(a3) 2020/09/12(Sat) 14:37:11
―― むかしむかしのおもいで ――
[お菊、お菊、可愛い私の巫女。
遠く昔、まだ私の神の力がもっと強かった頃。
この里に私の神社があった頃。
お前は甲斐甲斐しく私に尽くしてくれたね。
時に星を詠み、時に雨を乞い、時に美しい祝詞を捧ぐ。
でも、そんなお前とも最期の時だ。
人間の生というのはなんと短いものだろうね。
最期だというのに――、
ああ、とても幸せそうな顔でお前は笑う]
大丈夫だよ、お菊。私の可愛い子。
眠りにつくまでそばにいよう。
[最期のその身に寄り添い頭を撫でよう。
お菊の霊力なら私の姿もよく見えように]
……――――、うん……?
今、なんと言ったかな?
[今わの際のお菊が何か言った気がしたが。
よく聞こえずに首を傾げる。
もう口を動かす事すらままならぬのだろう。
せめてその動かぬ指先に手を触れよう。
薄っすらと開く瞳に己の姿を映そう。
そうして、次の言葉は聞き洩らす事がないように]
……ふふっ、お菊は心配性だな。
[よりにもよって、己ではなく神の心配とは!
本当に面白い娘だと思った。
だからこその、神に仕える巫女なのだとも]
[だからこそ、
だからこそ、
愛おしく、別れが惜しいと強く思った。
他の人間への普遍の庇護と慈愛とはまた違う。
”それ”がなんの想いか、よく分からなかったが]
[花を咲かせましょうと、お菊は言った。
黄色くて愛らしい花を。
自分の名前と同じ可憐な花を。
私の周りに咲かせてくれるのだと言うのだ。
きゅっとお菊の手を握り、最期の別れを]
ありがとう、お菊。お前の事は忘れないよ。
輪廻が巡ればまた会う日も来るかもしれない。
姿形が変わろうと、
私はお前の魂の輝きを覚えているよ。
そうしてお前をきっと見守り続けていよう。
[いつか巡り合うその時まで、しばしの別れ。
私は変わらずここにいよう。
お前が咲かせた野菊と共に――。*]
[大の男がボクの目の前で膝を折り
旋毛を見せる。
光景だけでゾクゾクと背筋が震えてしまう。]
……ンッ、……クク、……良いぞ……
[温かくヌルヌルした擬似的な粘膜が
指の一本一本に這わされれば
創造主は恍惚と目を細め、被造物を褒める。]
そう……はぁ、指と指の間も、丁寧にだ……
ああ、あぁ、良い子……ん、は、ぁぅ……
[こうされるのは、存外、善いものだと知った。]
クハハ、ボクも可愛がってやろう……そら、
[新たな発見をしながら――、
甘く漏れてしまう吐息や
独りでに踊ってしまう指先を誤魔化すように
彼の口腔の中で指を動かし、舌に擦り付けた。
彼はボディにも学習機能がついている。
快楽として処理されるようになるまで
どれ程かかるかわからぬものだが]
ハァ……どうだ、嬉しいか?
[小さな足先全てを捻じ込んで仕舞えば
足趾をバラバラと動かし
思うがままに彼の口を犯した。
返事ができぬと知りながらの質問は
我ながら意地が悪い。]
[無理やりに動かすから
上下の硬い歯列に指が触れる。
ボクの骨など軽く砕けてしまう
エナメル以上の硬度の歯たち。
けれど牙を剥かれることはない。
少なくとも、自我の芽生えたての今は。
一層、ゾクゾクと震えが走って]
| [何度も確認するみたいに ちらちらアタシを見るものだから 思わず、ぷっと噴き出して]
あんた以外に誰がいるのよ。
[そう、真ん丸お目目が見えやすいように 前髪を優しく梳いたでしょう。 お店の子たったひとりだけを 連れてくなんて無理だし 友達と呼べる人もいないし 恋人だって、いない。
今、たった二人で孤独を分け合える あなたくらいしか、一緒に行きたい人はいないの。] (49) 2020/09/12(Sat) 23:04:24 |
[…………いや、言えたら良かったんだけどさ。
笑われたら、すごい凹むじゃん。
]
| [それから、前髪を梳いた指を ぎこちない笑みの浮かんだ頬へ >>41 する、と滑らせる。] 約束よ。 [約束を破ってるのはアタシのくせに。 暁天に温もりを分かつだけの 名前のない関係の由人を繋ぎ止めて、 恋人ぶってみせてる。] (50) 2020/09/12(Sat) 23:05:27 |
|
あのね、調べたんだけど…… 空港からこの、……読めない、何コレ? のぼるべつ?なんか、温泉があるんだって。 ここ。このホテル! 色んな種類のお湯があって面白そう。
[お誘いしたからには、って 調べてはガイドブックを広げて 食事の合間にもお話したかしら。 ホテルはどこにしよう、とか 観光するなら何処がいいか……とか。
アタシばっかりはしゃいでるのかなって 最初こそ不安だったんだけど、 本棚に新しいガイドブック見つけたりすれば いつものあの仏頂面の裏の感情を知って 思わずにっこりしちゃうのね。
ああ、良かった。 この人も楽しみにしてくれてたんだ、って。]
(51) 2020/09/12(Sat) 23:05:51 |
| [オクラや胡瓜の時期が終わって 栗ご飯の美味しい季節。 ある日の食卓は相変わらず美味しかったのに 何だか、由人の様子がおかしかった >>43 いつも以上に表情がない、というか 由人の仮面を、何かが被ってる感じ。] ……この里芋とイカの煮物、 なんかおばあちゃんちで食べた感じ。 アタシ、中学で両親に勘当されてから ちょっとだけおばあちゃんちで暮らしてたの。 ……懐かしいわ。 [珍しく、料理にポジティブめなこと(当社比) 言ったりしたけど、どうだったかしら。 ああ、これは何かおかしい、って 気が付いたのはラジオが終わった辺り >>44] (52) 2020/09/12(Sat) 23:06:19 |
| ……眠れないの? [問いかけるより先に出た答えに アタシは少し眉を顰めるでしょう。 そんなに、寂しいことがあったの? 話を聞いてあげるのは出来るけど この口下手君に果たしてそれが有効かどうか。 居候を初めた当初に思ったよりも 由人は自分の殻に籠りやすい性質みたいで ……結局、語るより、共に居てあげた方が 彼の心は癒されるんじゃないか、って。] (53) 2020/09/12(Sat) 23:07:11 |
|
一緒に寝るだけじゃ、ダメなのかしら。
[じっと由人の目を覗き込んで アタシは確かめるように尋ねたの。 この意味が分からない程、子供じゃないでしょう。]*
(54) 2020/09/12(Sat) 23:07:43 |
もっと、近くに感じたら……安心出来る?
[親指の腹でそっと由人の唇をなぞりながら
アタシはまた質問を重ねる。
恋人でもない人とキスするのは嫌って人
結構多いから、そのつもりで。
唇を重ねてもいいなら
孤独を分かつ者同士、おっかなびっくり
触れるだけのキスをするの。
唇の形が分かったなら、もう少し深く。
温もりを確かめるように
舌先同士を擦り合わせて。
ダメ、と言われたならそれはそれ。
いつも通りハグをしながら
狭いベッドで眠りにつくでしょう。]
[ 続けられた問いかけに揺れる。
いつだって触れられるのは、
体と髪だけだったのに。
親指が唇をなぞる。
ぞく、として、どくん、と打って。
そんな雰囲気になったことは
今までなかったし、彼がどっちなのか、
そんなことすら知らないのだとわかる。
その熱を識りたいと思う自分と
識るのが怖いと思う自分がいて
ただ、おずおずと重なった唇の
柔らかさは、とても好きだった。
絡んだ舌先の甘さも、同じ。
微かに歯磨き粉のミントが抜ける。]
…ま、さ はる───、
[ 知ってはいたけれど、一度も
口にしたことのなかった本名を
その震える声に乗せる。
見上げた瞳に、灯るのは何色なのだろう。]
[ 共に星を詠み、雨を乞い
あなた様の祝詞を皆へと伝え。
命尽きた後はこの地を護る人柱として。
わたくしは正しくあなた様の巫女でした。
強すぎた霊力は人には手に余るもの。
神のものは神へ返さなくてはなりません。
わたくしの命は 神のために。
この日がやってくることは
ずっと前から決まっていました。
だから何も怖くはありません。
霊薬を含み、生命が還ることを感じながら
わたくしは幸せを告げるのです。 ]
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