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168 【飛び入り歓迎】Hospital of Delusion ー妄執の病院ー【R-18RP】
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[突き上げと共に事実を確認するような彼の声。
それを否定したいのか、ただ快楽を逃がしたいのか、
チハヤの身体にしがみついたまま首を横に振る。]
あ、ぁ……ッ、 ん、ぅん
[他の誰かに聞かれたところで、
その子たちも巻き込んでしまえばいいこと。
生者はみな堕ちて、怪異へと成り果てればいい。
そう思っているのに、人間の頃へ戻ったように
声を唇の奥へ閉じ込めようとした。]
ん、んッ ……んぁ ぁ ……ぅ
[何もかもが思い通りにならなくて、
眼下の男に振り回されている。
理由はもう分かっている。
彼の興味が、与える悦びや快楽ではなく
目の前の自身に向けられていることを、
その行動すべてが示しているようだったから。]
![](./img/kamishino/tachibana.png) | [誰も助けてはくれなかった。 誰も気づいてはくれなかった。
世間の不幸と比べてしまえば、 自身の地獄は途端に甘えへと成り下がる。 その程度の人生だった。
本当に……生まれたのが私でなければ、 それこそチハヤのような人だったなら、 誰も不幸にしなかったのかもしれない。
それでも、 あの世界しか知らなかった私には、 どうしようもなく耐えがたい日々だったのだ。] (139) 2022/08/12(Fri) 22:26:56 |
[だから、私はこの男が憎い。
憎くて、羨ましくて、おいしそうで、
――ほんのちょっぴり、怖ろしい。
彼の欲望が自分に向けられているのが分かる。
求めた夢を満たすだけの価値を己に見い出せずとも、
チハヤをここに留めるだけの理由はあるだろう。
留まれば、彼の命は喪われる。
あの時は消えてしまいそうだと思ったけれど、
今はどうなんだろう…………分からない。
快楽に溺れるどころか、
それすら糧にして己の欲望を育んでいるような。
自我を失うどころか、
これまで希薄だった分を取り戻すような。
その貪欲さは、執着は、
一度すべてを諦めてしまった私にとって、
生の輝きに等しい。]
[だからこそ怖ろしいのだ。
家族への怒り、恨み、哀しみ。
生者への嫉妬、羨望、憎しみ。
気づいたら死んで、気づいたらここにいた。
そんな私のしがみつくべき存在理由が、
彼の欲に塗りつぶされてしまうのではないか。
塗りつぶされたら、どうなってしまうのか。
注がれて満たされてしまったら、
私なんて簡単に消えてしまうかもしれない。
それなのに気持ち良くて、もっとして欲しくて、
痛みと恐怖と快楽が頭の中でぐちゃぐちゃになる。]
わたし……は、こわ い。
……ぁ ぁッ、ふ、ふ。
おそろし い、ひと。
[彼が空虚に舌を這わせる頭上でぽつりと零した。
それは古いベッドが軋む音とお互いの荒い息と
かき混ぜられる粘液の音しかしない病室の中でも
聞き逃してしまうくらいの小さな声だった。]*
[お預けを食らった抗議は痛みも恐怖も掻き消す
深い挿入に吞み込まれた。
意趣返しだと分かる彼の笑い声が
鼓膜を擽るだけで痺れが指先まで広がるようだ。]
や ぁ…… っん ん
[次の望みは叶えられ、古いベッドに白い肌が落ちる。
自重から逃れた代わりに彼の腰がより深く穿たれ、
これまでと違う場所を擦り上げられれば
腰の奥から脳天へ、何かが駆け上がる感覚がした。
汗も滲まなければ肌も冷たいまま。
しかし甘く蕩けた声と表情、水音の増した下肢が
彼の与えるものにどれだけ感じているかを
雄弁に伝えてしまうだろう。
腰を逃がそうとしても既に力が抜けきり、
彼が耳元に顔を寄せることも容易に許してしまう。]
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | [小学校の頃、名前の由来を発表する授業があった。 「お母さんやお父さんに聞いてね」と先生は言った。 期限は一週間あった。
一日目、母は遅い時間に返ってきた。 二日目、昨日より早かったがイライラしていた。 三日目、話しかけようとしたが睨まれた。
四日目、五日目……プリントを見せるついで、 陽が沈む前に返ってきた時、休日で家にいる日。 タイミングはあった。けれど怖くて聞けなかった。 何か書いてもらう必要はないしと言い訳をして、 結局自分で適当な理由をつけて発表した。] (140) 2022/08/12(Fri) 22:29:45 |
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | (141) 2022/08/12(Fri) 22:30:08 |
ぁ……む、 むす ぶ……ッ
[注ぎ込まれた
XXXを壊れた玩具のように繰り返す。
むすぶ、むすぶ。
私に恐怖と快楽を与えてくれる人。
下腹部からせり上がってきた感覚が止まらなくて、
ナカが限界を告げるように痙攣を繰り返す。]
ん、ん ……ッ ―――――
ぁ♡
[ほとんど湿った吐息に近い声をあげて絶頂に達した。
背は弓のようにしなり、
彼の欲望を搾り取るように締め付ける。
すぐには戻れず、投げ出された肢体は成すがままだ。
突かれれば跳ね、抉られば甘く啼くだけの女になる。
しかし注ぐ前に腰を引くことだけは許さず、
最奥に広がる温もりを感じれば手で腹を撫でた。
それから視線を頭上の彼に向け、唇を動かす。]
― それから/名もなき病室 ―
[彼の欲は収まっただろうか。
未だ昂ぶりを残すのなら、蜜壺はねだるように蠢く。
きっと溺れさせることはできないのだろう。
それを理解してもなお、獲物を手放すことはない。]
…… っ、はぁ …… うふ。
[一度きりにしろ、続きがあったにしろ、
ベッドの軋む音が収まった頃には、
病室の中はすっかり色の匂いだけが漂っていた。
結が眩暈を覚えた甘い死の香りは目の前の己から
発され続けているが、彼の様子はどうだったか。
もしまだ耐えられる様子であったとしても、
腕の中に誘って肺いっぱいに吸い込ませよう。]
少し、休んだ方がいいわ。
……そうしたら、また痛くて、また欲しくなる。
[彼が強い意志で抗わない限り、
一人ベッドを抜け出すのは容易いだろう。
脱ぎ捨てた衣服はベッドの下に散らばったままだが、
真っ白な己が裸体は既に元通り、
落ちているものと同じ白いパジャマを纏っている。
質量を得てはいるが、生者と同じではないのだ。
彼の耳元へ唇を押し当て、口づけのように囁く。]
[初めて会った時、
かけてくれた黒いカーディガンを彼の肩に被せた。
攫った場所からそう遠くない病室だ。
目撃者が探しに来るかもしれないし、
結自身が好きに動くこともできるだろう。
何も阻みはしない。
己が画策せずとも、異界化したここから
容易に逃れることなどできはしないのだから。
最後に彼を一瞥した後、制止がかからない限り、
再び黒い闇の中へと溶けていく。]*
| (a41) 2022/08/12(Fri) 22:42:10 |
[なんで、生きて来たんだ?
"死ななきゃいけなかったんだ"───]
[悲しみが、怒りが、憎しみが、恨みが
黒く、黒く……渦巻く感情が、同調する。
再び己の心を、支配してしまいそうになり───…]
おとう さん
おなまえよんで
[俺に寄り添うように、忘れるなと戒めるように
時折聞こえるその声は本当に幻聴なんだろうか]
![](./img/kamishino/tachibana_02.png) | ― チハヤを連れ去る前/精神病棟2F廊下 ― [ 獲物を連れ去ろうとする直前、 絶叫が廊下に響き渡った >>119。 本来己に与えられるにふさわしい、恐怖、拒絶。 故に驚くこともなく視線を向けた。 既に闇へ飲み込まれつつあった中で残された瞳が ずろりと蠢き、蹲る男を捉える。 嗚呼、あんな子に とびきり優しくしてあげたらどうなるんだろう。 怖いのと、優しいのと、気持ちいいのと、痛いのと。 いっぱい混じって、訳が分からなくなって。 その瞳の奥に潜む後悔や怯え、 あるいは不満や言い訳、自己弁護、 もしくは救いを求める心が僅かでもあったとしたら、 きっと、死んだ後にとびきり悔いてくれるだろうに。 しかし、残念ながらどれだけ手を伸ばしても 新しく蹲った生者を捕らえることはできない。 ならば他の子の獲物になるのもいいだろう。] (155) 2022/08/12(Fri) 23:41:41 |
![](./img/kamishino/tachibana.png) | [それよりは、こっちの生者 >>110が近かった。 蹲った男とは裏腹に迷いなく駆け出した男の手は どこまで伸びただろうか。 黒く長い髪に届きかけたとしても 何らかの衝撃が彼に走ったのかもしれない。 少なくとも助けには至らなかった。 もし、彼の手がうんと近づいていたのなら、 闇に潜む前の黒い髪くらいは掴めたかもしれない。 相手が近ければこちらもまた同義だが、 彼に対して引きずり込むような真似はしなかった。] (156) 2022/08/12(Fri) 23:42:14 |
![](./img/kamishino/tachibana.png) | [理由は分からない。
けれど、彼は――怒りや悲しみ、憂い、迷い、 多くの感情がない交ぜになった瞳をしていた。] (157) 2022/08/12(Fri) 23:43:53 |
![](./img/kamishino/tachibana_02.png) | [いつ死んだかなんて覚えていない。 だから鏡に映る自分を見たのも遠い昔のことだ。 彼らが己の瞳に何を重ね、何を思ったか分からない。
ただ、彼らの表情に絶望や動揺を与えられたことが 嬉しくて、愉しくて、とってもおいしそうで。
彼らが捉えた眼球に、眼光に、視線に、 彼らの望む痛みを注ごうとする。 その痛みを取り除くことで、忘れることで、 悦びから逃れられなくなるように。] (158) 2022/08/12(Fri) 23:44:45 |
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | [邂逅は一瞬で、別離は緩慢で容易だった。 周囲に満ちた闇は怪異と似た色をしていたけれど、 そこにあなたを見つめる瞳はもう、ない。]*
(159) 2022/08/12(Fri) 23:47:43 |
| (a45) 2022/08/12(Fri) 23:49:41 |
[やはり己は───
存在してはいけなかった。
そう、
"嗤う"
しかなく。]
[絶望。
そこから這い上がる術だって知らない。
闇のように、どす黒く哀しい感情
それが己の耳か、脳内かは不明だが
届いた
声
が───
更に、己を
嘲笑
した気がした。]
少女が下腹に感じた違和感は、贈った『僕』も気付くことは無い。
今まで、「そうなった」ことは一度も無かったし、意図したものでもないからだ。
――けれど、少女の中に潜んだ『私』は、確かにその変化を感じていた。*
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | ― いつかの日/カナと ― [噛志野医院にいた頃の私は、すべてに無気力だった。 何もかもが薄い膜の向こうで起きたことに思えて、 呼びかける声も届いているはずなのに曖昧で。 今でも多くの記憶が欠けたままだ。 挨拶されたとしても、 何の反応もなく通り過ぎていただろう。 あの時の私は身の回りの世話に人が必要なだけで、 何の意味もない、無害で邪魔な存在だったから。 ――ただ、太陽に照らされた >>160明るい髪が 光に透けてきらきら輝いていたことだけは 何となく覚えていた。] (176) 2022/08/13(Sat) 1:09:29 |
![](./img/kamishino/tachibana.png) | [彼女が立ち上がると拘束具は掻き消え、 こちらの胸に穿たれた穴にも興味を示さない >>161。 いや、興味がないというよりは、 そもそも認識できていないという方が正しいか。 彼女こそ夢をまことにしたのかもしれないが、 残念ながら当時の私の内に在る言葉ではなかった。 ] こんにちは……カナさん。 [彼女が名を告げたから、私もタチバナと返した。 姓で呼ばれることを好まない彼女に続こうとした口は なぜか何の音も発してくれず、今に至る。 微笑みを浮かべる彼女は、 まるで今でも生きているかのように談笑する。 私はそれに合わせることもできず、 いつも言葉少なに返すことしかできない。] (177) 2022/08/13(Sat) 1:10:11 |
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | え……。
[その日、彼女は私の髪を褒めた。 視線を下ろすと無気力だった内に伸びた黒い髪が 背と腕を覆うようだった。]
……一度でいいから、伸ばしてみたかったの。 染めたら手入れが大変そうだし。
[嘘だ。けれど半分は本当だった。 染めていないのはただ放置していただけだが、 小さい頃からずっと長い髪には憧れていた。
……でも、髪を引っ張られる時、長い方が痛いから。 床に落ちた髪の毛にイライラされるから。
胸の穴がそうであるように、 長く伸びた黒い髪も死の証なのかもしれない。]
(178) 2022/08/13(Sat) 1:10:32 |
![](./img/kamishino/tachibana_04.png) | カナさん……こそ、きれいね。
[自分のことなど考えても仕方ない。 話を逸らすように彼女の髪色に触れた。
二十年近く染め直さずに色を保てるなど 生者にはありえないことだけれど、 それが彼女の望む夢ならば決して壊すことはない。]
陽にあたったら…… ……きっと、もっときれいなんでしょうね。
[すっかり廃れてしまった病院は 壊れた機器や破れたカーテン、 外の手入れをなされていないことも相まって、 昔より薄暗くなってしまったことだろう。 異界化が始まれば尚のこと。ここは夜に包まれる。]
(179) 2022/08/13(Sat) 1:11:02 |
![](./img/kamishino/tachibana.png) | …………それじゃあ。
[きらきらしたあの色が見れないことだけは、 ほんの少しだけもったいないように思った。 それを決して口にすることはないまま、 いつものように彼女の夢から離れる。]**
(180) 2022/08/13(Sat) 1:11:40 |
| (a48) 2022/08/13(Sat) 1:17:09 |
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