鋼鉄の六弦奏者 エリクソンは、メモを貼った。 (a8) 2020/09/29(Tue) 1:30:33 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン─回想・表彰前 王立劇場ロビー内─ [ 表彰式が行われる、2時間ほど前のこと。>>106 昨夜、交わした公約通り。 メイレン・シュレグマーの演奏を 見に行くことになった。 6人揃って、王立劇場のロビーに入る。 本日も変わらず装いは黒一色で、 そこそこ目立つ格好だったが、 ロビー内は様々な人間がおり さほど浮くこともなかった。 場内に入れば、ちょうど かの奏者が客席に向かって カーテシ―を披露している所だった。>>96 顔を上げた彼女も此方に気づく。 そして… ふ、と不敵な微笑を浮かべた…ように見えた。 ] (163) 2020/09/29(Tue) 15:43:06 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ すぅ…っと染みこむような滑らかさで 演奏は始まった。>>97 小鳥の囀りのような、 それでいて広大な河をたゆたう船のような、 ピアニッシモの、高音部の応酬が 繰り広げられる。 今はまだ日が昇ったばかりの時間帯。 初っ端からテンポの速い演奏を 持ってくるよりも、 こちらの方が、観客の心と 歩調を合わせられるだろう。 導入としてこれ以上ない選曲だ。 そして…。 ──のちに自分の世界に引き摺りこむ伏線か? なぜだか、そんな予感がした。 ] (164) 2020/09/29(Tue) 15:44:47 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 一曲目が終わる。 次に来るのは…先ほどと変わらぬ曲調?>>98 しかし…穏やかに始まった演奏は 加速度的にクレッシェンドし、 低音部も加わり一気に厚みを見せ。 ───そして。 唐突に鋭い低音のスタッカートが始まった。 ] (165) 2020/09/29(Tue) 15:44:55 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 観客みな息を呑む。 それもそのはず。 その音像は、さきほど優雅にカーテシーを していた時のシュレグマーとも、 一曲目を弾いていた時のシュレグマーとも 別人のような音。 …挑発的で、蠱惑的な光が踊る音。 ───だが、俺はシュレグマーの こんな一面を知っている。 忘れもしない、昨夜のあの瞬間。 あの時浮かべた彼女の表情が>>30 ありありと心に思い浮かんだ。 ] (166) 2020/09/29(Tue) 15:46:14 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 最初は呆気にとられていた観客達だったが、 段々と、彼女の演奏に場が温められ いつしか手拍子を打ち、 楽しげに体を揺らしはじめた。 演奏は最後まで勢いが衰えることなく、 最高潮の盛り上がりとともに、 曲が終わった。 ] (167) 2020/09/29(Tue) 15:46:27 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ そして、勢いは消えぬまま、 そのまま三曲目に引き継がれる。>>99 一波乱を予期させるようなグルーヴ感。 ときに不穏さを感じさせるフレーズ。 段々と刺激を増していくメロディ。 ───二曲目、三曲目の流れで 気づいたことがある。 もしかしてこれは 昨日の俺らの曲展開を意識して──? ] (168) 2020/09/29(Tue) 15:47:14 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 三曲目が終わり、次は一転、 しんみりとした静かな曲。 左右の手で別々に奏でられるメロディが、 電子六弦の掛け合いを想起させた。 観客達もリズムを取るのをやめ、 すっかり彼女の音に聴き入っている。 もはや観客達は、シュレグマーの掌の上。 彼女が紡ぐ音に合わせて 彼らは高揚し、 そうかと思えばしみじみとした気分に変わる。 ] (169) 2020/09/29(Tue) 15:47:25 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ まるで演奏会の最後を飾るように、 余韻を残した音で、曲が終わる。 観客達も拍手一つせず、その余韻を味わう。 場内に満ちかけた、静寂。>>101>>102 しかし。 ───これで終わるとは思えない。 ロビー中央に置かれた平台。>>93 まばらな席。開けた空間。 …ひと思いに楽器をかき鳴らすのに絶好の環境。 ───シュレグマーが仕掛けてくるのは 次 だ。] (170) 2020/09/29(Tue) 15:48:35 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 嵐の前兆を感じさせる、 さざ波のような導入部。 それが消えた刹那、"それ"は始まる。 鍵盤を駆け巡る怒濤の速弾き。 その下に重なる、重層的な和音。 一部の観客が驚いた表情をするのをよそに>>103 彼女の音は平台を揺らし、 会場を揺らし、 聴く者の心を…エリクソンの心を揺さぶった。 ] (173) 2020/09/29(Tue) 15:49:36 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ しかし気づけなかった。 まさかこれが、『即興』だったとは。 >>105 即興だからといって ミスもなければ粗もない。 ───当然のことだ。 6人組が生まれるよりも前から彼女は 平台奏者として生きている。 彼女がエリクソンの即興を見破ることはあれど、 その逆はまだ、難しかった。 この曲は、すでに熟練された 技を持つ者の手によって 昇華された、一つの完成品のようだった。 ] (174) 2020/09/29(Tue) 15:50:23 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ しかし一つ、分かったことがある。 これは彼女が自分達に向けた"メッセージ"。 自分らの昨夜の曲展開を踏襲したものだと。 シュレグマーは、 彼が一方的に叩きつけた挑戦状に ただ悠長に構えていたワケじゃない。 選んだ手段は違えど、 同じ音楽の求道者として自分らに 驚き、楽しみ、そして刺激をもらったと、 彼女の紡ぐ音は物語っていた。>>104 ] (175) 2020/09/29(Tue) 15:50:59 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 演奏を終えた彼女はカーテシーののち、 こちらをちらりと一瞥し、そして。 昨日と同じように、微笑んだ。 観客の一部のみから沸き起こる拍手。>>106 彼女らしからぬ楽曲も多かったのだろうか 一部の人々はあっけにとられたような、 不思議そうな様子で彼女を眺めていた。 ───まるでどこかで見た光景じゃないか。 >>2:256 ふと笑いが漏れ、 そして6人全員 メイレン・シュレグマーに盛大な拍手を送った。 ]* (176) 2020/09/29(Tue) 15:51:26 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―表彰式・宮廷 舞踏用大ホール― [ 4位という結果に茫然となりながらも 鉛のような体を無理やり動かし、 機械仕掛けのように賞状を受け取った。>>124 メイレン・シュレグマーの顔を直視できず、>>146 審査員席から目をそらしてしまう。 順位決定までの紆余曲折や、彼女の抱えたジレンマを 知る由もなく。>>146>>147>>148 ……午前中の王立劇場ロビーの演奏会で感じた、 『これは彼女が俺達に向けた演奏だ』 という確信は?>>185 ……終演後のカーテシーの後、くすりと笑った彼女の 『昨日のあなた達とおんなじね』>>186 とでも言いたげな目は? ] ……すべては俺の妄想だったのだろうか? (222) 2020/09/29(Tue) 22:21:57 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 受賞者発表はまだ続く。 賞状を持って元いた場所に戻り、>>149 とりあえず最後までは帰らずにいようかと うわの空で司会のアナウンスを聞いていた。 言葉を失う司会者にも、ざわつく会場にも もはや関心がなく。>>150 床の一点を見つめながら 一人、敗北を噛み締めていた。 ───その時。 ] (223) 2020/09/29(Tue) 22:22:39 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ───審査員特別賞。 そんなものがあるなど、知らなかった。 審査員全員の総意でなくとも、一人のプロを 惹きつけられた事実に、 わずかばかりの救いを感じていると、 ] 『続きまして、平台奏者であり メニュレー男爵令嬢 メイレン・シュレグマー様の 審査員特別賞は────』 (─────えっ!?) [ ふたたび告げられるのは、 自分らのグループ名。>>152>>153] (225) 2020/09/29(Tue) 22:23:44 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ その後、自分らのグループはさらに2度呼ばれ、 計4つの審査員特別賞に選出された。>>154 中には宮廷楽長の賞も含まれており。>>155 コンペ開始以来初めての前代未聞の事態だそうだ。 そこで初めて、総合順位選出に何らかの 紆余曲折があったのではと想像が飛ぶ。 が、自身は3位のテノール歌手も 2位の雅楽奏者も、自分の目で実力の程を 知る機会はない。 真相を推し量ることもできないと、 その想像を胸の内にしまった。 いまだ状況が呑み込めないままに、 再度、前方に移動する。 自分たちに向けられた拍手は 動揺に満ちていて、しかし何やら 恍惚とした音に聞こえた。 ] (226) 2020/09/29(Tue) 22:25:45 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 会場前方にて、各審査員による 褒賞の説明を受けたのち。>>156 メイレン・シュレグマーと初めて面と向き合い、 授与を受けながら、 直接掛けられる言葉に。>>157 本番の興奮と、彼女とのやり取りが思い出され 先程とは全く逆の理由で >>222 目の前の顔を直視できない。 目を数度しばたいて、つと顔を上げ。 満面の笑みのメイレン・シュレグマーから 賞状を拝受した。 ] (227) 2020/09/29(Tue) 22:34:27 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 受け取った賞状は、他のどれよりも 熱をもって、手の中で震える。 昨夜の気概はどこへやら、 不覚にも揺れ霞む瞳に 彼女は、気づいただろうか。 ]* (228) 2020/09/29(Tue) 22:35:33 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン─表彰式後・夜 宿最上階─ [ 長い一日が終わり、 宿に戻ってようやく一息つく。 4つの審査員賞に加え、技術賞も受賞した彼らは 合計6賞を総舐めにしたとして 今日一日で人々の話題に上ったようだった。 むろん賛否は多く、結果を良しとしない者たちも 少なからずいたようだが。 受け取った賞状・ピンバッジの類を整理し、 各審査員からの褒賞を確認すべく メイレン・シュレグマーからの封書を開封する。] (233) 2020/09/30(Wed) 0:13:22 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ ───そこには、手紙が同封されていた。>>-205 聞くに、審査員特別賞の規定では 各審査員が用意した3つの褒賞から、 1つを選んで受け取ることができる というものがある。>>156 手紙にはその詳細についてと、 ……そして、メイレン・シュレグマー本人からの 6人組への賛辞の言葉が並べられていた。 ] (234) 2020/09/30(Wed) 0:15:20 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 彼女は3つの褒賞において 俺らの音楽が広く普及するための道を 模索してくれているようだった。>>-207 また手紙の中には、 俺らの音楽が一部の者から反感を買っていること、 それでも彼女は俺たちを応援しているということ そして良き好敵手として認めている、という ことも記されていた。>>-206 (235) 2020/09/30(Wed) 0:17:44 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ 最後は、彼女が音楽界に寄せる思いの丈を 窺わせる言葉で、 手紙は締めくくられていた。>>-208 そのあとに、とても彼女らしい一言を…… 『次は直接仕合いたい』 という言葉を添えて。>>-209 ] (236) 2020/09/30(Wed) 0:18:05 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―回想― ―表彰式・宮廷 舞踏用大ホール― 『……あら、どうしたの。 あなた達でも緊張することあるのね?』 [ 周囲に聞こえない位の小声で、そう囁かれる。 精一杯押さえ込んだ感情は、 彼女の前では無意味だったようだ。>>253 そして、また一つ、掛けられる言葉。 4つの審査員特別賞。 これは彼女たち審査員の、 自分らの演奏に対する答えだと。>>254 ] (262) 2020/09/30(Wed) 11:36:25 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン ───また明日、演奏会で会いましょう。 [ そう告げられ、>>255 『勝負』はまだ終わってないことを思い出した。 水膜で滲む視界を 再度目瞬いて振り払う。 そして、 「もとよりそのつもりだ」とでも言うように 今度は正面からメイレン・シュレグマーの顔を捉え 口角を結んで微笑ってみせた。 ]* (263) 2020/09/30(Wed) 11:44:06 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン―表彰式翌日― ―コンセールカリヨン滞在最終日― [ 手紙はすぐにメイレン・シュレグマーの元に 届けられたようだった。 ただの褒賞に関する報告と、感謝の言葉を述べた だけの手紙に、彼女はいつもの彼女らしく 驚き、そして愉快そうに、 手紙を読んでくれたようだった。>>271 ] (310) 2020/09/30(Wed) 19:02:18 |
【人】 鋼鉄の六弦奏者 エリクソン[ リジィ第三王子の一件については>>273 あまりピンと来なかったらしく。 リジィがシュレグマーの研究室から音盤を 借りた(返してないようだが)ことは、 リジィにとっては忘れもしない出来事だったが、 彼女にとってはささやかな日常のワンシーン だったのかも知れない。 しかしそんな些細な日常風景が、数奇にも 今回の一連の出会いに繋がったと思うと なかなかに感慨深いものがあった。 (311) 2020/09/30(Wed) 19:06:36 |
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