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人狼物語 三日月国

184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨


【人】 娼婦 セツナ

 
慣れ親しんだ街は、それは酷い様相だった。
私は向かう。あの宝の元へと。
愛しいあの人が願ったあの力の元へ。
一振りの小太刀を手にしながら、けれど、目立つように走るのではなくて、物陰から物陰へ、隠れるように、逃げるように。
欲望を抑えられなくなった人間は恐ろしい物だ。
ただでさえ、その欲を受け止めて暮らしの糧を得ていた私だが、それだって耐えられないと思う時はあった。
娼婦なんて弱いもの。
換えの効く欲望の吐口の最もたるもの。
首を絞めるのが好きな男がいた。
髪を掴んで手綱のようにして犯すのが好きな男がいた。
前戯もろくにせずに痛がるのを好む男もいた。
締まりが良くなるからと尻を叩く男も。
そんな男たちが欲を曝け出したなら、此方は殺すつもりでないと勝てないだろう。
私の力は決して強くない。
だから、逃げて逃げて、この機会に得る物を得て、そうして飛び出すつもりだったのだ。
飛び出して、あの人の元へ。
 
(80) 2022/11/08(Tue) 22:02:57