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【人】 生贄 セレン[ 今は湯浴みが先だともう一度ぺこりと頭を下げて。 視線から逃れるように部屋の扉を潜り抜けようとし、 ふと、思い至ったように疑問を口にする ] もし、開けたら……? [ 奥の扉を開けば彼を知ることが出来るのか、 或いは、猫のように殺されるのか。 惑いの滲む音を静かに落とし、 好奇心に揺れる瞳を主へ向けて、 子供らしさと相反する感情を色濃くしながら ] (562) 2019/04/11(Thu) 1:28:41 |
【人】 生贄 セレンぼくを食べますか……? それとも、捨てる……? [ 帰ってこない子供の幾人かはそうして死んだのか。 仮に、開けたとして、同じ目にあうのか。 死にたくもないし、ひとりも嫌だ。 するなと言われればしないだろう、でも── ] (563) 2019/04/11(Thu) 1:29:24 |
【人】 生贄 セレン………ぼくは あなたのことを、もっと知りたい。 [ 灰の瞳は陽に弱く、夜を映すに柔らかな光で。 蒼は掠れて夜に染まって、訴えるような雫を湛えて。 自己を見せろと囁く主に、ただまっすぐ訴えた ]** (564) 2019/04/11(Thu) 1:33:05 |
【人】 生贄 セレン……たしかに。 [ 震えは未だ、夜気の朧に触れて身を縛る。 それでも背筋は真っすぐ伸びたまま、 瞳に夜の怪物を映して艷やかな唇を開く。 小柄な身には重い上着だった。 体格の差を身体で感じながら、 煌々とした光だけを双眸に讃えて、 玩弄されればそれまでの人間らしく実直に ] (628) 2019/04/11(Thu) 20:56:46 |
【人】 生贄 セレンたしかに、ぼくの為でもあります。 だってぼくにはそれだけ価値しかなかった、昨日までは。 [ 捨てられ、裏切られ、挙句に捧げられ、 要らない子供だと言外に位置付けられた自分。 そう、人の世界では不要とされて、要らない存在だった。 朽ちていくだけの消耗品ですらなく不用品だった。 そこに足されたのが生贄としての価値で、 主たる怪物が退屈を癒せというのなら、つまりは ] (629) 2019/04/11(Thu) 21:00:44 |
【人】 生贄 セレンだから、あなたが満足してくれないと。 ぼくのたった一つの価値すらなくなってしまう。 あなたの退屈を満たせるなら、 ぼくをここで生かしてくれるのでしょう……? [ 震える声音は相変わらずで、 ともすれば消え失せてしまいそうな様子は未だ。 それでも最初よりは幾分かは芯のある仕草で、 ふ、っと息を吐き出し、ぎこちなく口端を上げる ] (630) 2019/04/11(Thu) 21:02:07 |
【人】 生贄 セレンそれを価値というのかはぼくには分からないけれど。 でもそれだけしか、ぼくにはないから──… [ 鼓動が痛いほどに早く呼気も浅い。 人非ざる男を前に籠もる緊張は隠しようもなく、 それでも、唇は弧を描くままで視線は逸らさずに ] (631) 2019/04/11(Thu) 21:13:36 |
【人】 生贄 セレンニクスさまの為にするべきことをしたい。 あなたに認められなければ、ぼくは、無価値になる。 だからもっと…… あなたのことを知りたい、そういったんです。 [ 生きたくて、裏切られたくない、これはその裏返し。 認められれば生きられる、 裏切る生き物を望むとは思えないから裏切らない。 裏切りだけはされるのが嫌だという思いが強く滲み、 我儘な自己主張となっているのは理解しているけれど ] (632) 2019/04/11(Thu) 21:14:15 |
【人】 生贄 セレン29人の全てを知るわけじゃないけれど。 みんな、帰ってこなかったから……。 あなたに仕えた子供の未来は、 もうどこにもないんだって…… 大人たちはぼくに笑って、そういってた。 [ 知らずに緊張の解けた口調となりながら、 29人の帰還すべき子供の行方にも興味はなく、>>614 30人目の子供の行方にだけは興味を惹かれたものの。 じわりと滲む焦燥もまた、興味と混じり絡み合う。 残った1人は彼に気に入られたのか。 それならばなぜこの城にだれもいないのか、 ───開いてはいけない扉の向こう側なのか。 無価値な子供なりに思考を巡らせはしたももの、 言葉にしたものは最も興味を抱くひとつだけ ] (656) 2019/04/11(Thu) 21:44:25 |
【人】 生贄 セレン[ 廊下を進めば独りの空気は冷たく痺れるようで、 古城を歩く不安を和らげてくれる狼に近付きながら。 アッシュグレーの毛並みにそっと触れる。 人ではない体毛の感触が伝われば滲むのは安堵で、 誰も居ない場所での孤独を癒やされ、緩く微笑んで。 階段を降りて暫し、茫と周囲を見渡した。 道標の言葉を直ぐに忘れるほど愚図ではなく、 けれど浴室の右手に向かうでなく足は階段の奥の扉へ。 燭台の光を頼りに歩けば突き当りに扉があった。 窓を見れば薔薇の庭園が目に入り、 重い扉を両手で押し開いて薔薇の茂みへと近寄って。 夜気は身を苛み、痛い程だったけれど、 今はこの一輪を得る欲のまま無防備に摘み取れば。 棘に指が触れたか鈍く走る痛みに無感動に首を傾げ、 紅い血が一筋流れる落ちる前に、その指を舐める ] (684) 2019/04/11(Thu) 22:54:18 |
【人】 生贄 セレン……美味しいのかな [ 血を糧とする夜の怪物のお気に召す血なのだろうか。 無垢であれと村では知識だけしか詰め込まれておらず、 舐める仕草も稚いまま、薔薇をもう一輪摘み、息を吐く。 ───味はしなかった、けれど温かい。 感動も嫌悪もなく鮮血の感想はたったそれだけ。 故に興味も薄く、紅い薔薇の香りに促されて身を翻す。 そうだ、まだ、やることがある。 湯殿で身体を清めて、それから。 主の元へ向かって何かを話そうか、それとも何かをするか、 出来ることと言えば細やかなことでしかないのだけれど ] (685) 2019/04/11(Thu) 22:56:39 |
【人】 生贄 セレン[ 狼は必要以上に近寄らずに視線だけを向けていて、 だからこそ勝手に近づき、また首筋を撫でてから。 伴い向かうのは今度こそ湯殿だった。 ひとりしか住まわない──その時時に子供がいても、 主ひとりきりの城にしては広い場所に双眸を見開いて。 天窓を透して零れ入る、静謐とした夜の光。 その真中で濡れないように上着を脱いで籠に入れ、 身体に巻き付いている絹の布も無造作に剥ぎ取った。 見下ろせば白い肌の靭やかな身体がある。 輿入でもするかのように磨かれた肌は月光に浮かび、 羽織ものがあれば女と見紛うにも理解し苦笑する。 大人の都合で飾られる価値観を、 自ら脱ぎ捨てるには未だ抵抗感はあった。 これだって自分に付随した価値だと思えば尚更に、 けれど、それを主が望まないのならば意味のないことで ] (686) 2019/04/11(Thu) 22:58:10 |
【人】 生贄 セレンおいで [ 狼を手招いて、浴槽に座って湯を流す。 薔薇の1輪だけを浴槽に散らして匂いを馴染ませて、 そこに身を浸せば花の香は薔薇と差し替わるだろう。 後はゆっくり浸かるだけだ。 他人に色付けられた古い価値観を脱ぎ捨て洗い流し、 役に立つと決めた相手のためだけに自らに色彩を足す。 滑るように浴槽に身を沈め、 腕だけを伸ばして狼を撫でる指はゆるりと。 滴る湯水を嫌うならなるべく濡らさないように、 狼の瞳をじっと覗き込み、問いかける ] (687) 2019/04/11(Thu) 23:00:38 |
【人】 生贄 セレン[ 暖かい湯に浸ること幾分。 その間に流れたもの寂しいピアノは届かずに、 思いを馳せるのもきっと陽と宵闇ほどの差があった。 狼に話しかけるのは過去の疵で、 人ではない獣だからこそ無感動に痛みを綴る。 孤独の毒を。希望の猛毒を。絶望の甘さを。 諦めの囀りが心地よく、そう生きてたことを。 顔立ちだけは悪くなかったせいで、 幾度か生贄に決まる前は襲われることもあった。 花街に売られなかったのは、疎まれた目のおかげだ。 陽に弱くまともに陽射しを見れない灰は、 月に輝くのを見咎められ化け物だとも詰られた ] (702) 2019/04/11(Thu) 23:31:24 |
【人】 生贄 セレン[ 願えば、伝わるのだろうか。 ならば独言のように語り聞かせた疵も、 明け透けに伝わってしまったのだろうか。 狼の瞳を覗き込むも静かで変化はなく、 暫し迷って、部屋に行かせてくださいと囁いた。 足を向けて貰うほどの用事ではない。 寧ろ、側にいたいのは己なのだから行くのが当然だろう ] (707) 2019/04/11(Thu) 23:35:09 |
【人】 生贄 セレン[ 伝えてしまえば行動は早かった。 どうやってこの城を維持しているのか不思議だけれど、 指先まで温まった湯を出て、バスタオルに包まれる。 湯気香る身体は仄かに薔薇の香りが漂って、 それこそ、村で施された生贄化粧よりも甘やかで。 それを意図せず水滴を拭いバスローブに身を包むと、 主の上着をまた羽織り、裸足のまま浴室を後にする。 目指すは厨房、湯を沸かして、紅茶を一客。 道具は奴隷であったころに使い方を憶えているから、 あとは薔薇の花弁を洗って紅茶に浮かべるだけ。 慣れない場所に少しは戸惑ったものの、 黄金の一滴まで理解したそれを両手で抱え、 足は急いで彼の部屋へ── 扉をいきなり開く不躾はせず、 とんとんと叩いて、様子を待った ]* (708) 2019/04/11(Thu) 23:36:48 |
【人】 生贄 セレンぼくの意志じゃなければ、意味がないのでしょう? [ 部屋に来た理由も、温まって欲しい理由も。 冷たい夜の怪物に近付こうとする意思を紅茶に混ぜて、 薔薇の湯船に浸かり香を纏う身体はふらりと距離を取る。 花弁を紅茶に浮かべた理由も意思表示のひとつ。 彼から手を伸ばしても届かない距離で夜を見つめて、 上着を羽織る身体を抱くように己の身を抱きながら ] (752) 2019/04/12(Fri) 4:34:29 |
【人】 生贄 セレン……ニクスさま。 ぼくは生きていたい、死にたくない。 そんなぼくが貴方を殺す方法を知らされて、 どうしたいと思うかを想像、しましたか……? [ 薔薇の香に包まれ夜の上着に包まれ囁き、 薔薇の香茶を夜に差し出し温まって欲しいと願い。 飲めば香気は彼の内へと落ちるのを望む艶やかさを、 微笑というには稚い唇で歪な弧を描く。 不慣れな仕草であることは伝わるだろう。 けれど、その行為に、惑いの曇りは一点もなく ] (753) 2019/04/12(Fri) 4:48:35 |
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