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【人】 火澄 七瀬思わずナイフを取り返そうとしましたが、 しっかりと刃を掴んだ指は、 私の力ではびくともしませんでした。 「 ……禎光。 」 あんなに小さかったのに。 あんなに身体が弱かったのに。 そこにいたのは 立派に成長した、ひとりの男の子だったのです。 (50) 2023/05/12(Fri) 11:30:52 |
【人】 火澄 七瀬ナイフから彼の指を剥がすことは難しかったでしょう。 ならばと私は、貴方の腕ごとを掴んで動かします。 貴方の手の分、隠れた刃。 胸を貫くには、深さが足りなくなっていました。 ならばと、刺すのは別の場所と。 「 …… 大好きですよ、禎光。 瀬名のこと、よろしくお願いしますね。 」 ──── それが、最期でした。 私は自身の喉に、刃の切っ先を突き刺しました。 (53) 2023/05/12(Fri) 11:35:30 |
【人】 火澄 七瀬吹き出す鮮血の熱が、鉄錆の匂いが、 貴方の手や顔を覆ったかもしれません。 人を貫く感触も、こびり付いて離れない。 …… 最後まで私は、 貴方にひどいことしかしませんでした。 でも見逃して貰えると嬉しいです。 全て忘れてしまうのですから。 最初から、全部無かったことに。 (55) 2023/05/12(Fri) 11:36:25 |
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