22:41:51

人狼物語 三日月国


184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:人

全て表示


【人】 医者 ノーヴァ



[暫く歩き続ければ、途方もない時間の果てに漸く門戸が見えてくる。木板を軽く拳で叩き、血走る喉を震わせて、「開けてください」と何度も叫んだ。

“寺には結界が張り巡らされている。” >>1:76
内部事情を存じぬ男は知る由もない事実であるが、
尼僧が取り決めた法に従えば、侵入するのは易かった。>>1:78

欲に眩んだ者が、寺の門など叩くわけもない。
網戸の隙間を潜る虫のように、全体が覆されていく。
元から狂った人間にとって、常識なんてものは存在しなかった。


教え通りに小僧が門を開けたなら、困ったような笑みを浮かべることだろう。
「被害者」の振りをするときは、重傷者はいい隠れ蓑になるものだ。其れが誰の手でされたものであったとしても。]

 
(51) 2022/11/12(Sat) 1:02:44

【人】 医者 ノーヴァ




   すみません……少し、休ませてください。
   ああ、僕もよくわからないのです。
   助手が重傷を負ってしまいまして……
   必死でここまで逃げてきたのです。

     数時間だけで構いません。
     どうか、どうか、少しばかりな安息を。

   …………っ、ありがとうございます!
   この御恩は必ず……!


    [呪布など持っていないと言うのに、
     健常者のふりが異常なほどにうまかった。
     真の恐怖は日常の中にあるというのに
     気づかなくなるくらいには。]**


 
     
(52) 2022/11/12(Sat) 1:02:52
医者 ノーヴァは、メモを貼った。
(a12) 2022/11/12(Sat) 1:07:11

【人】 警備員 ジュード

 
 ── 夜:街のどこかで ──

[蒐集家の手から逃れた>>8男は、
どうにか身を隠せる場所を探そうと
狂気に飲まれた街の中を走っていた。

けれど、隠れるのに良さそうな物陰には
すでにもつれ合うひとびとがいたり、
死体を弄んだりする先客がいるもので。

巻き込まれそうになっては踵を返すから、
なかなか落ち着ける場所は見つからなかった。


場所を探す間にも、男は欲望のままに動く人々の
予測できない動きに戸惑い、衝突して。
接触した相手を汚しては、苦しめてしまった。


ぶつかってしまった彼らのうち、
何人が喉を詰まらせて倒れ伏したか、
患部を洗う水を求めて水場を汚したか、
毒の付着に気づかぬまま他人に接触したか、
見る暇なんてなかったから、その数は定かではない。]
(53) 2022/11/12(Sat) 6:29:55

【人】 警備員 ジュード

[なんとか見付けた屋内外の暗所、
例えば、ベンチの影や家棚の中、ベッドの下に
潜り込んでみたこともあったかもしれない。

しかし、どんな場所でも男の不安は解消されず。
休憩くらいはできても、長く落ち着く事はできなかった。


── 本人は理解していなかったが、
男の望みは厳密には隠れる事ではないのだから、
満たされないのも仕方がない。


男の望みの本質は、命を脅かされないこと。
死の危険のない、安心できる場や人の傍に
その身を落ち着けることだった。

そして、この島に男が安心できるものは、殆どなかった。]
(54) 2022/11/12(Sat) 6:31:06

【人】 警備員 ジュード

[島で暮らす中で、“傷付けるかもしれない”
“汚してしまうかもしれない”という不安が
男の中から消える事はなかった。


かつて友人と昼飯を食べていたとき>>1:110も、
彼の食事を相変わらずと眺める傍らで、
男は食事中には可能な限り言葉を発さず。

スープの器にも貝の乗っていた皿にも
唾液の混じる汁の一滴さえ残らないよう、
卑しく見えるかもしれない程にパンで拭って。

少しでも事故が起こる可能性を
減らそうとしていただろう。


そんなに気を使って無害に努めようとするのも、
偏に、死の恐怖を遠ざける為。

他人を害さぬ善性を認めて貰うことで、
かつて己課せられた”死の責務”を放り出す事を、
誰かに許して欲しいからだった。]
(55) 2022/11/12(Sat) 6:31:25

【人】 警備員 ジュード

 
 ── いつかのこと:ある港町の路地で ──

[その夜も男は闇の中を走り、
鞄に仕舞い込んだ『兄』と共に
逃げるべき道を探していた。

男が路地に張り巡らされたパイプの間を
跳んで、潜って、駆け抜ける後ろを、
白衣のような制服を着た人々が
何かを叫びながら追いかける。


男を追う制服の人々は、かの国から送られた交渉役。
言い換えれば、研究用資材の回収用職員だった。


……かの国は、かつて己の作る兵器で
侵略した土地や自国の内に不毛の地を作った。>>0:139

しかしかれらは後にそれを悔い、
汚れた地を直し、侵された人々を治す為
治癒に重きを置くのだと方針を改めた。]
(56) 2022/11/12(Sat) 6:32:05

【人】 警備員 ジュード

[悪事を改め、反省を示す。改善する。
解決のために犠牲を伴うしかないのなら、
大衆を救う為に、ほんの少しの命を使用する。

かれらはそれを仕方のないことだと断じて、
逃げ場の少ない自国の港へと男を呼び出し、
彼に"実験への協力者能動的な犠牲者"となる事を求めたのだ。


自己犠牲は美徳。正義は善良、絶対であり、
命の価値に貴賎はなく、利益を得る人の数に定められる。

侵された多くの人の死と一人の死。
どちらかを選び取ることは苦しくとも、
いずれは決断しなければならない、と、

(対象が自ら”決断”できるように情報を規制し
 『犠牲者の記録』を活用することも正当な交渉の一つだと)


そう、かれらは定めていた。


……だが、男はそれに応じなかった。
あまつさえ、呼び出しの為に男の元へと送られていた
『悪行の証拠』を手に逃亡したのだ。

ただの関係者だった男はその瞬間、
苦しむ民を見捨てる酷薄な裏切り者となった。]
(57) 2022/11/12(Sat) 6:32:34

【人】 警備員 ジュード

[”近い遺伝子の毒を「ひとり分」
それさえあれば、不毛の地を、君たちの毒を、
解毒することが叶うかもしれない

君の力によってたくさんの人が助かるのだ

私達は間違えた。故に、やり直す必要がある
君のお兄さんの分までの贖罪の義務がある

君は英雄になる、多くの人の救いになる”


交渉役はそんな風に叫んでいたけれど、
男にその言葉は届かないし、響かない。


男は、死にたくなかった。]
(58) 2022/11/12(Sat) 6:33:06

【人】 警備員 ジュード

[男は、崇高な生きる意味や使命を持ってはいない。
でも、苦しみの中で死ぬ事は恐ろしかった。


かつてのかれらを知る男には、
『一瓶の滓』になるまで兄を消費した上に、
毒の抑制に加えてひどい目眩や頭痛を齎す
まるで支配の道具のような防毒拘束魔術をも作りあげた
かれらの言葉が信じられなかった。


だから男はかれらの言葉に頷かず、
辿り着いた港にあった楽園行きの船に飛び乗った。

そして不可侵のこの島へとたどり着いてからも、
『兄だったもの』を収蔵品に捧げて内部へと入り込み、
警備員としてそれを守る役目を果たす事で
じぶんたち安心できるもの』を守る事を選んだのだ。

……それが、肯定されざる欲なのだとしても。]
(59) 2022/11/12(Sat) 6:33:26

【人】 警備員 ジュード

[── たとえば、英雄譚に描かれる生贄の神子は、
多くがその運命を受け入れ、悲しげに微笑む。

献身の美徳を具えるそれは憐憫を誘い、
「殺すなんてとんでもない」と
見る者の心を揺さぶるのだろう。

事実、兄はそうであったように思う。


ならばもし、その神子が男のように臆病で、
死にたくないと逃げ出したなら、
人々はそれを憐れむだろうか。

もし男が読者の立場になった時、もしくは
神子に救われる筈だった立場になった時に、
その臆病者へ石を投げずにいられるだろうか。]
(60) 2022/11/12(Sat) 6:33:56

【人】 警備員 ジュード

["謙虚"で"かわいそう"に見えなければ、
ひとは毒虫に林檎を分け与えず。
怯えてその果実を投げつけるのだろう。
使命を果たさないのならば、猶更。

それは彼らが侵されず生きる為の
正当な権利だろう。自己防衛策だろう。


それでも、侵されぬ事を、ひとの仲間に入る事を、
"安心"を、求めてしまったのだ。


……いつか、書架で作家を目指す者たちが語っていた。

"役割を持たぬ背景、役割を持たぬ登場人物は、
よい物語には登場させるべきではない。

粗雑な扱いをするくらいなら
生まれないほうが、その者のためでさえあるのだ。"と。

その言葉は役割を放棄する男の意識の深く刺さり、
いつまでも、取り除くことが出来ずにいる。
]
(61) 2022/11/12(Sat) 6:34:33

【人】 警備員 ジュード

[殺さないでおいてもらえる、罪を赦してもらえる
それだけの同情の余地を得る為に

男は非合法なルートで仕入れた薬で心を塞ぎ、
憶病な己を偽って善良であるように努めた。

人並み以上に努力して、努力して努力したつもりで、
気を緩めず、無害であることを証明しつづけた。

かつて定められた責務とは別の役割がある事を願い続けた。


全ては、己の欲望生を肯定してほしいのために。


── そうして積み上げた日常も、今や崩れ去り。
成れの果ては無残にも、男が歩いただけの道に転がっている。
*]
(62) 2022/11/12(Sat) 6:35:05
警備員 ジュードは、メモを貼った。
(a13) 2022/11/12(Sat) 6:44:50

警備員 ジュードは、メモを貼った。
(a14) 2022/11/12(Sat) 7:03:56

住職 チグサは、メモを貼った。
(a15) 2022/11/12(Sat) 10:23:02

【人】 住職 チグサ

[彼の口元を覆う布は、血に染まってはおりますが、おそらくは元の色も赤いのでしょう。彼もまた、裏切りの証を身にまとっておられました。
 彼の命は、急速に終わりに近づいていました。
 島を混沌へと堕としてなお、まだ心残りがおありなのでしょう。それは、未だ誓願が果たされていないことを表していました。
 うわごとのように繰り返しておられるのは、誰かの名でしょうか。
 死の淵から、絞り出すようにして繰り返しておられるその名を、私の耳では聞き取ることができませんでした。
 あるいは、祖の銀皮を求め、犀の角のようにただ一人歩まれた首魁、その理想に縋っておられたのかもれません。
 あるいは、持って生まれた魅了性に、その気は無くとも周囲を狂わせてしまわれた良家の御子息を、案じておられたのかもしれません。

 目の前でまさに息を引き取られようとしているお方の背景など、私には知る由もありませんでした。]
(63) 2022/11/12(Sat) 12:02:18

【人】 住職 チグサ

[ふと、いつもお世話になっているお医者様の、空のように捉えどころのない笑みが思い出されました。
 もしも私が医師であったならば──
 もしも私に、目の前の命を繋ぐ技術があったならば。
 あるいは、繋ぐことは叶わずとも、巧みなる死の技術があったのならば。
 肉の苦しみを抜き、楽を与えることができたのに。
 けれど、叶えようが無い妄想に囚われるなど、智慧ある者の行いではありません。

諸悪莫作 衆善奉行
自浄其意 是諸仏教

 仏の教えを思い起こして、肉の苦しみを抜くことは諦めて、彼の心に平穏をもたらそうとしました。]
(64) 2022/11/12(Sat) 12:03:23

【人】 住職 チグサ


 聞えますか。私の声が、聞こえますか。
 あなたは今、長い眠りに就こうとしておられます。
 無念でしょうか。無念でしょうね。 
 あなたに与えられたお役目は、この路地で果てることではなかったはず。
 けれどそれも仕方のないことです。
 さぞかしお辛いでしょうが、今は残されたわずかな時間を善きものとしてください。
 そして私に、そのお手伝いをさせてください。
 最期に思い残したことがあれば、私がお伝えいたします。
 果たせなかったお勤めも、あなたの同志が引き継がれるでしょう。
 また願い叶わずとも、あなたのご意志は遺された方の心に波紋を残し、行いで表していかれることでしょう。
 さぁ……

[私自身の血で、彼の体を濡らしながら、耳を口元に近づけます。
 このような傷を負った体では、お約束を本当に果たせるかは分かりません。
 分からないけれど、同志に託せるか、その前に私が死んでしまうかは大きな問題では無いのです。
 今、目の前で苦しんでおられる彼の心に安心をもたらすために、そのようにお伝えしました。]
(65) 2022/11/12(Sat) 12:04:14

【人】 住職 チグサ

[もはや声も出ないのでしょう。
 耳を近づけても、彼の喉からはヒュウヒュウと木枯らしのような死の笛が響くばかりでした。
 けれど声を失っても、口の動きで、お母さまに安心を求めておられることを教えてくださいました。

 もしかすると、彼のお母さまははるか昔に亡くなられたかもしれません。または、もっとお若いのかもしれません。けれど、ここに在るのは私の身一つです。
 ならば老いさらばえたこの身ほど適した体は無いでしょう。
 一つ頷いて、彼の頭の傍に正座をすると、その頭を膝の上に乗せました。
 今この瞬間、目の前で終わろうとしている一つの命。
 その命は、自らの胎を通じてこの世に産み落とした我が子であると、心に定めたのです。]
(66) 2022/11/12(Sat) 12:05:43

【人】 住職 チグサ


 よく、頑張りましたね。
 赤い布を身に纏い、汚名を着てでも、あなたは誓願を成し遂げようとした。
 あなたは何恥じることも無い、私の自慢の息子。
 お勤め、ご苦労様でした。あなたは十分に働きました。
 後のことは、もう後の方にお任せしましょう。
 どうか母の膝で、安らかに眠ってください。

[膝に乗せた頭はすっかり脱力しきっておられ、足の血が止まる程に重く、全く安定しないがために何度もずり落ちかけました。
 その額に手を当て、冷えた掌を強く握って、今ここに在る母の熱を伝えます。]
(67) 2022/11/12(Sat) 12:05:53

【人】 住職 チグサ

[──やがて。
 彼の指に力が入り、私の手が握り返されました。
 次の瞬間に力は抜け、静かな笛の音が鳴りやんで、一つの命が終わったことを悟りました。

 虚空を眺める瞳に既に意志は感ぜられず、涙に磨かれた眼は、ただありのままを映しておられます。
 やがて渇きゆくその瞳に手を当て、瞼を重ねると、舎利礼文、と唱えます。
 命潰えた路地に、単調なお経だけが響き渡りました。]**
(68) 2022/11/12(Sat) 12:07:16

【人】 給仕 シロタエ

[街灯もなく、周りの行動が時間を忘れていれば、今がいつかなんてわかりはしない
道端で転がる姿はあるけれど、眠っているのか死んでいるのか
どちらにしても娘には関係ないこと
今が何時でここがどこか、そんなことは今はどうでもよかった

ただ気分がよかった
誰の顔色も伺わず
誰にも遠慮することなく
思うままにいられることが
それが本来道を踏み外すことだとして

そうしたいと思っていたのは紛れもない娘自身]

 でもね、みんなロクデナシが悪いのよ!
 迷惑だから片付けるの、アタシは何も間違ってないわ!


[あはは、と笑いながらふらふらと彷徨う
転がる誰かを迷惑なロクデナシと踏みつけて]
(69) 2022/11/12(Sat) 23:09:04

【人】 給仕 シロタエ

[娘は運がよかった、或いは何かの本能なのか
酷い争いの現場にも、突進してくるからくり車にも遭遇せず
誰かが仕掛けた筈の罠にも、誰かがまき散らした毒にもかかることはなく

路地裏から不意に現れる者にも会わず
敵わないほどの力の差があるものは無意識に避けて

自分こそが正しくて強いのだと思い込んで

まともなら娘こそが片付けられる側だということも
娘など取るに足らない存在と一蹴するものがいることも
きれいさっぱり忘れ切って

底なしの泥沼がそこにある事さえわからない]
(70) 2022/11/12(Sat) 23:10:46

【人】 給仕 シロタエ

[辿り着いた一角は住宅地「だった」場所
うち壊され崩れた家、炎がちらつき煙を上げる家
「ここは俺のものだぁぁぁ!」と叫んで男が窓から投げ落とす住人らしきものを避けて

緩慢な動きで扉を、壁を叩き壊す男を見つけた]

 あらぁ、悪い人!

[でも、もしかしたら頼まれたのかもしれないし、ロクデナシというのは違うかしら?
娘は思う
勝手な判断で殴り倒せそうな相手だけを選んでロクデナシにしていたように
勝手な判断で敵いそうにない相手を避ける理由を付けて

それでよかった、今までみんな自分のことだけで
娘がどう反応しても気にしなかったから、娘も好きに対応できた

だけどその時、その「悪い人」は確かに娘に反応した
あからさまな怒気と狂気を全身から溢れさせて*]
(71) 2022/11/12(Sat) 23:13:43

【人】 娼婦 セツナ

 
…扨。
私は、求めたその宝を得られたのかといえば、叶わなかった。
だって私の身を守るのは、心許ない赤い布一枚。
それは何かの拍子にいとも容易く奪われてしまう。
それは何かの拍子に外れてしまう。
それは、何かの拍子によって。
 
 
そして今の私は路地裏に転がっていた。
赤い布どころか、身に纏っているのは何一つない。
身体のそこかしこに痣やら噛み跡やらが刻まれ、身体中が何かの体液に塗れた状態で、今もその身体は男たちに弄ばれている。
胸を。髪を。尻を。手を。腋を。口を。喉を。
そして勿論膣も使って欲望を吐き出されている私は、ただひたすらそれを受け入れていた。
だって。
だって、わたしは、どうしようもなく。
 
(72) 2022/11/12(Sat) 23:43:06

【人】 娼婦 セツナ

 
愛しいあの人が私に何かを求めているくせに、私に何も返さないのを知っていた。
それでも、恩人だから、愛する人だから、何にも変え難い人だから。
その願いを叶えることを至上の喜びにして生きてきた。
あの人のためだけに生き続けることを願っていた。
でも。
知っている。知っているの。
 
あの人の為に身も心も魂も捧げて生き続けてきた私。
私は、心の奥底ではそれをもうやめたかった。
だって、あの人は私を振り返ってはくれない。
決して私を愛してはくれない。
私の想いを知りながら、あの人はひたすら私の主人あるじで、対等に生きていけるはずがない。
なのに私は身を粉にして働いていた。
あの人の願いを叶える為に、宝を得ようとした。
あの人の望むものを、手に入れられるように。
 
(73) 2022/11/12(Sat) 23:43:28

【人】 娼婦 セツナ

 
でも。
心の奥底ではずっともう辞めたくて。
娼婦なんて辛い。
身体をあの人以外に明け渡したくないのに。
あの人の事を思っていたいのに。
愛しい愛しい愛しい貴方。
でも。
身体を開け渡したくないとか触れられたくないとかそれよりももっともっと深い場所からの私の願い。
それは。
もう、何もしないで眠りたい。

任務も仕事も何もかもやらないで、無責任に自堕落に過ごしていたいの。
仕事は疲れた。報われない想いを抱き続けるのも疲れた。
疲れた。疲れた。あー疲れた!!!
触りたい? 勝手にすれば良い。
痛いのは好きじゃないけど、SEX自体は気持ち良いは気持ち良い。
後先考える? 面倒面倒。
勝手に私の体を使えば良いよ。
私は好き勝手、その気持ちよさだけ味わって。
時々吐いてしまうけど、喉の奥を突けば仕方ないよね。
お尻を何も解さずに突けば便意が来るけど、トイレ行くのもめんどくさい。
臭いけど仕方がないや。尿意だって仕方がない。
鼻水も涎も。撒き散らして仕方がないよね。
だってトイレに行くのも面倒なんだ。
実は生きてるのも面倒なのかもしれない。
 
(74) 2022/11/12(Sat) 23:44:18

【人】 娼婦 セツナ


気持ちよかったり、痛かったり、私の反応は薄い。
あたりは男たちの精液や私の漏らした便や尿、吐瀉物なんかで凄まじい臭い。
それでも、わたしはなーんにもする気がない。
だって面倒。面倒なの、何もかも。
妊娠しちゃうかも? 病気になるかも?
しーらない。
そんな面倒なこと考えたくもない。
 
 
とある路地裏。
肌の打ち合う音、荒い呼吸、それに混じって私のくぐもった声。
そんな音が、途切れなく続いている。
音が途切れるとしたら、正気に戻った時か。
 
私の声だけ消えたとしたら。
それは私が、生を手放した時。**
 
(75) 2022/11/12(Sat) 23:44:40

【人】 警備員 ジュード


 ── 夜:北の方角へと ──

[向かう方角からにげてくる
赤い口布をした、それぞれの宝物を持つ
火事場泥棒たちを押しのけて。

背後にも燃え上がる狂宴を北げる中、
男は一つの期待を抱いていた。


こちらの方角には、彼の
友人の館があったはず。>>1:34


その中であれば、もしかしたら、
静かに過ごせる存在を許されるのかもしれない、と。]
(76) 2022/11/12(Sat) 23:57:06

【人】 警備員 ジュード

[彼以外にも、気にかけてくれる人はいた。
自分を信用して頼ってくれる人もいた。
その過程で家にあげてくれる人も。

簡単に気を緩める事は出来なかったとはいえ、
彼等から与えられる”害さない”という意図は、
男も理解していた筈だ、と思っていた。

彼の言葉にだって、食事の後になったかもしれないが、
”みんなやさしいですよ!”と答えただろう。>>1:111


……それでも、
皆、どこかでは未知を恐れたのか。

何をやる必要がある訳でもなく訪ねる事を許されたのは
特別なことだったから。>>0:118


汚れた身体で今後彼が長くを過ごすだろう場所へ
行ってしまってよいのかと、普段なら考えただろうが

今はそれよりも、安心できることを求めていて。]
(77) 2022/11/12(Sat) 23:57:28

【人】 警備員 ジュード

[── 求めて、いたのだけれど。

かつて館のあった筈の場所は
無惨なものだった。>>1:69


炎は未だ高く燃えているだろうか。
それとも、風に煽られて早々に
館を焼き尽くしたのだろうか。

きっとその館には、職人が感動する程の
貴重な意匠も含まれていたのだろう。
貴重な物品だって収められていたのだろう。

しかし、男にとってより貴重であったものの
喪失の可能性を前に、それらに意識が向けられない。


館に生き残りがいるとは思えなかった。
その事が、男の意識の殆どを占めた。]
(78) 2022/11/12(Sat) 23:57:52

【人】 警備員 ジュード

[期待はあっけなく打ち砕かれ
それに代わり、抱いた希望を凌駕する
絶望感が、不安が、男の心に流れ込む。


彼の着けていた赤い布と>>0:52
あの時、人々が着けていた赤い布。>>1:25
その関係を知らぬものだから

まさか、友が逃げ延びているとは思わず、
男は、彼までもが炎に巻き込まれ
死んでしまったと思った。

また、死の予感を見過ごしたのだと
見殺しにしたのだと思った。


周囲にも延焼したらしい炎の熱波の中
かつての館の前の道にへたり込む。
流れる涙に、粘性はない。

恐怖を感じた時にのみ毒は混入する。
であれば、後悔と悲しみに流れたこれが
粘性を孕まないのも道理だろう。]
(79) 2022/11/12(Sat) 23:58:06

【人】 警備員 ジュード

[粘液に塗れた男の衣服や髪には
幸い、火が付く事はなかったが、
炙られ気化する毒は
青酸と泥炭の混じったような匂いを伴う。

それは致死的な気体ではないが、
頭痛や吐き気を誘引するには十分な毒素だろう。


……どれだけ、状況を悪化させた後だろうか。


男はゆっくりと立ち上がり、
今度は走る事はなく、緩慢な足取りで
更に北を目指し始める。

何かを壊した子が、肉親に慰めを求めるように、
縋るもの、安心できるものをもとめて
『兄』を収めた水晶宮へと。*]
(80) 2022/11/12(Sat) 23:58:15