267 冬暁、待宵の月を結ぶ
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もう、そうなってるよ。
暁で満たされて、すごくしあわせ。
君のことしか考えられない。
[ ずっと、言われたかった言葉。
それがまやかしだと分かっていても
他でもない君から言われたことが、嬉しくて
救われた気にさえ、なって。
頷いて、ぎゅっと君にだきついた。
布一枚も隔てないと、こんなにも熱くて、近い。 ]
[ 役割通りの言葉なんだから。
これで何も間違ってないはずなんだ。 ]
| (37) 2024/06/16(Sun) 8:16:06 |
| [ いつものように幸阪との時間を堪能して 家に帰ってくると 珍しく父さんが早く帰ってきていた。 嫌な予感が胸中をよぎる。 この空気感、もう何度目だろう。
リビングに入ると 父さんと母さんが飛行機のチケットの 予約をしているところだった。 次は今の場所から飛行機じゃないと行けない かなり離れたところらしい。 海外じゃないだけいいって 母さんは言うけれど 悪気がないといっても 二人でヘラヘラと楽しそうに笑う姿に 僕は耐えることが出来なくて。 ] (38) 2024/06/16(Sun) 8:16:51 |
|
あんたはいっつもそうだよ!
あんたの都合で振り回されて! 僕の大事なものは いつだっめあんたのせいで壊れる!
家族のために仕方ないんだって 育ててやったなんて そう言ったら僕も母さんも 何も言えなくなるの知ってて
僕がどんな思いで いままで生きてきたと思って…!
(39) 2024/06/16(Sun) 8:20:11 |
| (40) 2024/06/16(Sun) 8:20:53 |
|
[ 頭では分かっている。
こんなの僕の責任転嫁なんだって。
それでも僕は この現実を受け入れられなくて。 ]
(41) 2024/06/16(Sun) 8:22:14 |
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[ 今日に至るまで 僕は、両親と一度も口を聞いていない。 ]**
(42) 2024/06/16(Sun) 8:24:41 |
|
……………ごめん、幸阪。
[ 彼女の前では僕は被害者の顔をしたらいけない。
彼女を巻き込んだのは僕で 始めたのだって僕だ。
風に飲まれて消えてしまった小さな棘は 耳に届くことはない。
受け止めてくれた彼女に 僕はただ、謝ることしか出来なかったんだ。 ]
(43) 2024/06/16(Sun) 15:17:45 |
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[ あれから二人でいつものように登校して そらからはいつもと同じなのに空気が重い。 学校の授業にも集中出来ないし なんだか落ち着かなくて、
今朝の凍りついた空気と 幸阪の顔が頭から離れない。
どんな顔をして 僕は彼女に会いに行けばいいんだろう。 そんなことばかり考えてしまう。 ]
(44) 2024/06/16(Sun) 15:18:54 |
| (45) 2024/06/16(Sun) 15:19:34 |
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[ 一体どの面下げて、会いに行けばいいんだろう。 ] (46) 2024/06/16(Sun) 15:20:04 |
| [ 心に大きな蟠りを残したまま 放課後、僕は幸阪のクラスに顔を出す。 目的はもちろん、彼女に会うため。 ここで逃げたらもう会えない。 それが分かっていたから 自分の面目よりも彼女のことを考える。 こんなの、当たり前だ。 でも、そこに幸阪は、いなかった。 >>29 ] (47) 2024/06/16(Sun) 15:20:43 |
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[ 何故か王子様とあだ名をつけられている事も 今は反応している余裕がなくて
事情を知らないかクラスの人に聞いてみると 幸阪は今日、体調不良で早退しているらしい。
その理由なんて明らかだ。 だって、彼女からは何も、連絡がなかったから。 ]
(48) 2024/06/16(Sun) 15:21:05 |
| [ 心配になって電話をかけても 繋がることは無かった。 >>35 『体調、大丈夫?』と一本のLINEも 既読になることは無く 一か八かで家に行ってみるも その結果は言うまでもなく惨敗だ。 ] (49) 2024/06/16(Sun) 15:21:43 |
|
[ 思い知る。
この学校にいる間 僕にとって、幸阪は僕の全てで。
幸阪のいない学校は また昔みたいに息苦しいだけ。
どうせ三月にはさよならだと余計に。 彼女のいない場所なんて いても辛いだけ、なんだって。 ]
(50) 2024/06/16(Sun) 15:22:30 |
| [ 幸阪に送った一本のLINE。 家に帰った僕は父さんはおろか 母さんのことすら無視をして 携帯をベッドに投げ捨てながら 不貞寝をするように飛び込んだ。 その時が来たら昇華しよう。 いつか来るサヨナラのとき 二人で思い出にするために。
僕達が結んだ盟約は 地に堕ち、涙を流していた。 ]* (51) 2024/06/16(Sun) 15:23:45 |
| [ 結局二日はもう幸阪と会えていない。 相変わらず体調不良みたいで、 送った連絡の返事を貰えたのは その翌日の夜だった。 最初に既読がついてから 返ってくるまで時間が空いていて その間は落ち着かずにそわそわしていた。 ] (66) 2024/06/16(Sun) 21:46:02 |
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[ 風邪、という言葉は
残酷な真実を目の当たりにしないための 幸阪の優しさにも聞こえて。
それ以上を聞くことが 今の僕には出来そうにない。
幸阪の優しさを、棒には振れそうにないから。 ]
(67) 2024/06/16(Sun) 21:47:02 |
| [ 人を傷つける真実 >>7 人を傷つけない嘘 >>57 どっちがいいかなんて 僕には分からないけど それを責めることは出来ない。 僕も似たような酷いこと、しているから。 ] (68) 2024/06/16(Sun) 21:47:34 |
| [ 朝、約束通りに幸阪を迎えに行くと 二日ぶりに幸阪の顔が見れた。 >>58 それだけで心の底から安堵して それでいて胸を締め付けられるのは何故だろう。 ] ううん。大丈夫 体調はもう平気? [ 風邪だとしたらまだ全快とはいかないだろうから そんな僕の心配を他所に 幸阪はもう平気だと言う。 いつものように何気なく繋いだ手 そこから伝わる強烈な違和感に 僕は思わず言葉を失ってしまった。 ] (69) 2024/06/16(Sun) 21:47:45 |
| [ 当たり前だ。大丈夫なわけないんだ。 増える口数に対して減る感情。 >>61 愛らしいはずの声色はどこか無機質で。 >>62 でも幸阪の提案が嫌なわけがないから。 ] う、うん、行こっか! 楽しみだね。 [ どこか気まずさを感じながらも 誘いにはしっかりと応じるのだった。 ]** (70) 2024/06/16(Sun) 21:49:23 |
| [ その日を境に、幸阪の誘いが増えた。 嬉しいことのはずなのにどこか落ち着かない。 まるでゲームのエンディングロールみたいに まだ見ていない場所の中に 記憶を辿るような場所が示されていたから。 >>63 それが思い出に浸るためなんじゃないかと 一番最初に思い出を望んだ僕は そればかりが気がかりになってしまう。 ] (71) 2024/06/16(Sun) 21:50:08 |
| [ ふとした日、またいつものように幸阪から デートに誘われる。 今度はどこだろうと注意深く聞いていたら スカイツリーに行きたいらしい。 >>64 いままでの幸阪とは結びつかない場所 その理由を聞きたくなってしまうけど、 聞いたらまるで僕が行きたくないみたいな そんな言い方になってしまいそうだから。 ] (72) 2024/06/16(Sun) 21:50:51 |
|
うん、いいよ、行こっか。
(73) 2024/06/16(Sun) 21:51:05 |
|
[ 僕は君の提案を、二つ返事で受け入れたんだ。 ]*
(74) 2024/06/16(Sun) 21:51:23 |
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