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![]() | 【人】 軍医 ルーク……もしあの薬を飲むのが嫌だと思うなら、 義手を使うな。 戦闘のことは領分の外、君の判断ではあるけれど、 それでも、だよ。 [ けれど、“使うな”と口にするときは真顔になる。 これまで何度言ったか覚えていない。 分かっては、いるのだ。 先の戦闘でこのうさぎがあの義手を使わなければ、 被害はより甚大なものになっていた。 もしかしたら、死傷者が出ていたかもしれない。 それを思うなら、ほんとうに、 自分が口を挟めることではないのだけれど。 それでもどうしても口に出してしまう。] (312) 2020/05/20(Wed) 22:01:22 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク記憶を取り戻せたら…… [ その言葉を、繰り返す。 それは、喜ばしいことのはずだ。 けれど、その言葉を口にしたときの彼の表情は、 いつものゆるやかな笑顔ではなくて、強張って。 ――まるで、何かを恐れているようにも見えて。 思考が一呼吸、遅れる。 呼吸をひとつ、忘れる。 記憶を無くしたものが取り戻すことを不安に思うのは、 理解出来ない心情ではない。 自分も知らない自分への不安、 いまの自分自身の存在を不安定に思う心理。 そんな一般論が頭を過り――… “変わってる僕は、少しは、マトモになるかも” 聞こえたその言葉に、口を開きかけ、噤む。 ……自分は、何を言おうとしていたんだろう。 ただ、何処かが酷く、痛んだ。 その正体も分からないまま、彷徨いかけた指先を握り込む。 変なことを言ったと謝られても、 首を横に振ることしか出来なかった。] (314) 2020/05/20(Wed) 22:02:13 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク[ 道すがら、飴を貰ったときのこと。 返って来た言葉に、くすりと笑う。] はは、それが魂胆かい? こういう味、かあ。 同じ味を作るのは難しいから、 そこは期待しないでおいて。 ああ、でも…… [ そろそろ、棚の中の瓶詰の果実は出来上がっている。 よく滅菌した瓶に詰めておけば、日持ちもする。 直接薬に混ぜ込むというわけにもいかないけれど、 薬の後にでも水で割って飲めば、 少しは後味もましなことだろう。 ――渡す心算なんてなくて、 きっと捨ててしまうのだろうと思っていて。 ただ、返された微笑みに、ふと。] あとで、いつでも都合がいい時でいいから。 お返しは、するよ。 [ そんな風に、口をついて出た。] (315) 2020/05/20(Wed) 22:03:01 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク[ 目的の場所に到着する。 激しい戦闘の痕跡を残した荒れ地は、 直に目にするとそれは酷い有様で、 其処彼処に崩れた瓦礫や、建物の残骸が飛び散っている。 硝子窓の欠片を靴の先でつつき、ぺんぎんを持ち上げる。 尖った破片を足で踏ませるわけにもいかない。 ぺんぎんは、きゅう、と大人しく腕にしがみ付いた。] 木箱ではない、と思う。 そう、恐らくは金属製。 [ 以前研究所で見た、それと思しき部品の形状を思い出す。 その後すぐに、解析できない状態に陥ってしまったそれが 本当に通信機だったかは――… 『使用している場面を見た』のだ、 ほぼ間違いはないだろう。] (317) 2020/05/20(Wed) 22:03:35 |
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![]() | 【人】 軍医 ルーク[ ――途切れてしまったはずの何かが、強く軋む。 けれど、不意に横合いから聞こえたうめき声に顔を上げ、 振り返った。>>298] どうした? [ 様子がおかしい。 まるで夢でも見ているかのように、ぼんやりと彷徨う視線。 此処ではない何処かを見ているような、 此処にはない何かを見ているような。 まず過ったのは、強かったと言っていた薬の後遺症。 あるいは、義手の。 それとも、まさか――… 先ほどの会話の中で感じたざわめきが、 強く湧き上がる。 途切れ途切れのノイズ、 身体の内側を剃刀で引っかかれているような、 ――“不安” それを振り払い、肩に手をかける。 もし倒れでもしたときに、自分の力でどうにかなるかは 分からないけれど、 何があってもすぐに対応できるようにと。] (319) 2020/05/20(Wed) 22:04:58 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク[ 息をつめて、じっと様子を見守る。 四角い金属――通信機を探しているようではあった。] “あの怪物の作りなら、きっと”…? [ その言い回しに引っ掛かりを覚える。 聞きようによっては、まるで、 『機獣の構造を知っている』ように聞こえてしまう言葉だ。 歩き出したその後を追ってゆく。 真っ直ぐに向かった先、瓦礫片の影。 そこには、まるで彼を待ち構えてでもいたかのように、 しっかりとした造りの金属製の箱が、瓦礫に埋もれていた。 作業員の回収の折には、此処まで調べていなかったのだろう。 少し距離があり、物陰になっている。 ――作業員が見逃しているような、そんな場所。 こちらを振り返った表情は、いつものあの笑顔。 いましがたの様子が、何かの錯覚であったかのように。] (320) 2020/05/20(Wed) 22:05:56 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク 具合は? 何か違和感があったり、 副作用の症状が強く出ていたりはしないか? [ 箱の事よりも先に、そのようなことが口をついて出た。 もし、何の事か分からないという様子だとしたら、 こう話しはするだろう。 さっき、頭痛があったように見えたから――と。 連れ出してよい状態だったのだろうかという迷い。 “知っていた”かのように箱を見つけたことへの疑問。 二つの思考は縺れて、ピアノ線はまた、おかしな音を立てる。] わたしが、持ってく。 帰ったら休むといい。 それ、貸して。 [ 箱に手を伸べて受け取ろうとして力を籠めれば、 自分の腕力では難儀しそうな重みにうっとなる。 フードの下、滅多にその存在を主張しない耳が ふるりと震える。 青白い顔を赤くして暫くの間頑張ろうとしたのだけれど、 物理的に無理だった。 なお、足場を確保して下に降りて、ぴょんぴょんはねて “おてつだい”しようとしているぺんぎんにも、 やっぱり物理的に無理だった。] (321) 2020/05/20(Wed) 22:07:57 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク[ その箱は、結局持ってもらうことになったか。 あるいは持ち帰るには重く、戻ったらすぐに回収班に 声をかけることになったかは、そのうさぎの腕力次第。 帰りの道すがら、ぽつり、口を開いた。] 今更の話を蒸し返して悪いけど。 ……言ってなかった。 医務室でのこととか、飴とか。 [ ゆっくりとした足取りで、瓦礫の中を歩く。 ぺんぎんを抱えたまま。 がらがらに崩れ去ってしまった、 けれど、嘗ての形を未だとどめている、そんな瓦礫たちが、 『月』と光る草木の下、ひっそりと物言わずそこにある。] ありがとう。 [ きっと、言いたいことはそれだけではない。 それだけじゃないはずなのに、分からない。 ざわめきがある、痛みがある。 それなのに、どうしてなのかが、 ――… わたしには、わからない。]* (322) 2020/05/20(Wed) 22:10:26 |
軍医 ルークは、メモを貼った。 ![]() (a28) 2020/05/20(Wed) 22:13:44 |
![]() | 【人】 軍医 ルーク[ 自分が持ち上げられなかった箱を、 うさぎは軽々と持ち上げてみせる。 医務室で義手を巡って部下たちと話していた内容を思い出す。 恐らく、持って来た装備も、 自分が持てるような重さのものではないのだろう。 躊躇いはあったが、見たところいまは不調もなさそうだし、 不承不承頷き、手を離した。 代わりに、来るときには持ってもらっていたランタンを 受けとることにする。 道すがら、投げかけられた言葉に顔を上げた。] ……“心配”? [ 困惑しているような、理解できずにいるような、 その声はきっと、以前医務室で盛大に“怒りながら”、 “怒る”が分からずに問い返したときと同じもの。>>0:242 ] (397) 2020/05/21(Thu) 2:12:11 |
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