148 霧の夜、惑え酒場のタランテラ
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[命もない、魔法も使えない一人の子供が、
目的を果たすためには、ここに居る他なかった。
あれから5年ほど経つ、時が経てば経つほど、
運命的な再会を果たす可能性は低くなる。
正直、焦っている。
でも僕はこの店に運よく相手が来ることを願い、
待ち続ける以外に出来ることはない。
会いたいだけなら、探しに行けばいい。
世界中を探すのは簡単な事ではないけれど、
ただここで待っているよりは、まだ希望がある。
でも厳密に言うと、会う事が目的ではない。
僕が本当に果たしたいのは―――――……。]
[僕だって気付いている。
一寸先は闇。未来はどう転ぶか分からない。
問題の先延ばしをしているだけかもしれない。
運命を変えたはいいが、より悲惨な末路を辿るかもしれない。
知ってしまったからこそ、悲劇が生まれるかもしれない。
占い自体は当たっているのに、
それを伝えることで未来の展開にずれが生じて、
占いが外れてしまったような形になるかもしれない。]
| [ 質問を返されれば顎に指先を当てて 軽く思案する。 彼の気がかりに気づくわけもなく。
] どうかな。僕もエスパーじゃないからね。 君が小さくないと思うならそれが正解だ。 [ 話がぶれぬようにその前提だけはしっかりと告げる。 物事の大小を決めていいのは当事者のみだと 当たり前だとしても、案外忘れがちな事だから。] (21) 2022/05/27(Fri) 8:16:06 |
|
ゴーストと聞いて惹かれる人は そのほとんどは人を失う痛みを知っている。
消えないと知ってもなお、消そうともがく。
死者に逢おうと願う人も 死者への弔いで自死を願う人も
形は違えどその根幹は同じものだ。
(22) 2022/05/27(Fri) 8:19:47 |
|
誰かに逢いたい、と。
君も思っていたりするのかな? (23) 2022/05/27(Fri) 8:20:57 |
| (24) 2022/05/27(Fri) 8:31:14 |
| [ 国を蝕む脅威は過ぎ去った。 隣国は国力を失い、平和の再建を目指し始め メルヴェイユは国の為に命を懸けた 小さなW英雄 クロエWに栄誉を与え この国の守り神だと盛大に祭り上げた。 元は落ちこぼれた魔法使いという話が 大衆の心を強く惹き付けたのだろう。 クロエの努力は大きな美談として語られ 師をその手で殺し、止めた勇姿は まさに勇者だと讃えられた。 しかし師を殺し、国を救った少女は 祭壇の上で表情を曇らせていた。] (25) 2022/05/27(Fri) 8:32:10 |
|
[ 人殺しはどこまでいこうと人殺しでしかない。
国を守るために命を懸けた本当の英雄は 自分ではないのに。
最愛の師の屍の上でW英雄Wにされるなんて
そんな重圧に耐えられるわけがない。] (26) 2022/05/27(Fri) 8:32:56 |
| [ W英雄Wは自分が建てた師の墓の前で 大粒の涙を零す。 「死にたい。」 「殺して。」
青年の霊が在る丘の上 W英雄Wは懇願するように崩れ落ちた。 何日も、何日も、 やつれ細った身体をひきずり 今にも消え入りそうな声で、何度も。] (27) 2022/05/27(Fri) 8:34:18 |
| [ 見兼ねた青年はその手を伸ばす。 しかし無慈悲にもその手はクロエの身体を すりぬけ、青年の想いと共に空を切る。 自分にはもう、触れる資格もない。 そう突きつけられているような錯覚さえ覚えた。
やがて衰弱の果てに墓の前で倒れたW英雄Wに 青年が出来ることは何も無く。 死にゆく最愛の弟子をただ人知れず 涙ながらに看取ることしかできなかった。] (28) 2022/05/27(Fri) 8:37:36 |
|
[ 赦してほしいとは言わない。
ただ最愛の弟子を守ろうとしただけのこと。 しかしそれも結局彼女を追い詰めただけ。
何が正しかったのか。 青年にはもう、何も分からない。
もう二度と この心の痛みは、消えない。] (29) 2022/05/27(Fri) 8:38:09 |
|
これが、歴史には残らない
V.i.Mの辿った、全てだ。
(30) 2022/05/27(Fri) 8:38:50 |
| W ctim of the erveille" (31) 2022/05/27(Fri) 8:40:13 |
| (32) 2022/05/27(Fri) 8:41:51 |
―
回想:僕たちの船が沈んだ理由
―
[ウルティマ・トゥーレへと向かう途中に、
僕たちは救援信号を出している船を発見した。
近づいて双眼鏡を覗けば、
船の甲板にがりがりに瘦せ細って、
最早服とは言えないぼろぼろの布を纏った青年が、
膝を抱えているのが見えた。
勿論、僕たちは救助に向かった。
父さんをはじめとした乗組員たちが船を移り、
青年に気をとられている隙に、
僕たちの船に待機していた賊が侵入した。]
[初めに人質に取られたのは、僕より幼い乗客の少女。
そして少女を盾にして、人質は増えていった。
当然、僕もその中に含まれた。
「私たちはどうなってもいい。
どうか乗客の命だけは助けて欲しい」
最後まで懇願する父を無視して、
下卑た笑みを浮かべながら、父の首を撥ねる光景を、
僕の瞳はしっかりと映した。
それを皮切りに、大人の男性は乗組員・乗客を問わず、
一人残らず命を刈られた。
僕はもうこの時点で、
後生だからいっそ今すぐ僕も殺して欲しいと思ったよ。
けれど、地獄の宴は終わらなかった。]
[次に狙われたのは女性。
「クルーの皆さんが噂しているのを聞いたの。
貴方がとってもお料理上手だって。
プロのお料理も良いけれど、
貴方の作った料理も食べてみたいわ」
どこかで僕の境遇を知って、
優しく接してくれた乗客の奥さんが……。
「私は途中で下船して、恋人の元へ行くの。
二人暮らしが安定したら、結婚するわ。
ハネムーンで、再会できると良いわね」
幸せを約束されていた筈の、乗客のお姉さんが……。]
[他にも船に乗っていた花は一輪残らず、
海賊どもに踏み荒らされた。
奴らが何をしたのか、子供には分からない。
彼女たちが何をされたのか、子供には分からない。
でも、死んだ方がマシな事をされているだろうことは、
分かってしまった……。]
[こんな所に最高にイイ女など居ようものなら、
どんな酷い目に遭ったことか、子供の僕にも知れたこと。
既にこの世に存在しないものを盗むことは出来ない。
だから僕は心の底から、
母さんが生きていなくて良かったなどと、
罰当たりなこと思ったんだ。]
[希望と愛を乗せていた船から、
幸福は残らず奪われた。
最後に僕たちの船は油を撒かれて火をつけられ、
夕日みたいに沈んでいった。
僕たち女子供は、そのまま海賊のアジトへ拉致された。
最早暴れて抵抗する元気を持つ者も、
泣き叫ぶ元気のある者もいなかった。
アジトには他にも何処かで僕たちのように
拉致されてきたのであろう、
女性や子供たちが沢山いた。]
[そして今度は、僕たちを奴隷として売るために、
船で奴隷市場のある場所へと移動する。
不衛生な船室には、絶望に塗れた子供たちが、
ぎゅうぎゅうに犇めき合っていた。
一日に一度、魚に餌をやるように、
パンくずが僕たちの押し込められた
船室にばら撒かれる。
それをわれ先にと、奪い合いながら貪った。
最早、人としてまともに生きているとは、
到底言えない有様だった。]
[いつしか狭い船室内で、しきりに咳をする子供が出てきた。
人数はどんどん増えていき、死者も出始める。
海賊は子供がこと切れているのを確認すると、
面倒くさそうに船室の外へ運んでいった。
まともに葬ってくれるような連中じゃない。
船外へと子供たちの屍は投げ捨てられていたのだろう。
当然医者が診ることなどありえないから、
これは僕の推測だけれど、
あれは恐らく肺結核だったのだと思う。
生きているだけで満身創痍な子供たちに、
病は翼を開く様に軽やかに蔓延した。
当然僕も、同じ病気を患った。]
[高熱に、止まらない咳、血痰……。
最初はすし詰めだった船室内に、
ぽつりぽつりと穴が開いていく。
「助けて」と、声にならない叫びをあげた時、
僕の瞳が捉えたのは、幸せだったころの幻。
助けて欲しいのは、皆の方だったと思う。
僕は今の今まで、のうのうと生きてしまった。]
[高熱で痛む節々に無理をさせ伸ばした手は、
何も掴むことなく沈んでいった。
を叶えることもできず、
を守ることもできず、
に一矢報いることもできなかった。
悪寒で震える体に、熱に浮かされ燃える憎悪。]
[その最期は、さながら沈んでいった僕達の船の様だった。**]
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人の心というのは面倒で、美しい。 人の数だけ色は増え、心の数だけ答えがある。
考えさせる事は、悪いことじゃないよ。
(53) 2022/05/28(Sat) 9:06:34 |
| [ 少なくとも彼が思い浮かべた ビターテックな恋物語の登場人物は あまりに色濃く、美しくないようだが。 >>41] (54) 2022/05/28(Sat) 9:06:54 |
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いる、と言うべきか いた、と言うべきか
心当たりはある。
(55) 2022/05/28(Sat) 9:07:24 |
| [ 返された問いかけを青年は肯定して。 その並々ならぬ本音を聞いたとあれば。 >>41] 何にしても、気をつけないとね。 その子に聞かれれば そちらの世界へ 引きずり込まれてしまうかもしれない。 [ そう警告を口にするだろう。 Wあの人Wが死者か生者か。 生者であればまた違う意味合いに 聞こえてしまいそうなものだが。] (56) 2022/05/28(Sat) 9:07:51 |
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同情も同調もしないことだ。
僕が言えるのはそれくらいだね。
(57) 2022/05/28(Sat) 9:08:07 |
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