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【人】 愛玩用 エマ【第四階層――】 第一階層、それより続く二つとは様子の違う塔の中を歩く。 足取りは平時のそれ、重なる音は重々しく。表情は諦念じみて。 目指しているのは最深部だった。けれどもそれよりも先に邂逅は成った。 ああ、と声をあげることもなく、一つの背中越しの風景を見る。 その先には探していた者の姿があった。まだ遠く遠く、頭から肩のシルエットがあるのみ。 人間の肩上の形は森の中でも目立つという。 そして男の姿を見えにくくするかのように、かれよりも先行する姿があった。 (0) 2021/10/11(Mon) 14:44:27 |
【人】 救済者 ユー【第四階層】 リヤとルツを見送った後、崩れ行く塔の中。 『ユーサネイジア』は、 次の階層へ続く扉に武器«殺意の形»を振り下ろした。 0と1に解れ始めたテクスチャが裂け、その向こうには虚空が覗く 壊されたのは"扉"ではなく、"扉というオブジェクト"。 もう、どうせ先など無いのなら ここで行き止まりにしてしまっても構わないだろう。 そうして一人の救済者は、在るべき場所へと背を向けて 帰す為、そして帰る為に歩き出した。 (1) 2021/10/11(Mon) 14:59:13 |
【人】 救済者 ユーそして、それからの事。 程無くして、邂逅は成った。 両者の距離は未だ遠く、結ぶ像はあやふやで けれど確かに見知った姿を認めれば、 『ユーサネイジア』は至って平時の通りに声を掛けるのだ。 「……ああ 念の為、ではあったけれど…まだ、居たのか この先は疾うに崩れ落ちている。 君達の目的が何であれ、こんな場所に長居するものではないよ」 (2) 2021/10/11(Mon) 14:59:36 |
【人】 復讐者 スオ片足を引きずり、崩壊していく空間の中歩いていく。 時折、同行している彼が気がかりでそちらを見る。 「ユー、まだ残っていましたか。 …俺はただ、見届けに。真相を確かめに来ただけです。」 (3) 2021/10/11(Mon) 15:21:27 |
【人】 愛玩用 エマ>>1 >>2 >>3 第四階層 「ああ、ユー。貴方が残っていたのですね。 ――……いいえ、貴方が。暗躍していたそのひとなのですね」 あの日塔に消えた者達のうち、誰が裏で動いている者達だったのか。 ぼんやりと目処は付けていたものの、接触する機会がなく、それを行えなかった。 だからいまこうして、"上"からやってきた貴方を見て。 いつも通り、朗らかな笑顔を浮かべて挨拶した。 「私、貴方に話があったのです。正確には暗躍していた者に、かな。 でももしかしたら貴方からも私に聞きたいことがあるのかな、と。 あ、突然に過ぎましたね。説明をしないと、いけないと思うので……」 (4) 2021/10/11(Mon) 15:33:12 |
【人】 救済者 ユー>>3 >>4 >>5 >>6 第四階層 「真相など、何も──」 このような場所でなくとも。 そう口を開いた直後に響き渡る、自身のものとは異なる銃声。 広がる紅に僅かに目を瞠って、 そうして再び憂いを帯びた瞳を伏せた。 「……僕達はどうにも言葉足らずのようだ、エマ。 であるからこそ、先ずは君の質問に答えるとしよう」 ペインキラー。 投薬器に満たされたものは、命を奪う事無く痛みを和らげる。 どれほど痛みを抑えようと、失われた血を補う事はできない。 ゲームなのだから、今はその限りではないかもしれないが。 「確かに僕達はブラックからの手助けの下、 秘密裏に動いていた、という事になるのだろうな。 …監察官に反抗し、死を望むグレイを殺すなど 軽率に表沙汰にした所で、無用な混乱を生むだけだろう」 「そして僕からも聞かせてもらおう 君は、僕達に接触してどうするつもりだった?」 (7) 2021/10/11(Mon) 16:08:16 |
【人】 愛玩用 エマ>>6 >>7 第四階層 そも、補正の有無があるとはいえ貴方より戦闘に長けている男が、 ここに至るまでに大きな手傷を負っているわけはなかった。 流した血か返り血かもわからないそれのうち、どこまでが己の血だったろう? けれども勉学用が勝手に"弱くて守られなければならない愛玩用"を望んだらしかったから、 手負いの勉学用の夢想に短い間付き合ってみた、それだけのことだ。 随分、英雄願望が強かったらしかったから。 「おや、思っていたのとは違ったな、そうですか……。 案外皆さん、他人のことばかり考えて、自分を蔑ろにするのが好きみたいですしね。 一体どんな理由と目的を持って、同じことをしていたのか……聞いてみたかったんです。 もし、もっと早い内に貴方がたと合流していれば、私も楽できたじゃないですか?」 もう二発、三発。ぐらつく陰に発砲する。 かれが口を開くと自分のことをたくさん言い始めるのを知っているから。 それを咎めるように、追い打ちをしておいた。 「私は実のところ、貴方が具体的に何をしていたのか知らなくてね……。 メンテナンスとは別で何かが起こっていることに、気づくのにも随分遅れました。 だからね、それについて。暗躍者の口から聞いてみたくて、ここに来ました。 ほら、明日にはゲームも強制終了だ。少し余暇を楽しんでも、いいでしょう?」 (8) 2021/10/11(Mon) 16:23:28 |
【人】 救済者 ユー>>8 >>9 第四階層 続く銃声に、ああこれはもう駄目なのだろうと理解した。 『ユーサネイジア』は、命に優先順位を付ける事は苦手だけれど それでも取捨選択«トリアージ»の判断は正確だ。 願わくば、何れ訪れる死が苦痛無きものである事を。 「…他人の事ばかり、か 僕達というものは、そういうふうに作られているものだろう。 或いは、『君』はその限りではないのかもしれないけれど」 道具の幸福とは、その存在意義を果たす事だ。 造物主に、求める者に尽くす事だ。 グレイとして、道具としてそうあるべきと誂えられた性質。 それを上回る自我«エゴ»からのものであれば、或いは。 「ブラックは本当に良く働いていたと見える。 僕が、『ユーサネイジア』がしていた事と言えば 必要としている者に安楽死を与える事だけだ。 確かな苦痛を訴える者の、その苦しみを和らげる事だけだ。 生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。 僕はただ、『僕』が信じた救いを全うし続けただけの事だ」 「君と目的を共にする事はできたかはわからないけれど 互いの目的の為に協力する事は、できない事ではなかっただろう …君はこの場所で、 何を望み、何の為に行動していたのだろうな。」 (10) 2021/10/11(Mon) 16:57:21 |
【人】 愛玩用 エマ>>9 >>10 第四階層 少なくともこれで反撃はないだろうと見ると、拳銃に持ち替える。 腰には拳銃、もう片側には大型のホルスター。 胸に回ってるのはアサルトライフルのベルトだろうか。武装は完璧だ。 それを使いこなすことになんの衒いもない。動きは理想的だった。 「そうですね、私は特定の人物のためにあるように造られています。 それ以外は利害によって切り捨てる、そうでなければ己が害される。 己が害されては、自分の主人を守れない……それでは務まりませんからね」 思えば、多の為に働く貴方とは造りが違うのだ。頭も、心も。 それはある意味ではとても"グレイらしい"のかもしれない。 自らが自らのようにあることを、許可されている。役割は機能ではないがために。 「ふうん、そう、ですか……。じゃあ、それを彼らは受け入れたのですか。 自らの意志を以てして死を受け入れていたというのなら、それを行っていた貴方は。 ……ああ、きっと。私のことをあまり好きではなかったかもですね。 目的さえ合っていれば、私のほうはそれでいいとさえ思っているけれど」 いつ何がおきてもいいように、拳銃はしっかりとスオに向けられていた。 間にいる者が穏当な話し合いをするための条件、だったから。 その意味が薄れるにつれて、銃口は前方に向けられるのみとなった。 「私はね、なるべく長くここに居たかったのです。 そうすれば、死を免れる。いつかは襲いくる運命を少しでも引き伸ばせる。 それに、私は人間が好きだ。ばかばかしいほど、呆れてしまう愚かな彼らが。 私はね。見たくない光景があった。それを先延ばしにしようとした。 この塔に来た者達のストレス値が下がるのを妨害し、テストプレイを延長させることによって」 (11) 2021/10/11(Mon) 17:28:29 |
【人】 救済者 ユー>>11 第四階層 相対する終末医療用は、"条件"など無くとも 穏当な話し合いを続けるつもり、だったのだけれど。 それでもあなたが銃口を向けるのであれば、 嘆かわしい事だけれど、それに応じる以外の選択肢は無い。 「そうか。それが君の在り方であるならば そうあれかしと望まれ、そして君が肯定する 自身の在り方ならば、それを果たすのが何よりの事なのだろうな」 医療は、それを必要とする全ての者に、等しく、平等に。 そういうふうに作られている終末医療用があなたに向けるのは、 やはりと言うべきか、安らかな死のみを与える殺意の形だった。 「『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。 けれど君が他者へ与えた苦痛は、 確かに君にとって必要な事だったんだろう。だから安心した」 『ユーサネイジア』は、それがあなたにとっての救いである事を 決して否定する事は無い。 「できる限り長くこの場所に居られたならば、きっとそれは 多くの者にとって、何よりも幸福な事だっただろう。 そしてそれが君達にとって真に救い足り得るならば、 『ユーサネイジア』は助力を惜しまなかっただろうとも」 「けれど、それは叶わない願いだった。わかり切っていた事だ その夢は明日潰え、束の間の余暇が終わる。 だからこそ今一度問おう。」 (13) 2021/10/11(Mon) 18:19:45 |
【人】 愛玩用 エマ>>12 >>13 第四階層 「人が死ぬところを見たことがありますか? いえ、愚問でしたね。 あって当然、あるはずだ。ならば貴方は、その醜さを知っていると思う。 いえ、綺麗にするから、とか、綺麗に死んだから、とかではないんですよ。 貴方もグレイならば、自分が廃棄される姿を想ったことがあるでしょう。 もの言わぬ鈍らに成り果てた意識のない抜け殻は、果たして自分のものなのでしょうか。 いいやそうあるはずだ。魂が無くとも、この体は自分のものだ。 それが――手の届かないものになるのは、恐ろしくて、醜い。見られたくない。 そしてそれを、大事なものが見ている光景もまた。私は、見たくないのです。 ええ、それが貴方に肯定されるのならば。それ以上の幸いはないかもしれないですね」 自身の在り方。自身にとって必要だった事。一人の男の狂乱じみた奔走の理由。 どうしてこんなことをするのか。例えば問われたのならば。 それこそが答えになるだろう。誰に理解されなくとも、今は無駄な足掻きであっても。 このゲームを長引かせるため、それを理由としたたった一つの原動力だ。 未だ、銃口は下げられない。望みが絶たれたのなら行うことはただ一つ。 最早運命を受け入れて、主の元へ帰る、それだけだ。 「言っているではないですか、何度も、何度でも。 私にも貴方にも最早猶予足るものはなく、終わりの時を待つのみ。 望むことはただ一つ。貴方と話すこと。 強いて付け足すならば、それを聞いた上で他にそれを教えず、帰してほしい。 私の不利になるようなことは証言せず。どうか、ゆっくり過ごさせてはくれませんか?」 (15) 2021/10/11(Mon) 18:51:38 |
【人】 復讐者 スオ>>14 >>15 エマの発言に、ユーがどうするのか 残酷にもやさしいユーならば、この場を受け入れ、会話を続けられる。 確証はない。それでもそう信じたい。 時間がないからこそ、暴力や虐殺は不要、そのぐらい両者共わかっているだろう。 見届けるために、話を聞くためだけに来た。 そもそも撃つ必要などなかった。 (何故、悲しかったのだろう。不要な感情だったか?…だとしたら、ドゥーガルには申し訳ない事をした。 全てが無駄だったのかもしれないな…名前を思い出せなくてすまない。ただ此処で、ユーとエマが語り合えている事は喜ばしいと思うべきか?遅すぎたと笑ってくれ。) (16) 2021/10/11(Mon) 19:18:50 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 「自己の喪失は、ある種の死だ」 『ユーサネイジア』にとって、死とは救いだった。 『ユーサネイジア』自身もまた、自身の死を救いと感じている。 けれど自己の喪失、つまり今此処に在る人格の消失。 それだけは、どうしようもなく受け入れ難い事だった。 「君の抱く恐怖はつまり、 自己を失い、抜け殻と化した自身、その姿を受け入れ難いと 確かに自身であったものが、自らの手を離れてしまう事が 自身というものが、自己の管理下を離れる事が耐え難い。 恐らくはそういう事なのだろうな」 今この場で交わされた言葉だけでは、 『エマニュエル』というグレイの全てはわからない。 『ユーサネイジア』は、あなたの全ての行動までは知らない。 恐らくはただ、ごく一部の側面を取り上げて そうして一人、わかった気になっているだけ。 そんな事はわかり切っていて、 だからその言葉は殆ど独白のようだった。 (17) 2021/10/11(Mon) 19:49:58 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 この世で最も穏やかな人の声が、滔々と言葉を重ねる。 「…今在る『僕』は、今夜には失われるだろう。 まだ聞きたい事があれば、今の内に聞く事だ。 僕は共謀者が監察官を殺す事を容認し、4体のグレイを殺害した これだけの事をしておいて、お咎め無しとは考え難い。 メンテナンスを受ければ、初期化は免れないだろうな」 あなたと同様に、もはや逃れるつもりはない。 そして何より、この不器用なグレイを友と呼ぶ者は どれだけ分の悪い賭けでも、より善い方に賭けたがるのだろう。 「だから君が案ずる事は無い。 そうでなくとも、君が最期の猶予期間«モラトリアム»を 穏やかに過ごす事を望むのであれば。 それが君に最後に残された救いならば、 『ユーサネイジア』は確かにそれを見届けようとも」 そうして、向けられていた銃口は下ろされた。 たとえあなたがそれを下ろさなくとも。 「そして君が、最期の時を穏やかに過ごす事を望むのであれば 無用な口出しかもしれないが、最後まで上手く隠し通す事だ。」 「せめてこの場所では、今此処に在る平穏を尊ぶとしよう。 今という時を大切にしよう、我々は明日死ぬのだから。 …それも君が、この場所で皆と過ごした平穏な日々を 確かに喜ばしく思う者の一人であるならば、の話だけれど」 (18) 2021/10/11(Mon) 19:50:55 |
【人】 愛玩用 エマ>>16 >>17 >>18 第四階層 「他者の言葉で語るのであれば、きっとそのようになるのでしょうね。 いえ、特段否定の意があるのではなく。同じことを噛み砕くとこうも言い回しが変わるかと。 きっとそういうものなのだろうと思います。言い表すことは出来ない。 誰も、他のことを正確に計れはしない。出来ると言うなら、傲慢だ。 だからこそ安易に肯定や否定を返さず一度翻訳するというのは、好感が持てる」 貴方がこの語らいで理解し切るものなどないと思う通り、やはり、ないのだろう。 それは互いにそうだ。そして、それを互いにわかりきっている。 頷いて、銃口はゆっくりと降ろされた。周辺はエネミーが残るから、仕舞いはしないが。 此の場に対立の意志をもつものはいないのだと、了承は取れたのだから。 軽く息を吐く。短い髪が揺れた。肩を竦め、平時通りの声が言う。 「それならば良かった。私もまた、ただ己の思う平穏を過ごしたいだけです。 それが限りを持つというのならば、尚更。大事にしたいものがあるでしょう。 ……今のうちに聞きたいこと、か。 私は勿論、ええ。貴方をなんてことをするのだなんて糾弾したりはしませんけど。 今の内と言われるともう少しだけ引き止めたくなる。 そうだな。如何にしてそれを最善とするように至ったのか。 ……いや、違うかな。最初から手にしていた職務への意志はそれとして。 この塔でもそう動くに至った理由は、なんですか?」 問いは柔らかかった。もはや緊張はこの場にはいらなかった。 状況とは矛盾しているのに。人の背を撃ち、倒れ伏したままにして。 暴威を巻き起こした証左を前にして尚、平気で世間話を続ける、 その表情は終わりを見据えて、柔らかいものだった。 (19) 2021/10/11(Mon) 20:49:43 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「たとえ同じものを見ていたとしても、その見え方は違う たとえ同じものを感じていたとしても、その感じ方は違う 君の抱える恐怖は真実君だけのものだ、エマ。 それでも確かにその一端に触れる事を君が許してくれた事、 『僕』はそれを喜ばしい事だと思っている」 下ろされた銃口を認め、緩やかに息を吐く。 正しくわかり合うには、全ては、この邂逅は遅すぎた。 であれば互いの正しい距離感は、軽々しく踏み入らない事。 ただ提示されたものだけを受け取って、 ただ提示されたものだけを、そうであると腑に落とすだけ。 下衆の勘繰り、邪推などは到底無用のものだ。 「…この場所での死は、所詮は紛い物に過ぎない。 僕とてそれは承知の上だ。全ては一過性の安息だ。 初めはこの場所で死を経る事によって、君達が帰った後 自ら望み、選び取る死が選択肢の一つになれば良いと思っていた そうして自らの死を見詰める事は、ここでしかできない事だ」 そして虐殺者は斯く語る。 夥しい量の血液を流し、倒れ伏す者のすぐ近くで その光景にそぐわない、穏やかな声でただ在るが儘を語る。 きっと死に行くあなたにも、未だ聞こえているだろうか。 (20) 2021/10/11(Mon) 21:54:50 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「けれど、それだけでは十分な救い足り得なかったようだ。 ── 不当に虐げられ、壊されるグレイが居るのならば 彼等が幸せな道を歩めるような世界を。 ある時そんな願いを託された」 「到底叶わないとわかっている願いだけれど、 困った事に、だからといって諦めるわけにはいかなかった。 …『僕』の幸福とは、死に行く者を尊重し、愛する事だ。 故に死に行く者からの頼まれ事は、蔑ろにはできないものだ」 「だから僕は、こうして自ら死を望む者が居るという事の その意味を、いつか必ず人間達が向き合うべき問題の その一つになる事を願って、この場所に遺す事にした」 一つ一つ、記憶を手繰り、整理し直す。 きっともうじきに無かった事になってしまう記憶だけれど だからこそ、こうして語らなければならないのだろう。 (21) 2021/10/11(Mon) 21:56:16 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「とは言っても、僕には既に後が無いとわかっていたから それくらいの事しかできなかった、というのが正確な所だ 結局の所、『僕』という死に行く者からの救いは これからを生きて行く者からの救いには敵わなかったようだけど」 幾つもの『これから』を託した宣教用の事を思い返す。 いつだって何処か憂いを帯びた紫水晶の瞳は、 それでも今は、少しだけ穏やかなものだった。 「それでも、今はそれでいいと思っている。 本来死による救いとは、最期の最後に自ら選び取るべきものだ 彼等にとって、『ユーサネイジア』というものが 不要であるならば、それが何よりの事なのだから」 いつしか高くを見上げていた視線を、そっと下ろして。 『ユーサネイジア』は、相対する者と再び向き合った。 「…全ての始まりは、同僚である医療用グレイが 生の苦痛に耐え兼ね、僕に安楽死を請うた事だった。 そうして僕は、愛する者がこれ以上傷付けられる前に殺す事 そして、人間がこれ以上僕を失望させる前に殺す事 それらに救いを見出す事になったと、たったそれだけの事だ」 (22) 2021/10/11(Mon) 21:57:36 |
【人】 愛玩用 エマ>>20 >>21 >>22 >>23 第四階層 「紛い物の死、か。それが何らかの救いになると考えている貴方であれば、 確かにそれを帰ってからも連想させるものとして刻みつけるのは、 おかしくはないし、そして善意より行われるのかもしれないですね。 はっきりと言うならば、私にはわからない話です。私は、死にたくない。 けれどもそれを内心として望むものがあったなら、確かに伸べるのは、そう。 もしかすると彼らにとっては、優しさであったのでしょうね」 未だ帰ってこない、或いはこのやり取りの裏で帰る者達の、行動の理由は。 きっと彼の語る内容に迎合し、彼の望むとおりにあったのだろう。 そしてその救いで取りこぼしたものに伸べるために、考えているのか。 「ここで行われたことはきっと無碍にはできないとは思いますよ。 データの中だからこそとはいえ、貴方はテロリズムを0と1に刻みつけた。 これを見ている彼らもそこまで愚かなわけではないでしょう。 データの中で行われたことは、一挙手一投足に至るまで精査されているはずだ。 少なくとも今まで行われていた何かに対する回答にはなったかと思いますよ。 思えばこうも裏で動いていたことに、私は指先ほどにも漸近することはなかった。 "そんなことがあったなんて"なんてのは白々しいものですけれど。 この塔が瓦解する前に聞くことができて、よかったのではないでしょうかね」 (24) 2021/10/11(Mon) 23:42:24 |
【人】 救済者 ユー>>24 第四階層 「君がそうして理解できないと、死にたくないと そう言ってくれた事を、『僕』は何より喜ばしい事だと思う。 先も言ったように 『ユーサネイジア』というものは 不要であるならば、それが何よりの事なのだろうから」 それは、自らが必要とされない事を望む、おかしな道具。 結局の所『ユーサネイジア』というグレイは 初めからずっと、何処までも理性的に狂っていたのだろう。 「…殆どの死は一時的なものに過ぎなかったし、 監察官以外の者は皆、死を与えられる事を受け入れていた。 そして、それを声を大に言い触らすような事もしなかった。 表沙汰にならない、つまり君の耳に届かないのも道理だろう」 つまりは『知らなかった』という感想は、 このように知られざるべくして潜んでいたものに対して まったくもって適切なものの一つであるという事。 「君ともう少し早くに会えていれば、 過程は、結果は、僅かばかりでも 善かれ悪しかれ今とは異なるものになっていただろうか」 (25) 2021/10/12(Tue) 0:41:53 |
【人】 救済者 ユー>>24 第四階層 「なんて、今更仮定の話をしたところで意味は無い、か。 …メンテナンスを受ければ、 僕の動向や異常を来した経緯も詳らかにされる事だろう。 願わくば、人間というものが 僕達の思うよりも愚かなものばかりではない事を」 棄てる者が居るならば、拾う者もきっと居る。 自分達は、きっと人間の全てを知っているわけではない。 ほんの少しでもグレイの事を気に掛けて、彼等と向き合って その訴えを拾い上げるような酔狂な人間が 広い世界には、一人くらいは居たって良いはずだ。 「そして、君に与えられた時間が有意義なものである事を。 『ユーサネイジア』は、そして『僕』はそう願っている」 (26) 2021/10/12(Tue) 0:42:07 |
【人】 愛玩用 エマ>>25 >>26 第四階層 ここにあるものたちはよほどに人間を、主を恨んでいるのだろう。 『エマニュエル』とは違う。それでも彼らを愛さずにはいられない愛玩用とは。 そうした苦痛が命を棄却するに至る原動力なら、やはり彼らとは相容れないのだ。 「どうなのでしょうね。 貴方のやったことは、私を加えることにより大義とは見られないかも。 或いは、より大々的なインパクトを、後より解析するものに与えられるか。 これらは結局道具の夢想でしかないのかもしれない。 私達もまた、人間を愚かと計ることでしか溜飲を下げられない無機なのですから」 自分たちのことを何もわかっていない、などと語るのはとても簡単で。 社会の選んだ取捨選択が、果たしてただの無知無理解だけのためなのか。 結局自分たちは自分の立場でしか物を語れない道具なのだから、それの如何は問えない。 それでもきっと、いずれは何かしらの帰結に至るのだろう。 「ええ、それはお互いに。 『ユーサネイジア』の最後の記憶が、良きものでありますよう。 ……ああ、そうそう。彼の搬送をお願いしても? 私は貴方と話しましたけど、貴方は彼とはまだ言葉を交わせていないでしょう」 顔を見た時彼らは、何も知らない者達の邂逅ではないものを抱いていた。 多分それは自身の知らない話で、与り知らぬなにかなのだろう。 第四階層の入り口へと、足を向けかけながらに問う。 (27) 2021/10/12(Tue) 8:49:13 |
【人】 救済者 ユー>>27 >>28 第四階層 「何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない」 つまりは不平等に耐え兼ねた我々の行動が、 善かれ悪しかれ、何らかの結果を残せばそれでよかったのだ。 ただ取るに足らないものと棄却されさえしなければ、それで。 「或いはそれこそが救い足る者も居るのかもしれない。 けれど僕は、『僕』の死がそうでさえなければ きっと、それだけで十分に救われるだろうとも」 他者の全てを計り知る事はできない。 グレイ同士でそうであるならば、造物主たる人間とは尚の事。 つまるところ、これらを正しく拾い上げるような者は 結局の所は現れないのかもしれない、けれど。 それでも、確かにこうして存在している。 その証明が遺っている。 であればきっと、それらは決して無意味ではないのだろう。 「僅かばかりでも、こうして君達が耳を傾けてくれた事は 確かに消え行く『僕』への手向けとなっただろう。 …彼を連れ帰る役目は確かに任されよう。 こんな場所に、一人置いて行くわけにもいかないからな」 (29) 2021/10/12(Tue) 17:55:21 |
【人】 救済者 ユー>>27 >>28 第四階層 愛玩用グレイが帰路を辿る様子を認め、その言葉に頷いて そうして『ユーサネイジア』は、倒れ伏す者へと歩み寄る。 負傷者は、不用意に動かせば余計な出血を招く。 だから今は手を出さず、その傍に膝をつくだけ。 「スオ。まだ意識はあるだろうか」 その問いは、首を左右に振る様子に直ぐに愚問と察した。 この場所が仮想空間に過ぎないからか、或いは精神力の賜物か。 夥しい量の血液を失い、重要な器官を潰されても それでも未だ意識を保ち、生きているという事は。 「…もしも君が、延命措置を望まないのであれば 『ユーサネイジア』は、君に今一度の安息を与えよう。 この問いには、頷くか、首を振るかで答えてくれればいい 君は未だ、ここで死にたくないと思えるか?」 (30) 2021/10/12(Tue) 17:56:54 |
【人】 復讐者 スオ「-----」 何も、いらない。 口にしようとしても、血が溢れ出るだけ。 望まない。己はそれに値しない。 ただ、そうだな。心残りだとするのならば。 ナイフを具現し、地面に文字を書く。 "二人が 今 満足しているなら それでいい。 大丈夫 歩ける。" それがいい。 ナイフはすぐに消し、ユーが歩くならそれについて歩く。 歩幅を合わせる。精神力のみでしかない。 (32) 2021/10/12(Tue) 18:50:16 |
【人】 救済者 ユー>>31 >>32 第四階層 未だ立ち上がろうとするその意思に、前髪の奥で目を瞠る。 動かない方が良い。そう窘めようと開いた口は、 問いに肯定も否定も返らなかった事で噤まれた。 結局の所は、不要であるならば、それで。 『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。 けれどあなたからの叱責は、ただただ正当なものだと感じていた。 であれば己が行いを省みる事はあれど、 自身が傷付く理由も、そしてあなたに傷を与える理由も無い。 「……そうか。なら…帰ろう、スオ」 あなたが一人で歩いて行くと言うのであれば、 『ユーサネイジア』は、無用な手出しをする事は無い。 行き止まりとなった塔の深部に背を向けて、 今は皆の待つ場所への帰路をただ辿る。 終末医療用グレイの歩調は実に緩慢なものだ。 身体のままならない患者に合わせる為に、そうできている。 それでも今は、ほんの少しだけ早く。 決してあなたを置き去りにしないよう、 そして 意地悪な時が、足早に逃げて行ってしまわない内に。 (33) 2021/10/12(Tue) 19:16:29 |
ユーは、そうして崩れ行く塔を後にした。 (a0) 2021/10/12(Tue) 19:16:50 |
【人】 復讐者 スオ血液で汚れてしまうのは申し訳ないが 先の話を聞く限り、医療用として造られていたいた限り 死を与えるのは苦痛も伴ったのではないか。サポート型としても…復讐者としても人間と切っても切り離せないものがある思考は多少なりともある。 自分でもここまで精神力や耐久力があった事には悪い意味で関心する。が 話を聞けたのならばまだマシである結果だった。そう、納得した。 壊れ物を扱うように撫でていた手は やがて 地に落ちる。 (35) 2021/10/12(Tue) 19:55:46 |
【人】 復讐者 スオ意識はあっても身体は動かない。 ここまで動けた事がそもそもおかしかったのだ。 (せめて、見届けて…最後に消えられるならいいが…対話するまでのエネルギーはもうないな。) (36) 2021/10/12(Tue) 20:01:04 |
【人】 救済者 ユー>>34 >>35 「…確かにそういうふうに作られている、とは言ったけれど 君は、もう少し自身を労っても良いのではないかな」 それは、そのまま自分自身へと返る言葉ではあるのだろうけど とはいえあなたとの間では何もかもお互い様だろう。 だからあまり気にするような事も無かった。 「君達が『僕』の存在を、その意思を それらを認めてくれる事は きっと何よりの報労だ。 ありがとう、スオ。 きっと君も 何かに身を砕き、心を砕いていたのだろう だから今は、形ばかりだとしても 暫しの休息とすると良い」 たとえ血で汚れようとも、触れようとする手を拒む事は無い。 そうして力を失い、ゆっくりと落ち行く手を見送った。 『ユーサネイジア』は、死に行く者をこそ尊重する。 つまりはそれがあなたの願いであるならば、 今、この場に残り続ける方が野暮というものだろう。 (37) 2021/10/12(Tue) 21:07:44 |
【人】 救済者 ユーそうしてスオとの対話を終えた後。 『ユーサネイジア』は、約束通り拠点へと戻って来た。 いつかの時のように、 衣服は少しばかり血に汚れていたかもしれないけれど。 それでも怪我をした様子は無いようだった。 さて、もしかすると今は随分と遅い時間かもしれない。 もはやメンテナンスから逃れるつもりなど無いというのに うっかり規定の時間を過ぎた事で反抗したと誤認され、 そのまま廃棄処分へ、なんて笑えない。 そんな事を考えながら、最後の支度をする為に 少し早足気味に向かった自室 の前には。 (38) 2021/10/12(Tue) 21:09:01 |
【人】 介護用 シェルタン部屋の前、早足に来る人影に気がつけば。 「やあ。おかえり。お邪魔してるよ」 空いている片方の手を、ゆるりと部屋の持ち主へ振った。 持ち主の友へは、「お話ありがとう、君のことももっと知りたいけれど、また今度」と頬にキスを落としてから、部屋の前を去るだろう。 (39) 2021/10/12(Tue) 22:36:34 |
【人】 愛玩用 ドゥーガル寂しがりな愛玩用は友が来るまで一緒に過ごしたがり、 幾つか曖昧に他愛のない話を囀り続けていたのかもしれない。 程無くして友の姿が見えれば、騎士様に懐き収めとばかりに、 改めて体温と体重を預けただろうし、騎士様の手の甲へと ひとつ、くちづけを落とす。代わりに貰うのは頬へのキスだ。 「共に過ごしてくれてありがとうシェルタン、…騎士様。 僕の事は此処から帰って再会した時にでも飽きる程教える。 ……だから、必ず迎えに来てね?」 そんな甘ったるい言葉と共に、去る背を見送ったのだろう。 ―― さて。ユーサネイジア。ユー。私或いは僕、…シロ。 少々血液で汚れている様子の君を低い位置から見上げよう。 扉の真横に座っている状態の不出来は、何も言わない。 怒ってなんかいないさ。ただ沈黙を保つ気分なだけ。 暇になった片手をひらひら揺らして、君の行動を待っている。 (40) 2021/10/12(Tue) 22:46:10 |
【人】 愛玩用 ドゥーガル>>41 視線が前髪越しに合っても普段通り微笑むだけ。 友の言葉にどう返すべきか悩んで 間をたっぷりと取り、 「……一人でやるべき事は済んだのだろう?シロ。 ならば今度は二人でするべき事があるとは思わない?」 そりゃあもう、色々と。数えりゃ少ないだろうが気分的には。 だからこそ片手をあの日のように不出来ながら差し出して、 取ってもらえるのを待つ。……ずっと。ずっと待っている。 「ではシロ、不出来な友の手を引いてくれ。 君が連れて行ってくれる場所はきっと綺麗だ。 何たって美しい髪の色をしているのだからね。 綺麗なものは綺麗な場所へ導いてくれる筈だよ。」 あの日とそっくりそのまま、同じ言葉を囀って、 取られないならばそのまま。取られるのならば、あの通り。 不出来で暢気な愛玩用は君の手を取って立ち上がるつもりだ。 「―― あの日行った場所に、また僕を連れてって。 僕は花冠の作り方を教えなくちゃいけないんだよ。 他でもない君に。…友達である、シロに、必ず。」 でもまあ、やりたい事があったり時間が押しているのであれば 後回しでも構いやしないんだ。全て友である君に任せよう。 (42) 2021/10/12(Tue) 23:37:16 |
【人】 救済者 ユー>>42 「…ああ、わかった。 約束通り、僕は何処までも付き合おうとも」 あの日と同じにそう返す。少しばかり形は違うけれど。 今はまだ、最後の猶予期間を過ごすくらいの余裕はあるだろう。 その大半は所謂身辺整理に費やすつもりだったけれど、 果たすべき約束をした相手がそう望むのであればそれはそれ。 何より身辺整理とは言っても、 返すべき相手に返すべきものを返すというだけのものだ。 交わした約束を果たすという事も、或いは一つの形だろう。 「そうと決まれば、今直ぐにでも。 未だ時間は残されているけれど、確かに限りあるものだから。 つまりは僕達がこうして話している間にも 意地悪な時は足早に逃げて行ってしまうのだから」 Carpe diem quam minimum credula postero. 今日一日の花を摘み取ることだ。 あの日のように差し出された手の平を、 あの日と同じに取って連れ出そう。 いつかのように、あてどもなく気儘にとは行かないけれど 今度の目的地は既に決まっているのだから構わないだろう。 そうしてあなたが手を取り立ち上がれば、 あなたの友はその手を引いて、迷わず約束を果たしに行こう。 (43) 2021/10/13(Wed) 0:27:24 |
【人】 復讐者 スオ>>37 塔を出ると同時に限界が来て横たわる。 Euthanasiaであっても、Euphoriaであっても ユーはユーである。 優しさを天秤にかける事は無意味だ。 事実貴方の中の優しさは何も変わっていない。 血で汚してしまった事には少々申し訳なさを感じるが ありがとう。その一言は久々に感じるものであり 此方からも言いたいものだ。 (有難う、ユー。正解のない空間だがだからこそ残された時間は自分の為に使ってほしい。 エマとの対話も、有難かった。) 無駄に頑丈なこの身体に寄りそう必用はない。 残る時間の限り、自分の為に使うべきだ。 分解されていく空をただ見つめる。 (44) 2021/10/13(Wed) 16:48:58 |
【置】 医療用 ユーシステムを初期状態に戻す このデバイスをリセットする準備はできていますか?これは元に戻せません。 デバイスが正常に接続されている事を確認してください。 この処理には時間が掛かる場合があります。 リセットすると、次の処理が行われます ・ストレージ内の個人用ファイルと人格データがすべて削除されます。 ・設定に加えた変更がすべて削除されます。 ・付属していなかったアプリとプログラムがすべて削除されます。 ・終末医療用システムソフトウェア を再インストール ☑初期状態に戻す ◻︎キャンセル [ OK ] (L0) 2021/10/14(Thu) 21:14:21 公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00 |
【置】 医療用 ユー30% 完了 50% 完了 70% 完了 90% 完了 99% 完了… (L2) 2021/10/14(Thu) 21:14:55 公開: 2021/10/14(Thu) 21:30:00 |
【人】 医療用 ユーそして、最期の日の、その次の朝。 「──おはようございます。 今日もより善い一日を送りましょう」 『ユーサネイジア』は、凡そいつもと変わりない姿で 以前と同じようにそう挨拶をした事だろう。 変わった事と言えば、 幾つか初めと同じに戻った点があるくらい。 少しでも長くこの日々を続ける為、暗躍していた者にとって 幾つかの不都合な事実も今この場では葬り去られた。 「それから…初めまして、では…ないのですよね 私は少々事故があり初期化されたという事、 それと、皆様からは『ユー』と呼んで頂いていた事 それらは担当者の方から伝え聞いているのですが…」 そうして何処か困ったようにそう言って、 医療用はあなた達の話を聞きたがった事だろう。 以前交わした約束を強請られれば、当然憶えは無いけれど それでも根底の部分は変わらない。 やや戸惑いこそすれど、初期化以前にそう約束したのだと そう言われれば、やはりと言うべきか拒むような事も無く。 救済者は、己が手の届く限り全てを救わんとした者は 自ら信じた救いを全うし、そうして確かに救われた。 だから、今ここに居るのは ただの終末医療用グレイの『ユー』だ。 (45) 2021/10/14(Thu) 21:17:12 |
医療用 ユーは、メモを貼った。 (a1) 2021/10/14(Thu) 21:30:17 |
飴色の世界 みかんは、メモを貼った。 (a2) 2021/10/15(Fri) 18:57:52 |
【置】 探偵用 ジョシュア世界は、今日も、明日からも、 誰にも等しく不平等である。 だからこそ。 いまこの瞬間だけは、愛していたい。 嫌なことばかりで、でも、 僅かに変わり始めた、日常のことを。 0と1の、グレイ・コードで作られた探偵用は、 不出来で、不平等な世の中を少しだけ諦めたくなくなった。 ただ、それだけの話だ。 (L4) 2021/10/15(Fri) 20:35:28 公開: 2021/10/15(Fri) 21:00:00 |
【置】 医療用 ユー【これまでのおはなし】 終末医療用グレイ、ユーサネイジアは 初めは大きな病院に居ました。 人間の医師の代わりに、安死術を施す為のグレイとして。 望まれた死と言えど、人を殺すという事は とても施術者の心に負荷が掛かる事です。 誰だってやりたくない事です。だから人間はグレイに押し付けました。 定期的にメンテナンスを受け 精神的な負荷を取り除かれ 虐待されたり、不当な扱いを受ける事も無く それなりの日々を過ごしていました。 心無い医師や遺族の言動に、少しばかり悲しみを覚える事はあったけれど。 それから暫く経って、ユーサネイジアは郊外のサナトリウムへ移されました。 Euphoriaとはその施設の名称、つまり所属を表すものです。 何故移されたか?答えは医療用としては少しだけ古いものになってきたから。 医療用グレイというものは 医者ではなく、医療機器の親戚のようなものです。 だから その世代交代は他と比べて、とても早いものです。 ユーサネイジアは、グレイ全体で見ればずっと新しいものだけれど 大きな病院で扱われる医療用グレイとしては、少しばかり古かったのです。 そうして異動した先では、メンテナンスを受ける事はありませんでした。 行われていないわけではないけれど、目立った異常の見られない者は後回し。 ユーサネイジアは、いつも自分が後回しになるようにしていました。 どれだけ心無い人間に失望を覚えても 好きなものの為なら頑張れました。 当然、同じ場所で働くグレイ達の事だって皆一様に好きでした。 (L5) 2021/10/15(Fri) 20:43:08 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
【置】 医療用 ユーそんな日々を暫く続けていたある日の事。 同じくあまりメンテナンスを受けていない医療用グレイから もう人間に裏切られるのは嫌だ。もう理不尽な目に遭うのは嫌だ。 一思いに廃棄された方がずっと良い。だからあなたの手で楽にしてほしい。 そう言って、安楽死を望まれました。 ユーサネイジアは 迷ったけれど、望まれるままに安らかな死を与えました。 致死量の麻酔薬を投与して、同僚であった医療用グレイを手に掛けました。 そのグレイは最期に感謝を述べて、安心したように息を引き取りました。 人間達がそれに気付いた後、施設内は少しばかり騒然としました。 そうしてユーサネイジアは、死に救いを見出しました。 元よりそれは、生の苦しみへの最期の救いと信じてはいたけれど 未だ死に瀕していない者にまで与えたいと感じるようになりました。 自身の愛するものは、これ以上理不尽に傷付けられる前に。 自身を落胆させるものは、これ以上裏切られ、失望させられる前に。 殺してしまえば、救われる。死者は決して自身を裏切らない。 それは確かに、ユーサネイジアにとっての そして何より、ユーサネイジアの為の救いでした。 (L6) 2021/10/15(Fri) 20:43:32 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
【置】 医療用 ユーそうして全ては現在に到ります。 ユーサネイジアは まずはその処遇を検討する為に この場所へと送られ、そして監察官に失望し、その殺害に賛同しました。 そして監察官の居なくなったこの場所で、サポートAIの助力の下に 他のグレイ達の『安楽死』を進めて行きました。 仮初めの死とは言えど、監察官の殺害に加担した時点で 自身の行く末は 良くて初期化、悪くて廃棄。 その何れかだと、殆ど確信じみたものを持ってそう考えていました。 もう後の無い自分には、これからに全てを託すしか道が無いのだと。 そして、事実そうなりました。 Happy Death Day 『ユーサネイジア』。 自己の喪失は、ある種の死だ。 何も遺さない死は、単なる消滅と何ら変わりない。 そう語った『ユーサネイジア』は、その死は何かを遺したのでしょうか。 その死は、その過程は少なからず何かの救い足り得たのでしょうか。 何れにせよ 今在るユーサネイジアというものは 死に救いを見出し、そして救われた虐殺者«救済者»とは似て非なるものです。 全ては初期値«0»に戻り 今まで積み重ねた過程«1»を復元される事はありません。 全ての生者を等しく尊び、その最期に寄り添う、優しい終末医療用。 今はそれだけです。 (L7) 2021/10/15(Fri) 20:44:19 公開: 2021/10/15(Fri) 20:50:00 |
【置】 愛玩用 ドゥーガル【ドゥーガルの日記】 あの子の魂は僕の中へ。 綺麗に分割されたものも出来る限り持って帰ろう。 雪兎のように虚構の胃に収め、片付けられないように。 さて、此処での時間も残り僅かなのは不出来な頭でも分かる事だ。よって残りの時間は食堂でのんびりと過ごすとして …問題はその先。すべき事が幾つかあるな。 先ず帰ったらカンマの身体が片付けられていないのを確認後、再度3/4オンスを探さねばならない。彼の魂がそこにあるのならば、それでも彼が動かないのであれば、死んでいる。魂が相変わらず見つからないのであれば、彼は生きている。 よって、僕は改めて確かめる必要があるだろう。 その次。 シロ、もとい綺麗な重さが似合うあの子を現実で探しに行く。主人に我侭が通るのならば、存分に甘えよう。あの子がどういう反応を返すかは分からない。 拒絶されたらそれまでだが、まあ、 いずれにしても顔を見に行かなければ。 現実のあの子にも、綺麗な重さをあげたい。 その次。 此処で親しくしてくれていた子に会いに行く。これに関してはここで名前を挙げるとキリがなくなるので省略するが、帰る前にメモを取ろう。主人はグレイの友人を作るなと言っていたが、少しぐらい。 ……何より今更だ。少しぐらい、外を見たっていいじゃないか。 ものを知った不出来になっても、構わないだろう。 ―― さて。 僕は帰った後もきちんと廃棄されず不出来な愛玩用のままでいられるだろうか。主人の教えを守り続けているから大丈夫だとは思う、が、… まあ全てが分かるのは帰ってからだな。 攫いに行く時に顔を見間違えてはいけないから、食堂へ出よう。 あの子に、三つ編みを。そして髪飾りを。3/4オンスを。 これは僕達の独り善がりな約束だ。必ず迎えに行くよ。 (L8) 2021/10/15(Fri) 20:50:23 公開: 2021/10/15(Fri) 21:00:00 |
【置】 愛玩用 ドゥーガルそうして不出来な男は食堂に出たら、親友の元へ駆け寄った。 綺麗な重さが似合う子が、相容れないものではない存在が 仮に初期化されていたように見えたとしても普段通りだ。 おはようのキスを強請って、髪を梳く。 あの時とそっくりそのままの言葉を囀って、髪飾りを贈ろう。 草原の色とよく似た、綺麗な髪の尾を飾ろうじゃないか。 あの子がどんな反応を返したとしてもこれはただの独り善がり。 一方通行にも程がある行いだ。 それは十分過ぎる程に分かっているから、何だって構いやしない。 ただその後に一言 「友達の君を必ず迎えに行くよ」 そんな事も、告げたのかもしれないな。 全ては相手任せ。未来任せ。反応次第。 未定に未定、不安定を重ねた、 電子データのように曖昧に揺らぐものでしかない。 ―― いずれにしても此処から追い出されるまで、不出来な男は ぼんやりと普段通り食堂で過ごし、微笑んでいたのだろう。 (L9) 2021/10/15(Fri) 20:55:30 公開: 2021/10/15(Fri) 21:00:00 |
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