165 【R-18】シュガートースト、はちみつミルクを添えて
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……そうだな。
いつだって突然なんだよな。
[突然の別れは何度か経験していた。
仲間が突然に逮捕されたとか、病に倒れてそれきりとか、
突然に──殺されたとか。
共に暮らす相手が多い分、別れの数も多かった。
それを思い出したくはなくて、頭を振る]
[二度と遭いたくないと言われて、苦笑が浮かぶ]
まぁあんたはそうだよなぁ。
俺はまたあってもいいかと思うけど。
[こちらとしてはそう悪い思い出でもない。
災難ではあったが]
いってらっしゃい。
[そう言って見送り、その後は一休み]
[狭苦しい寝床だし、雷鳴も喧しい。
どうしても浅い眠りになる。
夜中に彼女が飛び起きた気配がすれば、
すぐに気付くことになるだろう]**
[警笛、人だかり、警笛。
広がる、赤、赤、赤。
ーーーー轟音。]
……………!!!!!
[悪夢だ、これはただの悪夢だ。
もう既に過ぎ去ったはずの。
それなのに、体の震えは止まらなくて。]
……や、やだ……いかないで……
[無意識に声に出ていた。]**
[寝入ってどのくらい経っただろうか。
止まない雨音と雷鳴を聞きながらのうたた寝中、
室内で飛び起きる気配がした。
心配になって様子を窺っていると、
心細そうな声が聞こえて]
どうした……、大丈夫か?
嫌な夢でも見たか。
[穏やかに、気遣う声を投げかけた]**
[ーーーー数刻前。]
……そっか。もう知ってるなら、いいや。
運命の再会ってヤツ?
まあ、期待しないでおくわ。
[そんな、話をして。風呂から戻って、すぐに就寝した…………そんな夜だった。]
……………だれか、いるの?
[ …………誰かが、俺を呼ぶ声がする。
男の声、だ。
何が何だか分からなくなってしまっているけれど、]
稲光が差し込む部屋の中で、必死に手を伸ばして。]
…………おねがい、
ひとりに、ひとりにしないで。
[そのまま、声の主へ縋りついた。]**
[問いかけられたかと思えば、気配が近寄る。
そして弱々しい言葉とともに縋りついてきた]
ん──
[驚きが無かったといえば嘘になる]
[それでも一瞬の後、
彼女をしっかりと抱き締め返した]
大丈夫。
そばにいる。
[余程恐ろしい夢を見たのか。
我も忘れるほど、この状況で縋りついてくるほど。
そう思えばこそ無碍にできなかった。
彼女が落ち着きを取り戻すまで、
ずっと抱き締めているつもりだった]*
[
強く、優しく抱きしめられて。暗闇の中から、柔らかな声が降り注ぐ。]
…………ほんとう?
[そのまま、狭い場所に収まる。
少しずつ、少しづつ、不安よりも安堵の気持ちが勝っていく。
人肌に触れたのは、どれくらいぶりだろうか。
]
[彼女を抱き締めるのは、二度目。
捕らえようとしたときも、腕の中に収めていた。
けれどその時より今のほうが、
彼女の身体の細さを実感するように思った]
ユゼ。
大丈夫だ。
ユゼが落ち着くまで、こうしてるから。
[名乗られて、呼び返す。
そして静かに語りかけて、そっと片手を髪に伸ばした。
拒む様子がないか確かめて、
大丈夫そうなら優しく髪を撫で始める]*
うん…………
[優しく髪を撫でられ、目を細める。
心地いい。
どうして、こんなに安心できるのかは、分からないけれど。
低い声も、大きな手も、全てが、温かくて。]
ね、俺の事、もっと触ってていいよ………**
[「もっと触ってていいよ」
その言葉に思わず心臓が飛び跳ねた。
暗がりでは見えないだろうが、
苦笑を浮かべて彼女の頭をぽんぽんと撫でる]
変な言い方すんなよ。
襲っちまうぞ?
[気付かずに思わせぶりな言い方に
なってしまっただけだろうと、
冗談めかしてそう声をかけて、
それでも彼女を抱き締める腕はまだ離さなかった]*
んえ……?
なんか変なこと、言ったか……?
[気持ちが落ち着いてきた代わりに、どうも頭がふわふわとしてきている。
純粋に、ここに居るのが、心地いいから。もっと触れ合っていたいと、そういうつもりだったのだが。]
そもそもさあ、俺相手ってそういう気持ちにならなくない……?もっとボインのねーちゃんなら、ともかく。
[とりあえず、催促するように相手に擦り寄ってみる。]**
[彼女が話す言葉を聞いていて、
いくらかは落ち着きを取り戻したらしいと察した。
それで少しほっとして、安堵の息を吐き]
ならないこともねーけど……、
弱ってる女を手篭めにする気は起きねぇな……。
[擦り寄ってくる意図を測りかねて少し悩み、
その末にもう一度髪を撫でた。
それが心地良さそうであれば、
もうしばらく撫で続けるだろう]*
……あ、そうなの?
……てか、あえて聞かなかったけど。女は商品にしない、って言うから。てっきりアンタも女はそういう対象にしないのかと……
あれ。だったら俺って範囲内なの、か?
[だいぶ思考が危うい。人の温もりって、こんなに溶けそうになるものだったっけ。]
…………んっ…………ね、もっと…………
[ぼんやりとしていると、また頭を撫でられる。
気持ちいい。
知らず知らずに艶めいた声に聞こえなくもない音が、出てしまう。]**
えっ、俺、男色趣味だと思われてたの……?
いや男も不可能じゃねーけど、
女のほうが俺は好きなんだけど……。
[彼女の言い分にだいぶ衝撃を受けた。
それで抗議めいたことを言った。
髪を撫でてみると「もっと」とねだられて、
その声は妙に艶かしく]
こら、そんな声出してると本当に襲うぞ。
そろそろ落ち着いたろ、もう休めよ……。
[さすがに戸惑って髪を撫でるのをやめ、腕も離した。
そうすれば彼女も離れるだろうと思い込んで]**
あ〜両方イケるのね。
…………やなこった。
[当人の趣向がそっちなのか?というのは、当初から思っていた事だったのだが。尋ねるつもりはなかったのに、つい口から出ていた。
落ち着いたら、なんだか相手が気まずそうにしているのが、少し面白くなって。再び体をくっつけてみる。]**
ったく……
さっきまでは可愛かったのにな。
[彼女が離れようとしないことに溜息をつく。
腕は離したまま、顔は背けた]
お前って危機感ねーの。
犯されるかもとか思わないわけ?
[つい先程まで女に興味がないと思われていたようだが、
誤解は一応解いたはずである。
あまり無防備にされると、かえって戸惑いが湧いた]**
[ の言葉に、きょとんとした顔で返す。]
んー……だってさ、俺って中途半端じゃん。
男みたいなナリだけど、男じゃないからソッチからはお断り案件だし。
女抱きたい、なら。わざわざ俺みたいなの、需要なくない?
[これらは本心である。肉体的には女性であるが、中途半端な己に対して『そういう欲求』が生まれるとは、あまり思えなかった。]
だからさあ、もうちょっとくっつかせて。……抱き心地、いいんだもん。**
[きょとんとされて、一方的な理屈を言われる。
そういう主張も一理はあるだろうけれど]
世の中には穴がありゃ何でもいいって奴もいるし、
男っぽい女狙ってレイプ繰り返す奴もいるし。
勝手な判断で油断すんのは危ねーぞ……。
[一般論として言った上で、本日何度目かの溜息をつき]
俺も別に、お前に魅力が無いとは思わねぇし。
[自分の意見を付け足した]
にしてもお前、そんなに人肌恋しいの?
恋人とか……は、いる風じゃねえな。
[くっつきたがる様に呆れながら、
腕を離したまま、抱き返すことはしなかった]**
[……心配、されているのだろうか。
偶然の成り行きで、こうなった他人に対して、そんなふうに気遣われるのは、なんだか……むず痒い気持ちになる。]
へいへい、気をつけますよーっと。
[引き続き、男の胸あたりに顔を埋めていると、と問われる。]
恋人どころか、顔見知り程度の相手すら数人程度だぜ。
……うん、まあ。久しぶりに人肌に触れたから、なんか……離れたくなくなっちゃったのは、あるかな。
[思っていたよりも、この温もりに絆されていたのかもしれない。そして、なんとなく言ってしまった。]
………俺の事、「魅力なくは無い」っていうなら。
キスくらいなら、出来る?**
[突拍子も無い申し出に、
呆れて溜息をつくしかなくなり]
……バカだなお前。
こんな何かと都合いい場所で、
キスだけで終われるわけねーだろうが。
もっと自分の身を大事にしろって……。
[どうしたらいいか判断しかねて、
小言めいたことを言ってしまう。
彼女の身をやたらと案じてしまうのは、
当初詫びるつもりだったせいもあるだろうが。
一緒に食事して同じ場所で
眠ることになった影響もあるだろう。
仲間が増えたと感じ始めるのは、
いつもこんな些細な成り行きからだった]**
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