267 冬暁、待宵の月を結ぶ
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
[ コンビニ限定のミルクアイス。
普段のミルク味だけじゃなくて
メロン味も出てたから別々のを買って
分け合う時間。
彼氏彼女ならこうするって役割を
二人で考えてなぞっていく時間が
楽しくて、幸せで。
二人で作り上げた甘い時間。
この時間は嫌いじゃない。 ]
[ ラーメン好きなんだ?
今度あのお店行こうよ、
あそこの塩ラーメン本当に美味しいから、なんて
他愛ない話をして、二人きりの時間に浸る。
こんなふうにのんびりするのもいいね、
今度は私の部屋に来る?なんて
軽い気持ちで誘ったりもして。 ]
[ お互いの体温が感じられる距離、
誰にも見せたことのない無防備な笑顔。
怖さなんてあるはずがなかった。
私を傷つけるようなことはしない
それがたとえ義務感からだとしても
大切にしてくれてる君だから信じられる。 ]
[ 初めて名前を呼ばれた、
それに反応する前に唇に触れる柔らかな感触。
驚きに目を見開いて、
それからゆっくり目を閉じて受け入れた。
胸の鼓動が聞こえてしまいそう、
どうしてこんなにドキドキするんだろう。 ]
[ 長いような、短い時間。
エアコンが効いているはずなのに
心なしか体温が上がったような気さえして
でも、君の言葉で冷水を浴びせられたかのように
すぅっと現実に引き戻される。 ]
……なんで謝るの?
[ キスされて嫌だ、なんて思ってないのに。
なんでだろう、謝られただけで
心が騒めいて仕方ない。 ]
恋人、なんだからこれくらい普通でしょ?
[ 慌てたように離れる君を追って距離を詰めて ]
[ 初めて、名前を呼んだ。
今まで名字でさえ、出来る限り呼ばずに
ずっと君、って言って来たのに。
何処かでだめだって思いながら、
もう、止まれなくて。 ]
[ 曖昧な線引きを踏み越えて、
君に抱きつくと、胸元に顔を埋めたんだ。 ]*
[ 溶けていくアイスクリーム
分け合うほど口の中にはメロンとバニラが混ざって。
お互い縁がなさそうに見えて
いざ食べ合わせると相性がいいのは
まるで僕達のようだって。-
何気ない会話の中に
勝手に自分たちを照らし合わせて微笑ましくなる。
幸阪の部屋に行ってみたいと頷いたのだって、
ただ幸阪のことを知りたくて。
なんの用事がなくても
こうして話せるということが
当たり前じゃないことを知っているから
幸阪じゃなければ
こんなに話が弾むこともなかったはずだ。 ]
[ 幸阪にだってバレていたはずだ。
幸阪にその素質があったと思っていたとはいえ
僕達の関係が始まったその時は
幸阪でなければダメな理由なんてなかった。
僕がたまたま最初に出会った彼女が
たまたま僕と似た気持ちを抱えていたから。
僕を受け入れてくれていたから。
それさえ同じだったら。
幸阪ではない誰かだって不都合はなかったんだ。 ]
[ それでよかったんだ。
だって僕達に未来はなくて
僕達はいつか、離れ離れになるから。
なのに、なのに──。 ]
[ これ以上は役割で片付けられる域を超えている。
二人の心を交ぜ合わせた時、
二人とも幸せだったとしても
あるいは二人とも不幸になってしまったとしても
痛みを背負うのは幸阪の方だ。
ここから先は…………。 ]
[ 弱腰が作り出す見せかけの理性。
誠意という名の謝罪に隠れた、逃げ。
そんなものはまるで無意味なんだと
幸阪の言葉が蔦のように絡みつく。
この先の自傷行為は
役割の一環なんじゃないかって。
僕の心の逃げ道が示されて。
それでも僕の心を締め付けるのは
赦しではなく、彼女の懇願。
してもいい、じゃなくて。
したい、という声。胸元に顔を埋める仕草。
まるで、行かないでと、言われた気がして。
]
[ 僕は幸阪結月を手折る。
待宵草の芳醇な香りに酔いしれ、
引き寄せられる獣のように。
他ならぬ君だからいいんだって。
他の誰かの物語では大団円になるはずの
それでいて僕達二人にとって、
最も残酷な愛の調べを奏でながら。 ]**
|
[ 気づけばあっという間に冬になった。
あと数ヶ月もしたら 幸阪と出会って一年を迎える頃。
秋のまだ服装に迷う時期を超えて もうすっかりとコートまで羽織る季節。
僕はといえば いつものように幸阪に会えば ご機嫌な様子になるのは相変わらず。
ひとつ変わったことがあるとすれば 付き合い始めた頃より その距離がぐっと縮まったことくらい。 ]
(1) 2024/06/14(Fri) 23:50:58 |
[ 蝉が鳴く昼下がり
近くの小学校が午後の授業の予鈴を鳴らす中、
僕は彼女との秘め事に耽ける。
不安に思わせたくないと丁寧に愛でる傍らで
大切な人を乱してしまいたい願望に挟まれて
葛藤すればするほど、心地良かった。
お姫様みたいに抱き上げ
ベッドに寝かせて、何度も口付けをするのは
溢れた愛情と独占欲の裏返しだ。
制服のリボンのフックを取り
ひとつひとつボタンを外すと
その度に真っ白な肌を覗かせる。
初めて見た女の子の身体は
言葉が出ないほど美しくて
しかもその相手が結月なんだって思うと
僕はもう止まれなくなってしまった。 ]
|
おはよ、幸阪
[ 毎日のように交した挨拶 夏休み明け、僕は幸阪に言ったんだ。
幸阪の家に迎えに行くから よかったら毎朝一緒に学校に行こう。 僕がそうしたいんだ、って。
幸阪が僕のわがままを聞いてくれていたら 今日の挨拶はきっと彼女の家の前になるはずだ。 ]
(2) 2024/06/14(Fri) 23:52:08 |
| [ いつものように手を繋ぐ。
でもいつもよりももっと近く、 指先同士を絡めると、そのままぎゅっと握る。 ]
(3) 2024/06/14(Fri) 23:54:40 |
[ 指先で、唇で、肌で、
感じるのはかけがえのない恋人の味。
まだ花開く前の美しい蕾
時間をかけて待宵草の花を開けば
頭がその香りに酔ってくらりとする。
すぐに自分の手で花弁を散らすのに
まるで花の蜜を舐めるように
楽器を奏でるような烈愛は
結月を蕩けさせるまで続けて。 ]
| (4) 2024/06/14(Fri) 23:57:10 |
| [ いつもなら楽しい登校の時間 でも僕は彼女の前だというのに 浮かない顔をしてしまう。 これでは幸阪に気を遣わせてしまうかも。 でも、あの日の反省を踏まえて 幸阪にはハグ以上のことはしていないし 名前だって呼ばないように気をつけている。
だから、これは、言わなきゃいけないんだ。 ] (5) 2024/06/14(Fri) 23:57:58 |
[ いつも寝るだけのベッドが
想いの丈を語るように大きく鳴く。
飲まれればもう引き返せない。
沼にハマっていくみたいに
奥底で彼女と繋がる度に
彼女の中に感情まで引っ張られそう。
シワになるのも構わず脱ぎ捨てられた夏服に、
すっかり汗をかいたコップは
中の氷が今にも消え入りそうで。
それでも僕は
結月を求めるのをやめない。
だって僕は結月のことを… ]
結月のこと
僕でいっぱいにしたい。
僕のことしか考えられないようにしたい。
|
ねぇ、幸阪
あのさ、僕……
(6) 2024/06/15(Sat) 0:00:05 |
結月は独りじゃない。
世界に置いていっても
僕は置いていったりしないから。
僕だけは、結月の味方…だから。
|
転校が、決まったんだ。*
(7) 2024/06/15(Sat) 0:02:05 |
[ 分かっていた。
私じゃなければだめなんだ、なんて謳って
本当は私じゃなくたってよかったことくらい。
たまたま出会ったのが私だっただけ。
たまたま私が受け入れたから成立しただけ。
そう、私じゃなくたってよかったのに。
私じゃなければいけなかったと
思いたくなってしまったんだ。 ]
[ 君が私を大切にしてくれるたびに
少しずつ芽生えていく想いから目を逸らして
これは恋人という役を演じてるだけだと
ずっと、思い込んで、思い込もうとして。
―――――………。 ]
[ 逃げ道が必要なら作ればいい。
痛みを伴うとしても、私は…………。 ]
[ 逃げ道を作って、退路を断ってしまう。
嫌じゃないから、この先も大丈夫。
恋人ならみんなしてるでしょう、と。
この先にすることも全部、
役割の延長だから、気持ちに見ないふりできる
―――つもり、だった。 ]
[ 君には、君にだけは置いていかれたくない。
ずっと、ずっと一緒にいたい。
そんなの叶わないと知っている。 ]
[ 外の音が微かに聞こえるほど静かな部屋の中
二人しか知らない甘い時間に浸る。
全く不安がなかったわけじゃない。
何もかも初めてなんだから。
それでも私がすべて受け入れられたのは
君が丁寧に大切に愛でてくれたから。
何度も唇が重なって、触れた場所から
君の気持ちが、欲が伝わってくる。
目を閉じて、君の想いをひたすらに受け止めて。
時折目が合えば、頬を染めたまま微笑んだ。
今、すごく幸せだよ、って。
明るい中で肌を晒すのは恥ずかしい。
その相手が暁なら、尚更。
日焼けしていない白い肌。
呼吸するたびに上下する柔らかな膨らみ。
全て晒されても隠さないけれど、
恥ずかしさから君を直視できなくなって
ふっと目を逸らしてしまう。
でも、嫌じゃないのは伝えたかったから
君の手を取ると、胸元まで持っていった。
触って、ってお願いするみたいに。 ]
[ 君が触れた場所全てから熱が広がっていくみたい。
愛でられた花は少しずつ色づいて、花開こうとする。
君に触れられて上気した身体が
色香を放っているのが自分でもわかる。
大切な人を惑わせて、誘って。
誰も触れたことのなかった花弁が蜜にぬれる感覚も
閉じていた蕾を花開かされる快感も
部屋に響く、甘くて切羽詰まったような声も。
全部、全部知らない。
君に初めて教えてもらった
君に初めて、見せた。 ]
[ 乱れて濡れたシーツをぎゅっと握って
皴を増やしてしまいながら
奥深くまで、君のことを受け入れて。
慣れない刺激に戸惑うように零れる涙。
誤魔化すように、口付けを強請って
二人の息を混ぜ合えば、嬌声も君に呑まれていく。
いつの間にか倒れてしまった私の鞄
その中から覗く日記の事なんて
今の私は気にかけることも出来なくて。
求められるまま、応えて、こたえて。 ]
もう、そうなってるよ。
暁で満たされて、すごくしあわせ。
君のことしか考えられない。
[ ずっと、言われたかった言葉。
それがまやかしだと分かっていても
他でもない君から言われたことが、嬉しくて
救われた気にさえ、なって。
頷いて、ぎゅっと君にだきついた。
布一枚も隔てないと、こんなにも熱くて、近い。 ]
[ 役割通りの言葉なんだから。
これで何も間違ってないはずなんだ。 ]
| (37) 2024/06/16(Sun) 8:16:06 |
| [ いつものように幸阪との時間を堪能して 家に帰ってくると 珍しく父さんが早く帰ってきていた。 嫌な予感が胸中をよぎる。 この空気感、もう何度目だろう。
リビングに入ると 父さんと母さんが飛行機のチケットの 予約をしているところだった。 次は今の場所から飛行機じゃないと行けない かなり離れたところらしい。 海外じゃないだけいいって 母さんは言うけれど 悪気がないといっても 二人でヘラヘラと楽しそうに笑う姿に 僕は耐えることが出来なくて。 ] (38) 2024/06/16(Sun) 8:16:51 |
|
あんたはいっつもそうだよ!
あんたの都合で振り回されて! 僕の大事なものは いつだっめあんたのせいで壊れる!
家族のために仕方ないんだって 育ててやったなんて そう言ったら僕も母さんも 何も言えなくなるの知ってて
僕がどんな思いで いままで生きてきたと思って…!
(39) 2024/06/16(Sun) 8:20:11 |
| (40) 2024/06/16(Sun) 8:20:53 |
|
[ 頭では分かっている。
こんなの僕の責任転嫁なんだって。
それでも僕は この現実を受け入れられなくて。 ]
(41) 2024/06/16(Sun) 8:22:14 |
|
[ 今日に至るまで 僕は、両親と一度も口を聞いていない。 ]**
(42) 2024/06/16(Sun) 8:24:41 |
|
……………ごめん、幸阪。
[ 彼女の前では僕は被害者の顔をしたらいけない。
彼女を巻き込んだのは僕で 始めたのだって僕だ。
風に飲まれて消えてしまった小さな棘は 耳に届くことはない。
受け止めてくれた彼女に 僕はただ、謝ることしか出来なかったんだ。 ]
(43) 2024/06/16(Sun) 15:17:45 |
|
[ あれから二人でいつものように登校して そらからはいつもと同じなのに空気が重い。 学校の授業にも集中出来ないし なんだか落ち着かなくて、
今朝の凍りついた空気と 幸阪の顔が頭から離れない。
どんな顔をして 僕は彼女に会いに行けばいいんだろう。 そんなことばかり考えてしまう。 ]
(44) 2024/06/16(Sun) 15:18:54 |
| (45) 2024/06/16(Sun) 15:19:34 |
|
[ 一体どの面下げて、会いに行けばいいんだろう。 ] (46) 2024/06/16(Sun) 15:20:04 |
| [ 心に大きな蟠りを残したまま 放課後、僕は幸阪のクラスに顔を出す。 目的はもちろん、彼女に会うため。 ここで逃げたらもう会えない。 それが分かっていたから 自分の面目よりも彼女のことを考える。 こんなの、当たり前だ。 でも、そこに幸阪は、いなかった。 >>29 ] (47) 2024/06/16(Sun) 15:20:43 |
|
[ 何故か王子様とあだ名をつけられている事も 今は反応している余裕がなくて
事情を知らないかクラスの人に聞いてみると 幸阪は今日、体調不良で早退しているらしい。
その理由なんて明らかだ。 だって、彼女からは何も、連絡がなかったから。 ]
(48) 2024/06/16(Sun) 15:21:05 |
| [ 心配になって電話をかけても 繋がることは無かった。 >>35 『体調、大丈夫?』と一本のLINEも 既読になることは無く 一か八かで家に行ってみるも その結果は言うまでもなく惨敗だ。 ] (49) 2024/06/16(Sun) 15:21:43 |
|
[ 思い知る。
この学校にいる間 僕にとって、幸阪は僕の全てで。
幸阪のいない学校は また昔みたいに息苦しいだけ。
どうせ三月にはさよならだと余計に。 彼女のいない場所なんて いても辛いだけ、なんだって。 ]
(50) 2024/06/16(Sun) 15:22:30 |
| [ 幸阪に送った一本のLINE。 家に帰った僕は父さんはおろか 母さんのことすら無視をして 携帯をベッドに投げ捨てながら 不貞寝をするように飛び込んだ。 その時が来たら昇華しよう。 いつか来るサヨナラのとき 二人で思い出にするために。
僕達が結んだ盟約は 地に堕ち、涙を流していた。 ]* (51) 2024/06/16(Sun) 15:23:45 |
| [ 結局二日はもう幸阪と会えていない。 相変わらず体調不良みたいで、 送った連絡の返事を貰えたのは その翌日の夜だった。 最初に既読がついてから 返ってくるまで時間が空いていて その間は落ち着かずにそわそわしていた。 ] (66) 2024/06/16(Sun) 21:46:02 |
|
[ 風邪、という言葉は
残酷な真実を目の当たりにしないための 幸阪の優しさにも聞こえて。
それ以上を聞くことが 今の僕には出来そうにない。
幸阪の優しさを、棒には振れそうにないから。 ]
(67) 2024/06/16(Sun) 21:47:02 |
| [ 人を傷つける真実 >>7 人を傷つけない嘘 >>57 どっちがいいかなんて 僕には分からないけど それを責めることは出来ない。 僕も似たような酷いこと、しているから。 ] (68) 2024/06/16(Sun) 21:47:34 |
| [ 朝、約束通りに幸阪を迎えに行くと 二日ぶりに幸阪の顔が見れた。 >>58 それだけで心の底から安堵して それでいて胸を締め付けられるのは何故だろう。 ] ううん。大丈夫 体調はもう平気? [ 風邪だとしたらまだ全快とはいかないだろうから そんな僕の心配を他所に 幸阪はもう平気だと言う。 いつものように何気なく繋いだ手 そこから伝わる強烈な違和感に 僕は思わず言葉を失ってしまった。 ] (69) 2024/06/16(Sun) 21:47:45 |
| [ 当たり前だ。大丈夫なわけないんだ。 増える口数に対して減る感情。 >>61 愛らしいはずの声色はどこか無機質で。 >>62 でも幸阪の提案が嫌なわけがないから。 ] う、うん、行こっか! 楽しみだね。 [ どこか気まずさを感じながらも 誘いにはしっかりと応じるのだった。 ]** (70) 2024/06/16(Sun) 21:49:23 |
| [ その日を境に、幸阪の誘いが増えた。 嬉しいことのはずなのにどこか落ち着かない。 まるでゲームのエンディングロールみたいに まだ見ていない場所の中に 記憶を辿るような場所が示されていたから。 >>63 それが思い出に浸るためなんじゃないかと 一番最初に思い出を望んだ僕は そればかりが気がかりになってしまう。 ] (71) 2024/06/16(Sun) 21:50:08 |
| [ ふとした日、またいつものように幸阪から デートに誘われる。 今度はどこだろうと注意深く聞いていたら スカイツリーに行きたいらしい。 >>64 いままでの幸阪とは結びつかない場所 その理由を聞きたくなってしまうけど、 聞いたらまるで僕が行きたくないみたいな そんな言い方になってしまいそうだから。 ] (72) 2024/06/16(Sun) 21:50:51 |
|
うん、いいよ、行こっか。
(73) 2024/06/16(Sun) 21:51:05 |
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[ 僕は君の提案を、二つ返事で受け入れたんだ。 ]*
(74) 2024/06/16(Sun) 21:51:23 |
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