唇が、ゆがんで、
 笑みにもなれない曲線を描く。]


  ……なんて、こんな厚化粧のオカマが言っても
  元から狂ってるって感じだっつーの。


[だから、この醜態を一笑に付して頂戴。

 アタシの願いを余所に、ぐう、と
 空気を読まない腹の虫が鳴いた。]*
(43) 2020/09/11(Fri) 0:10:34

【人】   希壱

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

         モテの極意      

  一つ、日頃からモテへのモチベを高くもつ
  一つ、異性へのアピールは積極的に
  一つ、デキない男とデキる男の使い分け
  一つ、料理下手はアピールポイント
  一つ、車は男のステータス
  一つ、モテは1日にして成らず

                …………


《天王寺司『35歳イケメン独身男性が教える!
 モテ男の在り方100選!』(○☆△書籍、2001年)》
                     
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
(44) 2020/09/11(Fri) 0:15:15

【人】   希壱


[────ぱたん


と、本を閉じる。
高校生の頃に愛読していた付箋とマーカーだらけのこの本を
いつしか読まなくなってしまったのは、
きっとそれよりも大切なものが出来たからだ。

            
…まぁ、受験で忙しくて

            
それどころではなかったとも言うけれど。


そもそも、2001年発行の本を
何故、今でも通用すると思っていたのか。]
(45) 2020/09/11(Fri) 0:15:40

【人】   希壱


 いや、でもこれは……おじさんが……


[一人しか居ない部屋でポツリと言い訳を零す。
誰かが居れば何か返ってきたかもしれないけれど、
一人でそんな話をしたって虚しいだけだ。

というか、その肝心のおじさんは
その本を愛読してたにも関わらず、未だに恋人はナシ。

…この本の効果はそこから見て取れたはずなのに。
まだ若かったんだなぁ…なんて言葉で
お茶を濁すことしかできない。]


 ………そう思うなら捨てろってな。


[苦笑しつつ閉じた本を本棚へと戻す。
その横にあるモテ研究㊙ノートは、
終ぞ活躍することは無かったけれど。

その二冊に俺の青春が詰まっている。
だから捨てることが出来ない。

………なんて、少し哀しい話だろうか。]
(46) 2020/09/11(Fri) 0:16:24

【人】   希壱


 「
おにいちゃーん!おふろあがったあ!



[階下からそんな声が聞こえてくれば、
急いで自室から出て、階段を下りる。

つい最近までまだまだ小さかったあの子が、
今では一人で風呂にも入れるようになった。
着替えだって一人で出来て、
ランドセルも似合うようになってきて。

一年前は掛け算の九九を覚えたんだよって、
時々言葉を詰まらせながらも、
なんとか九の段まで言い切っていたっけ。

そんな光景が脳裏を過ぎって、ツンと鼻の奥が痛くなる。

如何せん10歳も年が離れていると、
兄の心に上乗せするような形で
"親心"というものが芽生えてくる。

家を留守にしがちな両親の代わりに、
妹の世話をしているのだから尚更だ。]
(47) 2020/09/11(Fri) 0:17:33