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人狼物語 三日月国

258 【身内】冬融けて、春浅し


【赤】 靖国 冬莉



 ………、


[参考資料として見た、映像。男に組み敷かれる中で、頬を上気させて 女のように善がる姿が、頭を過っていく。
 あのように、自分自身がなるのだろうか。これまで幾度となく 抱いた女のように、嬌声を上げて、希うように身体をくねらせて。否、何より。—————彼に、幻滅されたり、しないのだろうか。
 直球に向けられる言葉と、その欲に満ちた眼差しが、陰ることはないだろうか。
 彼が向ける眼差しに、言葉に沿えるような自分自身でないことを痛いほど知っているからこそ、尚更に。]


 ………、幸春。
 

[彼によって暴かれ、はだけた上肢のままで 彼へと手を伸ばし スーツに隠されていたその引き締まった胸板へとつうと指先を辿らせる。女とは違う、角ばった しなやかな肉体————情を傾けた愛おしい男の、身体。]


 ………… 下手だったら、代わるからな?


[少しばかりの静寂の後に、視線を持ち上げて 軽口を吐くように遠回しの肯定の意を示す。惚れた弱みだ。不安よりも 彼のその言葉に応えたいと願うなんて。後頭部へと腕を回して、俺に、男の善さを、教えてくれよ。≠ニ蜜事のように囁く唇は 薄く笑みを敷いていた。*]
 
(*10) teco 2024/05/01(Wed) 0:54:20