情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] / 発言欄へ
【人】 ピアニスト イングラハム*** 彼女の助けになろうと躍起になったものの 実際、私は私で彼女に救われた。 それは譜面に音符のインクが滴るように 彼女との約束は私の演奏への意欲を この上ないほどに高めてくれていたから。 両親がからかうように 「何かいいことでもあった?」などと言うので やめてくれと不満を顕にすることもあったが。 (68) 2022/02/15(Tue) 8:55:32 |
【人】 ピアニスト イングラハム新たに予定表に書き込まれる日課 学校と演奏の練習以外には何よりも優先される 病院への見舞いというイベント。 それまではアンネが病室から出られる日がある なんて思ってもみなかったから。 アンネからそれを聞いた時は分かりやすく 喜びの表情を浮かべることになっただろう。>>64 受付で看護婦が微笑ましげに ニヤついていた理由が、その時初めて分かった。 (69) 2022/02/15(Tue) 8:56:12 |
【人】 ピアニスト イングラハム「本当か!?」 外出の許可が降りたということは 回復も近いのだと私は勝手に解釈して 病室には相応しくないくらい声を張り上げる。 それからこほんと咳払いをして 頑張ったんだね、などとアンネを労うと 「なら、その日は必ず予定を空けるよ。 僕にとっては君が一番大事だから。」 そう、意気込んでみせるのだった。 その心臓の奥底に、大きな決意を秘めて。 (70) 2022/02/15(Tue) 8:57:48 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** あの日は確かたまたま近くで公演があって せっかくだからと病院に足を運んでいた。 観客から頂いたフルーツのおすそ分けという 我ながら取ってつけたような理由を添えて。 とはいえ急な来客だったものだから 迷惑でないか、と病院の看護婦に 再三確認を取ったわけで。 とんとん、というノックと共に 彼女が許可をくれれば病室にその顔を 覗かせるのだったが。>>74 私が驚きのあまり口をポカンと空けたその顔は まさにマヌケと呼べるような情けないものだった。 (76) 2022/02/15(Tue) 21:27:27 |
【人】 ピアニスト イングラハムサプライズドッキリにしては あまりにも空気が読めてなかったらしい。 アンネがどうして不服げなのか すぐに察した私はというと 「あ、いや、ご、ごめん。 一言連絡をするべきだった。 その......僕は、間が悪いな。 」思わず頭を下げると慌てて病室の外へと 出ようとする。 しかし目を逸らすアンネを前にして そのままトンズラをこくという訳にもいかず ただ反省の色を浮かべることしか出来なかった。 (77) 2022/02/15(Tue) 21:29:02 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** アンネとの約束の日。 私は朝から落ち着かない気持ちでいた。 演奏の練習も全てキャンセルして 彼女に会うためだけに身嗜みに普段以上に 気を遣ってみせたりもして。 彼女の可愛らしい姿を思い出して 少しでもそれに釣り合うようになりたかったから。 この後何を予定しているかは 傍から見ればすぐに分かってしまうほど 私はずっと浮き足立っていた。 まるで、何も知らない呑気な子供のように。 (78) 2022/02/15(Tue) 21:34:03 |
【人】 ピアニスト イングラハム病院から一番近いところにある海 付近の公民館をわざわざ無理を言って借りて 夢を叶えようとこの日の準備を重ねてきた。 彼女はどう喜んでくれるだろうか。 そんな期待に胸をふくらませて。 私は病院へと向かって歩き始める。 「お昼頃にそっちへ迎えに行くよ」と そんな連絡をひとつ残して。 私は彼女に、会いに行くのだった。* (79) 2022/02/15(Tue) 21:35:14 |
【人】 ピアニスト イングラハム部屋を後にして数分。 誰もいない部屋の隅の棚 飾っていたピアノの写真が 棚から落ちて砕け散った。 砕け散るガラス片が何の予兆なのか 私は取り返しがつかなくなった頃に思い知る。 それが全ての終わり。 (92) 2022/02/16(Wed) 2:19:25 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** 病院に辿り着けばもう一度アンネに連絡を送る。 この前は急で驚かせてしまったから 今度はそうならないようにと気をつけた結果だ。 しかし、送った連絡に返事が来ることはなく。 私は少しだけ心配になりながら院内へと その足を踏み入れることとなった。 (94) 2022/02/16(Wed) 2:21:01 |
【人】 ピアニスト イングラハムやけに重苦しい空気が満ちる。 汗を垂らし走り回る医者に まるでお通夜のように顔を淀ませる看護婦 穏やかな空気じゃないのは確かだ それはまるで、誰かが亡くなったかのようで。 けれどそれが誰なのか、私には見当もつかずに。 (95) 2022/02/16(Wed) 2:21:43 |
【人】 ピアニスト イングラハム「えっと、すみません。 アンネロズさんと面会を お願いしたいんですが......。」 そう受付の看護婦にいつものように声をかける。 けれど看護婦はいつものようには答えてくれず 何かを隠すように口ごもっていて。 その理由を知った時、私は息を飲んでしまった。 (96) 2022/02/16(Wed) 2:22:22 |
【人】 ピアニスト イングラハム本当の絶望を目の前にすると 人は怯えることすら出来ないのだと 私は最悪の形で学びを得る。 アンネの訃報の引き換えに得たのは 知りたくもない人間の真理と、消えない傷。 けれど、彼女はそんなこと一言も言ってなかった。 いつか自分が死ぬかもしれないなんて 彼女は一言だって言ってはいなかったはずなのに。 彼女はきっと、回復の途中だと思っていたのに。 (98) 2022/02/16(Wed) 2:23:48 |
【人】 ピアニスト イングラハム現実を受け入れられなくて怒るのでも 現実を受け入れて哀しむのでもなく まだこれが現実だという自覚すら持たず。 私はただ鉛のように重い身体を引きずって 彼女がいつも出迎えてくれた病室を目指した。 (100) 2022/02/16(Wed) 2:25:17 |
【人】 ピアニスト イングラハムくらりと意識が飛びそうになる。 血管が悲鳴をあげるように 血液までパニックを起こしかけた身体を 無理矢理奮い立たせると 病室にいた者たちの視線が私へと集まって 私に気づいた彼女の両親が その全てを、教えてくれた。>>90 こちらへ謝罪をする彼女の両親は 私よりも深く哀しむことになるのだろうに 最後まで他者を気遣うその心に 私は彼女の面影を辿らずにはいられない。 (102) 2022/02/16(Wed) 2:30:27 |
【人】 ピアニスト イングラハム今ここで泣き叫ぶことだって出来た。 それをしなかったのは 人徳者 の前で私がそんなことをするわけはいかないからで そんな私に追い討ちをかけるように 忘れていい。>>91 そんな言葉が心臓を抉る。彼女の両親の気遣いだということは 痛いほど伝わってきた。 それに憤る資格など私にはないということも 十分に分かっていた。 (103) 2022/02/16(Wed) 2:31:43 |
【人】 ピアニスト イングラハム「すみません。少しだけ... 彼女と二人にさせてもらえませんか。 彼女に...ちゃんと別れを、告げたいんです。」 (104) 2022/02/16(Wed) 2:32:18 |
【人】 ピアニスト イングラハム赤の他人の私が言えたことではない しかしこれまでの事を好意的に見てくれた 彼女の両親は私の願いを聞き入れてくれて 部屋に残ったのは 取り残されてしまった私と 逝ってしまったアンネの亡骸だけとなった。 (105) 2022/02/16(Wed) 2:32:54 |
【人】 イングラハム*** アンネに別れを告げて病室を出ると 外で待っていてくれた彼女の両親に 「ありがとうございました。 」 そう深々と礼をして私はその場を後にする。 向かう先は病院の玄関出口...ではなく 誰も通らないような外付けの非常階段で。 (106) 2022/02/16(Wed) 3:31:25 |
【人】 イングラハムアンネロズを失った痛みが魂を引き裂く。 壁へとぶつかる怒りの数だけ 引き裂かれた魂が更にバラバラに崩れていく。 粉々に砕け散る魂が今更どの面を下げて 彼女を愛しているなどと言えようものか。 (110) 2022/02/16(Wed) 3:38:25 |
【人】 イングラハムゴン、ゴン、と不細工な音を奏でる度に 耐えかねた拳からは流血が零れ落ちていく。 あぁ、痛くない。痛くないよ。 君が背負った痛みや、君を失った痛みに比べたら。 すると胸ポケットから何かが 血溜まりの上に落ちていった。 (111) 2022/02/16(Wed) 3:40:04 |
【人】 イングラハムそれはチョコレート。 アンネが私の為に用意してくれた 甘くて美味しい、私の一番好きな食べ物。 包みから落ちて血と砂で汚れたチョコレートを 拾い上げて、それを口へと放り込むと 甘くて蕩ける想い出の味を ざりざりとした鉄の味が邪魔をする。 (112) 2022/02/16(Wed) 3:41:58 |
[1] [2] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新