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【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親あなたがそこに寝転んでからすこしして足音が聞こえてくる。 あたりを伺うようにして、そしておそらくあなたの姿を見つけて一度立ち止まる。 それはほんの一瞬のことで、寝転んでいるあなたの隣に腰を下ろす音が聞こえるだろう。 「朝日先輩。 ここ、気に入りました?」 いや、気に入ったかもとは言ってましたっけ。 ここは静かだから声がよく通る。 (-115) 2021/11/05(Fri) 7:23:43 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「どうも。 あんまり気にしなくていいですよ、今からでも寝ようと思えば先輩を無視して寝れます。 しませんけど」 異能を使えば。 夢もなく微睡む心地よさを味わうことができる。 「先輩はここに人を呼んだりするタイプじゃないでしょう。 好きにしていいと思いますよ」 ここ数日、この学園で何かが起きている。 グラウンドで先輩の……暴走した姿も見た。 怖くて、怖くて、追いかけられなかった。 (-117) 2021/11/05(Fri) 9:05:42 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「じゃあ今日は先輩がいないかなって期待しながら秘密の場所に来た健気な後輩ということにしておいてください」 雑なことを言いながら、半分は嘘でもないなと思う。 元気そうでよかった。 「……自分の異能が好きか、ですか? 便利だとは思ってますよ。友達にもテスト前とか大会前とか頼まれます。 考えたことなかったな」 自分の一部であって、生まれつきある手足のようなもの。 物理的に存在するものではないから制御はできても削ぎ落とすこともできない。 考えたことがないというのは、すこしだけ嘘だった。 (-121) 2021/11/05(Fri) 10:16:55 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「期待通り話せたので期待した分は回収できたとしましょう」 会えて話せて無事を確認できたのでそれでよし。 面白くなくたって心地よい、そんな時間があったっていいだろう。 「噂だけなら……と言いたいところですけど、 何かが起きてるのは本当みたいですね」 あなたの言葉に、返す言葉を紡ぐ。 立ち尽くしていた自分が蘇る。 「自分から飲んだなら、それに関する責任も取るってことでしょう。 バカみたいな薬でも頼るほど、むちゃくちゃしたかったのか異能を変えたかったのかはわかんないですけど。 先輩、巻き込まれて怪我とかしませんでしたか。 かなしいとか、つらいとか……ちゃんと我慢せずに思えてますか。そっちのが一番心配です」 (-124) 2021/11/05(Fri) 11:25:40 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「巻き込まれた」という言葉だけを信じるなら、この言葉は過剰な心配だろう。 あの時の先輩なら記憶になくたっておかしくない。 怪しまれることになるかもしれない。 牛丸沙優は、案外あなたと、あなたと過ごす時間が好きなのかもしれなかった。 (-125) 2021/11/05(Fri) 11:32:46 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「体はって言い方すっごく不穏ですね。 心は傷ついてますって言ってるようなものじゃないですか」 そういう時は寝るのが一番だと牛丸は思っている。 夢は現実の半分も恐ろしいことができないから。 「 ゔ。 ……まあ、こんな言い方したらバレますよね。 遠くで見てただけです。 先輩がおとなしく誰かに連れられて保健室に行くんだろうな、ってところまで、見てただけで。 すみません」 だからまあ、何もできなかったし、そも元々の知り合いでもない自分が押しかけるのもやめておいた。 今日元気な姿が見られてよかったなあ、と思っている。 そのようなことをしどろもどろ話す。 (-134) 2021/11/05(Fri) 15:04:49 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「自分のことを大事にすることの、何が不毛なんですか。 自分がどう思ったのか、今何をしたいのか…… 大事にしてくださいよ」 痛みを当たり前としてしまえば、いずれ歪みが生じる。 どのような形であっても。 「……正直言うと、怖かったです。 異能を使えば先輩を怪我させずに落ち着かせられるかと思ったけど、近寄ることすらできなかった」 「先輩は……あの騒ぎで、何かを得られたんですか。 それだけ教えてください」 怖い思いを(勝手に)した者としての要求です、と続けた。 (-174) 2021/11/05(Fri) 21:28:57 |
牛丸紗優は、今日のお昼はどでか肉まんだった。購買部にある数量限定メニューらしい。 (a38) 2021/11/05(Fri) 21:30:47 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「急にああしろこうしろって言われても難しいのは……まあ、そうですね。 手始めに好きなおやつを食べてお昼寝することをおすすめします」 提示するのは雑な解決法だ。 いつかの自分は、そうして長い夜の先を――朝を待ったものだった。 「異能は先輩の一部だけど先輩の全てじゃない。 そりゃあ制御を失っていた時は怖かったけど、そんなの他の人だって同じことです。 私の異能だって、暴走したら人をばったばった眠らせて事故を誘発したりするかもしれない。 ……なんだ、ちゃんとわかってるんじゃないですか」 他人からどう思われているのか。 つまりはあなたはきちんと大事に思われていて、それに自負を持つべきなのだ。 それを伝えたいのに、言葉というものはややこしくてもどかしい。 「悪いことばっかりじゃないですよ。 生きてたら、いいことあります」 (-190) 2021/11/05(Fri) 22:55:55 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「 え……好きなおやつがない……? え、ええと、牛乳とカステラとかどうですかね。 意外と合うんですよこれが」 本当に今までで一番信じられないものを見る目をした。 運動部とはご飯食べるのが大好きな生き物なのだ。ちょっと嘘。 「本当はね、最初のうちは薬のうわさ聞いて……飲んでみたいなって思ってたんです。興味本位で。 先輩の暴走騒ぎを見て、ああこれは本当に怖いものなんだってよく身に染みたので。 もし持ちかけられたとしても全力で逃げてみせますよ」 空を見上げるあなたの隣で牛丸もまた空を見上げる。 鳥はいつだって自由に飛んでいく。 羨ましいことに。 「先輩にもいいことありますよ。 明日くらいに」 何の根拠もない言葉だった。 そうなればいいな、と思っている。 (-201) 2021/11/06(Sat) 0:01:58 |
【独】 牛丸紗優中学三年のインターハイ、大会当日の故障。 そう言ってしまえば 「ありふれた」「かわいそうな」「将来有望だった」 人間になるのが嫌だった。高跳びが好きだ。 鳥のように空を飛び、浮遊し、落下。 その一瞬の感覚のために全てを投げ打って生きてきた。 その全ては、あの日に失った。 故障の代償は一年の静養。 走る、ましてや高跳びなど以ての外。 でも、陸上は好きだった。 嫌いになりたくなかった。 たとえ他の何を失っても、自分が好きなものを憎んでしまいたくなかった。 だから、これからも何があっても陸上が好きで、陸上部が好きで、 この学園が好きで、…… 体育祭が終われば静養期間も終わる。 本格的な検査をすれば、手術だって言われるかもしれない。 でも大丈夫だと思う。 なんてったって生きてるし、たとえ何があろうと私は陸上が好きだからだ。 (-203) 2021/11/06(Sat) 0:11:22 |
牛丸紗優は、そう信じているし、そうなるように祈っている。 (a40) 2021/11/06(Sat) 0:12:48 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「 めちゃくちゃびっくりしました…… じゃあ、これからたくさん試せますね。 いろんなおやつ食べて一番が決まったら教えてください」 牛丸は食べるのが好きだし、皆と好物を交換するのも好きだ。 いつか先輩のおやつをとっておきのおやつと交換してやろうと企んでいる。 「荒療治にもほどがありますけど。 私も先輩も、それで何かが変わったということで手を打ちましょう」 勝手に反面教師にしてしまったことは少し申し訳なく思う。 それでもこれ以上嘘をつくのも嫌で、素直に話すことにした。 「ありますよ。あるったらあるんです。 なかったらそれはチャージ期間なんで」 明日が楽しみだ。明後日もその次の日も。 やさしい人たちにたくさんいいことが起きるといい。 そんなことを考えながら、お昼寝スポットの穏やかな時間は過ぎていく。 (-247) 2021/11/06(Sat) 7:15:24 |
【秘】 牛丸紗優 → 朝日元親「その時はこっちもとっておきを用意しておきます。 びっくりするくらいおいしいやつを」 先輩が和菓子派か洋菓子派か、はたまたスナック菓子に走るのか。 いつか来るその時は、もっと笑ってくれるといいな。 「なんでもありでいいんですよ。 こういうのは言ったもん勝ちで、いいことがあるって言い続けることが大事なんです」 あなたがお腹いっぱいご飯を食べて、布団をかぶって眠って、それがつつがなく為されるように誰かが気にかけてくれて、幸せであれるように。 いつだっていいことがありますように、と。 暴走騒ぎはまだ終わっていない。 この長閑な時間だって休み時間が過ぎれば終わってしまう。 そんな今だからこそ、穏やかに笑いあえたことが嬉しかった。 (-288) 2021/11/06(Sat) 15:28:26 |
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