08:08:37

人狼物語 三日月国


131 蕐の残香、追憶のブーケトス

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【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




     どうか安心して欲しい。

        愚か者はここにも一人いる。

           君は...独りじゃないから。




(-79) 2022/02/15(Tue) 8:28:38

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



      弱者の声にならない主張など
      壁の向こう側にいる君に届くはずもなく。**



(-80) 2022/02/15(Tue) 8:29:28

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   君一人のためだけに僕の音色を届けましょう。

   そんな想いは運命の因果を掛け合わせて
   結果、彼女の優しさに甘える形に収まる。

   叶うかも分からない約束を交わせば
   それは私自身の生きる糧ともなっていった。

   課題にも観衆にも民俗にも縛られない
   そんな自由を彼女の為に使えるのなら...。


      未来を夢見ていたのは、お相子というわけだ。

      

(67) 2022/02/15(Tue) 8:32:04

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   表情に出ようとも出なかろうとも
   病室に漂う空気が君の涙を予言する。
   僕はといえば心配になってつい君の
   様子を伺うことにするのだが、

   告げられた感謝の言葉に
   杞憂であることを教えられて。


    「あぁ、楽しみにしていてくれ。」


   君の涙ぐむ笑顔につられるように
   僕も小さく微笑んで、決意を固めてみせただろう。


(-81) 2022/02/15(Tue) 8:33:15

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



     愚か者の抱いた決意が

          過ちだったとも知らずに。>>n1**



(-82) 2022/02/15(Tue) 8:35:56

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   彼女の助けになろうと躍起になったものの
   実際、私は私で彼女に救われた。

   それは譜面に音符のインクが滴るように
   彼女との約束は私の演奏への意欲を
   この上ないほどに高めてくれていたから。

   両親がからかうように
   「何かいいことでもあった?」などと言うので
   やめてくれと不満を顕にすることもあったが。



(68) 2022/02/15(Tue) 8:55:32

【人】 ピアニスト イングラハム



   新たに予定表に書き込まれる日課
   学校と演奏の練習以外には何よりも優先される
   病院への見舞いというイベント。

   それまではアンネが病室から出られる日がある
   なんて思ってもみなかったから。
   アンネからそれを聞いた時は分かりやすく
   喜びの表情を浮かべることになっただろう。>>64

   受付で看護婦が微笑ましげに
   ニヤついていた理由が、その時初めて分かった。



(69) 2022/02/15(Tue) 8:56:12

【人】 ピアニスト イングラハム




   「本当か!?」


   外出の許可が降りたということは
   回復も近いのだと私は勝手に解釈して
   病室には相応しくないくらい声を張り上げる。

   それからこほんと咳払いをして
   頑張ったんだね、などとアンネを労うと


   「なら、その日は必ず予定を空けるよ。
    僕にとっては君が一番大事だから。」


   そう、意気込んでみせるのだった。
   その心臓の奥底に、大きな決意を秘めて。



(70) 2022/02/15(Tue) 8:57:48

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   演奏を聴かせようと、海へ行こうと、決めたあの日

   僕の秘めた想いも、決意も
   その全てを明かそうと思っていたんだ。
   君と一緒にいたいと、心からそう思ったから。



(-85) 2022/02/15(Tue) 8:58:43

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   アンネロズ。

   ずっと、僕の傍にいてくれないか。
   君の病気のことも、一緒に背負わせて欲しい。


             僕は.........君の事が────



(-86) 2022/02/15(Tue) 8:59:50

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




   それは、二度と消えることの無い傷跡後悔**




(-87) 2022/02/15(Tue) 9:00:42

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   あの日は確かたまたま近くで公演があって
   せっかくだからと病院に足を運んでいた。
   観客から頂いたフルーツのおすそ分けという
   我ながら取ってつけたような理由を添えて。


   とはいえ急な来客だったものだから
   迷惑でないか、と病院の看護婦に
   再三確認を取ったわけで。

   とんとん、というノックと共に
   彼女が許可をくれれば病室にその顔を
   覗かせるのだったが。>>74

   私が驚きのあまり口をポカンと空けたその顔は
   まさにマヌケと呼べるような情けないものだった。


(76) 2022/02/15(Tue) 21:27:27

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   目に映るのは、普段とは違う君の服装。
   頭で分かっていたことだったのに

   君が普通の女の子だってことを改めて実感すれば
   込み上げるものだって当然あるんだ。



(-97) 2022/02/15(Tue) 21:27:54

【人】 ピアニスト イングラハム



   サプライズドッキリにしては
   あまりにも空気が読めてなかったらしい。

   アンネがどうして不服げなのか
   すぐに察した私はというと


    「あ、いや、ご、ごめん。
     一言連絡をするべきだった。

        その......僕は、間が悪いな。



   思わず頭を下げると慌てて病室の外へと
   出ようとする。

   しかし目を逸らすアンネを前にして
   そのままトンズラをこくという訳にもいかず
   ただ反省の色を浮かべることしか出来なかった。


(77) 2022/02/15(Tue) 21:29:02

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   逸らされた目がだんだんと泳ぎ始めて。
   醸す不服は段々と興味へ、その香りを変える。

   僕が君に何を想うかなんて
   そんなの決まっているのに。


   それは覗き見てしまった代金なのか
   感想を求められた僕は頬を染めて。


    「えっも...その服は、僕の...ために...?」



   自惚れを承知の上で、尋ねてしまう。
   もしも君の答えがYESなら
   僕はさらに手で顔を覆い隠すところだ。


(-98) 2022/02/15(Tue) 21:29:59

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




   「あぁ...よく、似合ってると思う。

        こう言ったらなんだけど...
        凄く、ドキッとさせられたよ。」



(-99) 2022/02/15(Tue) 21:31:10

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ



   そう感想を告げた僕はと言えば
   その日は終始頬を染めていたものだから。

   病室にやってきた看護婦にからかい気味に
   微笑みを向けられてしまったわけだ。**


(-100) 2022/02/15(Tue) 21:32:36

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   アンネとの約束の日。
   私は朝から落ち着かない気持ちでいた。

   演奏の練習も全てキャンセルして
   彼女に会うためだけに身嗜みに普段以上に
   気を遣ってみせたりもして。
   彼女の可愛らしい姿を思い出して
   少しでもそれに釣り合うようになりたかったから。


   この後何を予定しているかは
   傍から見ればすぐに分かってしまうほど
   私はずっと浮き足立っていた。
   まるで、何も知らない呑気な子供のように。


(78) 2022/02/15(Tue) 21:34:03

【人】 ピアニスト イングラハム



   病院から一番近いところにある海
   付近の公民館をわざわざ無理を言って借りて
   夢を叶えようとこの日の準備を重ねてきた。

   彼女はどう喜んでくれるだろうか。
   そんな期待に胸をふくらませて。

   私は病院へと向かって歩き始める。
   「お昼頃にそっちへ迎えに行くよ」と
   そんな連絡をひとつ残して。

   私は彼女に、会いに行くのだった。*


(79) 2022/02/15(Tue) 21:35:14

【独】 ピアニスト イングラハム

/* 死にたいです(誤字)
(-101) 2022/02/15(Tue) 22:11:05

【人】 ピアニスト イングラハム



   部屋を後にして数分。

   誰もいない部屋の隅の棚
   飾っていたピアノの写真が
   棚から落ちて砕け散った。

   砕け散るガラス片が何の予兆なのか
   私は取り返しがつかなくなった頃に思い知る。

   それが全ての終わり。

   
(92) 2022/02/16(Wed) 2:19:25

【人】 ピアニスト イングラハム



    そして二度と、始まる事などない。



(93) 2022/02/16(Wed) 2:20:18

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   病院に辿り着けばもう一度アンネに連絡を送る。
   この前は急で驚かせてしまったから
   今度はそうならないようにと気をつけた結果だ。

   しかし、送った連絡に返事が来ることはなく。
   私は少しだけ心配になりながら院内へと
   その足を踏み入れることとなった。


(94) 2022/02/16(Wed) 2:21:01

【人】 ピアニスト イングラハム



   やけに重苦しい空気が満ちる。
   汗を垂らし走り回る医者に
   まるでお通夜のように顔を淀ませる看護婦


   穏やかな空気じゃないのは確かだ
   それはまるで、誰かが亡くなったかのようで。
   けれどそれが誰なのか、私には見当もつかずに。



(95) 2022/02/16(Wed) 2:21:43

【人】 ピアニスト イングラハム



    「えっと、すみません。
     アンネロズさんと面会を
     お願いしたいんですが......。」


   そう受付の看護婦にいつものように声をかける。
   けれど看護婦はいつものようには答えてくれず
   何かを隠すように口ごもっていて。

   その理由を知った時、私は息を飲んでしまった。


(96) 2022/02/16(Wed) 2:22:22

【人】 ピアニスト イングラハム




       え───────。



(97) 2022/02/16(Wed) 2:22:53

【人】 ピアニスト イングラハム



   本当の絶望を目の前にすると
   人は怯えることすら出来ないのだと
   私は最悪の形で学びを得る。

   アンネの訃報の引き換えに得たのは
   知りたくもない人間の真理と、消えない傷。


   けれど、彼女はそんなこと一言も言ってなかった。
   いつか自分が死ぬかもしれないなんて
   彼女は一言だって言ってはいなかったはずなのに。

   彼女はきっと、回復の途中だと思っていたのに。


(98) 2022/02/16(Wed) 2:23:48

【人】 ピアニスト イングラハム




     「なん、で.........。」



(99) 2022/02/16(Wed) 2:24:27

【人】 ピアニスト イングラハム



   現実を受け入れられなくて怒るのでも
   現実を受け入れて哀しむのでもなく

   まだこれが現実だという自覚すら持たず。
   私はただ鉛のように重い身体を引きずって
   彼女がいつも出迎えてくれた病室を目指した。



(100) 2022/02/16(Wed) 2:25:17

【秘】 ピアニスト イングラハム → 患者 アンネロズ




   そうだ。こんなの、悪い冗談だ。


         あの病室にはきっとアンネがいて。


   またいつものように僕は出迎えてくれる。


         用意してくれた可愛らしい服を着て


   僕と外に出ることを待ち侘びてくれている。


         そうに、そうに、決まってるんだ。




(-111) 2022/02/16(Wed) 2:26:19
 




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