薬局
この清掃員は、カミクズという人間は。
決して要領が良いとは言えない方の人種だ。
それでも慣れる程度の時間、この職に携わっている。
他人事のはずの事に、思う所ができる程度に。
「…床、片付きましたね。」
あなたの手を借りつつ、散乱していたものが粗方片付いた頃。
どうぞ、と二つ用意したモップの片方を差し出した。
「そろそろモップがけし始めちゃいましょう
最初に水を撒いた方…向こう側の方から。
足を滑らせないように気を付けて、
それから、ある程度落ちるまででいいですよ。
水拭きだけじゃ当然綺麗には落ちないので…」
あとで、これを使って、もう一度。
そう言って取り出したハンドスプレーの中身が揺れた。
「えっと…血の汚れを落とす時はオキシドール、です。
調べればすぐに出てくる事ですけど…
役に立つことも……ないと、いいんですけど。」
あなたが自分に声を掛けた理由の答えをふと思い出して、
そんなつまらない話を付け足した。