―― 先代と雪兎 ――
[ その時の先代は、先代の雨水に対し、処暑域で収穫できたブドウを差し入れていたらしい。
先代処暑の彼は、真反対、という意識しやすい位置に対し、興味を持つ、という方向性の意識を向けていた。
だから先代の雨水とも交流が深かったようであるし……彼ならば、あの社交的な人と仲良くやれるだろうな、と思う。
そこを円らな瞳に見つめられ……ブドウを何粒か
食べさせたようだ。 ]
「 それで金平糖をもらったんだけど、食べるかい? 」
[ 笑顔で私に勧められた可愛らしい小袋は……彼のものだから、と受け取らなかったけれど、
それが頻繁になるにつれて、私も観念して口を付けるようになった。
初めて雪兎を見たときに「これが例の……」という感情が湧き上がったけれど、
複雑な気持ちもあって、今まで、そのことに対して礼は言ったことがない。
]