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【秘】 法の下に イレネオ → 黒眼鏡「いい兆候だ。」 「大胆な改革というものは、凡夫には理解できないものだから。」 貴方を捕らえているからか、自由を奪っているという自負があるのか。 こちらの口の方が、いつもより回っているようだった。なんとなく高揚しているように見えるかもしれない。 それでも左右に揺れる視線を追うことはなく、一意に貴方を見つめている。 「駄目だ。」 「洗い浚い吐いてもらう。」 「お前たちには相応の罰が必要だ。」 貴方の取引未満の言葉に応じる気は当然ない。 自分が作成した資料のコピーを捲り、さてと詰問を始めようとする。 貴方の言葉が続いたのは、捲ったページの先の彼と目が合った時だろうか。 それを聞いても、男は表情を変えず。 目を紙面からあげることもなく、言った。 「ああ。」 「それについては問題ないよ。お前の気にすることでもない。」 「寝不足か。因果応報ってやつか?」 「自分の商品を使えばよかったのに。」 (-14) rik_kr 2023/09/17(Sun) 22:09:40 |
【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノいくらか付き合いのある中で、貴方のことは分からないなりに分かってきたつもりでいた。 それでも、一面でしかなかったのだと当然なことを理解していく。向けられた表情の種類はこの一日だけで随分増えて、それがやっぱり、嫌ではなかった。 そっぽを向かれればまた口の端をきゅうと持ち上げたんだろう。ああ、そういう顔は、案外分かりやすい人なんだ。 助手席で落ち着かない様子でいるのだって、なんだか年下のようで可笑しかった。こちらに気遣いながらも、少ない食事に安心を隠さない様も。無性に可愛らしく見えて、撫でてやりたくなった。 その度に少し口角をあげたのを、貴方は気づいていただろうか。 貴方の住処に案内されれば、まずは物珍しげに見回したんだろう。 遠慮のない視線。もし万一隠したいものがあったのであれば、隠しておくべきだったと思ったかもしれない。 「良いところですね。」 とまれ、初めの感想はその一言。 おそらく、セキュリティの硬さに対して。 (-35) rik_kr 2023/09/17(Sun) 23:22:01 |
【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノどうやら気づかれていたらしい。 拗ねたように、皮肉るように突き付けられた言葉には少し面食らった。 ああ、そうか、自分が見ていたのだ。 今日はやけに貴方の表情が目に入るのも、その瞳の色を花浅葱だと知ったのも、困ったように視線を逸らす軌跡が網膜に残像を刻んだのも、全部自分が見ていたからだったのだ。 そんなことに今更気づいて、少しの間口ごもる。 「……。」 「嫌でしたか。」 やや困ったように問いかけるのはそんなこと。 聞かれた方が困るだろうことを、これは簡単に口にする。 「そうですね。いいことだ、警察に信用があるのは。」 「裏切りたくないものですね。ああ、いただきます。」 酒を飲むと眠りが浅くなるとは言うけれど、少しくらいなら構わないだろう。 貴方の今晩の相手は自分であって酒ではない。酔い潰れるために飲むわけではないのだ。 そう知っているから、貴方の好意に男は甘えた。 「ここに出していいですか。」 その間に持ってきたものをテーブルに出そうとしている。 皿に出すのではなくパックやケースのままで気にしないたちらしい。どうもズボラなところが見て取れた。 (-72) rik_kr 2023/09/18(Mon) 0:24:11 |
【独】 法の下に イレネオ「どうして俺なんです!」 身柄を拘束された男は当然激しく吠え立てた。 それもそうだろう。男は実質正義の徒だ。 男がマフィアと繋がったり取引をしている事実は一切なかった。それは男自身が誰より知っていた。むしろそういうことを嫌悪していて、それで同職に食ってかかったことさえあるくらいなのだ。 硬く、硬く、先鋭化された目的意識。 ノッテファミリーを撃滅する。 悪しき組織を打ち砕き、この国のマフィアを正しい在り方に戻す。それに手足が着いて生きているような男だった。ノッテファミリーは唾棄すべき怨敵である。だからこそ、それがどれだけ賢い手だったとしても、奴らを利用するなんて選択肢にも入らない。ましてや慣れ合おうなんて、これまでは勿論、今後一切思うことはない! (-90) rik_kr 2023/09/18(Mon) 0:48:52 |
【独】 法の下に イレネオ男は口を開いて吠えた。鋭い犬歯がよく見えたことだろう。 けれど警察の対応は冷たいものだった。 イレネオ・デ・マリアは内通の嫌疑をかけられ拘留される。 どのような異論も、一切認められない。 自分の所持しているデータの全てを引き渡す。解析してくれ。 否認させてくれ。誓ってそんな事実はないと弁明させてくれ。 しかし、しかし、しかし。その全ては聞き入れられなかった。 男の誇る正義が、男の敬う法が、男の愛する警察組織そのものが、男を否定したのだ。 (-93) rik_kr 2023/09/18(Mon) 0:50:48 |
【独】 法の下に イレネオこの逮捕は痛かった。 男の精神を揺さぶった。屈辱を与えて傷つけた。 その牢からは、押し殺したような呻きが聞こえるだろう。 それが、今の彼に出来る全てだったから。 (-94) rik_kr 2023/09/18(Mon) 0:51:24 |
イレネオは、牢の中にいる。 (c0) rik_kr 2023/09/18(Mon) 0:52:40 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノそう言われれば、安心したようにゆっくりと瞬きをした。 それから言うことには、 「先輩。」 「眼鏡、外してもいいですか。」 きっと、貴方には意味がわからないだろう。男が署内でこれを外したことはない。 視力について言及することもされることもなかったのだから、単に目が悪いのだろうと認識されているはずだ。なんのことはない、視力矯正の補助器具。そのはずで。 食事が並べられたテーブルの隅を指で叩いて、ここに、と示している。 明後日の方向にいった貴方の意識は、その音で引き戻されるだろうか。 (-136) rik_kr 2023/09/18(Mon) 9:38:30 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡貴方のその、横柄な態度。 いかにも自分は真面目です、という態度。 悪党のくせに、悪人のくせに、それを焦って否定することはなく。それなのに開き直って、俺は真っ当な悪人だと言いたげな態度。 チ、と鋭い舌打ちが空気を裂いた。 目を閉じる貴方の正面で、男は目を眇めていた。 骨ばった手が眼鏡のつるを掴む。かちゃ、と音を立てた。 ペースを握られてはいけない。 それは自分の手元にあるべきものだ。 平常心、を保とうとする。保とうとして、小指の先がテーブルを叩いた。 「入手ルートは。」 さて。 黙秘はさせないと言うばかりに問うていくが、貴方の答えはあるだろうか。 (-144) rik_kr 2023/09/18(Mon) 10:12:31 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡「そんなことは聞いていない。薬で脳まで溶けたか?」 断ち切る言葉にはけんがある。 「お前がしていいのは俺の質問に答えることだけ。」 「許されているのはそれだけだ。判るか? 黒眼鏡。」 明らかに苛立った声音は勿論貴方に煽られたもの。 低く唸るような言葉は勿論貴方が引き出したもの。 貴方が目を開いていたなら見えただろう。 男は人差し指を立て、貴方の眉間に強く突きつけた。 ぎりぎり触れない距離だ。それがきっと、理性の境。 「調子がいいのも大概にしておけよ。」 口を回せと言っておきながら、随分な言い草である。 (-152) rik_kr 2023/09/18(Mon) 10:58:43 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡がたん。 一際大きな音が広くない部屋に響いた。 男が立ち上がった音だ。椅子が揺れて細かに反響した。同時に左の手が貴方の胸ぐらを掴んだ。ぐ、と力を込めて引き寄せれば、眼前に額を突き合わせた形になるか。 燃える瞳が至近に映る。金の瞳。激昂に色濃く、ぎらぎらと炎をちらつかせる瞳だった。 「これだからノッテの奴らは嫌いだ」 「伝統に砂をかける、規則に泥を塗る、法に唾を吐きかける────他人のことなんぞ自分の食い物にしか思っていないんだろう、下衆が!」 食い締めた歯は鋭い。 肉食の獣のようなそれを有為に晒して男は貴方に詰め寄る。 ▽ (-175) rik_kr 2023/09/18(Mon) 14:09:20 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡「ご教示どうもありがとう」 「アレッサンドロ・ルカーニア、お前は現行の、反社会組織取締法によって悪だ。ようやくお前に追いついた。お前が目を向けるべきなのは帳簿じゃない、自分自身の末路だよ」 は、────と、笑う。 勝ち誇っているようにも見えた。単に、激昂の興奮があるだけにも見えた。 「お望みならそうしてやる」 「額で判を、だったか。どうせなら血判にでもしてみるか?」 手は胸ぐらから襟首へ。 貴方が何もしないのであれば、次には顔から机に激突することになるだろう────この、頭に血が上った獣の手によって。 (-176) rik_kr 2023/09/18(Mon) 14:10:18 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ貴方の疑問は最もで、だから男は首を振った。 これは誰にも言ったことがない話。言う必要がなかったから、言ったことがない話だ。 「目はいいんですよ。」 「両目とも、2.0あります。落ちたことはない、だから」 無骨な指がつるの部分にかかった。話を続けながら、ゆっくり外していく。 「だから」 「見えすぎるんですよね。」 「向こうの方に掲示されてる嫌なニュースとか目に入るでしょう。特に署内だと。」 「つい読んでしまって嫌な気分になるので、ぼやかしてるんですよ。」 レンズを上にして、汚れないよう机の上に。 語る視線は落ちていた。そのままテーブルの上を滑って、貴方の手指から上半身を上っていく。 「今はいいので。」 かちり。 ハムを齧る貴方のかんばせに眼差しが合った。 それからまた逸れて、テーブルの上の軽食に落ち着くのだろう。 「俺も食べようかな。それ、美味いですか。」 (-178) rik_kr 2023/09/18(Mon) 14:41:01 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノそれを貴方が言葉にしていたなら、男の口元はまた弧を描いていたはずだ。その表情は自分の欲求を自覚しての苦笑でもあり、やはり言葉にしない肯定でもあるのだろう。 貴方が男を意識しているのと同様、こちらもまた貴方を意識するようになっていた。 だってそうだろう。いちいちそんな顔をされては堪らない。 自分の一言に、一仕草に呼応するように色を変える表情。 時に開かれ、時に閉じられ、時に逸らされる鮮やかな瞳。 男の性質はおおよそ犬に似ていた。 肉食の生き物は、動くものによく反応する。 今だってそう。 貴方の突き出したフォークを、男は受け取らなかった。 代わりに身を乗り出してそちらに迫る。そうしてそのまま、ぱくりと。突き出されたものをそのまま食べてしまった。噛み付く時の微かな衝撃が貴方の手に伝わったかもしれない。 「ん。」 「美味いですね。本当だ。」 そろそろと身体を戻せばそんなふうに言ってのける。 感想は簡潔だが肯定的だ。気に入ったらしい。 (-196) rik_kr 2023/09/18(Mon) 17:05:40 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡この男は曲がりなりにも警官である。 おまけにこの国の男としても大柄で ──その体格でさえ貴方に負けるのが癪だが── 、つまり、人一倍の筋力や体力は当然備えていた。最早何も言うまいと口を結べばぎり、と歯が鳴った。言葉以外も饒舌だ。 黒と金はもう一瞬だけ交差するだろう。そしてそれが最後になる。 ────ダン!! 激しい音を立てて貴方の頭部が落下する。させられる。させられただろうか。 男の思う通りになったのであれば、貴方の顔面はただでは済まないはずだ。けれどこれはそれで飽き足らず、追撃を喰らわそうとするけれど。 (-208) rik_kr 2023/09/18(Mon) 19:42:50 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ美味そうなものが目に入ったら、喰いつくのは当然のこと。 とはいえ、普段からこんなことをするわけではないのも当然のこと。人目がなくて気が緩んでいるか、貴方だからかのどちらかだ。 そのままぽつぽつと話をしながら、軽い夕食を。 仕事の話はあまりしなかった。なるべくリラックスしていてほしいと想える、そのくらいの気遣いは男にだってできた。 貴方の食べたものを追うように食べるのは、自分が平らげてしまわないよう考えてのことだった。そちらの手が止まった頃にじゃあと食べきってしまおうとして、明日の朝食に充ててくれた方がいいと思いとどまる。 「いいんですか。」 これは、癖。 「じゃあ、お先に頂きます。」 これは、あまりないこと。 貴方がいいと言うのをわかっている。だから、返事がある前に受け取った。 (-221) rik_kr 2023/09/18(Mon) 20:56:20 |
【独】 檻の中で イレネオ逮捕から程なくして。 ────足音。 ひとつの牢を訪れる、ひとつの足音がある。 それが自分の元へ向かっていると気づき、男は弾かれたように顔を上げた。 影が立ち止まる。 扉が開けば、見知った顔の刑事がそこにいた。 「イレネオ・デ・マリア」 「牢を出ろ。着いてこい」 釈放か、と問うた声は枯れていた。 殉じると決めた正義から手酷い仕打ちを受けた男は、すっかり憔悴してしまっている。それだけでなく、捧げた想いの分だけ恨みは深かった。 首を振られれば自然溜め息も漏れたろう。それでも情やら未練は捨て切れるものではない。釈明の機会になるならと、結局無言で立ち上がった。 横目に見れば連れ立てに来た男はなんとなく引き攣った顔をしていて、相手も気まずいのだろうと勝手に結論する。 ▽ (-240) rik_kr 2023/09/18(Mon) 22:17:26 |
【独】 檻の中で イレネオだから。 連れられた先の椅子に座る人物を目にした男は、細い瞳を大きく見開いた。 「────ノーノ署長代理……?」 そこに立っていたのはまさに時の人。 ヴェスペッラ警察署長が意識不明で病院に運び込まれてこっち、署長代理として就任したナルチーゾ・ノーノ。反社会組織取締法を成立させたその人だ。 呆ける男に、彼は、にこり。 微笑んで、まずはと謝罪した。そうして、いくつかの説明と申し出をした。 ▽ (-241) rik_kr 2023/09/18(Mon) 22:18:44 |
【独】 檻の中で イレネオ────曰く。 この逮捕は誤認であって、誤認ではない。 必要であったから、せざるを得なかったと。 件の法の施行によって、逮捕者が急増するだろう。 伴って、見回り等の通常業務と取り調べの両立が難しくなるであろう。 故に、一部の刑事に特命を下すとのこと。 『マフィアに自らの罪を吐かせろ』 『方法は問わない。奴らはそれ以上の暴虐を市民に強いてきたのだ』 つまりは特例且つ専門の尋問官である。 君を信じて言っているんだ、と肩を叩かれた男は、再び目を丸くして、 ▽ (-243) rik_kr 2023/09/18(Mon) 22:19:22 |
【独】 檻の中で イレネオ────笑った。 ああ、良かった。警察はやはり自分を見捨ててはいなかった。裏切られてはいなかった。 この献身は届いていた。信じた正義は間違いではなかった。 「はい。」 「はい。……はい、謹んでお受け致します……!」 男は笑っていた。 笑っていた。清々しい、ひとつの曇りもない笑みだった。 (-245) rik_kr 2023/09/18(Mon) 22:20:14 |
イレネオは、牢の中にいる。しかし、自分のいるべきはここではない。 (c5) rik_kr 2023/09/18(Mon) 22:20:42 |
【秘】 檻の中で イレネオ → 黒眼鏡赤。 赤 。赤 。赤 だ。白い光の下でそれはよく光った。流れる血液は天板に雨を降らせるが、なかなか溜まるほどの量はない。 ガツン。 二回。ガタン。 三回。大きな音が鳴る度に無機質な机に赤が散った。 その度に荒い息が貴方の頭上に吐き下ろされた。 落下には自重もかかるとは言え、成人の身体を持ち上げるには難儀する。 三度もすれば限界か。それとも飽きたのか、次に男は貴方の身体を後ろに放ろうとした。 それが叶うなら、貴方は強かに背を打ち付けることになるだろう。貴方の話を、既にこれはまるで聞いていない。 (-258) rik_kr 2023/09/18(Mon) 23:31:10 |
【墓】 檻の中で イレネオこれは男が逮捕されてすぐの話。 取調室で男は散々吼え立てた。そんな事実はないと声を荒げた。 自分はやっていない。 自分がするわけない。 皆が証言するはずだ。 そんなはずはないと。 イレネオ・デ・マリアが、 あの男が、 マフィアと手を組むなんて! その必死さはまるで主に捨てられそうになった犬のようだった。 酷く叱られ遠くに置き去りにされようとする犬の姿に似ていた。 低く唸り、呻き、哀願することさえして見せた。 けれど当然、聞き入れられるはずなどなかった。 結局、男にかけられた嫌疑が晴れることはない。 牢獄に戻された男は、酷く憔悴していたという。 #取調室 (+2) rik_kr 2023/09/19(Tue) 1:00:23 |
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