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人狼物語 三日月国


132 【身内RP】穏健なる提案【R18G】

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視点:


>>水族館

 端末でいくつか操作を済ませる。とある人が水族館を一人で徘徊した後、裁判所にも向かわず外を出歩いている形跡が発見された。

 返ってこない連絡。置き去りにされた帽子。表示されない現在地。
 ……名残が教えてくれるものは。即ち。

「……そうか」

 それだけを呟いて、更に端末を操作する。
 モップ、水の入ったバケツ、それからオキシドールの入ったハンドスプレー。

 清掃員が教えてくれたものをなぞるように取り出していく。

「カミクズさんは恐らく死んだのか」

 最後に紙袋を取り出して、それに帽子と血のついたエプロンをしまった。

>>水族館

 このまま放置してもよかった。
 ただ、まだ彼が投票権を持っていた頃。立候補した際自分の事は話さないでほしいと語っていたのを思い出す。それは帰ってからの話ではあったが。

 それに。
「誰かがそこに居た事を、踏み躙られないように。
 それが、その人の望まない形に歪められてしまわないように。
 ちゃんと…綺麗にする必要もあるんですよね」


 そうも話していたから。ここに踏み躙るような者がいるか話は別だが、そう考えているのなら。歪まないうちに綺麗にしてやるべきかもしれないと判断する。

 このまま放置してもよかった。
 ただ、彼には世話になったから。それくらいの義理を果たしても、きっとバチは当たるまい。

殺害現場を荒らした。名残を全て片付けていく。

水槽の中を綺麗にしていく。そこで何を起こして何を思ったか正確に知れるのは、当事者二人だけ。

>>水族館

 どれくらい時間が過ぎたのか定かではないが。
 暫くして水槽の中は文字通りからっぽになった。橋の上から生きていた名残も死の欠片も、何もかも無くなってしまった空間を見下ろす。

「……」

 お世話になりましたくらい言うべきだっただろうか。
 とはいえもう清掃員はどこにもいないのだから此処で言っても仕方がない。無意味なものだと青年は切り捨てた。

 帽子やエプロンを詰めた紙袋をかさりと揺らしながら、手帳型の端末に何かを書き込む。

「水槽いっぱいの水と、それから……」

 書き終えて満足したのか、それを最後に青年は水族館から立ち去った。


 程なくして、からっぽだった水槽は水で満たされ始める。誰かの生きた名残は、人が人らしくいた痕跡は、水の底に沈められる。


 ──その場に残されたのは、生きた名残を塗りつぶしていくのは、水槽という狭い箱庭の中で泳ぐ二匹のクラゲだった。

紙袋を手にして水族館を出た。

残された言葉を聞く事は無い。

残された言葉を聞かれていたら困る。だからW今W言った。

返信漏れがないか確認中。

少し脚を気にしながら寮の廊下を歩く。

傍聴席から送受信した、いくつかのメッセージを読み返して。
そういえばあの人は上手くいったのかなあ、と思い出した。
呼び出したマップを眺めて、アイコンの数を指折り数えていく。…また一つ減っていた。

二つ減っていないってことは、多分、概ね計画通りできたのかな。
運良く殺せたのか、それとも、運悪く殺せたのかはわからないけど。

(感想はちょっと聞きたいかも)
(それぐらいはいいよな?)

………同じ人殺しでも、やっぱり自分と違うことを感じるんだろう。
だから難しいんだ、理解者作りって。

誰かと会う約束をする前に手を洗った。ちゃんと、教わったことを実行する。

ハッピーバースデー ディア……

それが最後まで歌われることは、なかった。

きっと君の事が好きだと思う。

今や名残ばかりの亡霊は、甘い誘いを投げ掛けて。

触れられなくとも、手を伸ばそうとする。

「じゃあ、同じものをくれてやる。」