【神】 因幡 理恵[正面には鏡があるが、曇っていて二人の姿は影にしかならない。もう少し湯気が逃げていけば、曇りも解消されるかもしれないが。 ゆるみかけたバスタオルを直し、ぬるりとした白い液をタオルでこする。清潔な香りが、湯気と共に立ち昇った。 泡立てながらフウタの広い背中を見る。滑らかな肌は、夏よりもその色が薄い。 体のあちこちに痕を残したつもりだったが、背中はつるりときれいなものだ。情事の体制を考えれば当たり前のことではある。 ふとした思い付きで泡のついた指先を伸ばす。背骨をくすぐるようになぞり上げると、その背に屈みこんで、吸い付いた。 刻まれた紅に満足気に鼻を鳴らしてから、ようやくフウタの背中をこすり始めた。] フウター痒いとこないかー? [広い背中にごしごしと泡を塗り広げてながら、時折力加減などを尋ねる。つけたばかりの痕はあっという間に泡に隠れ、再び唇を落とそうとしたが、泡にまみれていては無理だと気が付いた。惜しいことをした。 背中はどこも白く隠れている。唯一泡のついていない場所は耳ぐらいだ。 ならそこでもいいかと唇を寄せたが、うまく吸い付けない。ならいいかと甘く噛んでから、そちらも丁寧に洗っていった。ここはタオルじゃまずいか、と繊細な耳を持つ理恵は考えると、指に泡を乗せて慎重に耳をなぞる。 すっかり綺麗にし終えると、「流すぞー」声をかけて泡を流した。 すっきりした背中に満足気に頷くと、もうひとつ、ここぞとばかりに痕をつけた。並んだ紅に再び頷いて、とことことフウタの前に回る。] (G6) 2020/12/29(Tue) 16:06:07 |