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人狼物語 三日月国


202 【ペアRP】踊る星影、夢現【R18/R18G】

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【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[アスルはペルラと名前を呼んだ。
彼の教えてくれたかったことは伝わっていた。
巫女としての自覚を促すためなんかじゃないのだろうと分かっていて、彼の気持ちが瞳から涙を溢れさせた。

ペルラは、巫女になる。
巫女が役目を終えるときは――。

アスルは知っているのだろうか。
それでもペルラには、自由でいろと言ってくれるのだろうか。

手は包まれているから涙を拭えない。
風に飛ぶ滴で泣いているのは伝わってしまうかな。
ありがとう、と小さな声で呟く。
子供に戻ったみたいにしゃくり上げて泣いて。]
(-191) 2023/03/02(Thu) 18:45:16

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 うん、私、今は自由!

[この翼の中は、アスルの世界なのだと思った。

それならば自分は巫女じゃないペルラなのかもしれない。
巫女だからは無理でも。それは願ってもいい?]

 アスルと一緒なら……空を飛びたい。
 色んなところを見に行きたい。

[素直に頷き、もう涙は溢さなかった。
内緒と笑ったアスルと向き合って同じように笑った。**]
(-192) 2023/03/02(Thu) 18:46:08

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

― 巫女と守り人の日常 ―

[アスルと空の旅をしてから、不思議なほど浮かせるために力を集めるのが上手くなっていた。
浮遊する感覚を自分自身で体験したからかもしれないし、心の在り方の変化のせいかもしれなかった。]

 よし、誰も……いない。

[本日は規則を自分から初めて破った記念日となる。

夕方までのやることリストは全て終わらせたし、泉でいつもより長く身も清めたし、今日は倒れるほど疲れてはいない。
ただ対外的には疲れたので晩ご飯はいりません、寝ます、と伝えておきながら、フード付きの地味なローブを着て、抜き足差し足、ベッドの上を布で膨らませて部屋を出ると、警護のおじさんの隙を突いて建物からも脱出する。

ここまでは順調だ。
次のミッションは街で目的の店を見つけること。

塔に通いで来ている女性たちが話しているのを聞いたのだ。
街で最近話題のパン屋の新作パンのこと。
なんでも林檎と蜂蜜がたっぷり混ぜ込まれているのだとか。]
(-197) 2023/03/02(Thu) 20:30:45

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[なお、見習いの自分にはお給金なんてものはない。
衣食住を十分に保証してもらっておきながらこれ以上欲する思考なんて当然ないものの、今回ばかりは別。
どうしようかなと思っていたら、現役の巫女は優しくて、何を察したのか最近頑張っているご褒美とお小遣いをくれたのだ。
これまでなら使い道のなさに逆に迷ったかもしれないが、有り難く頂いて、今もう手のひらに握りしめていた。]

 パン屋さん……あ、あった!

[フードを深く被った子供は物珍しいのだろう。
もうそろそろ陽が落ちきろうとしている時間帯なのもあるか。
労働帰りの大人の目線をかいくぐり、なんと最後のひとつという目的のパンに心の中で歓声を上げる。
そして、これをひとつください、と言いかけて、あ、と声が漏れたのは、ほんの少しだけお金が足りなかったからだった。]

 ううん、また、今度にします。

[パン屋のおばさんはオマケしてあげると言ってくれた。
子供なのが分かったからか、理由は知らないけれど。
でも次に来るお客さんはちゃんと目の前のパンの対価を払えるかもしれなくて、ならば、頷いてはいけないと思った。
残念で仕方なくても我慢しようと決めて、お礼を言って店を出ようとしたら、おばさんは更に引き止める。
じゃあ、お嬢ちゃんが大人になってからもここに通って、パンを買ってくれれば良いんだよ、と。
覗き込むようにして苦笑して、恰幅のよい彼女は笑った。]
(-198) 2023/03/02(Thu) 20:31:17

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 はぁ、はぁ……!

[紙袋に入ったパンをひとつ。
大切に胸元に抱えて、前に一度だけ長老のお使いの人と歩いた道を、何度も迷いながら走ってゆく。

入り組んだ路地。
灯り始めた街灯の光と伸びる黒い影。
鼻腔をくすぐるオイルの匂い。
この時間になっても蒸気がそこかしこから立ち上り、夜通し働く人が居るのだろうと思わせる一方で、人の集まる食堂からは陽気な賑やかさがたくさん溢れていた。
呼び止められ咎められぬよう、たたっと通り過ぎる。

この辺りだったかな?
もう一本向こうの道だったかも。

困り果て、オイルに濡れたズボン姿のおじさんに、フードから顔が見えないように気をつけながら、尋ねた。
アスルという人の仕事場を知りませんか?と。]
(-199) 2023/03/02(Thu) 20:31:57

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 着いた、ここだ……。

[アスルの仕事場といえばいいのか家といえばいいのか。
自分はまだよく知らないのだけれど。
窓から覗き込むかぎり小さく明かりはついていそうなものの、人の気配は感じられない。

もう仕事を終えてどこか行ってしまったのかな。
ご飯を食べに出かけているのかな。
大きな湖のある実家に行っている可能性だってあった。

……お手紙も出していなくて、約束もしていないのだ。
驚かせてあの瞳をまん丸にさせたいと願っていたとはいえ、さすがに考えなしだったと今更後悔する。

そっと入り口のドアを押してみる。
どうせ鍵がかかっているだろうと思って。]
(-200) 2023/03/02(Thu) 20:32:31

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 あれ?

[かすかな音を立てて、ドアは開いてしまった。
逆にどうしたらいいのかと固まってしまう。
鍵のかけ忘れかな、そもそもかけない習慣なのかな。
ええいと足を踏み出して少しだけ入らせてもらう。
外にいては人目につくし、今更誰かに見つかって塔に連れ戻されたくなかったのだ。

ほんの少しでも可能性があるなら、会いたかった。
会って、この前の空の旅のお礼を言いたかった。

かといって他人の家にずかずか踏み入ったりはできない。
ドアのすぐ隣の壁か、仕事場で飛行艇のようなものがあればその影に隠れるようにして、小さく膝を抱えて座り込んだ。

どうせ夜の間は帰れないからもう少し待っていよう。
そうしてどこか夜をこっそり過ごして朝には部屋へ戻ろう。

身を縮こまらせながらの時間はゆっくり長く。
頭に浮かぶのは、自然と全部、アスルのことだった。]
(-201) 2023/03/02(Thu) 20:32:54

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[アスルはどんなお仕事をしているんだろう。
アスルは何時になったらお休みになって帰るんだろう。

夜ご飯はお家で食べるのかな。
それともさっきみたいな食堂に行くのかな。

買ってきたパン、……受け取ってくれるかな。
あまいの好きじゃなかったらどうしよう。
 
もう食べたことあったりして。
人から貰っていたりして。
アスルは自分よりとても大きくて、もう大人みたいだもの。

ちょっとだけ、さむい。

……パンも、冷たくなって、固くなっちゃったかな。]
(-202) 2023/03/02(Thu) 20:33:23

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 アスルと……もっとお話したいなぁ。

 巫女になったら守り人と……たくさん一緒にいられるかな。

[少しでも冷えないようにパンを一番暖かい場所に抱え込んで、いつしか修行終わりの身体は疲れを思い出して。

うつらうつら、頭が揺れる。

小さな寝息が零れ出すのにそう時間はかからなかった。*]
(-203) 2023/03/02(Thu) 20:36:10

【人】 天原 珠月


 なんていうか……なに?

[幼馴染の言いかけた言葉が気にはなる。>>185
遠慮なく突っ込むが、答えがなくてもそれはそれで良い。
ごろんとする姿に洋服汚れてんじゃないの?と眉を寄せつつも、まぁいっかと真似をしてみるのだった。]

 え、新月なの? 
 逆にレア感あるときに来たみたい。

 じゃあ星がよく見えるね。

[ふふっと可笑しそうに笑ってしまったのは、頭に浮かんだしょうもない考えのせいなのだけれど。]

 問題です。ここに月は何個あるでしょう?

[我慢できずに口にして悪戯っぽく口の端を上げた。]
(275) 2023/03/02(Thu) 21:27:42

【人】 天原 珠月

 
 な、放り投げるって言った?
 ひっど、ひどい、こっちは枕で勘弁してあげるのに!

[女性に優しくしないとモテないんだからね、と。
終わりまで言ったところで、放り投げず枕をぶつける彼氏なら良いかと言われれば全くそんなことないなと思い返す。
そもそも恋人同士なら一緒のベッドでいいわけで。多分。
……結論。ここでモテるモテない関係ないし、雅空兄ぃはもさい眼鏡をまずどうにかすべき。よし。]

 キャンプの夜といえば、寝るのもったいないでしょ。
 小さい頃は夜通し起きてようと頑張ってたなー。

[大体失敗して幼馴染より先に寝落ちていた気がする。]

 まぁ、普段から隣で寝てるようなものかな? 
 あれだけ部屋が近いしね。

[家が隣同士だけならまだしも、さらに自分たちは向かい合う部屋同士が自室であり、窓の向こうはすぐ相手の窓。
そうなればわざわざ玄関を通る必要なんて皆無だった。
数え切れないほど窓枠を乗り越えあってきた。]
(276) 2023/03/02(Thu) 21:29:30

【人】 天原 珠月


 雅空おじさんが疲れたなら、夜は静かにしててあげる。

[くすりと猫のように笑ってみせる。
そうしてこういうところはシッカリ者で天窓用シャッターを確認する幼馴染>>186を横目に勢いよく立ち上がった。]

 はぁい。
 今日の晩ご飯はバーベキューだよね?

[キャンプも毎年ともなれば手順は慣れたもの。
自分は別にアウトドア派ではないが、こういう時に怖いから火なんておこせないと頼るタイプでもなかった。
むしろやる気が湧いてくる。
キャンプと言えば焚き火。炎を眺めるのは癒やし。
後なにより、火があれば幼馴染が美味しいものを作ってくれると、幼い頃から教え込まれているわけで。]

 ん、火起こしは任せといて。
 
[階段を降りるとき、幼馴染は絶対に先に行く。>>187
理由は分かるような分からないような、察しているけれど、お礼も嫌だとも言ったことはなかった。
意識してしまうとくすぐったく感じるのも面倒なのだ。]
(277) 2023/03/02(Thu) 21:30:18

【人】 天原 珠月

 
 デザートは、んんん……。

[幼馴染が究極の問いを投げかけてくる。>>187
おひめさま呼びは敢えての完全スルー。
むしろそれっぽく偉そうに腕を組み、首を傾けて。]

 食後かな!
 
 お風呂の後も良いけど、多分食べたくて我慢できない。
 すぐ上がりたくなっちゃうもん。

[軽やかに笑いながら答える。
そうして専門学校生になって黒から一気に金へ染めた髪をしっかりポニーテールに結び、火起こし準備にかかるのだ。*]
(278) 2023/03/02(Thu) 21:30:52

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 ……ん、……んんー。

[肩を揺すられ、意識が浮上していく。
アスルの声がする。
今どこかも曖昧なまま、会いに来てくれたんだと思った。
そもそも彼の家に自分が来たくせに、だ。]

 起きた……。

[寝ぼけ声で言ったのは、それでも彼が抱き上げてきたから。
自分が目覚めたのに気づいていないのかと。
結局ぼんやりしている間にベッドに下ろされて、多分掛け布団もかけてもらって、やっと瞼から覗かせた紫を瞬かせる。]

 アスル、お仕事終わったの?
 ……あ、おかえりなさい、だ。

[自分から離れる前に、彼の手を掴もうとして。]
(-229) 2023/03/02(Thu) 22:31:20

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 この前のお礼を言いたくて。
 お空に連れて行って、鳥の仲間にしてくれてありがとう。
 
 ……いっぱい、ありがとう。

[あ、パンの袋、どこにいっただろうか。
ちゃんと服の内側にあればそれを取り出して。]

 これ、渡したかったの。
 ……冷たくて潰れてしまったかもしれないけど。

[差し出すときは起き上がろうとすることだろう。*]
(-230) 2023/03/02(Thu) 22:36:04

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空



 ……!

[これからも長い間、一緒に。
そうアスルが言った。確かに聞こえた。
ペシペシといきなり自分の頬を叩く自分に驚かせたかも。
よかった、夢じゃない!
ふにゃりと弛んだ笑みは年相応に見えたろうか。]

 うん! アスル、よろしくね。

[手を差し出したら握手してくれただろうか。]
(-242) 2023/03/02(Thu) 23:59:16

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[良い子悪い子論争的には難しい顔をして悩んだ。]

 私ね、たくさん考えたの。

[真面目な切り出し方で。]

 つまり……この場合って、隠し通せれば、アスルに悪い子って思われるだけですむんじゃないかなって。

 アスルは私が悪い子だと、いや?

[嫌いになるだろうか。
なんて、首をかしげる顔はちょっと悪戯っ子のもの。
だってアスルの真似なのだ。
こうして年下の巫女見習いは順調に悪い知恵も覚えていく。

一緒に食べようというのには喜びかけたものの、それではアスルに食べてもらう分が減ってしまうと眉を下げて。
でもお腹の音の方が正直者だった。]
(-243) 2023/03/03(Fri) 0:04:31

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[この街に来て、アスルと初めて一緒のご飯だった。
たったひとつのパンを分け合って、熱いお茶をふーふー冷ましながら飲んで、自分はお行儀悪くベッドの上のままで。

帰りの話には目をぱちぱち瞬かせた。
すっかり楽しくて帰り道を忘れかけていた。]

 ……。

[まだ帰りたくない、と。
言うのを我慢する強さはあったけれど。

アスルが空の散歩に誘ってくれたなら、ぱっと顔を上げる。
瞳をきらきらさせる表情は朝焼けのように明るかった。

今度は前回よりも上手く乗れるだろうか。
そうしたらさらに次は、もっと高くまで、遠くまで、アスルは連れて行ってくれるのかもしれなかった。**]
(-244) 2023/03/03(Fri) 0:12:12

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 アスル、私、病気になったかもしれない。

 アスルのこと考えると、変なのよ。
 ……ここがぎゅうってするの。痛くて、苦しいの。

[自分の心臓の上。
胸元を押さえ、そう明かしたのは幾つの時だったか。]
(-253) 2023/03/03(Fri) 1:10:27

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[ペルラは恋を知らない子供だった。
知ることのないまま、アスルだけを唯一として、巫女として以外は彼だけを追い続け、年を重ねていった。

これが恋と言われればそうなのだろうと思うけれど、恋という単語だけで説明できるとも思えなかった。

アスルを想う気持ちとしか言い様がなく。
彼と一緒に空を飛び、隣に座り、言葉を交わし、瞳と瞳で見つめ合い、手を繋いで、……ぎゅっと抱きしめて欲しかった。

巫女見習いになる前、結婚なら知っていたけれど。
巫女になれば逆にそれは禁じられることになる。
力に影響が出てはいけないと、子を授かることも同様に。

ただ、人を想ってはいけないとは言われないから。
そんなことは誰にも止められないから。

アスルが許してくれるなら、ペルラは、ただのペルラは、いつだって手を伸ばして、彼の世界の中でなら甘えられた。]
(-254) 2023/03/03(Fri) 1:11:09

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[巫女見習いとしての日々は確実に過ぎていく。
肩までだった髪は腰に届き、アスルには離されるばかりとしても背も伸びて、見習い用の装束は何度か仕立て直された。
人前に出るときの仕草は洗練された女性のものになり。
常にうっすらと湛えた柔らかな笑みは、見習いになったばかりの頃が嘘のようだと言われ、口元に手を当てて苦笑した。

ただアスルとふたりの時はただのペルラで。
草むらにそのまま腰を下ろし、両脚を行儀悪く伸ばす。]

 私、やっと力を使いこなせるようになってきたわ。
 これならもういつでも大丈夫だろうって。

[アスルになら何でも話せた。
嬉しいことだって、悩んでいることだって。]

 でも、まだ時々制御が難しいの。
 力がありすぎるのも困りものなんだって。
 大地に向かわせないといけないのに、ぽーんって空に飛ばしてしまったら、私なんてすぐに力尽きてしまうものね。

[そんな冗談にならない冗談も。
今や言えるのはアスルにだけ。]
(-255) 2023/03/03(Fri) 1:12:23

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[彼が窓から攫ってくれる日があれば。
自分が彼の家へと忍び込む日もあった。
だってちゃんと従妹という隠れ蓑があるんだもの!]

 それで良い案を思いついたんだけど、聞いてくれる?
 祈りの時に一気に力を捧げるのではなくてね、日々少しずつなにかに力を貯めておくの。
 本番ではそれを溶かしながらゆっくり浸透させていく……。

[真剣に、でも生き生きと。
アスルが飛ぶことについて語るときのように。]

 この耳飾り、きれいでしょう。
 遠い昔、人々が地上で生きていた頃、大地の周りは海という塩の水でできたものに囲まれていたんですって。
 湖よりももっともっと広いの。
 そこでね、貝の中からとれた宝石。……真珠。
 とても大切に保管されていたらしいけど、私と相性が良いみたいで……巫女になるときに譲り受けることになったの。

[ある日見せたのは、古めかしい金の葉の装飾に銀白色の柔らかな曲線を描く宝石――満月のような真珠のついた耳飾りだった。]
(-256) 2023/03/03(Fri) 1:13:25

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 これはね、私のお守りみたいなもの。

[力をきちんと使いこなすための。]

 ここからが本番。アスル、見ていて?

[アスルの隣に座ったまま、両の手のひらを上に向ける。
そうして瞼を伏せると静かに祈りの言葉を紡いでいく。

金色の髪が淡く光り輝き、細まった紫の瞳が煌めく。
どこからか水もないのに滴が落ちるような音が響き、ふわりと清流のような香りがして――手のひらへと力が集まってゆく。
柔らかな光が金にも虹色にも変わり、最後に柔らかな銀白色へ、艶めきを帯びた小さな真珠の粒が、今、生まれた。]

 これが、私の、この島を守るための力。

 私、ちゃんと巫女としてやっていける……。
 アスル、私、大丈夫……よね。

[彼へと肩を寄せて、そっと目を細めた。]
(-257) 2023/03/03(Fri) 1:14:25

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[その翌日だった。

現役だった巫女の力が突然尽き、そのまま彼女は姿を消した。

『巫女は祈りを捧げて力を使い果たすと消えてしまう』

逸話の通りに。
跡形もなく。
泣いて縋ることは許されなかった。

その日に巫女見習いは巫女になった。
ペルラが見習いになって3年、年は13になっていた。**]
(-258) 2023/03/03(Fri) 1:16:50

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

― 巫女となって ―

[巫女として役目を果たす日々は意外なほど平穏でもあった。

満月の夜、半月の夜、三日月の夜、新月の夜。
時には占いで力の不足を察知して。
島中に点在する、時に人の住まない僻地だったりもする祈りの場へ守り人とともに赴き、夜通し祈りを捧げる。
限られながらも広い大地に、山に、谷に、湖に、花咲く野原に、島の奥深くへと力を浸透させて浮力を活性化させるために。

最初は全力すぎて祈り終えた途端にバタンと倒れたり、岩の間からいきなり水を溢れさせたり、急に滴を降らせたり、悪影響を及ぼさずにすんだのが幸いなトラブルは巻き起こしたものの。
自分なりに必死で立ち向かい、アスルへ素直に助けを求めた。
たくさん失敗してへこんだ後だって、彼に空へと連れ出してもらえば心へやさしい風が吹き込んだ。]

 ねぇ、アスル! さっき、虹が出ていたでしょ?

[くすくすと笑い、悪戯に目を細める。]

 あれなら力の無駄遣いじゃないわね。

[彼の前では、よく、ペルラは悪い子で良い子だった。]
(-333) 2023/03/03(Fri) 17:46:53

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[巫女になって変化したのは住む場所もだった。
中心部の街であればと条件はあったが希望を聞いて貰えたため、石造りの塔から、街の少し端にある小さな一軒家へ移った。
花屋を営むおばあさんが少し前まで暮らしていた家だった。
古くて必要最低限の部屋しかなく、キッチンもこじんまりしていたが、街中なのにちゃんと庭があって花が植えられている。
おばあさん亡き後も近所の人が世話をしていた花々。
早朝に身を清め、真珠を作り終えた後、ほんのり力を込めた水を如雨露で花にやる、そんな習慣が増えた。]

 今日はおまじないかしら?
 占って欲しい?

[役目で遠出していない期間は、修行や勉学の他に、占いやおまじないを頼まれて行うこともあった。
今日は小さな女の子から恋占いのお願い。
ふふっと微笑んで、グラスの水に花弁を浮かべる。

見習いの間より、街の人々と積極的に関わるようになった。
フードで顔を隠さずに道を歩き、花壇の花が素敵だと言葉を交わし、時に井戸端会議にもお邪魔し、工場街の食堂にだってこっそり行ったりもして、今は定番商品になった林檎と蜂蜜のパンをふたつ買っておばさんにウインクされている。

だって、アスルはパン半分じゃ足りないに違いないもの。
あんなに背が高くなって身体もしっかりして。]
(-334) 2023/03/03(Fri) 17:49:12

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[街にはたくさんの人がいて支え合って暮らしている。
祈りのために出向くどんなに小さな村だってそう。
自分が生まれ育った場所のように手を取り助け合っている。

巫女になる前日。
アスルがくれた言葉たちを忘れたことはない。

これからも、ずっと、忘れたりはしない。

抱きしめてくれたあたたかさも、背中をとんとんと叩いてくれた手の強さも、髪をすいてくれた指先の優しさも。
頬に触れられたときは、心臓がとくりと鳴ったのも。]
(-335) 2023/03/03(Fri) 17:49:43

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 アスルーいるー?

[今日は自分が忍び込む番。
バレバレと知りつつ律儀にフードは被って人見知りの従妹のフリをするのはほぼ悪戯心というもの。
アスルの仕事場の休憩時間はもう把握済みで、彼の姿を見つけたら目を輝かせ、パンの袋を掲げて見せた。
ふふん、もう自分だって稼いでいて買えるのだ。]

 今のアスルだったら、パン3つくらい食べてしまいそうね。

[彼が淹れてくれるお茶は今もほんのり甘いだろうか。
オイルのついた手袋を外す姿を見守って微笑む。
自分の分にだけ蜂蜜を入れてくれていると知ったのは何回か訪れた後のことで、くすぐったい心地がした。]

 ね、今度、夜の散歩に行きたいな。

[美味しいパンを食べて。楽しい空の旅で遊んで。

――あなたと、ともにいたいと願って。]
(-336) 2023/03/03(Fri) 17:53:06

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空


 ……。

 …………アスル……ううん、なんでもない。

[あの気持ちは、あの胸の痛みは。
あれからずっと変わらない。

種類は増えた気がする。
苦しいのと、跳ねるのと、急に速くなるのと、時々アスルのそばに居すぎると酷くなるから困ってしまう。

『俺と一緒にいろ。ずっとな。』

それでも、言われたとおりにする。
どんなに苦しさが増したとしても、そうすると決めていた。*]
(-337) 2023/03/03(Fri) 17:54:13

【秘】 天原 珠月 → 月島 雅空

[気持ちを通じ合わせたのは互いが幾つの頃か。
年齢など、タイミングなど、些細なことだったかもしれない。

重ねる手の温度は変わらない。
抱きしめ合ったときの感触も、どう関係の変化があったって何がいきなり成長するものでもない。

けれど。温度も力強さも。
なにか違って感じるのは気持ちのせいなのだろう。

空を飛びたい、だけでなく。
抱きしめて欲しいと。
せがむ声に、もう子供ではない、甘い響きが含まれてしまう。


巫女が恋に溺れるのかと不安視する空気は知っていた。
長老たちの一部からは直接批判されたこともあった。
巫女としての能力に影響は出ない、出さないと、それだけは必死で訴えたし、自身を律する気持ちはあった。

でも、なくせはしなかった。
――ただひたすらに、彼を想わずにいられなかった。**]
(-338) 2023/03/03(Fri) 17:54:43
 




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