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![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオある日の警察署。 あなたのデスクに近寄る女の姿がある。 「……リヴィオさあん。」 ゆるり。間延びした声に、周囲の空気が弛緩する。 思えば女の様子がおかしかったのは、あの日1度きり。 あとは変わらぬ気怠さとともに、毎日職務に向き合っていた。 (-281) oO832mk 2023/09/21(Thu) 23:36:34 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ「ニコロさあん、…どおもお」 女は――笑顔だった。 けれどいつもの眼鏡はない。 どんな時でも、女は笑うことだけは得意だった。 「お仕事お疲れ様でえす。」 「…ニコロさん、【A.C.A】だったんですねえ。」 知りませんでしたあ、といつもの間延びした声。 へらりと笑って、革靴の底を鳴らしながら近付いてくる。 (-300) oO832mk 2023/09/22(Fri) 3:00:29 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「ええ?あたしにい?」 「どうかしましたかあ。」 小首をこてん。 ややあって、取り出されたものにわあと表情を輝かせた。 「いーんですかあ?やったあ」 戴けるものは戴く主義だ。 それは嬉しそうにお礼を言って、へらりと笑いかけている。 「あたしい。…あー。」 「あたしの要件はあ……」 「…んー」 本当は、とある人からあなたを『調べる』よう言われここに来た。 用意してきたのは犬のヘアピン。…正確には小さなヘアクリップ。 それと、もうひとつ。 仕込み のされた、銀のヘアピン。いつものように、それを渡すだけでいい。いいの、だけれど。 「…せっかくですからあ」 「ここで食べても、いいですかあ。」 「リヴィオさんも食べましょお。」 「2個、ありますしい。」 そう言うと、自分のデスクから椅子をからころ引き摺って。 ちょこんと座った。返答を待つより前のことである。 (-303) oO832mk 2023/09/22(Fri) 3:23:49 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカダンボールの積まれた部屋の中。夕焼け色に照らされてまどろむ。 子供の頃はよくこうして膝を抱えて眠っていた。 もしお母さんが帰ってきたら、すぐに起きてお出迎えできるように。 そんな女の傍らには、アレッサンドロ・ルカーニアからの預かり物。 ボストンバッグに、スーツケース。 …開けるな、と。 そんな指示すら只管に守り続けるような女だったから、それが開かれることはない。 だから女が、その中身を知ることはないはずだった。 …噂に聞く『情報屋』に会えるのならば、話は違うのだろうけど。 /* お疲れ様です、おさとうかえでです! 上記の通り、黒眼鏡さんよりお預かりしているお荷物の中身を知るのに情報屋さんのお力をお借りしたくてご連絡致しました。 お手数をお掛け致しますが、何卒よろしくお願いしますm(_ _)m (-305) oO832mk 2023/09/22(Fri) 3:42:53 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ椅子を引き摺りながら、頷く姿にまたへらり。 着席すると、紙袋を開いてフォカッチャを取り出す。 ひとつあなたに差し出して、手を合わせた。 「あははー。リヴィオさんてばあ」 口が上手いなあ。でも悪い気は別にしないのだ。 無理して食べなくてもいいですよおとは声掛けて、自分のフォカッチャを少し齧る。 「…やっぱり、人が減ったしわ寄せとか…ですかあ?」 その瞳はぼんやりと、あなたの仕事の跡を見つめた。 ものの1週間ほどで、瞬く間に警察署の人間が逮捕されていった。 警部補に上級警部まで逮捕されて、署内はきっとどこもてんやわんやだ。 (-316) oO832mk 2023/09/22(Fri) 7:50:06 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ「Esattamente. 今、外は大騒ぎですよお」 「知ってますかあ。ニコロさん。」 常と変わらない、気怠げな弛緩した空気で。 常と変わらない、朗らかな微笑みを浮かべながら。 「…あれだけ騒がれますとお」 「立場上、逮捕しないわけにはいかないんですよねえ。」 なんて嘯く。最初からずっとその気だったくせに。 「ニコロさんには、お世話になりましたからあ」 「…胸が痛いですう。わかってもらえますか?」 そう忍ばせた。これだけは、本心だ。 信じてもらえない方が、絶対にいい。 (-323) oO832mk 2023/09/22(Fri) 8:15:04 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ「ええ?それ、聞いちゃいますう?」 からからと、それでも控えめな笑い声。 まるで歌でも歌うように、明るい声音が嘯いた。 「あたしの目的はあ」 「 あなたたち にいなくなってもらうこと、ですよお。」これは、本当。 「だってえ。そうでもしないとお」 「いつかあたしが、逮捕されちゃうかもしれないじゃないですかあ。」 これも、本当。 「ニコロさんが逮捕した、カンターミネ・ヴォーフル。」 「あたしの、幼馴染なんですよお。」 これも、本当。 「――たったそれだけの理由でえ」 「無実のあたしが逮捕されるなんて、おかしいじゃないですかあ。」 これが、嘘。 虚実を織り交ぜ、女はいう。 曰く、正当防衛である、と。 そんな身勝手な女である、と。 …そのために、あなたたち摘発チームを解体するのが目的だった、と。 (-354) oO832mk 2023/09/22(Fri) 12:47:13 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「なるほどお…。」 フォカッチャを口元に寄せたまま、静かに感心の声。 …みんなが戻ってくる日は、来るだろうか。 そのとき、自分の居場所はもうないだろうけど。 「…【A.C.A】って、警察の人…ですよねえ。」 「どうしてこんなに、警察のことも摘発していくんでしょお」 きっとその殆どが冤罪だろうに。 そう、ぽつりと言ちる。 まるで、自分のことじゃないみたいに。 (-359) oO832mk 2023/09/22(Fri) 13:21:26 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ同じ景色に、知らない誰か。 それをすんなりと受け入れたのは、これが夢だと分かったから。 記された文字を見つめる。 なんだこれは。まさか開けると思っていたのか。 浮かんだのはそんな憤り。子供みたいに、少し拗ねる。 それでもそんなものを、その当人に預けたのだ。 もしかしたら逆に、信頼の証と受け止めるべきかもしれない。 そう浮かんだところでつい口元を歪めた。 信頼されていると、思いたいんだ。あたしは。 (-377) oO832mk 2023/09/22(Fri) 16:04:23 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ「…開けちゃ、だめですう。」 女が悩むことはなかった。 「でも、あなたは」 「中身を、知ってるんですかあ」 そうして無垢な瞳で問いかける。 女はほんとうのことを知りたかった。 この荷物がそれを、教えてくれるかはわからなかったけど。 (-378) oO832mk 2023/09/22(Fri) 16:05:57 |
![]() | 【念】 傷入りのネイル ダニエラ煉瓦道の一角。人気のケーキ屋。この店のことは知っている。 だけど、ダニエラ・エーコのルーチンには存在しない店だった。 だから、立ち寄ったことはない。 「つめ…?」 小首を傾げ。両手は猫を抱いている。 今はお見せすることが出来ないが、 左手小指のエナメルは、傷が入って、剥がしもされずにそのまま。 けれどまあ、返答としては「ネイルなら少ししてまあす。」とそんなものだろう。 問題はどこから、その話を聞いたのかであるが。 猫を差し出す。 手放しても、数秒程はその体温が手の平に残っていた。 (!6) oO832mk 2023/09/22(Fri) 16:24:18 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェきょと、と丸くした目は、確かに動揺からきたものだった。 だけど本当にひとつの瞬きの間に、口を歪めて笑っている。 「そおですねえ。」 あなたの心地と相反して、弛緩した声。 間延びして。気怠げで。――そんな、いつも通りの。 「もしそうだったら、1番嫌だから。」 「…あんまり知られたくないこと、知られてたんですよお。ニーノくんにはあ。」 それが何なのかどころか、そんな理由だったことすらも知らぬまま、彼は牢獄へと押し込まれてしまったわけだが。 「悪いことしたなあって、思いますよお。」 「あれは、あたしの不手際でしたしい。」 女は何ひとつ、嘘をついていない。 ただその態度に何ひとつとして反省も後悔も見えないだけ。 笑って自分の想いを隠すのは、得意だったから。 (-396) oO832mk 2023/09/22(Fri) 18:03:43 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 情報屋 エリカあなたの声以外はひとつとして音のしない、 それは、本当に静かな時間だった。 最初はただ黙って聞いていたに過ぎなかった女だったが、 徐々にその口を引き結び、息を呑み、目を伏して。 ――狭い車内と、遠く夕陽の海を望む。 その後ろ頭と流れる景色を、瞼の裏に浮かべていた。 (-406) oO832mk 2023/09/22(Fri) 19:08:06 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 情報屋 エリカ目を、開く。 静かな時間は続いていた。 無音で首を振る。…そうしてようやく、口を開いた。 「少し、悩んだんですけどお」 「読まないことにしましたあ。」 「読むのはあ」 「 夢から覚めてから にしますう。」もったいぶって、そういって。 へにゃり、と、頬を緩めて笑う。 「そおしたらあ」 「言い訳なんて、しようがないと思うのでえ。」 「それで、ちゃあんと、向き合って」 「…そのあと、考えよおと思いますう。」 続いたのは、暢気にゆらりと、間延びした声。 「ありがとおございましたあ」と、向き合うきっかけをくれた、あなたへ。 (-407) oO832mk 2023/09/22(Fri) 19:08:58 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ「そおなんですかあ。」 へらり。感想は、それだけ。 「ふふー。でも、嬉しいですねえ。」 「ちゃあんと仲間だって、思っててくれたんですねえ。」 一緒に街を見回って、休み時間は笑いあって。 あなたの作ったお菓子を食べて、また作ってくださあいなんておねだりをする。 そんな日々。 その日々は決して、嘘だけではなかったけれど。 嘘だとしていた方が、あなたにもきっと都合がいいはずだと女は信じていた。 「…んー。聞いちゃいますかあ?それえ」 「でもその答えを、聞いちゃったらあ」 「アリーチェさんも」 「 ニーノくんとおんなじとこ に」「連れてかれるかもって思いませえん?」 無垢そうな瞳で、恐ろしいことをいう。 そうしてまた何もなかったみたいににこりと笑った。 それだけは教えられないのだ。この女は。 だからそんな言い方で、あなたのことを牽制している。 (-412) oO832mk 2023/09/22(Fri) 19:37:06 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「あはー。なるほどお。」 頷く。暢気なものだ。 またフォカッチャを、ひとつ齧る。 「でもお、それじゃあー」 「もし。…もし、お話を聞けたとしてですよお?」 「 そういうの じゃなくって、ほんとおに悪うい人だったらあ」「リヴィオさんは、どおしますかあ?」 「…やっぱり、逮捕、しちゃいますう?」 こてり、と。首を傾げて、ミントブルーがあなたを窺う。 流れるのは、ただの雑談の延長だと嘯くような、日常的で、穏やかな空気。 (-414) oO832mk 2023/09/22(Fri) 19:59:24 |
![]() | 【念】 傷入りのネイル ダニエラ運ばれていく猫に、指先だけで手を振って。 その頃には手の平に残っていた柔らかさも温かさも消えている。 「…あー。色男さあん。」 ブーケを受け取る。…浮かぶ顔は2つくらいあった。 しかしタイミング的に、片方に絞ることもできそうだ。 …そうやってだれかの顔を浮かべながら花束を見つめるその瞳には、僅かな寂寥が乗った。 「色男さんはあ、このお店、よく来るんですかあ?」 おもむろに顔を上げた女は、気怠そうに間延びした声でそう訊ねる。 ブーゲンビリアは胸の前。香り立つことなく、ただ鮮やかに。 (!8) oO832mk 2023/09/22(Fri) 20:38:41 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「…あたし、ですかあ。」 問い返され、女は僅かに眉を下げる。 口元の笑みは変わらぬまま。少し、困った様子。 「リヴィオさんみたいに、人ができてないのでえ」 「捕まっちゃえって、思いますねえ」 「…だって、 許せません からあ。」ニーノくん。イレネオさん。 テオドロさん。ニコロさん。ヴィンセンツィオさん。 …実際に悪事を働いていたとされる上級警部を差し引いても、 きっと罪のない仲間たちが4人も牢へと送られた。 「私刑…って言っちゃえば、そおかもしれませんけどお」 「悪いことした人を裁くために、法ってあるんじゃないですかあ」 そんな理想を、語る。許されざる悪人が捕まって。そして。 「…それにい、もしかしたらあ」 「その人に逮捕された人も、釈放とかされるかもしれませんしい?」 罪なき人が元の生活に戻る、大団円。 本当にそうなったら困るのは自分だというのに。 どこかで口に出して消化してしまいたかった。…これも、紛れのない本心。 「…なあんて。流石に出来すぎますよ、ねえー。」 けらけらと、女は自分の言葉を控えめに笑い飛ばす。 どんなときでも本心を隠して笑えるのは、女の特技だった。 (-429) oO832mk 2023/09/22(Fri) 21:10:31 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ―――ぱちり。 積まれたダンボール。窓の外の夕焼け空。 幾度かの瞬きを繰り返しここが現実であると悟った女は、傍らにある2つの鞄を見た。 立ち上がる。スーツケースを、部屋の中央へ。 一瞬躊躇いはするも本当に一瞬だけのことで、意を決してそれを開いた。 中身をひとつひとつ見つめる。 夢と同じであることの確認を取るだろうか。 そして。 カサ、と最後に手にしたもの。 それを、ゆっくりと、開いた。 (-447) oO832mk 2023/09/22(Fri) 21:58:29 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェ「……アリーチェさん。」 「振り込め詐欺とか、気をつけた方がいいですよお?」 信じようとしてくれる人間をただただ茶化すように。 いつかきっと口にした言葉。そのときの印象通りのあなたへ。 竦む身体でそれでもなお、甘えた言葉をいうあなたをミントブルーが映している。 笑うことしかできないから、ただただ笑みを浮かべたまま。 ……純粋で、綺麗なひと。 「あー…。それなら言い方を変えましょおかあ。」 「世の中知らない方がいいこともある、…ってことですう。」 ゆらりと女は左手を持ち上げる。 小指にはマリーゴールドカラーのエナメル。 しかし少しだけ欠けていて、塗り直しもされず少し不恰好。 そんな左手であなたの髪に触れようとする。 くすりとやっぱり、変わらない笑顔を乗せたまま。 「…せっかくのきれいな髪、鉄格子の向こうでぼろぼろになるの、あたし、見たくないなあ」 (-450) oO832mk 2023/09/22(Fri) 22:13:48 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロミントブルーの瞳を細め。 女は乱視だったから、それでもあなたの顔はぼやけていた。 「――もちろん」 にっこりと笑う。 まるでピザを奢られた時と同じように。 「あたしは、やられる前にやっている…」 「ただ、それだけですからあ」 「同じだってことは、もちろん承知の上ですよお。」 分かっていて、己のためにそれを行い、振り翳す。 それを人々は 悪人 そう呼ばれ思われ恨まれることを女は望む。 中途半端に信じたままより、そっちの方が絶対に幸福だと信じているから。 「まあ…それじゃあ。」 「ご理解頂けたよおですし、そろそろ行きましょおかあ」 「…ニコロさん?」 そういう女の手の平の中には、鈍い銀色の手錠が煌めいていた。 (-452) oO832mk 2023/09/22(Fri) 22:27:25 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 月桂樹の花 ニコロ「……さあ、どおでしょお。」 「あたしは、嘘つきですからあ。」 …笑顔だけは、崩さずそのまま。 罵倒される心づもりまでは、できていたのに。 あなたに近寄り、手が伸びる。 マリーゴールドの色をしたエナメルが、この日も両手の小指に咲いていた。 そこに握られた、手錠が、 ―――かしゃん。 いつかあなたにリクエストした『子守歌』。 あれはカンターミネ・ヴォーフルが、眠る女に歌って聴かせた曲だった。 …女の胸にはあの歌声も、あの日のハーモニカの音色も未だに残り響いている。 そのどちらもをこの日同時に失ったわけだが。 嘆く資格なんて、当然女に残っているはずもないのであった。 そうして、女はあなたを逮捕した。 「後悔するなよ」、その言葉には、何も返事を返せなかった。 (-468) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:34:54 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → マスター エリカ開いた紙に書かれたものを。 読んで、女は 「…あー。」 「なるほどお。」 …これは、 「ずっっるいなあ……。」 ――さて、どう向き合おうか。 心だけは、もうとっくの昔に決まっていたけれど。 (-470) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:39:41 |
![]() | 【影】 傷入りのネイル ダニエラ――あれから。 目を覚ました女がまず行ったのは、ここ数日1度も開けようとしなかったこの『預かり物』を開けることだった。 スーツケースを部屋中央まで引き摺って開く。 しばしがさごそと何らかを行う物音がして、最後にぱたりと閉じられた。 「…さてと。」 とりあえず、ひとつ決めたことがある。 やっぱり1杯くらいで許してやるのは絶対にやめてやると、そんなことだった。 (&5) oO832mk 2023/09/22(Fri) 23:45:15 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → pasticciona アリーチェそうやって笑い合ったあの日、こうなるなんて思っていなかったのは女もおなじ。 あたたかな日差しの下でうとうととまどろむような、本当に幸福な日々だった。 同じ言葉を違えることなく言えるのだから、女にとっても些細なものではなかったのかもしれない。 「そおですかあ。よかったですねえ。」 それを他人事のように切り捨てて、そうやってここまで歩いてきた。 これまでの幸せな日々を削って。全部嘘だったと騙って。 それだというのにまだあなたは、やさしい、甘いことをいう。 触れる髪すら震わせながら。それが女は、 とても█しい 。「――そう思うんならあ」 「もお、この話はやめにしましょうかあ。」 「ただでさえあたしの秘密を1個知っちゃってるんですしい」 歌うように間延びした明るい声。 するりと指先をあなたから離すと、かつ、かつ、革靴の靴底を鳴らして2歩、あなたから離れた。 「…誰にもあたしのこと、話さないでくれるならあ」 「見逃してあげましょお」 「大サービスですよお、アリーチェさん。」 女は、嘘つきだ。見逃してなんかやるつもりはない。 だけどこう言って裏切れば、自分を今度こそ恨んでくれるんじゃないだろうか。 前の2人では失敗したから、今度こそ 。…そんな思いが確かに、女の胸の中にはあった。 (-486) oO832mk 2023/09/23(Sat) 0:38:45 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ革靴の底が鳴る。こつ、こつ。 牢獄を繋ぐ通路。…目当ての場所まで、真っ直ぐに。 「…ミネ」 とある牢獄の手前で立ち止まった女は、底に収容されたあなたへ声をかける。 今は、眼鏡を外していた。 不安げで悲しげな面持ちが、そうっと檻の中を覗く。 (-492) oO832mk 2023/09/23(Sat) 0:56:11 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 歌い、歌わせた カンターミネ乱視の視界に鮮やかに灯るライムグリーン。 女には 受け止める 意気地がなかった。…そんなあなたの様子や顔色をだ。 「…」 いつも通り、――ううん、ちょっと違う。 ただそれだけなのに胸が痛い。 そうっと手を持ち上げる格子に触れて。 指先には、ぞくりとするほどの冷たさだけが残った。 「…あはー。そおだよねえ。」 「ミネはちょおっと、盗聴とかそゆことしてただけでえ。」 …頬を緩めて、へにゃりと笑う。 この特技はきっと、こんな時にこそ役立てるべきものだった。 それにしても発言は身内贔屓が過ぎるが。 「……あたしは。」 「だいじょおぶ、元気だよお。」 えへへと笑って、左手を翳す。 少し傷が入ってしまっても剥がさずにいるこの小指のネイルは、あの日あなたに塗ってもらったものだ。 …だから、大丈夫。ダニエラ・エーコは、まだ頑張れる。 (-531) oO832mk 2023/09/23(Sat) 4:45:17 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → 無敵の リヴィオ「…そおですねえ」 こんな話題のお供でも、フォカッチャはすぐに減る。 ダニエラ・エーコという巡査の、1番正しい挙動をなぞる。 「来るといいなあ、そんな未来」 来てはいけない、そんな未来は。 普段と遜色なく女は笑う。 こうなる前の、普段と。 温かい日差しの中で、まどろむようだったあの日々と。 「あ、そおだ。リヴィオさん。」 フォカッチャもあと欠片と差し掛かったところ。 お口直しと水を1口、口の内を、潤して。 「…犬と猫」 「前、 最近は 猫が好きって、言ってましたけどお」「今は、どおです?」 「今も猫の方が、好きでしょおかあ?」 ことん。ボトルを置いて、小首を傾げる。 (-538) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:29:12 |
![]() | 【秘】 傷入りのネイル ダニエラ → favorire アリーチェ――へらり。 …やっぱりそれは、いつも通りの緩い笑みで。 「Certamente.」 「…ありがとおございますう、アリーチェさん。」 …ああ。信じちゃった。 本当に、純粋で――綺麗なひと。 ひらりと、離れた足そのまま手を振った。 「じゃーー」 「これまで通り、仲良くしましょおねえ。」 かつ、かつ。靴底を鳴らし、離れていく。 こうする度に、浮かぶ言葉が胸を刺すけれど。 その言葉だけは口にしてはいけないから、胸の中で何度も押し潰した。 (-540) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:38:55 |
![]() | 【念】 傷入りのネイル ダニエラへらりと緩い笑みで頷く。 「えー、それじゃあ」 「看板のティラミスを――」 ダニエラ巡査は、そう笑って。 この日ホテルに持ち帰ったのは、ブーゲンビリアの花束と、ティラミスがひとつ。 (!10) oO832mk 2023/09/23(Sat) 6:42:33 |
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