【人】 小泉義哉[女子は男子より早熟だ。 日アサの戦隊ものと毎日のご飯が 興味のほとんどを占めていた少年は やったぁ、とごく単純に喜んだ。>>14] それじゃあ僕は、カナおねえちゃんが たくさんたくさん おりょうりできるように いっぱいいっぱい 食べ物とってくる! [みかんのようなまんまるタンポポや うどんのような長いシロツメクサを せっせと「およめさん」のもとに運べば 思いのほかうれしそうにしてくれたから>>15 つられてケラケラと笑った。 葉っぱのお皿に乗せられるはずのシロツメクサは 予想外なことに、彼女が器用に冠にしてしまったから 食欲しか頭にない少年は、 編み込みのうどんを食べるつもりで 冠を乗せた柔らかい髪に口づけてみたり。 そうして他愛なくじゃれついていた幼少期。] (40) 2021/06/04(Fri) 6:09:24 |
【人】 小泉義哉[ほんの少し義哉よりも誕生日が早い少女が 本当のごはんを作れるようになって>>16からも親しかった。 しかし、少年が思春期を迎え、恋を理解する年頃になっても 彼女との関係は友人のまま。 親しすぎる相手にはかえって恋愛感情を持ちにくい。 ましてや、性のホルモンが体内に満ち満ちて、 思考さえも卑猥な妄想が支配するようになってくると 彼女は、その欲を向けるにはあまりにも清潔すぎた。 約束は覚えていたけれど 幼い日の口約束など、 今更蒸し返されたら彼女も困るだろう。 恋仲だけが男女の親しさでも無し、 友人としての良好な関係であり続けた。] (41) 2021/06/04(Fri) 6:11:53 |
【人】 小泉義哉[経験を重ねるうちに悟ったことがある。 男女の関係になってしまえば あとは徐々に冷められていくだけ。 だから、きっと ──── 次も、君は選ばない。 ]** (42) 2021/06/04(Fri) 6:13:15 |
小泉義哉は、メモを貼った。 (a8) 2021/06/04(Fri) 6:15:10 |
【人】 小泉義哉[やがて二人は大人になった。 幼馴染は実家の弁当屋を継いで 若いながらも切り盛りしてみせた。 対する青年には継ぐべき稼業もなければ 事業を起こすほどの負けん気もなし、 生粋の雇われ人気質。 就職難の荒波を乗り越えて食品卸業者を選んだのは 幼馴染を意識したのもあったかもしれない。 主な仕事は、食堂や弁当屋に食材の営業をかけること。 受注があれば配送もこなし、 発注忘れ常習犯の都合のいい運び屋になることも。 『もりや』の担当になれたのは幸運だった。 ギリギリに発注書を送ってくる客や 買う気もないサンプル乞食の相手に疲れると、 なんやかやと理由をつけては幼馴染のもとを訪れた。 「こんにちは」じゃなくて「ただいま」なんて おどけた挨拶をかけながら。] (62) 2021/06/04(Fri) 19:33:13 |
【人】 小泉義哉[立場こそ違えども、 一緒に働いていれば誠実な仕事ぶりは伝わってくる。] あれ、この鮭うちが卸したやつだよね? なんか安く売りすぎじゃない? [「同じの卸した別のところは、一つ千円で売ってたけど」 ──なんてよそ様の事情は、さすがに教えられないが。 「香菜ちゃん、鮭弁当ちょーだい」という 松田のじいさんの呼びかけに くるくるとせわしなく動き回りながらも 「はーい」と朗らかに対応する姿を見ていれば つい手助けもしたくなる。 ひょっとしたら、余計なお節介だったかもしれないが。] ……これじゃ利益取れないでしょ。 鮭をこれ以上安くするのは厳しいけど ちょうどホッケの大量受注があったんだ。 その分仕入れ値も抑えられたから ここにも安く都合できると思うよ。どう? (63) 2021/06/04(Fri) 19:34:26 |
【人】 小泉義哉[最初の方は、細やかなこだわりがわからずに 「コロッケ作りが楽になるよ」……なんて言って ポテト粉末を持ってきて、触感が悪くなると断られた。 卸業者として付き合っていれば さっくり揚がった黄金色のおいしさは 丁寧な手間の積み重ねで守られているのだと気づかされる。 梅干しもお新香も、いくらでも既製品があるんだし 早起きして真っ赤な目で>>0:29仕込まなくてもいいじゃん。 フライものにかけるソースだって 高い小袋つけるよりも ボトルからかけたほうがずっと安いのに 折角さくっと揚がってるから、と こだわりが歯がゆいぐらい。 だけど確かに、彼女の店で食べる弁当は 漬物一つ、揚げ物一つ、よそでは食べられなくて 彼女に肥えさせられた舌が、何度も足を運ばせた。] (64) 2021/06/04(Fri) 19:35:39 |
【人】 小泉義哉……また! >>0:16 なんかラグビーやってるとかいう男のところ行った。 俺と違って強引なのがいいんだと。 ……やっぱ、女子ってそういうもんなの? [気心知れた仲だ と思っていた から泣き言も何度か漏らしただろう。 ジューシーな唐揚げは熱々で (作り置きもあるはずなのに、 彼女はいつでも揚げたてを出してくれた) ハフハフ言いながら頬張っていれば (これだって下味にってしょうがペーストを渡したら 自分でおろした方が風味がいいと断られた) 帰るころには表情は明るくなっていただろう。 貴重な女子の意見を求めたけれど、 返事はどうだったか。 彼女は秘密主義なのか、 こちらの話は聞いてくれるものの 自分の色恋話となると言葉を濁されたこともあっただろう。 心を開いているのは自分だけか、なんて 一抹の寂しさを抱いていたのだけど。 想像力の乏しい男は ]もしも実際に彼女から相談を受けていたら どんな気持ちになったかなんて、思い当らず。 (65) 2021/06/04(Fri) 19:38:30 |
【人】 小泉義哉[二日酔いで目が覚めた。気分は最悪だ。] ……SNSなんて見なきゃよかった…… [分かっていても、心が弱っているときほど スマホに親指が吸い込まれていくのはなぜだろう。 幼馴染に話を聞いてもらっても、精神の回復には波がある。 そして、ふらりと下になびいた時に 魔が差して普段は見もせぬSNSを開くのだ。 かつての同級生が気づけば二児の親になっていたり 縁を切ったはずの元カノが 「友達ですか?」と紹介されたりして 酷い精神汚染を受けた。友達じゃない。 年に一度も会わない同級生が今どうしてるかなんて 人生において最もどうでもいい情報の一つだ。 それなのに勝手に比べて 停滞どころか後退した自分に落ち込んで 発泡酒を浴びるほどあおったのは覚えている。] (71) 2021/06/04(Fri) 21:24:32 |
【人】 小泉義哉[布団も敷かずに転がった気がするが 目が覚めた場所はベッドの中だった。 やけに大きく、枕も二つ並んでいたが 一人で広々寝ていてもむなしいだけだ。 全く見覚えのない部屋には、自分一人。 部屋の中心にはテーブルがあり ラミネート加工された紙が一枚置かれている。 ホテルによくある施設説明だ。 訳も分からぬままにぺらりと手に取ると 小さく音を立てて何かが落ちた。 拾い上げるのは後にして紙を読むと 馬鹿馬鹿しい脱出方法が簡潔に記されていた。] (72) 2021/06/04(Fri) 21:25:40 |
【人】 だって男の子だもん 小泉義哉──シないと出られない部屋? [音読しても意味が分からない。 ちょうどその時、ブブ……と音を立てて 床に落ちたもの>>72が震えだした。ローター。] …………。 [なんとなくポケットに突っ込んでしまったスケベ心は許してほしい。] (73) 2021/06/04(Fri) 21:27:03 |
【人】 小泉義哉[改めて部屋を見渡してみると、ご丁寧なことに、枕元には コンドーム 紳士の嗜みまで置いてある。 そこまで見てやっと理解した。つまりまだ夢の中なのだ。 ベッドからやたらと目につく位置に設置された鏡には 目の落ちくぼんだ青年が苦笑いしていた。 そもそも一人でどうやってナニやらすれば良いのか。] (74) 2021/06/04(Fri) 21:27:45 |
【人】 小泉義哉は 、 えぇ? 香 ── 安住……? [照明はほの暗く、部屋の隅々までは見えないが 光の刺す中心には今起きかえったばかりの香菜が 大きな目を夢のように見開いてじっと小泉を見た。 その瞳は小動物のように頼りなく揺れて 心細いのか、柔らかそうな自らの体を抱きしめていた。 いつもは清潔にまとめられた髪は無造作におろされ 剥き出しの肩に散っている。 思わず鎖骨を視線でたどれば、その下の薄い生地を 男にはない曲線が押し上げていて思わず息を飲んだ。 その衣服と呼ぶにはあまりにも頼りない布地を見れば 腰から下は布団に隠れて見えないはずなのに かけ布団の下に伸びる二本の足が 妙に艶めかしい想像を搔き立てた。 あまりにもそぐわない幼馴染の背後、その枕元に やっぱり紳士のアメニティを見つけて あまりの状況にくらくらとめまいがした。] (76) 2021/06/04(Fri) 21:30:03 |
【人】 小泉義哉[しばらく言葉を見つけられずに 所在なく視線をさまよわせていたが バスローブが二つ並んでいるのに気づくと 意を決したように彼女を正面から見据え 大股に歩みよって剥き出しの肩にかけた。] 訳が分からないけど……とにかく出口を探そう。 安住だって嫌でしょ、こんなところ [──と言ってから、果たして彼女は この部屋の説明を読んだだろうかと疑問に思った。 しかし尋ねるほどの勇気はなく むっつりと不機嫌そうに押し黙ったまま くるりと背を向けて、彼女の準備が整うのを待った。]** (77) 2021/06/04(Fri) 21:31:02 |
小泉義哉は、メモを貼った。 (a14) 2021/06/04(Fri) 22:27:28 |
小泉義哉は、メモを貼った。 (a17) 2021/06/04(Fri) 23:12:49 |
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