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74 五月うさぎのカーテンコール
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[俯いた視界に顔が生えてくる。
はるか上からのアングルは見慣れなくて、視線の逃げ場がなかった。]
うあ、あの。
どうしてですか……
今夜はこれくらいしか返せないって。だから俺、普通の顔できたのに。
帰らなくていい、なら。
──もう、酔ってしまいます…
[笑顔を見下ろしていた。
頬の熱が戻ってくる。
ぽぽぽ、と染まって、耳の先にも色がついて、指先が火照って、
しゃがむにしゃがめなくて、顔を両手で隠した。*]
[お風呂上がりの嵐は、微かに頬が上気して良い香りがする。
だぼっとしたルームウェアに、目が細まって。
目を擦る姿に、先に寝てて良いよと声をかける。]
お風呂。ゆっくり出来たなら良かった。
[胸の奥が温かな気持ちになる。
慣れない事も、苦にならない。
彼女が微笑んでくれたらそれだけで……
キスをして、風呂に向かおうとしたら、服の裾が掴まれて掠めるような口付けが落ちた。
何度か瞬いて、幸せそうに微笑みかけて。
いってらっしゃいの声に、いってきますと答える。
そんな何気ない事が、どれだけ俺を幸せにしてくれるだろう。]
[風呂から上がって、髪を乾かすのも面倒だったけれど。
濡れた髪で嵐が風邪を引いては行けないと、乾かして。
寝室に戻れば、微睡の中の嵐が居た。
起こさないように、気を付けてベッドに入って。
自分と同じ香りのする髪に口付ける。]
おやすみ。嵐。
[起きないと良いけれど……
腕を回して、抱き寄せる。
身じろぎしたなら、優しく背中を叩いて。
髪の毛に顔を埋めて、目を閉じる。
嵐の明日のシフトはどうだったか。
何時に起こせば良いかな、と。
閉じた瞼の裏で考えた。]
[夏の日の陽は長く朝は早い。
カーテンから微かに漏れる光の中、腕の中に嵐が居る事に微笑んで、彼女を起こす。]
嵐。……嵐。起きて。朝だよ。
[優しく囁いて。
朝が弱くて寝起きの悪い彼女は起きるかな?
起きないようなら口付けて。
抱き寄せて、髪に、額に、頬に、唇に。
愛おしいと思うままに口付けて。
彼女が重い瞼を瞬いたなら……]
[私の言葉をどう受け取ったのか。
ぐっと近づいた距離が隙間をなくして下肢に当たるものに気づいたら、かぁ、と頬が朱に染まる。
彼も同じ気持ちであると分かって嬉しいけれどこれには顔を覆いたくなった。]
うん……
[先立つ彼に身を寄せて、扉をくぐれば昼間の明るい日差しに照らされて、温かな湯気が立ち上る。
その時ばかりは火照る熱を忘れて、わぁ……、と感嘆の声を上げた。]
[先にお風呂へ向かう彼を見送ってから、シャワーを浴びる。
どこを見たら良いのかも分からずに視線を彷徨わせていたから、ちょっとだけ隠れてほっと息をついた。
決していやなわけではないけれど、二人でお風呂に入るのも、こんなに明るい日の下で彼の身体を見るのも始めてだったから眼のやり場に困る。]
お湯加減、どうですか?
[お風呂に向かえば、聞こえてくる溜め息にも似た声に笑って。
差し出された手を取って、湯船に身を浸す。
ちゃぷんと、お湯が揺れて肌を撫でる。]
はぁ……、気持ちいー……
[基依さんと同じような感想が零れてまた笑ってしまう。
隣に腰を落ち着けて、両手を組んで前に伸ばして身体を解した。]
ユニットバスだと、足伸ばせないですもんね?
……きゃっ、……、……
[お風呂を堪能する様子をくすくすと笑いながら見ていれば、ぱしゃりと湯が跳ねて目を瞑る。
あっという間に腕の内に囚われたら、悪戯な手が胸に伸びて、ンッ、と息を詰めた。]
ぁ、も、といさ……ンッ……
[漏れそうになる声を殺して、僅かに身を捩る。*]
どうしてって……
いや確かに、今夜はこれくらいしか、って言ったけど。
まさか帰ると思ってなくて。
[視線が噛み合って、離れない。
離れないなら、それでいい。
逃さないように、逃げ出してしまわないように。]
君が嫌じゃないなら、俺ソファで寝るし。
[嫌じゃないなら、は俺のベッドで寝ることにかかっている。
あと、寝間着の裾が足りないかも、とか。]
……俺に?
[酔ってしまう、と顔を隠すのがやけに可愛くて、からかいたくなって笑ってみる。
視線が合わなくなったら、立ち上がった。]
酔いざましにシャワーでも浴びる?
パジャマに出来そうなの、クルタくらいしかないけど。
[ゆるくて長い丈が気に入って着てる部屋着だ。洗い替えがいくつかあるから、すぐに出せる。
それでも彼には短いかもしれないが。]
うん、温泉サイコー……
[この愛撫が始まってまだ羞恥心が勝っている時の声の殺し方が好きだ。
ここから段々と抑える余裕がなくなるところも。
ただ此処は一応「外」で、声がどこまで響くかはわからない。
自分だけが聞きたいから、今は抑えてもらおうか。
戦慄く唇を自分のそれで塞いだ。]
息は鼻でしてて。
[とは無茶な話か。
どこまでキスで喘ぎを飲み込んであげられるか、チェリーの茎を結ぶのが得意な男の腕の見せ所。]
[持ち上げて膨らみを水面から出し、手を放して落とす。
マッサージをするように腰回りも摩って。
熟れてしこった紅色が視界に入るけれど、少しの間は焦らして触らずに。
散々身体の色んな箇所を手で愛でた後、漸く左右同時にきゅ、と甘く摘まんだ。*]
こっちこっち。
タオルここね。あ、家に連絡とか必要?
[泊まるとなれば話が早い。
部屋の間取りを案内しながら、今更ながら彼の同居人に頭が行く。]
……なんて言うべきなのかね、これ。
[今からでも帰ろうとしていたのに、泊まらせる理由とは*]
だ、だって帰らないと…
[俺はソファで寝る、そう聞けば思い出してしまう。
シーツの肌触り。優しい人のベッドで眠ったこと。
泊まったりしたら明日また軽率に熱が出るかもしれない。知恵熱というやつ。]
そんな、俺がソファで寝ますから、、
寝間着だって借りるのは悪──
[もう泊まる前提の返事をしていることに気づいて、息を止める。]
あなたに……ですよ。
好きなんですから。
[笑ってる。この声は笑ってる。
真っ赤になった顔を隠したままでカクカク頷いた。]
その「くるた」って何ですか……?
いえ、大らかっていうか。住むなら好きに使えばって感じで、そんな交流ない人なんで……
何か言うなら。……今までお世話になりましたって?
[のそのそと足を動かして、彼の後ろをついていく。
シャワーを借りるのも雰囲気に呑まれるまま。
一戸建ての間取りなのか、脱衣所のどこにも腕も脛もぶつけずに服を脱げた。]
[羞恥に肌を染めながら、施される愛撫に息が上がる。
触れ合わせた唇の隙間に囁かれたなら、浅く何度も頷いて瞼を下ろした。]
は、……んぅ……、っ……
[漏れ出そうになる声は彼の唇に吸い込まれていく。
それでも溢れて、時折零れそうになるの懸命に堪える。
深くなっていく口付けにとろんと眦が下がって、行き場のない手が彼の肩口に落ち着いた。]
[彼が動く度にゆらゆらとお湯が揺れて。
腰をなぞりあげる手に小さく身が跳ねる。]
ンンッ……!
[突起を摘まれたら、我慢できずに唇を離して。
つぅ……と、二人を紡いでいた糸が途切れる。
浅く呼吸を紡いでから額を、すり、と擦り寄せたら。]
や……、くちで、して……?
[甘える声は、期待に震えた。*]
[頭からぬるま湯を浴びる。
水圧が肌を押して。酔いを醒ますはずが逆効果。
二の腕を擦った。足元に雨の降る音。
肩に、背中に触れた手のひらの感触が意味を変えて甦る。]
……。
[お湯の温度を下げた。
浴室から出るのに少しばかり、手間取る時間をかける*]
え? いいよソファベッドだし。
もともと来客用なの。
[じゃあなんでそっちを家主が使うかといえば、サイズの問題だ。
背が高いほうが広いのを使うのが道理だろう。]
どーせ予備があるんだし、気にしなさんな。
君が俺のことどう思ってようが、今日は泊める気だったしね。
クルタは……インドかどっかの民族衣装、らしいけど。
パジャマとして売ってるやつよ。
一言で言うと……ワンピース?
[という言葉が正しいのかは知らない。]
背高くてもそんなに丈気にしなくていいし、楽でしょ。
[漏れる声すべてを飲み込みたい傲慢は、聞きたい我欲に負けて時折唇をずらしてしまう。
その度に紫亜の喉が震え、くぐもった声が下腹に響いた。]
声、キスで塞げなくなるよ?
[その弱弱しく肩に置かれた手は蓋となるか、或いは新しい音響装置の機能を持つか。
ねだられた内容を断る理由はない。
紫亜を膝に乗せて身体を持ち上げ、軽く身体を屈めて色づいた先端に吸い付いた。
紫亜の臀部に堅さが触れることになるが、暴発まではしないだろう。]
は、 …
[かぽ、と口を開いて含むのは、色素が集中している箇所全体。
包んだ咥内で堅くしこる先端を舌で圧し潰したり弾いたり。
ちゅぽ、と音を立てて離して、反対側も同様に。
時折上目で見上げて彼女の表情を伺った。
そろそろはいりたい、と予告をするように、腰を支えている手を片方外し、そっと足の間に忍ばせる。
湯ではないぬかるみの存在を探るように鉤型に折れた指先が彼女の裡に埋まる。*]
あっはは。
それはちょっと気が早くない?
俺はまあ、別にいいけど。もーちょっと段階踏もうや。
[どうも泊まるのを解禁したら、毎日来る気らしい。
店からは近いし楽でいいかもしれない。
ついでにジェラートが昼から出せる。
とはいえ、一足飛びが過ぎないかと、からから笑う。]
ま、楽な相手ならそれはそれでよかったね。
あんま心配かけなさんな。
君はいい子だからね。
[そうしてバスルームまで案内すれば、そこからは一人と一人。]
[シャワーの音を聞きながら、TVをつける。
深夜番組で、芸人がゲームに挑戦しているのを見ながら、いつの間にかうつらうつらと*]
[隣にくる温かい気配。
抱き寄せられる感覚に、なんとか瞼を上げようとしたけど、
背中を撫ぜられればそれは叶わず。]
[肌をかすめる吐息のくすぐったさに身を丸め
抱きしめる腕に体を預けたまま、
今度は安心して深い眠りに落ちていった。]
────……
んん、
[眩しさに、小さく唸って目を瞑る。
やさしい囁きがくすぐったくて、
布団を引っ張って丸まれば引き寄せられて。
あちこちに落ちる口付けに、くすくすと。
まだ重い瞼を薄ら持ち上げたなら、
大好きなひとのやわらかい微笑みにゆっくりと数度瞬き。]
……はよ、 ござ…… ぁ
[掠れながら応えようとした声の残りは、
塞がれた唇に食べられてしまう。]
ン…… ぅ
[深くなる口付けに開いたばかりの瞼が落ちて
ゆるゆると手を伸ばし、触れた裾をぎゅっと掴んだ。
温かい腕の中、体の奥に微かに熱が灯るのを感じながら
今はまだ心地いい気持ちよさに、微睡んだまま。
はなれていく唇に、ふは、と息をして。]
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