>>525 アンタレス
「…………」
言葉が詰まる。
妙に強調された単語が引っかかったが、ここで指摘するのは相手の思うつぼのような気がして憚れた。
「おや……君みずから俺に夢を魅せてくれるということですか?
それならば、早く出世しないといけないな」
夜の蝶たちは皆このように相手を虜にする術を身につけているのだろうか。
末恐ろしいことだと、ヌンキは心のどこかでそう思った。
「さて、では俺はそろそろ失礼させてもらおうかな。
楽しい話をどうもありがとう」
呼び止められなければ、そのまま立ち去っていくだろう。