69 【R18RP】乾いた風の向こうへ
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拾うモノがあれば捨てるモノがあった。
『俺を拾ったやつは少なくとも神ではなかった。』
怒りも苦痛も畏敬も焦慮も懐旧も絶望も無くなった。
戦いを続ければどんなフラストレーションも落ち着いた。
隊長の称号を得た時からルサンチマンの概念も失った。
一番の恩人を崇拝をしていた気もするが、
それすらも忘れた。
いっそのこと愛も情も超越し、
人で無き者へ成りたいと何度も望んで、頓挫した。
芽が伸びる度、摘んで、摘んで、繰り返した。
己の下に積まれた者たちが、応えてくれる事も無い。
『そこにあるのは俺が捨てたもの』。
それだけの事。 *
| 起きないよ。 [ 起こしてと言ったり起きないと言ったり、自分の寝穢さは自覚している。 旅の日々や風景を形として残したなら見せて欲しいとねだっておくと、勿論という快い返事と合わせ、お礼も、との申し出がある。 礼を貰うどころか、自分が楽しんでいるだけだからと何度か固辞をしたことはあったが彼は譲らず、穏健に見えて譲らない頑固な面もある。 礼を重んじるのは付き合ううちに何度か聞いた彼の生まれや育ちの良さ由縁もあるだろうが、端々の遠慮や気遣いは節度の言い様の元に距離を図っているようなもどかしさを覚え、起こすのは忍びない >>0:177と同宿する寝台を使うのを遠慮するような形で間々それは現れる。] 服を見繕うのに付き合ってくれればいいよ。先払いになってしまうけど。 [ この国に滞在する間、女性の形である方が都合がよいこと、既に彼に告げてある。 女性であれば都合がよいとの暗黙のうちを、朝の市で向かい合い言葉を詰まらせたまま、互いに確認せずにやり過ごしている。 それくらいのこと、と彼は言いそうな気もするが、頑固なのはお互い様だ。] (11) 2021/04/17(Sat) 12:59:36 |
| [ 浴室から出て女性の形をした自分に目を留める彼に、やはり気に入るのならこのままで、と申し出る前にその姿はこの国に滞在する間に >>0:178と機先を制された。 変化時に多少の疲労があることを除けば、どちらかの形でいること、まして彼の好む姿であることに障りはない。 彼に喜んで貰いたいという気持ちが利他的なものだけである筈がないが、それが元より自分が厭うた己の種族の特性そのものを用いているものだと思えばとても彼に説明ができない。 最も、彼が望んでくれたとして、この先をずっと女性として生きるとことには、90年も性の自認を曖昧に過ごせば実感がないというのが正直なところだ。] 僕は平気。 [ 朝食しか口にしていない自分の方が空腹なのでは、との彼の気遣いに首を振る。元より食事は嗜好品のようなもので、生きていく糧、栄養の摂取は別ごとだ。 宿の客層故だろうか、隣接の店先に並ぶ衣類や装飾品は華美で値が張り >>0:179、食事目的もあったが市まで足を伸ばすことは特に相談せずともふたりの意向は合致していた。 ゆるやかな坂を下る折り、転ばぬようにと彼が差し出す手に指先を僅かに掛ける。] (12) 2021/04/17(Sat) 13:02:29 |
| [ 伝え聴きの紋切り方の印象を遠国に持つことはありふれているが、女性は大振りの布を纏う風習というのもその一つで、そういった流行りも以前はあったらしいが実際国に来てみれば必ずしもその姿の女性とすれ違う事は少ない >>0:180。 けれど観光客向けか、品揃えだけは豊富に揃う。] これなんか綺麗だね。 [ 淡い染や華やかな染、多種多様なヴェールが店先を飾る。幾つかの軒先を見て回れば、金額に見合った肌触りのよいもの、土産の数を購うに手頃な値付けのもの、織かと思えば布の上に図柄を描き付けただけの値札に首を傾げるもの、場所柄故かどの店も賑わいを見せているが、安易に選ぶと食わせ物を掴まされそうだ。 陽射し避けが当初の目的であるから、鮮やかな布ではなく黒一色の、それなりの厚さがあるものを選んで身体に当てる。布端に目立ちすぎない程に銀糸の細かな刺繍と水晶が縫い付けられている。] (13) 2021/04/17(Sat) 13:07:08 |
| 旅を加護する紋様なんだって。 [ 刺繍で布地に魔法陣を描いているようなものか。他に広い範囲に鳥や聖獣の刺繍や目立つ鉱石を縫い付けた、恋愛成就や長寿祈願など加護も様々なものがあったが、旅の祈願を願うというそれを選んだ。 刺繍自体はこの店で行っておらず、専門の職人に依頼しているらしい。 もっと大掛かりな布地自体に魔法を込める代物は市ではなかなか取り扱っておらず、職人自体が直接住宅街などに店を構えている事が多いとも聞いた >>0:175。観光客が踏み入れても問題なさそうなら場所なら滞在中に足を伸ばしてみるのもよいかと彼と話す。 外衣は選んだのだから、後はその下に着る衣類だ。 何処かしらダンテの声が弾んでいるように聴こえるのは気の所為ではないだろう >>180。 以前、冬の旅行で外套を新調した時も主には彼が選んでいた。 自分なんかは普段のような簡素で動きやすい衣類で充分なのだが、折角だから今回も彼に任せてしまうのがいいかもしれない。勿論、外套の時は自分が選んだのだからとダンテが支払いを譲らなかったが、今回は自分で精算すると譲らない気持ちだ。] あと、この辺りに良い食事処はありますか? [ 支払いを済ませるついでに店主に伺うと、市場内ではないがそう離れた場所でもない場所に、最近評判の酒や食事の味と揃えが良い店があると言う >>0:184。] 反対方向でないなら行ってみようか。 [ 買い物を済ませた後で選択肢として考えよう。店主に礼を言うと、店を辞した。]** (14) 2021/04/17(Sat) 13:10:59 |
[ 彼の笑う、笑い方、というのだろうか。
その声というのは喉を鳴らす感じで、
とても独特な感じがする。
彼女があまり聞いたことのない、
何かを含んだような声。
でも、その笑い方が何を意図するものか
何も知らない彼女には全くもって
分からずじまいのよう。 ]
本当に……?
何か、私に出来ることがあるなら…、
お家のため、ってどういうこと?
まだ、お昼なのに、おやすみなさい?
どうしてなのかしら?
[ 会話をしていけば生まれる疑問。
それを胸の内の中に秘められるほど大人でもなく。
別れの言葉まで聞こえると、
更に彼女は疑問を口にして。
そう、まだ外は昼下がりのはず。
でもこの場所というのはよく見てみると
窓もなく空気が悪かった。
異臭などはしないけれど彼女の住む環境とは違う。 ]
私の名前は、アウドラと言います。
あなたのお名前を伺っても?
[ わかれを告げられるのであれば、
聞いておきたいことのひとつであろう。
名前くらいは教えてもらえると信じて
彼女は声の掠れたその人に、最後の質問を。 ]*
あ、あと、君は下着は?
[ 今頃思いついたが、ぶかぶかの服で分かりづらいが、襟もとから覗く鎖骨から布で隠れた丸い肩。女性らしい線を思えば胸元なども変わっているはずで。
それに下履きなどは今はどうしているのだろう。気づくのが遅すぎるのと縁遠い買い物すぎて慌ててしまう。*]
[ 握り込んだ指先、爪が掌の肉を突き破った
感覚があった。
ぷつ、と音がして、小さな痛みが生まれる。
悪意のない純粋な質問が礫のように
突き刺さり、目の奥ががんがんと鳴った。
下卑た行為には折れることを許さない自尊心が、
眩しい輝きに容易くぐらつく。 ]
[ きっと、それは、
あまりの純な、汚れの無い
澄んだ湖面のような彼女に映し出された己が、
あまりにも下劣で、醜悪で、穢れているのだと
まざまざと見せつけられるからだろう─── ]
[ 丁寧に名を名乗る彼女の顔は
やはり見られなかった。
父親が己にしていることを知れば、
その美しく整った表情はどんな風に
取り乱すのだろう、と醜く唇の端が歪む。
けれど飼い主にされたことの仕返しを、
この純な少女に擦ることが正しいとは
どうしても思えずに。
甘いのだ、己は。
今も、昔も。
馬鹿馬鹿しい。 ]
……名乗る名など、ありません。
[ 吐き捨てるように囁いて。
そうして座ったまま凛と背を伸ばし、
身体ごと彼女に向かい合う。
口を笑みの形に動かして。
にやりと微笑んだ。 ]
そう、ですね。
ならば、─── le chien.
ルシアン、とでも。
[ 地下に飼われた、少々生意気な犬。
彼女がその単語の意を知っているかは
わからないけれど。
シャルケ・セト・ドゥ・シュバリエ
由緒正しき己の名は、
もう捨てたと思って尚、
この澱んだ地下で口にすることは躊躇われて。]*
[ どれくらいの時が経ったのかも分からない。
この場所で、過ごした時間というのは
彼女の人生に大きな影響を与えたことだけは
間違えることのない事実である。
彼の爪が肉を通った際に、少しでも顔が歪めば
彼女は心配そうに何かあったのかと聞いたけれど
顔を伏せていたから、それは起こらなかった。
20年ほどの人生は、綺麗なもので大半を占めている。
それに彼女は気づいておらず、
やりたいことをやり、与えられるものを与えられ。
過酷だと思ったことは、諸国の政治を知ること。
座学は嫌いではないけれど、
先生を選べないためものによっては
眠たくなってしまうものもあった。 ]
ルシアン、と呼べば良いのね?
また迷ってしまったら……
あなたのもとに来ることにします。
[ その人の祖国で、それがなにを意味するのか。
語学をしっかりと学んでいない彼女には
わかるよしもなく。
もし、分かっていたのならダメ、と
強い気持ちを持って言っていたと思うけれど。
勿論、地下に迷うということは
ほとんど無いだろうけれど、
まだ散策は続くだろうから予防線。
ルシアン、とまた呼んで、
彼女は腰をゆっくりとあげる。 ]
お邪魔して申し訳ありませんでした。
おやすみなさい。
[ ふわりと舞った洋服の裾が
床を軽く撫で、彼女は軽く腰を落とし
会釈を済ませるとゆっくり元来た道を
戻って行き、静かにその扉を閉じる。
地下から上に戻れば、
しもべの1人にどこにいたのか、など
心配そうな声で沢山聞かれてしまった。
そんなに心配をしなくても、と
彼女は思ったが、国政が危ないからか、と
歩きながら散策をしていたと教えた。 ]
────────
お父様、お母様?
私、何か愛でるものが欲しいの。
[ 夕食の折に、彼女はそう伝えてみた。
犬や猫などのものが与えれるのではと
淡い期待を描いてみて。
どこか、不思議な反応をした両親を見ながら
どんな子が来るのだろうか、と
その日を待ってみることだろう。 ]*
| [ 路面から目立つ場所や棚には観光客向け然とした服飾が並べられていたが、縦に長い店の奥へ進むと一般的な衣類も陳列されている。更に奥にはこの店の工房があるらしい。 遊覧を兼ね他の店を幾つか見て回ってもよかったが、先に購入したヴェールを見てもこの店の品質には信頼が置けそうであること、後の食事の時間もあってか、ダンテは同じ店で見繕うことにしたらしい。 服を購うのに付き合って欲しいと頼んだ時は、自分が楽しいばかりと気が引ける様子だったが >>20、任せてしまうとあれはどうだろう、これはどうだろうと実際に甲斐甲斐しい。 色違いのような長衣を2着示されると >>23、似たものであればひとつは着慣れているものを、と普段となんら代わり映えのない簡素な無地のシャツを選ぼうとしてしまい、選び甲斐と言った点では彼に付き合って貰ったのは正解だったかもしれない。 それにしても、女性の形をして幾らか小柄になった身体は、覚えている自分の体格の感覚とは異なり、上段の棚など届く筈のものに手が届かないというような事が何回かあった。 恐らくそれに気付く度にダンテが手渡してくれたのだろうが、甲斐甲斐しく女性の世話を焼き、服を選ぶ男性といった旅のふたりづれの様子に対する店主の目は、まとまった買物をする為もあるだろうが多少俗染みていても温かく、そうでなくとも、街行く時に昼に感じた刺すような視線は感じられない。そっと安堵の息を吐く。 それから愛らしいワンピースをダンテが差し出す。身体の線に沿うシンプルなな作りだが、丈の短い裾は布地をたっぷりと使い、ひらめくドレープが如何にも女性らしい。] (40) 2021/04/17(Sat) 21:18:59 |
| ……いいよ。
[ 普段の自分なら絶対選ばないだろうことは彼もわかっているのだろう。今は20cm近くも自分より背の高い彼が、まるで上目遣いに似て、だめ? と此方を伺う。
最初に彼が選んだ薄紫のグラデーションの長衣と、色違いの1着の代わりに選んだシャツは、フリルのあるもう少し装飾性のあるものに変えた。立て襟の上衣をもう1着とハーフパンツ、それからワンピース。サンダルは踵が低く編み上げのもの。それからダンテの希望があるなら、もう少し愛らしい服飾品を幾つか。 寸法を鑑みれば元の姿では着用できないというのに、ダンテが選んだものをを除けば普段とさして印象が変わらないものばかりで、もう一度、彼に任せて正解だったと思う。] (41) 2021/04/17(Sat) 21:21:54 |
[ 今着用している服と替えたい為、試着室を使いたいと店主に問えば、快く場所を示された。店の更に奥まった一角。買った服を抱えそちらに向かおうとすると、気がついたようにダンテに呼び止められた。]
下はそのまま。
[ つまり上は何も頓着していないということだ。すっかり弛くなった上衣で紛れている程度のささやかな膨らみであるから、特段気を払わなくてもいいかと思っていたが、ダンテの選んだ衣服を着るにはそれでは不都合があると自分にもわかる。
結局数組の下着も合わせて購うことになった。
流石にこの店には扱っておらず、商人繋がりで店を紹介して貰い、何せ寸法を測るところから。先の店で買った衣服に合わせたものを後は女性店員に見繕って貰う。]
| [ 買った服に衣類を取り替え、着ていた服も商品と合わせて纏めて貰い、なんだかんだと時間は掛かったが寸の合った衣服を纏えば気持ちも落ち着く。今は長衣に丈の短いスボンの出で立ちで、陽射しはないからヴェールは不要だ。 ズボンと言えど、もう男性と見紛われることはないだろう。
市を歩いているうち河沿いまで出、哨戒船だろうか水面に灯りが落ちている。風がだいぶ涼しい。]
ダンテ、何が食べたい?
[ 自国は旅の要になるような駅であるから旅人の行き来頻りで、眠らない街と言われている。この国も陽がすっかり落ちても市の賑わいは変わらずであるのは心地いい。]
すぐそこの河で魚が捕れるから新鮮だって。僕、魚食べたいかな。
[ ダンテはどう? と腹の具合を伺ってみる。]** (42) 2021/04/17(Sat) 21:26:14 |
[ それから、買物の間に離れた指をまた掛ける。]**
[20という節目を迎える年に初めに贈られたものは、
陣頭に立って一番初めに返り血を浴びるという"功績"だった。
そもそも。その日が、
の誕生日であるということもすっかり忘れていたのだが。]**
かわいい
[ きっとニコニコとして、あれこれヴィに当ててみて、最終判断は彼に委ねられてしまうが、合いそうなものがあればそんな風に言葉をかける。
自分が夢中になっている間に、ヴィが手を伸ばしている事がたまにあったが、高い位置にあるものに手が届かないらしい
ぶかぶかの服の袖が重力に負けて細い腕があらわになるから、どれが欲しいのとあわてて間にはいることしばしば。]
女の子って大変だな
[ 顔立ちは普段のヴィと同じ系統なのに、頰が丸く柔和になり唇もやや桃色で少女めいた華やかさを纏う。白金の髪が輪郭を淡くして、店内の明るい場所で見れば本当に可愛らしい。
小さくため息をついて動揺をごまかすようなことを言う。ヴィのことだから自身の変化だとか容貌が優れていることなんてのには無頓着なのだろうけど。
無頓着というか、理解していてそれが当然といった様子なのかもしれない。彼の種族特性も関係しているとは過去に聞いたんだったか。食性のためか他者の好む姿を取るというのは、彼らの種族の生存戦略らしく、今更にそれを実感する。
それとも、もとから自分はヴィに好意を抱いているのだから、その彼が女性姿になっているなら全部を可愛い綺麗だと思うのは仕方がないのか?]
[ 女性の上下の下着も必要になったと気づいて、この店だけでは流石に揃わず、店主が良い店を教えてくれた。
それにしても、全部が必要だなんて何があったんですなんて控えめに聞かれてしまったが、着替えを入れた荷物がなんてもごもご言っていたら店主なりに勝手に理解してくれたようだ。]
そうだ、化粧品もいるんじゃない?
[ 布地の多いひらひらとした可愛い衣服を自分が選んでしまったせいで、そんな衣服を女性が化粧もせずに身につけることはあまりないのではとようやく。
だから、ヴィも今夜は長衣を身につけたのかもしれないとようやく。ただ、そのままでも似合うのにと思ってしまっているから脳が沸いている。]
[ 店を出て教えられた道順を辿り店を目指す。
すっかり大荷物になっていたが、自分が持つと当然のように受け取った。
それから開いた方の手にヴィがそっと指を掛けるから少し笑って。]
腕を組んでくれてもいいんだけど
[ 流石に望みすぎだろうかと思いつつも冗談めかしてそんな言葉をかけ。こんな時は冬がやっぱり良いなとか考えたりもする。
そうすれば彼の手を掴んで温めるふりだってできるから。*]
[
――いや、本当なら、王は死んだ。死んだから。
真実を隠す鎖はとうに千切れているはずだった。なのに。
]
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