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【人】 少年 編笠「………?」 夢の中。 誰かの別れの言葉を聞いたような気がした。 ちょっとノスタルジーに浸りすぎかと首元を掻いた。 アカネの言う通りだ、田舎ってやつは 郷愁で否応なしに俺達の心を押しつぶしてくるらしい。 まあでもそれが幻聴だったとしても、虚空に呟いた。 「……ああ、またな」 布団で上半身を起こしたまま誰に言ったわけでもない言葉は、 今日も変わらず高い朝空に、 誰にも聞かれることなく消えていった―――――――― (0) 2021/08/14(Sat) 21:18:58 |
【置】 花守──夢を、夢を見た。 薄ぼんやりと映る景色のなか。 手入れのされていない雑木林。 寂れた木造の建物。 独りぼっちが。 迷いびとに甘い夢をみせて。 優しく包み込んで。 寂しくないように。 そう囁いて。 此処こそが自分達の還る場所で。 いつまでも、どこまでも居ていい場所で。 きっとまだ迷い込んていないみんなも、来たがっている。 だからみんなを…… それから……それから…… 「…………ぼんぼこ、ぼん?」 (L0) 2021/08/14(Sat) 22:04:10 公開: 2021/08/14(Sat) 22:30:00 |
天のお告げ(村建て人)は、メモを貼った。 2021/08/14(Sat) 22:45:00 |
【人】 学生 涼風 季節外れの雪を纏う。 艶めく白に、金の流水文様を走らせて。水辺に咲くのは紫苑の花。引き締まる黒の帯には蝶々が舞い、涼しげなガラスの帯留めが腹部を飾る。 御端折りを出すのに苦労したけれど、工夫さえすれば着丈が合わない着物も着れるものだ。 姿見に映る自分の姿。着物を崩さぬよう身を寄せて、鏡の向こうの己に触れる。 にこり。 紅を乗せた唇の端をほんの少し持ち上げて。 さらり。 髪に差した簪を揺らすように小首を傾げる。 一枚隔てたガラスの向こうで、母親が優しく微笑みかける。……微笑みかける真似をする。 病に倒れ、母と自分を混同するようになってしまった父の為に真似していたから母の真似事をするのは得意だった。 けれど、今この時は父の為ではなく。 父が母の為に仕立ててくれた、誕生日の贈り物。それを着る前に亡くなってしまった、母の為に。 ▼ (1) 2021/08/14(Sat) 22:52:04 |
【人】 学生 涼風「日舞なんて、本当に久々だから。間違っていても許してね、母さん」 目が覚めるほどの紅色を差した唇から溢れる柔らかで涼しげなそれ。いくら見た目が性別の垣根を塗りつぶしてしまうものだったとしても、はっきりと男のものだとわかる声だった。 四日目。まだ気温が上がる前の清廉な朝の空気が静寂と共に辺りを包む頃。 母親の仏壇がある部屋の真ん中で、恭しく一礼をして母から習った舞を踊り始める。 きっと、これは誰かがくれたきっかけなのかもしれない。やさしいやさしいゆめなのかもしれない。 だって、そうじゃないと説明がつかないのだ。 どうして、この着物がここにある? ──この着物は、母が亡くなった時に父が処分してしまったのに。 (2) 2021/08/14(Sat) 22:53:22 |
【人】 影法師 宵闇「────♪」 鼻歌を鳴らしながらあぜ道を練り歩く。足取りは軽い。 ギター <都会の象徴> を置き去りにしてまるで少年時代に戻ったみたいに。夏風になったみたいに。 「昨日は海、楽しかったな。今日はなにして遊ぼうか、」 「ずっとここにいて欲しいんだろ、なあ、田舎のかみさま」 ──なにかに、呼ばれている気がする。 ──だれかに、呼ばれている気がする。 ずっとここにいて、こっちで遊ぼう、って。 誰だろう、幼い時の自分? いつもつるんでた、記憶の中の友人? ずっと一緒にいた、古ぼけたピアノに魂でも宿ったかな。 向日葵畑に迷い込んだような 夏祭りではぐれたときのような、そんな不安もなくて。 この田舎に来た時から、実は知っていたのかも。 だってこんなに居心地がいいのだから。 泡沫みたいにふ、と宵闇に溶けてゆく迷子か 使命を忘却の彼方に置き去りにした導き手か なんにも知らぬまま男は、影のように田舎の風景に溶け込む。 (3) 2021/08/15(Sun) 0:43:57 |
(n1) 2021/08/15(Sun) 1:06:25 |
【置】 おかえり 御山洗がば、と体を起こす。汗だくの顎から伝った汗が布団にぱたと落ちた。 頭が痛む。汗のかきすぎだろうか。夏の暑さが皮膚を締め上げるようだ。 流れ落ちていく汗の感覚を意識が追って、時間を掛けて夢と現実が選り分けられていく。 深呼吸して喉を通る息の冷たさが、まるで水を流し込んだかのように思える。 「……」 張り付いたシャツを引き剥がして空気の通り道を作る。腹が冷えそうだ。 腕に触れ、肘の内側に触れ、皮膚と手の平の間の空気を追い出すようにぎゅうと握りしめた。 恐れている。怖がっている。何より自分が、いやになる。 自分がいる場所はここではない。もう、ここに自分の居場所なんてのはないのだ。 帰ってきてよかった。帰って来なければよかった。全部、そのまま忘れてしまえばよかった。 (L1) 2021/08/15(Sun) 1:15:43 公開: 2021/08/15(Sun) 1:15:00 |
御山洗は、怯えている。 (a0) 2021/08/15(Sun) 1:15:51 |
【人】 学生 涼風【四日目 早朝】 線香とい草の匂いに包まれた部屋に、ぱさりと乾いた音がする。 纏っていた着物の下から現れたのは真白の肢体。肉付きは薄く、されど女のようなしなやかな曲線を描いている訳ではない。陶器製の人形めいたその体は、確かに男の形をしていた。 母への手向けの舞を踊った後。着物を畳み、手早く洋服を身につけて。仏壇の前に正座する。 「……こうして母さんの実家できちんと話ができるとは思わなかった。 そもそも、私はずっと勉強ばかりしていたから、拝む事さえきちんとしなかった親不孝者として怒られてしまうかな」 語りかける写真には自分と同じ顔がある。けれど慈しむようなその微笑みは、自分と似て非なるもの。 視界が狭くなっていた自分では、こんな笑い方できるわけがない。 「母さん。私は元気でやっているよ。少し話をしようか。あのね……」 …… …… …… ▼ (4) 2021/08/15(Sun) 3:07:18 |
【人】 学生 涼風>>4 滔々と語る言葉に相槌を打つ者などいない。けれど、少年は決して報告を止めるつもりなどなかった。 失われていた家族との時間がたまらなく愛おしかった。例えそれが相手が既に死んでいたとしても、今ここにいる場所が夢幻のようなところであっても。 「……」 身の回りに起きたことを少しずつ話して、途中ではたと気付く。 道を選ぶのが嫌で、夢と向き合うのが嫌で、甘く優しい思いしかないこの場所にずっといたかった。 でも。それでも。 この永遠にいてしまったら、夏の思い出に浸り続けてしまったら。 成長を喜んでくれた母に、今なお共に生きている父に、報告するものが無くなってしまう。 「それは…………寂しいな」 (5) 2021/08/15(Sun) 3:08:59 |
【人】 髪置4日目 朝 「今日も……遊びますか!」 今日は楽しい楽しい夏祭りの日! そんな日に遊ばないなんてありえないことだ。 なんなら祭りの前に一遊びするまである。 髪置にとって祭りの日とはそういうものであり、 手加減などもっての外だった。 (6) 2021/08/15(Sun) 3:43:55 |
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