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【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ弱い力だ、そんなの自分で自覚していた。 それでもすぐ、離れてくれた貴方を。 それでも未だ、笑っている貴方を。 視界に収めれば理解せざるを得ない。 これは己が知る身体を求める行為ではなくて。 ただ目の前にいる獲物を突き、嗤っているだけだと。 それを、ようやく、ようやくに理解する。 通じないのだ、ひとつも、きっと。 どれだけ涙を落とし終わりを乞い願ったところで。 貴方が満足するまで、こちらが限界を迎えるまで。 この地獄は終わりなどしない。 絶望の色は人生で幾度か知っていた筈だった。 それでも今この時間のものが一番に濃い気がした。 「…………」 けれどもう、 そう なのだとわかってしまえば。恐怖で震えは収まらないまま、痛みで涙は滲むまま。 貴方を見つめた。 弱り切った瞳の奥は未だ堕ち切ってはいない。 「せ、んぱいは」 「……なんでそんなに、きらい、なの」 「マフィアのこと、……アレッサンドロの、こと」 (-14) 2023/09/23(Sat) 22:09:53 |
【墓】 暗雲の陰に ニーノ人間、蹲ってぐるぐる考え続けるのにも限度があるらしい。 風邪で気が弱るとか、そういうのもあったのだろう。 牢に入れられて三日目、熱が少し引いて思考がもう少し回るようになった頃。 万が一の感染症疑いが晴れた男もまた、収容所の移動に混ざるようになっていた。 (+7) 2023/09/24(Sun) 1:28:03 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ唐突に人の足を蹴りに行ってたときとは異なるタイミング。 ふと同じになった場所に見慣れたせんぱいの姿を見つけたのなら目を瞠った。 「……アリー、せんぱい?」 近寄り、恐る恐ると声を掛ける。 こちらは顔などにはそこまでの外傷はない。 右手の甲だけが、異様に腫れ上がっているが。 「せんぱいも、なんでここに……」 (-56) 2023/09/24(Sun) 1:35:03 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ/* こんばんは!4日目秘話に〆を返そうかと思ったのですが、あんまりにも綺麗な終わり方だったのでロメオさんからのもので〆とさせていただければ幸いです。 こちらのご連絡と大好きがいっぱいになってしまったのでこれも伝えさせてください、ありがとうございました……大好きです…… (-61) 2023/09/24(Sun) 1:42:00 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ「アリーせんぱいも……ダニエラさん経由なんだ。 怒らせたって、何したんですか? 言いたくなかったらいいんですけど……」 まさかその名前を聞くと思っていなかったから目を見開きつつ。 手を取られると「ぃ、」と声が漏れた。痛かった。 でも、心配は嬉しかった。 腫れ上がった手にはひとつ、穴が開いている。血こそ既に止まってはいるが。 「あはは……オレは、ええと、イレネオせんぱい怒らせたかなあ……。 取調べ中にえいってペン刺されちゃった……骨までいったみたい」 軽く伝えたつもりだが恐怖はそう簡単に消えやしない。 指先が僅か震えていた。 (-128) 2023/09/24(Sun) 9:54:35 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ/* ありがとうございます、嬉しいです! そして面会についても問題ありません。 来ていただけるのならとてもとても嬉しいので墓の下でお待ちしております! どうぞまたよろしくお願いいたします。 (-129) 2023/09/24(Sun) 9:58:26 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ表情の移り変わりを見つめる。 先程の笑みより今のそれのほうがよっぽど良かった。 だってそれはまだ、分かるような心地がしたから。 動きに気付けば緊張で喉奥がふるえた。 けれど、投げかけた問いに返る返答を。 耳にすれば、呆けた表情を浮かべて。 それから。 「…………はは」 笑った。 ここに来て、初めて。 声を出して、可笑しそうに。 ああなんだ、そういうことか。 [1/2] (-134) 2023/09/24(Sun) 10:39:51 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ「そっかあ」 「……すごいね、イレネオせんぱいは」 「この国を、あいしているんだ」 隔たりを見た、それはどうしようもないものだった。 でもならばと、ようやく何かが腑に落ちた。 「オレはさ」 ゆるりと瞳を細める。 ペンを手に取った貴方の手を、震える指先が撫ぜた。 「…… オレの隣人しか 、あいすることができないよ 」なんだかすこし、かなしかった。 [2/2] (-135) 2023/09/24(Sun) 10:41:35 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオオジサン、だなんて自ら口にする貴方にころりと笑声が転がり落ちた。 それはそうだ、ふたりぶんにしたって追いつきそうにはない。 見上げて移るものはかつてと比べれば過ぎ去った年を想わせるもの。 それでも貴方の言葉通りなら、重ねてきた全てが形作る暖かさでもある。 ならばなんだろう、愛おしい、とも思うような。 「オレが、誰のための警察になりたい、かあ……」 なんとなく空を仰いでしまったのは、わかってしまった気がしたから。 この場所に辿り着いてから幾度となく感じる足場がぐらつくような感覚。 その正体はきっと、忘れてはならないと伝えられたそのものが土台として未だ成していないから。 流れる厚い雲が見えた。あのように生きていたのを、そろそろ。 自分の足で立ち上がらなければならないのかもしれない、と。 「……うん」 「全然、ありきたりじゃなかった、です!」 そうして顔を動かせば、にっと笑って貴方を見つめた。 「自分に足りないものも、自分が考えなくちゃいけないことも。 そんな自分でも今、できることも。 ヴィトーさんの言葉で見えた気がするから、ありがとう……ございます」 「きっと今のヴィトーさんみたいになるにはまだまだ時間かかるだろうけれど…… ……でもいつか、もうちょっと立派になったところも。 ヴィトーさんに見て欲しいな、その時にもありがとうって言いたい」 人があまりいないのを、そして貴方がきっと拒まないのをいいことに。 少しだけ身体を傾けてそちらへと寄り添い、またパンを一口含む。不思議と先程よりも甘い気がして、瞳を細めていた。 (-136) 2023/09/24(Sun) 11:09:09 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 路地の花 フィオレぽた、ぽた、ぽた。 貴方が涙を落とすのを見ていると、胸が酷く締め付けられる。 抱きしめたかった、涙を拭いたかった。 その願い全てを、遮る鉄格子が邪魔をする。 だから、せめてもの代わりに。 「……だいじょうぶ」 「だいじょうぶだよ、ねえさん」 言葉を、伝えて。 笑みを、うまくできてる? わからない、それでも。 じゃらり、手錠の音が鳴った。 痛むのを構わずに、左の指先を伸ばし。 せめてと届く位置にあるだろう、貴方の手をそぅと撫でる。 「…………来てくれて、ありがとう」 全てが有耶無耶になったような心地がする今も、確かに感じる愛情を受け取るように。 「顔、見られてうれしかった」 (-139) 2023/09/24(Sun) 11:19:27 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → リヴィオ名を呼んだ貴方に返るのは、少し腫れて赤くなった瞳だった。 今は涙は零れ落ちていない、それでもたくさん泣いたのだろうとは分かるもの。 「……リヴィオ、せんぱい」 身体を動かせばじゃらり、手錠の音が鳴る。 外傷はそこまで多くは無い、異様に腫れた右手を除けば。 近づいていく、貴方を勿論忘れたわけはなかった。 「…………え、っと」 それでもいつものような表情で笑えなかったのは、お互い様だろうか。 向ける双眸がすこしばかり恐怖の色を呈して揺れた。 はく、と動かした唇は一度目、音を為すのを失敗して。 二度目になって、ようやく。 「……取調べ、ですか」 「それとも……面会?」 (-141) 2023/09/24(Sun) 11:34:34 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノさて、貴方が覗き込んだ牢。 男は眠っておらず、向き合っていた。 食事の乗った皿と。 「…………」 スプーンを右手で持って、呻いて、落とす。 ならばと左手で持ってみて、震えて、落とす。 そんなことを繰り返していたところだから、まあ、覗かれてもおかしくはなかったのかもしれない。 人の気配に気が付けばそちらを見上げて首を傾げた。 知り合い、ではない、一方的に見たことはある、それだけの。 「…………えと」 なんだろう、何か用事かな。 思いつつ、口に出ていたのは。 「……おにーさん、ヒマ……?」 ナンパみたいな言葉だった。 (-142) 2023/09/24(Sun) 11:40:16 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノヒマじゃなくても取れるんだ、と言葉そのままに受け取っていた男は。 己の名を一方的に呼ばれると不思議そうに瞬いた。 次いで知った名が紡がれれば少し目を瞠った。 「……ねえさんの上司で、にいさんの部下」 マフィアの人かと。 納得すると同時に改めて思い知る。 近しい人ふたりとも、やっぱり"そう"なのだという事実に。 視線が少し落ちかけ、それでも……ぐう。 どんなときでも腹は勝手に鳴る。 「……お、おねがい、します……」 「もうだめそうで、入ってから何もたべてないから……」 中身を零さないよう気を付けつつ、震える左手で皿を鉄格子前まで移動させて、スプーンも同様に。 そうして向かい合うようにちょこん、座った。 「ルチアーノさんは……つかまっちゃったの?」 にしては随分と自由そうだなあの疑問。 (-144) 2023/09/24(Sun) 11:59:06 |
【墓】 暗雲の陰に ニーノ>>+18 黒眼鏡 「飯は今日から食べてるけど……いったいって」 雑な撫で方がなんだか懐かしくて鼻の奥がつんとした。 そういう気遣いもいつもと変わらないから、誤魔化すみたいにやっぱり睨み付けた。 とはいえその手を払い除けたりはしない。 「四階って……」 そして嫌味に対し事実の一つが返ってきたのならじっとりとした視線を向け…… 向けていたら、問いに対しての答えに最後、返る。 作られた力こぶに、満面の笑みに。 「はあ〜〜〜……???」 普段出さない声が出た。 「あ〜〜〜〜〜」 それだけかよ、ああでも。 「……もぉ〜〜〜〜〜〜」 なんだ、それだけか。 [1/2] #収容所 (+24) 2023/09/24(Sun) 12:53:32 |
ニーノは、長い溜息の後、肩を落とした。 (c18) 2023/09/24(Sun) 12:53:51 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノ「金」 「……お金でこういうのってなんとかなるんだ」 自分にはない力だなと思った男は別世界を見るような視線を向けた。 そうして次に次にと並べられて行く名には驚くばかり。 己の両腕に手錠が課せられた雨の日の夜を思い出したり。 最早懐かしささえ覚えるせんぱいたちの顔を思い浮かべたり。 あれ、意外とみんなマフィアと仲良いんだな、とかの感想と。 それ程に仲が良い誰かが彼女にいるのなら、少し安心したなとか。 「ん」 「……む」 口元にスープを持ってきてもらえば口を開けて、ぱくり。 久々に味わう食べ物の味は冷めていようが味が薄かろうが、おいしかった。 それをこくりと飲み込んでから。 「……なんでルチアーノさんが謝るの」 素直に聞いた。 (-147) 2023/09/24(Sun) 12:56:41 |
【墓】 暗雲の陰に ニーノ>>+29 黒眼鏡 「ど〜〜〜せちっちぇよオレは〜〜〜」 今からたくさん食べても貴方程にはなれないだろう。 終ぞ追いつくことはなかった悲しき現実だ。 払い除けないので座るまでは撫でまわされていたわけだが。 「 ッぃ、ったい! 疑ってません!手に響く!」肩を勢いよく叩かれきゃんと吠える。でもそこからすぐに腕の中だ。 すっぽり収まってしまうから、ああ本当に追いつくことは無かったなと再度実感させられる。 瞼を伏せた。 「……会った、泣かせちゃった。 あんな顔させたくなかったのに」 「にいさんなら泣かせなかったんだろうな」 燻る後悔ひとつ、貴方なら牢の中からでも安心させられただろうと。 #収容所 (+44) 2023/09/24(Sun) 18:09:24 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 口に金貨を ルチアーノ「ふぅん……そっか。 ありがとう、教えてくれて。 オレきれいなものしか見えてなかったみたいだから」 丁寧に教えてくれたことに眉を顰めはせず、いっそ感謝も告げた。 スプーンを運んでもらえればまた口を開けたり、としていただろうが。 「……子どもでも玩具でもないぞ」 駒鳥扱いされるとむ、と唇を尖らせる。 いや、食べさせてと頼んだのはこちらなのであまり文句は言えないけれど……。 「…………」 そうして謝罪の理由を聞けば、視線を一度その手にある器に落とした。 未だ男はこうして捕まった本当の理由を何も知らないまま。 ぐるり、一つ思考を回して。 「……"なんで"さ、もっかいするね」 言葉の中身に一つ踏み込む。 別に貴方を責めたいわけでもなんでもなかった。 ただ男は、これをしてこなかったことを少し後悔しているから。 「なんで知ってたのに、止めなかったの? 止めるほどのことじゃなかった?」 (-197) 2023/09/24(Sun) 18:10:39 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → Scorri, fiume eterno! ヴィンセンツィオ落ちる笑い声に気が付けばはたりと瞬く。 それも直に笑みに変わったのは、貴方がそうやって笑ってくれたのを久々に見た気がしたから。 かつてよりも遠くなってしまったその背が、今このときだけはすぐ傍にあるようにと思えたから。 「じゅ……十年でがんばる! 頼りになるせんぱいたちはたくさんいるし! ヴィトーさんに早く見てもらうから! ぼ〜っともしないように、毎日一生懸命やります……」 書類仕事がどうにも得意になれずにいつもせんぱいに頼っているのは、とりあえず内緒にしておこうなんて考えながら。 男は今でもたくさんの愛情を周囲から貰っている、気付いている分も、気が付いていない分も。現にいま、貴方からも。 自覚が幾分あるからこそ躊躇いなく頑張れると形にできた、幸福なものだ。 「はっ……そんな時間? ヴィトーさんに判子押されたら困る……。 えっと、せんぱいと夜にご飯食べるから、それ終わったら真っ直ぐ帰ります!」 ぴょんと立ち上がって、それから敬礼だ、なんとなく気分的に。 こちらはまだ少しパンが残っているので、動き出すのはそれを食べ終わってからになるだろう。 「へへ、ヴィトーさん! 今日は時間くれてありがとうございました。 最近疲れてるみたいだから、もう少し落ち着いたらまた労わせてね」 できることはそう多くは無いのだけれど、ちょっとしたお菓子を作るとかマッサージとか……とりあえず労いの内容については考えておくとして。 貴方が夕暮れの公園を立ち去って行くのなら、男は笑顔のままに見えなくなるまで見送っていたことだろう。 小さなころ、遊んでもらった一日の最後にお別れしていたときと同じ。おおきくおおきく、手を振って。 (-198) 2023/09/24(Sun) 18:11:54 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → リヴィオ取調べをしないと貴方が明確にしたのなら、分かりやすくその瞳の色は安堵に染まった。 一歩開いた距離を見つめる、詰める術は牢の中からは存在しない。 貴方の語調はいつも通りに思えて、けれどそうではなかった。 元気がないなってそれぐらいはわかる、だって憧れているせんぱいのこと。 「…………」 そうして伝えられた、天気のことを言葉通りには流石に受け取らない。 指しているのはこの状況だ。 であるならば、その確信を此処で告げられる程の"何か"が貴方にあるのだとも、予想は付く。 男は取り巻く世界について多くを知らなかったが、相対する人の機微に対してはそこまで鈍くはなかった。 言葉はすぐに形を為さないまま、しばらく微笑みを見つめたまま。 直に。 「……リヴィオせんぱい」 「あのね」 一歩の距離を踏み込むことはやっぱり、今はできないんだろう。 きっと 場所が悪い のだ。それでもこうして此処へ足を運び。 明日の陽光を、その元にある笑みを望んでくれた貴方に。 「今でもさ」 尋ねるぐらいは、許されるだろうか。 「……次のこと、楽しみにしてくれている?」 (-199) 2023/09/24(Sun) 18:14:27 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ「……そう、だったんだ? でも、ダニエラさん怒るかなあ、そういうことで」 「というより見逃すって、アリーせんぱいなにかしてたんですか?」 知りたいと望む相手に、聞かなければ見逃すと伝え。 それで怒って何かの行動を取るのはなんというか、普段ならそう有り得ないことだろう。 恐らくは嵌められたのだ、……自分と同じように。 それを直接、指摘することはしないものの。 「あはは、オレもびっくりした〜。 ……ん〜、でも、怒られて仕方なかったかもです」 「イレネオせんぱい、マフィアのこと大嫌いだけれど。 オレ、マフィアに家族みたいに懐いているひといるから。 裏切り者だって思われても、仕方なかったなって」 手を包んでくれる、貴方の優しさが心に染みる。男は眦を下げた。 (-200) 2023/09/24(Sun) 18:16:03 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ昨日までは毛布に包まって蹲っていた男は、それでも今日になれば起き上がることも増えていた。 身体を冷やすのはあまりよくないから、今日も毛布に包まってはいたが。 ただ起き上がってもすることがあるわけではない。 壁に凭れ上手く動かない右手を、それでも動かせないかと無理に震わせていたところ。 「……ぇ」 不意に名を呼ばれて目を丸くして、そちらを見る。 ねえさん、が来ることまではまだ予測できたのだ。 けれど、貴方が来ることまでは予測できなかった。 「……ろ、ろーにい」 「なんで……?」 こうなる少し前、結局最後はそこに落ち着いた呼び名を口にしながら。 慌てた様子で駆け寄ればその顔を見上げる。 外傷はあまりなかった。異様に腫れて、甲に抉られたような傷口が開いた右手以外は。 (-204) 2023/09/24(Sun) 18:33:24 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → 幕の中で イレネオ愛国心など振り返れば抱いたことがなかった。 だからこそ男にとって、眼前の人が抱く肩書はあくまでその人の一部でしかなかった。 今もそう。だから隔たりは消えない。 「ぃ、」 ペン先が回ればまたくぐもった声が落ちて身体が跳ねる。 指先は退けられるままに離れることだろう。 その間にも注がれてゆく言葉を耳はまだ拾い上げ。 滲む視界に移る姿は普段と全く変わらなかった。 これがあの職場だったら、どんなに。 「……そ、ですか」 痛みが遠退いていたから少しばかり落ち着いていた鼓動は。 たったそれだけの刺激でまた煩く脈打ち始める。 覚悟の形をまだ知らない男が持つ限度など知れているものだ。 だからその恐怖にまた、飲み込まれてしまう前に。 「ねえ、イレネオせんぱい」 尋ねる。 これがきっと、最後の問い。 「…………オレって、警官、向いてるかな」 (-221) 2023/09/24(Sun) 20:37:27 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → favorire アリーチェ男は貴方の様子を見つめていた。 どうにも全く何も気が付いていないと、そういうわけではないように思えたから。 ただもう少しと深掘りした内容を聞けばまず目を瞠って。 「……聞いて、くれたんですか? あはは……そっか、ありがとうございます。 こうしてアリーせんぱいが捕まっちゃったのは、心苦しいけれど…… なんだか、うれしいな」 それが必ずしも己の為とイコールにならなくても。 いなくなったことで貴方が気にしてくれていたという事実がうれしかったから。 そっかあ、ともう一度噛み締めるように呟いて、手を包んでくれる貴方の手をもう片方で撫ぜた。 で、ひとつ問いを投げようとしたのだが、その前に。 「…………」 自分の呟きに関し貴方が伝えてくれたことには、はた、と瞬いた。 「……たしかに、そうかも。 …………え?そうですね。 怒ったからって、暴行するのはよくないですよね……」 今になってちょっと怒りが湧いてきている。 とはいえ本人が目の前にいるわけではないので鎮めつつ。 「アリーせんぱいも、マフィアに家族が……いるんですか? 知らなかった……し、仕方なくないです!駄目!……だから。 そっか、そういうことだよなあ……」 (-222) 2023/09/24(Sun) 20:49:36 |
【秘】 暗雲の陰に ニーノ → corposant ロメオ「謝ること、べつに……」 ないよ、と。 伝えながらもなんだかこわかった。 自分と関わりがあるところを見られて、貴方まで捕まってしまうんじゃないかということが。 そう恐れているくせに、どうにも。 「……パン」 ぐう、とお腹が鳴った。身体はどうにも素直なものだ。 恥ずかしくて若干視線を逸らしつつ。 「いいと思う……。 あ、でも、その、格子越しでいいから。 忙しくなかったら、あれ……あーんしてほしい。 手、これだから……」 左を動かせば右も動く仕様になっているので、もれなく何をしても痛む。 どうにもスプーンが上手く持てずに、食事が碌に取れていないゆえの空腹だった。 「オレが捕まったのは……あはは。 いると、都合悪かったんだろうな」 「ろーにいはだいじょうぶ?大変なこと起きてない?」 (-224) 2023/09/24(Sun) 21:02:31 |
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