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人狼物語 三日月国

184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨


【人】 略奪者 ラシード

─ 狂騒 ─


[朱に染まり、傾いた陽光が
市街地に長く冷えた影を落とす。
幾度も幾度も其処で繰り返されていた筈の
人々の営みは今や其処には無い。

肉屋の硝子棚を拳で叩き割り、
陳列された生肉を手掴みで引き摺り出し
破片の刺さった己の腕から流れる血液ごと
次から次へと口に押し込んでいく肥った地人。
獣人の店主は路上で犯された末に引き裂かれた女の死体を
鉈で更に細切れにしつつ片っ端から機械に放り込み
ドス黒い腸詰め肉を延々とひり出し続けている。

職人街では、表情を失った刀鍛冶が
焼けた鉄をハンマーで叩く。叩く。叩き続ける。
何度も何度も叩いて叩いて叩き続けて、
そうすれば鉄は粉々になって、
やがて彼は只々金床だけを叩き続けるだけ。
彼にだけは見えているのだろう。
想像を絶するほど美しい光を放つ、渾身の刃が、金床の上に。 ]
 
(45) 2022/11/08(Tue) 2:04:43