【神】 おかえり 御山洗>>G43 鬼走/三日目夜 河原 首を横に振る。これは、こればかりは。 思い出を壊しているのは自分で、それはみんなにも自分にも背くことだから。 もっと清和のような思い切りがあれば、或いは宵闇のような切り替えがあれば。 そう決断しきってしまうには、かつての少年も今の青年も、至らなさすぎた。 「雅也さんが? ……意外だな、と、なんて言ったらいいか、わからないけれど。 ……俺はね、ここに来なければこのまま忘れられてたんじゃないかと思うんです。 それなのに足を踏み入れてしまったのは、俺の責任で、俺がバカだからだ」 このまま有耶無耶にしてしまえば、きっともう10年もしたら何事もなく軌道に乗れた。 只々の普通の人生に、この場所の思い出を遠いものにしていられた。 なのに。御山洗は、帰ってきてしまった。懐かしくて、優しい場所に。 「……すみません。でも、少し楽に……なった気がします。ありがとうございました」 (G50) 2021/08/16(Mon) 1:45:04 |