始末できたか？
鬼は一匹残さず討たねばならぬ。
それをわざわざ連れ帰るなど、全く義勇軍は何を考えておるのか。

何と、もうひとりの捕虜が私の名を騙っていると？
人のなりをしていようとも、そやつも鬼ヶ島の一味であろう。
そのような者の申す事を一々真に受けるでない。

処刑の手続きはこれからか。
それならば牢に繋いでおけ。
そして、証人となる船長らや士官らに、そやつへの断罪の票を入れさせておけ。

軍港に今、黒船が泊まっているのは知っているな？

その使節を迎賓館で迎える事になった。
もてなしに洋菓子が必要になるのだが、生憎と我が国ではそれに足るだけのものが作れぬ。
しかし海外への路が拓かれた今なら手に入れる事もできよう。

そこで、だ。
ス五六機関の義勇軍の船を遣う。
それぞれの船に世界各地の菓子の材料と製法を集めさせるのだ。

（ここに暗号鍵がある。
　これを貴君らに託す。
　あやつの不正を暴いてくれ……！）

なっ……その暗号は機密だぞ！

はっはははは！　そうか！
海軍卿自らがこんな奴らに暗号鍵を漏洩とは、やってくれるではないか。
あの高さからでは生きてはいまいと思うたが、やはりあの時、しっかりと止めを刺しておくべきであったな。

衛兵、衛兵！　謀反人だ！
あの者ら全員、生かしてこの場から出すな！

そこまでだ！
殺してはならんぞ。

衛兵、私が分かるな？

貨財を回収した今、あのような小島ひとつ、くれてやって良かったものを。

鬼ヶ島を我が国のものとしておくという事は、黒船を攻撃していた鬼共も我が国の民と認める事になるのだぞ。
その責を被るのか？
それとも外国と戦うつもりか？

……僅かを惜しんで全体を滅ぼすか。
トカゲですら、もっとましな事をするものだがな。

国をたばかるばかりでなく、売ろうとまでするとはな！
領海の通航権もその責任も、元より我が国のものだ。

せめてもの情けだ。
腹を切るというなら、それを許す。

はっ、何を言うかと思えば。

全ては我が国の将来を思えばこそ。
鬼なんぞに魅入られてしもうた兄上に代わって海軍卿の御役目を務めたまでよ。

まだそのような事を言うか。
かくなる上は致し方あるまい。

この愚かな我が弟の罪を告発する！
貴君ら貴官らには証人として、断罪の一票を投じてやってもらいたい。

まだ終わってはおらぬ！

本当に私に票が集まっているか？
もしそうでなければ、断罪されるのは貴君らの方だ。
まずは誰からだ？

放せ！
私には、やらねばならぬ事があるのだ！

>>849凩
長い回文に見えるが句切れが対称型なのでやっている事は単純だ。
その柔軟性を活かして場面を描き込んでいる。

この度の一件の責任は海軍卿である私にある。
ここに居る皆に大変な苦労を掛け、また、助けられた。
深く陳謝する。

ス五六機関は解体する事になるだろう。
望む者には相応しい椅子を用意しよう。
山城大佐・雁野中佐にも今以上の地位を約束する。
鬼らの今後の在り方も考える。

貴君らは良くやってくれた。
論功行賞は集計が完了次第行う。
それまで歓談でもしていてくれ。