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【人】 高山 智恵 ……もしも私の中で“ 転機 ”と呼べるものがあったとすれば、この時だったのかな。 今となっては、いつから、何によって彼女を「好きなんだ」と気付いたのかも曖昧だけれども――。 これから私は、何をして生きていたいか。どこに向かって生きていたいか。 曖昧にすら描けなかったその絵図は、こうしていつしか、はっきりとした輪郭を形作っていた。 (104) 2022/10/19(Wed) 17:22:54 |
【人】 高山 智恵「私も、将来は自分のカフェ持ちたいですね。 なので、売上管理とかマネジメントとかも 正社員の立場で学んでみたいんですけれど。 ……まだ社員昇格には早いですかね? 店長」 店長にしれっとそう申し出た当時は「まだ早い」と即答されてしまったものだったけれど、ね。 でもこの意思表示には、少しだけ嘘が含まれている。 正しくは「自分のカフェ」じゃなくて、「自分と彼女のカフェ」だ。 その嘘を正す夢物語を、店長にも彼女にも、私は言えなかった。 (105) 2022/10/19(Wed) 17:23:35 |
【人】 高山 智恵『はい、私はあの男のことが好きです。 ――さんは都心でショコラティエとして頑張っています。 ――さんは本当に真剣にチョコレートに向き合ってます。 ――さんは、本当に素敵です。素敵なんです。 私たちのお店にお客さんとして来てくれて、 本当に嬉しかったです』 『私は、素敵なあの男にちゃんと振り向いてもらいたいです。 だから、次の新作のガトーショコラも、 ホットココアも妥協しません』 だってそれこそ、浮世離れした何かのような目の輝かせ方でこんな言葉を聞かされた後の日に、思い描いてしまった将来の夢>>105でもあったのだから。 もし私がアーサー王にとってのマーリンになる心算だっていうなら、何の不満もなくこの夢を果たせるのかもしれない。けれども私は、あの娘のマーリンとしてだけ在りたい訳じゃない。 ……ああ、これじゃまるで、私はグィネヴィアにとってのランスロットになりたがってるみたいだ。 (106) 2022/10/19(Wed) 17:39:10 |
【人】 高山 智恵 ――本当にあの娘は本当に彼のことが“ 好き ”なの? それって、何%くらい本当のことだと思う? そんな考えがふっと浮かびもしたけれど。 彼女は嘘を吐かない。というより、吐けない。あれは本心だ。 ――彼女の言う“ 好き ”って、どういう定義? “ 振り向いて ”もらうって、どういう意図? 可能性を問う声ばかり、頭の中に響く。 響きはすれど、それに耳を傾けることなんてできない。 都合の良い夢ばかり、見ていたくはない。 ……、そうだよ、今は夢なんて見ている場合じゃない。 丁度目の前に気掛かりなことひとつ>>85>>87、捌かなきゃいけない仕事はいくつも>>89、あるじゃないか。 (107) 2022/10/19(Wed) 17:43:44 |
【人】 高山 智恵 こうして――様々な意味で気を取り直すように――オーダーの声を響かせるお客様>>89の元へ急ぎそうになって、 やめた 。お客様に呼ばれた同僚から仕事を奪ってどうするの私。どうやら自分で無自覚だっただけで、今日の私は相当疲れているか気が抜けているかしているらしい。 まあ、昨日応対したお客様が再来店してきたのを見てつい……っていうのもあったけれども。 忘れ物のペンの受け取りだけで用件を済ませてもいいところを、わざわざランチメニューまで頼んできてくれるなんて! 2倍に増えたライス大盛り指定のランチは、今度はAではなくBのほう。 うんうん、このお客様のこと、ぜひ店長にも“ 彼女 ”にも伝えた……げほん、なんでもない。 あと今本当に店内でげほんって咳いた訳ではないのでご心配なく。 それこそ今が相当に空いている時間帯であれば、お客様の時間と話しかけられ耐性が許す範囲で(店員からのお喋りを嫌うお客様だっている)料理の感想や来店の経緯を聞いてみたい気持ちはあるんだけれど、残念ながら今はまだまだそれなりに混んでいる。 カズが……失礼、あの子たちをはじめ、今私が担当している他のお客様方のほうがどうしたって優先される。 うん、普段相手の子が「カズ」って呼んでたのが多分ちょっと移ってるなこれ。成人に対して「あの子」呼びが失礼か否かはちょっと置いて。 (108) 2022/10/19(Wed) 18:09:40 |
【人】 高山 智恵 さて、あの子たちとは言ったけれど――。 実際のところ、もう片方の子のほうは未だ来店していない>>87。 待ち合わせという形故に来店時間がズレることは普通としても、ここまで来ないってことはない――というのは普段のふたりの来店時のことを知っているが故に思うこと。 彼女、この店は来づらい訳じゃないどころか、週2、3くらいでランチに通ってくれてるくらい気に入ってくれてるんだけれど>>79……。 スマホを取り出して画面に目を落としている彼の姿は、私もちゃんと捉えている。 もしこちらで何か手助けすることがあれば手を貸すつもりではいるけれど、お客様当人から声を掛けられない限りは、残念ながら動けない――少なくとも今は。 あの子の不在が、今ここにいるカズ君の浮かない態度>>81>>83>>85>>86と関係あるのか否かは分からないけれど――。 (109) 2022/10/19(Wed) 18:33:28 |
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