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人狼物語 三日月国

70 【第36回TRPG村】百鬼夜行綺譚


【人】 京職 一葉

>>2 >>3 >>4
継置様返し


「新作の団子を戴きましたゆえ、もうすっかり」

心配気な継置様の言葉に、軽口で返した。が、日射しを除ける風な体で紅葉の幹に背を預けているのは、膝にまだ力が入らないのを誤魔化す為。

流石は、鬼一一門に長く伝わるあやかし除け、だった。
未だ、臓腑が熱を持ちじくじくと脈打つようで。

「お気付きではいらっしゃいませんでしたか?私が極力、屋敷の内には立ち入らないようにしていたのを」

己の全てを知った継置に、自重含みの笑顔で告げる。

今日は殊更に濃厚に炊きしめられていたが、この屋敷全体、あの香の匂いは染みついている。
それでも、外気の通る屋外ならば効力は薄いからと、足を運んでいたのはもっぱら庭ばかり。

  本当は、9年前に初めて訪れた時、
  "此処は私に危険な場所だ"と足が竦んだ。

  それでも足繁く顔を出し続けていたのは。


「全く、継置様は連日のように今日も勝負だとつっかかって来られるし」

そして不安と悲しみに揺れていた百継様の瞳の奥には、日に日に強い意志が宿るようになり。

────私は、それらから目が離せなくなっていたのだ。
(17) Valkyrie 2021/04/24(Sat) 7:34:29