【カウンセリングルーム】
[サダルに首を傾げられたのは、自分という“患者”が普段ろくに訪問しに来ないクルーだから――とだけゾズマは考えた。ルヴァに拭って貰った涙が未だに痕を残していることに、ゾズマは無自覚なままだった。
それでも、ここでうっかり事実上の“例え話”を切り出してしまったことまでは自覚していた。
流石に“それは自分の話だ”という旨のことを見抜かれてツッコまれても仕方ない、と過りもした、が]
あ。
……うん。先生の、話。
[まさか本当に「サダル先生の話」をしてくれると思っておらず、一瞬ぽかんとしたものの、それでも念押しに対してうんと頷きを返した。
他者についてそこまで興味を抱く方ではないけれども、折角聞けるならとりあえず聞いておく――という姿勢もあってのことではあったけれども。
この時はそれ以上に、他者のケースを参考にしようという意識がはたらいていた(サダルのことを自分に当て嵌めるのは有用ではない、と思わぬまま)]