150 【R18G】偽曲『主よ、人の望みの喜びよ』【身内】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
青年は、否、青年だったものは標本室にいた。
色とりどりの虫、動物の剥製、あらゆる生命を人間のエゴで綺麗な見目のまま保存している部屋の中に、青年もまた保管されて……
……いる筈もなく。
何の価値もないと言わんばかりに、その肉の塊は床に転がされていた。
誰彼構わず笑みを向けていたその顔は青白く、多くのものに興味を示していた瞳は瞼の裏。
細長い四肢は細かな切創が夥しく纏わり付いていて、よくよく注視すればあちこちにガラス片が噛み付いている。一部はその肉の下に潜り込まんばかりに深く突き刺さっていた。
傷だらけの肉体の中でもとりわけ酷いのは首や肩、そして腹部だろうか。
首から肩にかけての傷は他の切り傷よりも深く、腹部に至っては何度も同じ箇所を狙って突き刺したようにも見える。
しなやかな肉が引き裂かれ、止め処なく流れ落ちた命のあかいろは、白衣を容易く濡らし、その床をも汚していた。
彼の瞳が、好きだと語る『人』を見ることは、もう無い。
| >>+0標本室の写真から、人の気配がしたものだから。 他の足音や生物の気配に気を張りながら向かう。 もしかしたら、興味深いものを見つけて夢中になっているのかも。 そうであればいいと思って足を踏み入れた先で。 ────赤に濡れた、青年の姿が瞳に映った。 (0) 2022/06/03(Fri) 23:34:19 |
| (a2) 2022/06/03(Fri) 23:36:43 |
| ライカは、スマートフォンでタブレットに連絡を入れた。『結木さん 標本室』 (a4) 2022/06/03(Fri) 23:51:17 |
| 「…ここに来てから、撮った写真に何かの気配を感じることが増えたんです。 まさか、こんな姿になってるとは」
思わなかったですけど、という言葉は続かない。 口元を抑えて、傷ついた身体から目を背けた。
代わりに意識を逸らそうと、周囲の荷物を漁っている。 使えそうなものがあれば、生きるために使わせてもらうつもりだ。 (2) 2022/06/04(Sat) 0:08:58 |
| 「…はい。 もし会議室に伊縫さんが帰っていたら、連絡いただいてもいいですか」
目線はそちらに向けずに、鞄を漁りながら少女にそれだけを告げていたことでしょう。 (5) 2022/06/04(Sat) 0:42:09 |
ライカ
鞄の中には170センチ以上もあればちょうど良いような、長身の男性に合うサイズの職員の制服が畳んで入れられている。
もし広げるなら、首まわりを中心に黒ずんだ血が服を汚していることに気付けるだろう。
その他には拳銃と、一枚の紙切れが鞄の底に眠っていた。
| >>+1「…制服?なんでこんなものが…」 そういえば、何枚かの写真から気配がしていた気がする。 後で、確認しにいくべきだろうか。 拾い物だとしても、血に濡れたものをわざわざ? それから、拳銃。 持ち物の一つ一つが違和感をもってそこにある。 この紙切れだってそうだ。 「まるで、こうなる覚悟が決まっていたような…」 (6) 2022/06/04(Sat) 1:28:25 |
| (a8) 2022/06/04(Sat) 1:29:23 |
| ライカは、それから、拳銃だけを自分のズボンのポケットに移して。他の荷物はカバンごと会議室に運ぶことだろう。 (a9) 2022/06/04(Sat) 1:31:50 |
もしかしたら、何か一人で動けない状態にあるのかも。
もしかしたら、皆に心配をかけたくなくて俺にだけ連絡を?
嫌な想像は頭を駆け巡って、青年は駆け足でその場所を訪れる。
少しだけ息の切れた青年は、あなたの姿を見かけてやっぱり笑顔になった。
「はーっ、奈央さん、どしたの?
もーすぐ集合時間だし、集まんないと皆心配しっ……」
腹に氷でも差し入れられたような気がした。
それは全くの気のせいで、すぐに頭の中をすべて塗りつぶされるような痛みが訪れた。
ぎゅう、と背中を抑えられている。
なんで?
腹が痛い。熱い。
このままじゃ死んでしまうかもしれない。
なんで?
どうしてこの俺が、こんな目に遭わなくちゃいけない?
>> +2
むちゃくちゃに腕を振り回して数歩後退り、自分の腹を抑える。
視界がぐらぐらと揺れているような気さえする。
「い"ッ、あっ、あぁあ、痛っ、……ア"」
口から漏れるのは意味を成さない音ばかりだ。
こんな痛みはいらない。
俺の人生に必要ない。
痛みはしあわせになるために必要なものだ。
だから、切除する。
ぼたぼたと涙が流れる。
痛みで泣いているのか、汗が流れて目に入ったのかもうわからない。
「は、ははっ……
こんな、状況でっ……あ"っ"……バカ、じゃねえの?
異常者、気狂い、嘘吐き……」
絞り出すような声はそれでもあなたに対する敵意を漲らせている。
距離をとって、会話をしようとする。少しでも隙が見えればーー
殺してやる。
| ライカは、荷物を置くと、中から制服だけを取り出し また出て行った。 (a10) 2022/06/04(Sat) 12:07:55 |
「あ"……こんな状況だから、?
どうせ普段から我慢なんかしてないだろッ、この気狂いが、ァ"ッ……」
腹に開いた穴から漏れるように悪態が出てくる。
彼の本性は、本質はこちらなのだ。
「ハハ、そっか、嘘は吐いてない……
信じた方が悪い、裏切られた方がッ、悪い……」
それは心地よい言葉を振りまいて、無責任な庇護をばらまいた自分が言っていいことかは分からないが。
少なくとも思いつく限りの罵倒を連ねなければいけないと青年は判断した。
今だ。
青年はほんとうにほんとうの殺意を持って、あなたに襲い掛かる。
姿勢を低くして水を被らないように、できる限りの全力でもって。
それでも背中には少しかかってしまっただろうか。今は無視した。
ぞるり、と腹に生えたナイフを抜く。
ぐじゅぐじゅ、と致命的な肉を切り裂いた感触がした。
血液とよく分からない何かが混ざった液体が滴る。今は無視した。
そうして、あなたの足元へ。
膝、大腿部と、二度。
ナイフを突き立てる。
半ばぶつかるように突き立てたナイフはそのままに、少しでも体勢を崩したのであれば。
あなたの喉元へと、手が伸びる。
| ライカは、スマートフォンを見ながら、器具庫へ向かって歩いている。 (a11) 2022/06/04(Sat) 21:53:24 |
| ライカは、ホワイトボードに「無事に帰れますように」と小さく書き留めた。 (a13) 2022/06/05(Sun) 0:55:12 |
異常者で気狂いで嘘吐き。
青年はあなたをそう評した。
それは、自分自身が己をそう断じていることの裏返し。
だから青年は走ることができた。
手が届く。
今ならやれる。
喉の薄い皮膚に指先が触れる。
あなたが褒めてくれた、手が触れる。
「
死ねっ、
死ねっ!!」
ペットボトルの中身を判別して避けている暇なんてなかった。
もし分かっていたとしても、避ける余裕なんてなかったかもしれない。
右半分の視界を奪われ、それでもこの機を流すまいとあなたの喉へ手をかけた。そうして半ば無意識に、能力を発動する。
あなたは死ななければならない。
あなたは罪深い人間だから。
憂鬱と悲哀と、すこしのよく分からない感情。
ぐちゃぐちゃに想起させられた脳内は無理矢理に蹂躙され、あなたの精神を蝕む。
無茶苦茶な使用によって、青年もまた。
| (a15) 2022/06/05(Sun) 13:10:15 |
| (a20) 2022/06/05(Sun) 20:54:15 |
「あ"ーー……、っ"う"……」
右目が開かない。
痛みを殺して、半ば触覚の死んだ頭を抱えて、人気のない廊下に座り込んだ。
腹から血と一緒に熱が逃げていくような気がする。
手足の先が痺れて意味もなく廊下に血の筋を残した。
無茶苦茶に走って逃げた廊下には血と汗と、溶けた肉が点々と跡を残している。
だめだ。こんなのじゃ。
だれかにみつかったらしんでしまう。
でもみんなにちこくするっていわないと。
でも、でも、でも。
こんなすがたででていったら、こわがるかなあ。
みんなも、みんなが、
朦朧とする意識の中、あなたの端末に連絡を送った。
『ごめんん
ちこくすふ』
たったそれだけの簡素で誤字だらけのメッセージ。
血で滑る指先で画面を操作し、送信ボタンを押したところで青年の意識はぷつりと途切れた。
視界の悪い廊下にも、目を凝らして探せば明らかに新しい血痕が残っている。
壁に残った血の指紋も同様に。
その痕を辿っていけば、人気のない薄暗い廊下にたどり着く。
壁にもたれて気絶している青年もまた、見つかるだろう。
| (a25) 2022/06/05(Sun) 22:35:38 |
あなたの支払った労力なんて知らない顔をして、青年はそこにいた。
もし仮に起きていれば探すの大変だったろう、そっちも大丈夫だったのか、なんて宣ったことだろう。
そうして、皆にどう警告をすべきなのか相談に乗ってもらって、それから――
そうはならなかったのだけれども。
近寄れば濃い血の匂いと、溶けた皮膚や髪の匂いがむっと強く香る。
顔の右半分……特に目の周辺が酷い火傷のように引き攣れ皮膚が癒着してしまっている。
右目は開かない状態かもしれない、と一目見るだけでわかるだろう。
それに加えて腹部も、腹部を抑えたままだった腕も真っ赤に染まっている。
弱弱しく踏み躙られた虫のような姿になっても、青年はまだ生きていた。
| (a33) 2022/06/06(Mon) 0:48:29 |
| ライカは、遅れて『古後さんを探してたんですが、今は一人で行動しています。すみません』と連絡を入れた。 (a34) 2022/06/06(Mon) 0:53:22 |
| 血の痕はあるのに、何もない独房。 肉の欠片は落ちているのに、誰もいない。
不完全な現場だ。
だけど、撮らないと。 これは僕の仕事だ。 (17) 2022/06/06(Mon) 1:24:33 |
とある誰かの声がして、真っ暗闇をもがくように進んで。
この終わりでは足りないと、叫んで気付けば視界が開けた。
「──。おれ、は。確か……」
それまで自分は何していたかと、ぼやけた頭のまま記憶を振り返ったが最後。
悲鳴と、笑い声と、断末魔。
絶え間なく続く痛み。逃れられない苦しみ。
誰かと会話をした時には思い出せなかった死際の時間が、押し潰さんばかりに迫ってくる。
「──。ぅ゛、え゛ッ……」
体を折り曲げ血の海に膝をつく。激しい咳を一つ。その拍子に体のどこかからびしゃりと赤い液体と柔らかな何かの肉片が地に落ちた。
事切れるまでに受けたものが未だ体の中にあるようで。頭と胴の内側がぐるぐるする。視界がちかちかと明滅して、自分と同じ色の笑い声が耳の奥で鳴り続ける。
「……、ふ、ぅ……あぁ……こぼれちゃう……」
腹部に手を当てながら、緩慢な動作で歩を進める。
「見な……きゃ、聞かなきゃ。
見たいことが、聞きたいことが、あっ……たんだ。
……でも、なんだっけ、なにを、見て、聞くんだっけ」
探さなきゃ。探さなきゃ。
──目を瞑る。声を聞く。息遣いを探す。
おかしいな、でも何を探すんだったかな。
おかしいな、誰を探すんだったかな。
「……誰の、声だっけ、これは」
元々、視覚には作用しない力だった。
今となってはあまりに不安定で、或いは壊れた頭で判断できなくなっていて、拾った声が誰のものかも判別がついていない。
力を使うのを止めて瞼を持ち上げた瞬間、ぐんにゃりと視界が歪んで体が傾いた。
この肉体は、ずっと刻まれた死の痛みに震え続けている。
「みなきゃ、きかなきゃ、いかなくちゃ」
死んだはずの頭の中にあるのは一つの意思。純化したそれしか残っていない。
「……ふ、ふふ。えへへ、ぁは、夢なのかな、でも、夢みたいじゃない?でも、夢であってほしくないなあ」
それは延長線上の狂気。既に迎えた終わりを踏み躙る執念。
凄惨な傷跡が残る脳と肉体を、意思ひとつで引き摺り回してそれは進んでいく。
廊下の奥へと、消えて行く。
子供のような笑い声が響いていた。
果たして、青年は傷付いただろうか。
ひどいものを見せてごめんな、隠さなきゃな。
俺が集めたシーツならちょっとくらい破いて貰ってもいいよな、なんて。
自分が好き勝手やった結果についた傷なのだから、怖がるのも勝手だろう。見せないようにするのもまた。
そんな言葉を返したであろう口は薄く開き、浅い呼吸を繰り返すのみだ。
夢もない無防備な眠りを昏昏と晒し続けている。
青年に触れた指先が、すこしあたたかく感じたかもしれない。
それは無意識に漏れ出した残滓。
敵対者に向けるものとは違うやわらかなもの。
少しだけあなたに触れて、明確な意思ともならずにすぐに霧散した。
意識を取り戻すまで着いているにしても、
このまま青年を置いていくにしても。
誰かが、何かが通りすがらないとは限らない。
どちらを選ぼうともあなたを責める人間はいないだろう。
届いているのかいないのか。
あなたの放った言葉は暗い廊下にぽつりと落ちた。
紡がれた言葉たちは決して無為にはならず、そこに確かに降り積もる。
ぴく、と青年の指先が震えた。
普通の『にんげん』なら助からない傷だ。
人体に元来備わっている自己再生能力を遥かに超えた出血、臓器の損傷。
それらを愛すべき隣人に与えられたという事実。
その痛みすら全て忘れて、もう一度生きることができるなら— —それは、それはなんて。
指先が再び熱を帯びる。
あなたの言葉へ応えるための、意思を紡ぐ。
それは、なんて寂しいことだろう。
「そんなに寂しいこと言ってくれるなよ、泣いちゃうだろ」
「忘れろ、なんて言うなよ。
せっかく愛施が助けてくれようとしてるのに、その原因をなかったことにしちゃうなんて」
「それに、俺が抱いてやらなきゃあ、この痛みも苦しみもどこにいっちゃうのさ。
代わりに背負うなんて言ったら怒るからな」
「痛いのも、辛いのも、全部連れていって生きたいんだ」
それは、なんとも自分勝手な宣言だった。
今にも止まりそうな呼吸をしているくせに、全身を汗で濡らしているくせに、塞がった片目からはくっきりと涙の筋が浮かんでいるくせに。
青年は、生きることを諦めてはいない。
踏み躙られた事実はそのままに。
今は閉じられたふたつの瞳は爛々と焔
を宿し、全てのものを焼き尽くさんとするばかりに燃えている。
本当に、自分勝手だ。
/*
というわけでお返事となります。
能力の使用は問題ありません!が、傷をまったくまるっとなかったことにする、ということは伊縫がヤダがります。
具体的には傷跡がぱっと見でわかるくらいには残る感じになるでしょうか?いい感じのがあればなんでも……(貪欲)
「……ごめんな」
あなたはやっぱり優しいのだ。
青年はそう思った。
訴えを全て捨て去って好き勝手することだってできたのだ。
『意思』を尊重し、問い掛け、全てを理解することができなくとも。
あなたはそうしてくれた。
青年は弱い人間だ。
一つさえ取りこぼすことを自分に許せなくて、全てを失って、何かを抱きしめたくともからっぽの腕の中を独り抱えているだけの人間だった。
これはきっと強がりで、青年が自分自身に恰好をつけているに過ぎないのかもしれない。それでも。
「……ははっ、じゃあ神様の慈愛、断っちゃった……?
怒んないでよ、愛施。
俺から奪ったこと、忘れないで……」
やっぱり嘘。
耐えられないのなら、忘れてもいいよ。
俺がその分覚えてるから、いいよ。
腕はだらりと抵抗せずに落ち、傷はそこにある。
望み通りの口付けを受け入れて、そうして、
頭の中が全部痛みで塗りつぶされた。
「あ"、あ"っ"、お"ぇ"ッ……ぐ、う"〜〜……
か"っ、ぎ……ぉ"……」
涙がぼたぼた垂れる。
両の目が開く。
痛い。
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