「処刑対象、決まったね」

　いつも通りの声音と振る舞いのまま、散歩にでも行くような気軽さで処刑室に向かう。ゲームに乗り気なこの看守には躊躇う理由もない。

「……」

「だなァ」

腰の得物を確認して処刑室へ向かう。
いつも通りやるだけだからなァ。

「……ふむ。随分と票が偏りましたね」

通知を見て、

「まあ別に構いませんけど」

ゆったりとした足取りで処刑室に向かった。

「やけに素直なのね、裏で何かあったの？まあ何でもいいわ。私こうやってだからねえ」
揃えられているだろう凶器を眺めて、訝し気な表情。
どれがいいのかしら。

「誰だ。俺に入れている奴は。理由が気になるな」

「とはいえ無事に決まったようで良かった。今日は楽しもう。なあ。ムルイジ」
ムルイジに近づき、肩に片手を置き、囁く。

「…………へぇ？」

　票結果を見ている。一瞥。
　票結果を見ている。一票。
　票結果を見ている。一笑。

「──なかなか面白いね。」

　己に向けられた一票を見つめている。

「ふむ。成程成程……」

投票結果を見て、少し何か考える様にして。
それから処刑室へと向かう。

皆より後方を歩きながら処刑室へと向かう。
一度だけ欠伸を零し前の集団に視線を送る。

とはいえ何かを零すことも無い。
処刑室についてからもそれは同じだ。

「ムルイジって死亡条件言ってたっけ？どうやったらいいかなあ」

　言いながら、揃えられている凶器のなかから迷わず銃を選びに行った。種類は色々あるけどどうしようかな。

「お望みの方法とかあれば善処するけど」

「反撃する気があるかどうかも聞いておきたいな」

何も持たずに処刑室に入り、いつの間にか握っているのはハンドガンだ。
必要もない銃の動作確認を、手持ち無沙汰に。

「僕は、してくれて構わないと思ってるんだけど、どう？」

みっつ目だといいな、なんて嘯きながら、席を立ち処刑室へ向かう。
手には一振りの抜身の白銀の剣がされていた。


「お前達の好きな順番を取るといい。
　最初でも、最後でも。望むものに譲ろう。」

言葉通り、様子を伺いながら適当なタイミングに並ぶだろう。

「」

楽しんでいいのか、と聞かれれば実に楽しげに、嬉しげに破顔して。

「沢山楽しもうね」

「反撃……するなよ」

じっとしてて欲しいなと思っている。
でもそれはそれとしてここは無礼講。
そういう事もあるのは確か。

「好きにするといい。折角のだ。
　お前の望む在り方で踊るといい。

　最終的にねばそれで構わぬのだから。」

どれだけしたところで、その結末を与えることができるのだから、と微笑む。

「俺も別に大丈夫だよ！させる時間があるかはともかくとしてね。
　というわけで誰から行くー？」

　結局こちらも普通の拳銃にしたようだ。先にやりたい人がいるなら譲るくらいの思いやりはある。

「困りましたね、反撃されたらこちらが死ぬかもしれません。」

言いながらナイフを手に取る。
順番に特にこだわりはないようで、適当な位置に立っている。

「誰もいないなら景気良くいこうかなーって思うけど……ほら、銃声って分かりやすくていいだろ？」

どうかなー？って辺りを見渡す。

「私が行くのは、もう少し死にかけのときがいいわ。反撃されたらこっちが死んじゃうもの」
銃に視線を向けるが、考えてみれば反動で腕が痺れてしまいそうだ。人殺しの難しさを痛感している。

「反撃……。してくれた方が、殺しやすいかもしれません。」
処刑室へと向かい、最初の一言。一面に飾られるようにした武器をまだ迷っている。

「……個人的には、」

並べられた武器の中から、鋭利な――メスのような刃物を手に取って。

「反撃でも何でも。処刑される側の人物とて、己のやりたいように。好きに振舞って欲しいですね」

「元気なうちがいいなら、アルレシャ、最初に行くかい？
　見本にもなるだろう。」

「うーん！こちら側の、新鮮だな！
俺は別にこだわりないな。ムルイジ、元従者なら拷問経験ある？いつかの役に立つかも〜で、

嬉々と跳ねる声はどこか無邪気で、つまりは、

この男の好奇心が、今回は違う方向に向いただけ。

軽く、小口径の拳銃。それから、小さな金属製の盾を手に取る。
くるくると手の中で銃を回し。

「1人に1回しか攻撃が許されないわけでもないだろう？
では開始の合図は俺がやろう。1対1のルールがあるわけでもあるまい」


緩慢な動きで銃口をムルイジに向け、2発。
狙うのは腿の辺り。

「元気がいいなァ。
　……僕は最後にやってもいいか？
　意識と視界は残ってると助かるなァ」

全員参加って訳じゃァないが……少なくとも自分の意思で入れた奴らと、委任した結果入れた奴らはやるんだろ？

「それじゃあいい塩梅のところで俺も参加するね」

　銃を持って数歩下がる。だってこういうのはいつ来るか分からない恐怖があってこそだもの。

「おっと、最初の合図奪われちゃった。やる気があっていいねー。
開始の合図って、やっぱりいつの時代も銃声がいいよね」

なんて。
特に何の気もなく、紅茶を差し出すのと同じような調子で銃を向ける。

銃声は二回。ムルイジの耳かこめかみ辺りを掠めていくような位置へ。