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人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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 全然、何も。

[武藤に心配される ようなことは何もされてないよと、数瞬だけ武藤と視線を合わせて微かに笑う。

さて"あれ"をどうしようかなと、未だ継続中だった臨戦状態な心持ちのまま、拳を改めて握りしめる前に、武藤が素早く動き出していた。]

 …………ぁ……、

[私も大概だと思うけど、武藤も容赦ない男だ。

自分と寸分違わず同じ顔を躊躇なく殴り抜けば、川に倒れ込んだ"武藤のような何か"はそのまま流れて消えていってしまった。

蹴り飛ばした時から周囲に漂っていた、あの忌々しい林檎の香も、ざあ、と強めに吹いた風が一気に浚っていってくれて。]

 …………容赦ないね、武藤。

[ぽつりと呟いた言葉は、賞賛7割不満3割。
私がとどめを刺したかったのにと、ぽつりと呟いた。]
 


[────って、そういえば。]

 ねえ、武藤のところにも、"あれ"、現れた……?

[私のところに武藤が来たということは、武藤のところにも行っているだろうことは想像に難くなく。そもそも私は宣戦布告までされてたわけで。

来てかつ今もいる、なんて言われた日には、ここで抱き合ってる場合じゃないでしょう、と急ぎ戻ることになっただろう。

ああ、でもこれだけは言わせてよ。]

 今度は私がとどめ刺す。

[さっき、振り上げた拳の行き先を武藤に奪われちゃったんだからと真顔で告げる。]
 

[椿は無意識に、楓のシャツの裾を掴んでいた。]


  ……わかりません。あるのかしら、
  いつも、突然だから——
  でももし、そんなことが起こったら


[少し怯えたような顔をして、椿は楓を見上げる。
 あり得るだろうか、この人を食べたいと思うことが。]


  その時は、迷わず撃ってくださいまし。


[逆も考えないではなかったが。
 その時は素直に喰われて仕舞えばいいと、この時の椿は考えていた。]**


 あっ、え?ごめん、とどめ刺したかった……?

[どの辺りが“完璧“だったかは結局確かめることなく殴りつけてしまった“自分とよく似た何か“が水に溶けて消えていくのを見届けた後、呟かれた言葉に、目を丸くする。]

 っふ……、でも柚樹が容赦なく攻撃したのはわかったので……。

[自分の彼女が自分の顔したものの股間を蹴り飛ばすところは見たかったような、ヒュンってなりそうだから見なくてよかったような気はするよ……?

それに、既に攻撃してたってことは何かされたかされかかったってことだし、柚樹の前にわざわざ現れたなら目的は明白で。

考える間もなく手が出てしまっていたのだから許して欲しい。]


 あっ、うん、来てた……、
 つーか今もコテージにいる、多分。
 置いてきちゃったし……。

[柚樹の偽物。
服の上からでも胸の膨らみが視認できたり柔らかそうだったりする“女らしい“姿のそれ。

突き飛ばす前、縋るように伸びた手の爪に春めいた色の乗った手を思い出して頷いた。

押し退けただけだし、おそらく崩れ去ったりはしていないだろうことを思えば、確かに早く戻った方がいいのかもしれない。]

 とどめは、うん、譲るので。

[柚樹があれの言葉に惑わされることはもうないのだろうとはわかっていても、柚樹の手で倒した方がいいような気もするし。]

【人】 武藤景虎

[怒ってはいないらしい、とは此方を見つめる表情にわかってはいたけれど。

“合格“を告げられれば、柚樹の元に歩み寄った。>>45

なんとなく、実家の犬に餌やるのを任せた時より随分スムーズだなとか思ってしまったが。

オレのが犬より賢いから仕方ないな?
なんて、明後日な方向のことを考えてしまうのは相当焦ってたせいだ。

今はそれどころじゃなかったってことにも、少し遅れて気づくくらいには。]

 ん……、ただいま。柚樹。

[場の緊張感が去って漸く、改めて抱き締めると、いろいろ話したいことはあったし、離れてる間に起きたことだとか、聞いてみたいことも多々あった。

でも、そうだな。
まだ全部終わったわけではないから。

コテージに戻ろうと駆け出す柚樹の後を追って来た道を戻れば、朝起きてからほぼずっと走り回っている気がする。]*
(48) 2023/03/05(Sun) 16:03:58
[そうして、コテージへと戻れば柚樹に持ってる鍵で出入り口を開けてもらって。

咽せかえるような甘い香りに、う、と胸が悪くなる感覚がして。

中にはまだあれがいる証左だと思えば、いくらか緊張した心持ちで室内へと足を踏み入れた。

ムダじゃなかっただろ、とは、二人で戻ったことがわかれば“それ“にも伝わるだろうけど。]*


あーア。
アーあ。
アーア。

ナんデ、コワしちャッた、ノ?


[私がビール飲んでオムライス食べて、ココアを飲んでいた席で。

私と同じジャージ姿、同じ髪色、同じ背丈で。

けれど体型や表情や声の高さは異なる"それ"が、椅子に座ったままゆらゆらと身体を揺らしていた。

"
ナんデ、コワしちャッた、ノ?
"は、当然、武藤が殴り潰した"武藤もどき"の事を言ってるのだろう。
ぐりん、と人ならざる不自然な動きでこちらに顔が向く。

武藤からは"押し退けただけ"とは聞いていたけれど。

手を伸ばせば触れる位置まで近づいた私は、顔の輪郭が不自然にズレている風に、質の悪い変装の皮膚のように顔の表面に皺が寄っていることに気付いて目を眇めた。]
 


 一つ、聞きたい。

 あんた……いや、"あんた達"の目的って、何……?

[問うたら、ケタケタと"それ"は笑い出す。]

ワたシハ、あナタのりソうダよ?
アナたでハ、かナエらレナい、ゆメ。

せッカく、ヤってアゲヨうト、おモッた、のニい?


[なるほど?と首を傾げるも、納得できるものではなかった。

私の理想はそんなんじゃない。叶えられない夢でもない。

偽武藤にしたって、あんなの、ちっとも理想じゃない。

私の理想の恋人は、今ここにいる武藤だもの。]
 


 ……そう。ありがと。

["
どウいタシましテ?
"と笑いかけてきたことには、ほんのひと欠片くらいは躊躇する気持ちが沸いたけど。

でもやっぱり、そんな厚意は要らないし、お呼びじゃないし、余計なお世話以上のなにものでもない。

私の武藤に何してくれたのよという怒りも上乗せして、私は"私"の髪を引っ掴み、引き寄せるようにしながら容赦なく右膝で顔面を砕きに行った。]

ギャっ!!!!!

あァアアぁああァあアアあぁァ

ひドイ……ヒ、どォ、い……ィ、


[床に"それ"が崩れ落ちるるに任せ、私は一歩後ろに下がる。

ぶわりと部屋中に広がる腐敗臭はいっそ死臭にも似ていた気がした。]
 


 ────さよなら。

[一言告げて、俯せになっていた後頭部をスニーカーで思い切りぐしゃりと踏みつけたところで、あ、そういえば武藤がずっと傍らで見てたんだっけ……なんて今更の事に気付いてしまったわけだけど。

あの、大丈夫だから。
武藤と喧嘩とかになったとしても、踏み潰すとか膝蹴りとかは、その、しないつもりなので。

あくまで相手が"これ"だから出来たこと、なので。

そんな風におかしな方向に焦りを感じているうちに、断末魔に似た言葉を漏らしていた"私もどき"は溶けた絵の具のようになった後、端から蒸発するように消えていった。

あの甘ったるい匂いはいくらかは残ったけれど、頭が痛くなるほどの気持ち悪さでは無くなっていたかな。]
 

[彼女はこちらを見上げてきたかと思えば、不意にシャツの裾を掴んできた。
 怯えるような表情も相まって抱き締めたい衝動に駆られつつ、それを抑え込んで彼女の言葉に耳を傾ける。

 『いつも突然』……それは食人衝動のことなのだろうと、楓には自然と感じ取れた。
 尋ねそびれた問いの答えが自然と得られた形である。

 迷わず撃ってとリクエストはされたが、彼はそれを一笑に付した]


  馬鹿言うな。オレがだか忘れたか?
  通らねェんだよ、おまえの可愛い牙や爪じゃ。


[楓は“堅狼”。牙や爪どころか、銀弾の銃撃を除くさまざまな物理攻撃を防ぐことができる。
 かつて彼女と出会った場では、二人を含む大勢で遊戯に興じていたのだけれど──その中で狼を選んだ者たちの一部が本当に狼で、そのうえ彼の場合は種まで同じ……などという、冗談のような本当の話。]

 
  撃つまでもねェんだよ。
  おまえにオレは殺せない。


[そう告げるとき、自然と視線は逸れた。
 楓が意図的に伏せた事実があるのだ。

 彼が鋼鉄の防御力を得られるのは人狼の姿に転じたときだけ。人間の姿でいる限り、負傷は防げない。
 その上、姿を変えていられる時間は月齢に応じた。
 満月の日なら半日程度だが、新月の日は1秒たりとも不可能。半月なら満月の更に半分ぐらいといったところ。
 時間帯には不思議と制限は無いのだが。


 彼の言動は、彼女を殺す気が無いという意思の現れではある。
 一方で、もしそのような局面になったときには彼が一方的に殺す側になりえるということでもあった]

[彼にはひとつ、長い間気になり続けていることがある。

 “美味しそうに見えるものは、本当に美味しいのか”

 もしそれが見た目だけの話で、味に差異が無いのなら、美味しそうなヒトを襲う可能性を極端に恐れる必要は無くなる。

 けれどもし、実際に美味しいのなら──
 知ったが最後、二度と戻れない道に足を踏み入れることになるだろう。

 確かめずにいることが幸福なのか、確かめてみたほうがいいのか。彼は前者と思い続けているが、果たして]**


 なんでって……、なんか腹立ったので。
 いや、柚樹になんかしそうだったから……?

[律儀に答える必要はないと思いながら、“それ“の言葉に返してしまう。

こうして偽物と並んでるところを見ると明らかに別物ではあるなとは思いつつ、それでもベースは同じだから不思議な感じはする。

近づいてみると、そういえば顔は叩いてしまったのだったと思い出して。
それは本人にもやったことがあるから、こんなことになるとは思ってなかったのはあるけど。

傍にはいたものの、近づいていく柚樹の邪魔はしなかった。

とどめを刺すとは聞いていたし、水に弱いらしいのは美術館の時に教えてもらってはいたが、どうするんだろうとは思って見ていた。]

[柚樹の理想がこれなのは、女性らしいとかそういうことなんだろうか。

確かに“理想の恋人“だと偽物は豪語していたと少し前のことを思い出しながら、柚樹と柚樹のようなものが会話するのを聞いていた。

オレの偽物はどんなだったんだろう、見た目は同じだったけども、とは、聞いてみたいような聞くのが怖いような。

でも柚樹はちゃんと偽物だとわかったのだと思うと安心する気持ちはあった。
勿論、欠片も疑ってはいなかったけど、オレがあんな状態だったのもあって、柚樹を不安定にさせていたのは確かだから。]


 …………、

[柚樹の攻撃は思った以上に容赦なくて、傍らで一連の流れを眺めながら、喧嘩になったら大変そうだなとは思ってしまった。

そんな取っ組み合いの喧嘩にはならないと思っているけども。

おそらく表面的には絵画のそれで、内側は林檎のような何かが素材であることを差し引いても、元の柚樹より非力であろう“それ“は抵抗らしい抵抗をすることなく、膝で頭を砕かれる。

広がった腐臭に似たにおいに、胃酸が込み上げそうになりながらも、とどめに足が振り下ろされるところまでを見届けて。]

 うん……、柚樹も容赦ないとは、思うよ……?

[オレと喧嘩になってもここまでしないのはありがたいのだけど、急所を思い切り蹴るのも遠慮はしたいかな。

床に広がっていたグロテスクな物体が消えて漸く、安堵の息を吐いて。]

 今度はちゃんと、とどめさせてよかったな。

[“今度は“の意味は、偽物のオレの話じゃなくて、美術館の時に現れた柚樹の偽物のことだけど。]

【人】 武藤景虎


 ん……、終わったと思う。

[“あの時“も思ったけど、やっぱりオレの惚れた女はいい女だなと思ったよ、なんて。

問いかけには安堵の笑みを返した。]

 起きてからずっと走り回ってたし、腹は減ったな……。
 ホットサンド?食いたい。

[安心したら急に空腹感を思い出したのもあって、朝食には既に遅い時間だったし食事の提案には一も二もなく頷いた。]

 何もされてないよ?
 オレの方が手を出してしまったくらいで……。

[あっ、変な意味じゃなく、とは付け足さなくてもわかると思うけど。

詳しくは飯食いながらというのには同意した。

なんか手伝うことある?とは聞きつつ、その前に手を洗ったり着替えたりしてくるとバタバタ荷物の方に移動して。]
(52) 2023/03/05(Sun) 17:51:32

【人】 武藤景虎

[洗面台の鏡の前、装飾品をひとつひとつ付けながら、左耳のヘリックスピアスの内側を覗き込んで、あ、と声を上げた。

柚樹から誕生日に貰った太陽みたいな石と刻印の入ったそれは、昨日とは違うものだ。

オレの記憶がおかしかったせいでこの辺の物も巻き戻っていたのだろうか。

左手を見下ろすと、いつの間にか戻っていた薬指の金色ベースの金属の輪の重みに目を細めた。

足早に台所の方へと戻れば、柚樹の元へ駆け寄って、まず先に耳元や左手を確認することにはなったかな。]*
(53) 2023/03/05(Sun) 17:53:05

  まあ。
  それなら、安心ですわね?


[椿は“狼”どうしの争いには関知したことがない。ゆえに、自分以外の“狼”がどういうものであるのかについては無知だった。都市部では熾烈な縄張り争いがあるとも聞くが、それを避けるために椿らは田舎ばかりを選んで住処を転々とさせていた。

 楓の言葉は、単純に「お前では勝てない」という意味に受け取った。確かに、小柄な女の力で楓ほどの大柄の男にまともに当たって勝てるとは思えない。殺すだけならいくらでも方法はありそうだが、彼を殺したいわけでは、決してない。

 本当に彼を喰べたいと思ってしまったなら、その時には我を忘れているのだからそんなことにはお構いなしだろう。返り討ちにあうならば、それでも構わない。]

  であれば——


[椿はシャツの裾を掴んでいた手を離し、楓の頬へと差し伸べた。しかし触れることを迷って、その手は萎れるように自身の胸元へと帰っていった。一瞬だけ悲壮な表情を浮かべかけたが、すぐにまた笑みを取り戻した。]


  その時は、我らが王に牙を向けた罪を、償いましょう。


[冗談めかしはしたが、半ば事実で、椿は本気でもあった。
 以前ともに過ごしたとき、彼はまさに王であった。
 気高き王と、力ある王とに率いられ、椿はその気高さに、あるいは力に、素直に憧れを抱いたものだった。彼らのように生きられていたならば。そんな嫉妬に近いような感情すらも秘めていた。]

[動けなくなったら困るなあ。やなんて分かっていて言う。
苦笑する彼も分かっているのだろう。だから、今度するな。と軽く転がして、彼がスマートフォンの中身に気づけば、何も気づかぬふりをするだろう。

別に彼の不実を疑っている訳じゃない、彼が自分にメロメロなのはよく知っているし、そうやってモテる彼が恋人だというのも誇らしい。ただ、好きなものを好きと態度に出せるその素直さが自分にはない。今さら素直で無邪気な自分。など想像できないが、それでも少し思う処はある。
ちょっと待ってくださいと言われ
膝の上に頭を乗せたまま、彼が返信を打つのを眺めて]



 ……ん。面倒見いいやん?


[いい子やね。と髪の毛を撫でる手に目を細めた。
面倒見の良さも彼の美点だ。後輩は可愛がるものだ。思うところはあるにせよ、彼が可愛がっているのを見るのは微笑ましい。自分だって、こうなる前だって寿のことを可愛がっていたのだから。…可愛がられていた方がどんな気持ちを抱いていたかは詳しくは知らないが。あの頃の関係も悪くなかったと自分は思うのだ。それに、寿は特別だった。

彼が後輩の面倒を見る事は自然な事だし。
良い事だ。だから、まさか悪い虫がつかぬようにと行動しているなんて思いもよらぬ事だ。もしそれを知ったら、笑うだろうし、僕は自分で自分の身は守れるで。と言っただろうし、それなら自分の身を案じるべきだと、鼻を突いただろう。

もっとも、そうやって独占欲を見せてくれるのはきっと嬉しいことなのだろうけど。用事をすませた彼が、此方にと視線を戻せば、微笑みを向けてそのまま手を伸ばし頬を撫で。
おかえり。と迎えようか]



 そうやね。
 やー楽しみやわ。


[どんなお風呂やろか。
なんて、言い。彼に運んでもらっただろう。思ったよりも広い浴槽につかり彼を待つ。その間に少しばかりばしゃりと湯を波だたせる遊びも忘れずに。服を脱がずに抱いていた彼の裸体を見れば、少し目を細め。やぁ、いい男やな。ところころ笑いかけた。彼がこっそりと筋トレをしているとはしらないが、というか自分は彼のことで知らないことだらけなのだが。
それもこれも、自分との繋がりに直結することなのだとしたら、隠す姿をあえて暴くことはしない。暴かなくても良いと思う。やって、こうして彼は男前の、自分だけの寿達也を見せてくれるのだから。当たり前のように上に乗り上げれば、抱きしめてくれる。その腕の太さに甘えるように寄り添い]


 風情ええし、ほかほかするし気持ちええし
 って、なんやここでも写真撮りたいん?
 …綺麗にとってや?


[赤味の強い光の下。
両手でお湯を掬い、落とす。首筋には汗を流し、見上げる彼を見る目を彩る睫毛は湯気で濡れている。彼が見る事を好んでいるのは知っていたから唇に浮かべるのは艶めく笑みで。
囁く声には、少しばかり低く啼く声で頷き]


 ……やぁ
  そこ、今日は……
      まだ飲んでないで


[食べはしたけど。と甘く。
突かれた箇所ではくり息をして、指先は彼の顎をなぞった。細い指は輪郭を確かめて、下唇に触れる。彼の指が中にと入り込み、洗い始めるのなら此方は指で下唇をそっと捲り。歯列をなぞって]


 ……ぁ  んっ
    こっちでは飲んだけどな?


[甘い声で身を少しばかり震わせて。
舌を覗かせる唇を近づけ、背のびするような姿勢で彼にキスをした。そうして、そのまま猥ら花を開くように足を、動かせば指を奥に奥にと誘っていこうか*]

[楓もまた“狼”たちの群れからは離れて暮らす身。狼たちが囁き交わす声を聞いたことは何度もあるが、その全てに答えずにいる。
 縄張り争いらしきものに巻き込まれかけたことはあるが、関わる意志が楓に無いことに気付けば、向こうも深追いはしないものだった。
 当然、狼としての名もない──いや、今は“楓”がそれに相当するのだろうか? 遊戯の中で使った名なのだが。

 ゆえに楓の狼としての戦闘経験はそのまま、食事を兼ねて人間を襲った経験に直結する。その過程で自分の能力も知るに至ったのだ。種の名前を知ったのは奇しくも遊戯でだったが。
 そして、不意打ちで即死なんてことさえなければどんな相手も恐れるに足らない……と、楓は思っていた。銃使い以外なら、の話だが]

[足音が聞こえなくなった後、彼女の手が触れかけた頬に自分の手を伸ばし、静かに触れる。
 そうして彼女の言葉を思い返した]


  ……王。


[それが自分のこととは、楓はすぐには結びつけられなかった。
 彼は事実上“群れ”を率いる立場ではあったし、彼女がまるで従者のように思えたことも何度かあったが、それでも彼の心の中では対等なつもりだったから。

 文脈から言えば自分のことらしいと思ってはみても、敬意を抱かれて嬉しいというよりは……

 彼女との間を隔てる壁が高いように感じて、寂しい。
 そういう感覚のほうが近かった]**

 




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