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![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ言葉を聞いて、男は片眉を持ち上げる。 「先程。」 「ダフネのことは事実だ、と。」 言ったはずだが、と反芻。ことん、と首を倒した。 これはこんな演技じみた仕草をする男だったろうか。 「聞き間違いですかね。」 「それとも。」 「出した言葉を飲み込めるつもりでいる阿呆なのか。」 「二枚舌か。 やっぱり悪人じゃないか。」 ────奇妙なことに、男の声はどんどん小さくなった。 どころか、視線すら落ちていった。これは貴方を見ていない。 かと思うと、あろうことか被疑者である貴方から顔を逸らしすらした。 そうして身体を捻る先は後ろの棚。先程テディベアが置かれていた場所、その下段から、なにか小さな箱を取り出した。 蓋を開け中身を取り出しながら男は言葉を紡いでいく。 「狂人の相手をするのは疲れるんですよ。」 「でもそれも一理ある。時間をかけるのは得策じゃなさそうだ。」 視線はやはり落ちたまま、自身の手元に注がれていた。 (-500) 2023/09/23(Sat) 1:21:30 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ「自分のことか? 立場をよく分かっているじゃないか。」 わざとらしく嘲って笑う。 とんとんとんとん。紙面を叩く速度は段々上がる。 実のところ、この男は普段こんな風には話さない。 悪人と話すことなどないというように冷ややかな面差しを向けているのが男の常だ。 貴方の言葉のどこかがこの男の心情を逆立てている。貴方のペースに巻かれている。 「そうか。直ぐに辞表を出した方がいい。」 「『協力的』の意味も正しく知らないんじゃ役不足だろう。それに」 「お前は存在自体が教育に悪い。子どもたちが可哀想だ。」 とんとんとんとん。 とんとんとんとん。 渋面とにやけ面が向き合っている。 紙面を叩く速度は徐々に上がっている。 「お前たちには適応されない。」 「法による権利も庇護もお前たちに与えられるべきではない。」 「それを享受していいのは法を守っている人間だけだ。」 「抜け道ばかり探しておいて利用しようなどと」 「都合が良すぎると思わないのか?」 とんとんとんとんとん。 とんとんとんとんとん。 問いには答えない。 答える義理はない。 (-504) 2023/09/23(Sat) 1:46:03 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロさて。 遂に男は何も答えなくなった。 それは貴方と会話を行うことを拒絶する態度であって、 やはり尋問官としてあるまじき態度だ。 それでも貴方が動かないのは好都合だった。 男の手は大きく、手元の箱は小さく。 故にきっと、そこで何をしているのかはよく見えない。 貴方はこれの様子を伺っていた。 正しく何かされると予期していた。 ならば注視したのは手元であったろう。 下を向いた貴方を、今度は男が見つめていた。 ▽ (-511) 2023/09/23(Sat) 2:16:29 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロかたん。 音。 貴方が顔を上げた時には遅い。 この男は机の向こうで立ち上がっていて。 その机に膝で乗り上げるように距離を詰めて。 そうして片方の腕は貴方の腕を掴んで引き寄せ、 もう片方の手を貴方の口元に押し当てた。 「何をする気だと思います?」 貴方が驚いて口を開いていたのならば、答えはすぐにわかるはずだ。 口腔内に小さな塊。先程までは当然なかったものが、そこにあって。 (-512) 2023/09/23(Sat) 2:16:48 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノぐ、ぐ、と押し込むように奥へ、奥へ。 深く、貪欲に繋がろうとしてまた奥へ。 先程まで、男の手は貴方の身体中に触れていた。 指先ではなく手のひらで、温度や感触を検分するように触れていた。肉の厚みや凹凸を確認するように触れていた。 歯を立てるところを選ぶようにして触れていた。 腹を撫でた手が脇腹を通って肩へ、そこから首筋をなぞって頬へ。また食むようなキスをして味わうように舌を絡ませる。声まで食らうように唾液を啜る。 これはほとんど一方的な捕食だ。 そう見えるけれど、 貴方はこれに蹂躙される獲物だ。 あくまで合意の上。 求めている実感が強くある。 背に回った手に、求められている実感もまた感じた。 「ふ、はは」 「先輩」 それが堪らなく心地がいい。貴方の甘えすらこれは食らって。 「好いなあ……」 抱き寄せられた薄い胸にまた噛みついて痕を残す。一度腰を引けば、今度こそ長いストロークで奥までを穿った。 (-520) 2023/09/23(Sat) 2:44:50 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ「どうせお前が唆したんだろう。」 決めつけだ。 「お前たちの十八番。口八丁で無知な子どもを誑かす。」 偏見だ。 「二回で理解出来ないのはお前の方だろう。」 「俺が法を守らないんじゃない。法はマフィアを守らない。」 「────、」 激しい音を立てて男が椅子から立ち上がったのと、 取調室の扉が叩かれたのは同時だった。 立ち上がった男はびたりと動きを止め舌打ちをする。そうして長い息を吐いてから返事をすれば、一人の警官が入ってくるだろう。 彼は何かを手に持っていた。そうして貴方の方を伺いつつ手短に男と言葉を交わし、それを渡して、また出て行った。 さて。 再び室内には静寂が訪れる。しかし状況には変化があった。 男が手の中で弄ぶそのケース、或いは瓶を、貴方は見たことがあるはずだ。 (-521) 2023/09/23(Sat) 3:00:33 |
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![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ新しい玩具を手に入れた赤子のようだ。 まるで不思議そうな顔で手の中のものを見る顔はそういうものによく似ている。 それ以外への興味が抜け落ちたような、奇妙に冴えて一途な表情。 警官から何かを受け取った男はそういう顔をしていた。そういう顔をしているだけの、やはり苛烈な男だった。 へらりと笑う貴方が言葉を切る。 それとまた、ほとんど同時に。 ガシャン! 先程より大きな音が部屋に響いて、貴方はそのまま後ろに吹っ飛ばされることになるだろう。 顔面に強い衝撃。 椅子ごとひっくり返り、頭を強かに打ち、手錠で戒められた腕では身体を庇えもせず転がったはず。目の前の男がテーブルをひっくり返したのだと気づいたのはどのタイミングだろうか。どうあれきっと全身が痺れたように痛むはずだ。打ち付けた頭も方向感覚を失うだろう。それでも貴方は立ち上がろうとしたかもしれない。それくらいは出来たかもしれないが。 仕掛けた側の方が状況の理解は早いものだ。 貴方が起き上がる前に、この男は貴方の左肩を踏みつけている。 (-528) 2023/09/23(Sat) 3:41:34 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ長身が室内の光源を遮った。 逆光のせいで男の表情はよく見えないかもしれない。 概ね無表情のようなそれと、やはりにやけ面の女が向かい合っている。 貴方は解っているだろう。男がこれから何をしたいか。 男もまた解っている。貴方が解っているということを。 ここからは根比べだ。けれどそれも、貴方に分が悪い。 人は痛みに耐えられる。 痛みになら耐えられる。 大抵は、絶叫を対価に。 薄暗い顔の中で金色の瞳だけが光っていた。 裸足ならまだしも、靴を履いた状態で人体を────しかも腹や胸ならともかく肩を踏みつけるというのは難しい。肉の薄い部位では骨と関節で作られた凹凸が目立つし、靴底の形はそれに添うものではないからだ。 ぐ。 ぐい。ぐり。 だから自然、強く力を込める必要が生じる。 硬いラバーが肌に食込むだろう。骨と皮膚の間で押しつぶされる神経が悲鳴をあげるだろうか。 (-603) 2023/09/23(Sat) 12:36:07 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → オネエ ヴィットーレばたんと倒れ伏す姿は人形のようで滑稽だった。 どたんと立てた音は物の音のようで愉快だった。 貴方の悲鳴を聞いてこの男は楽しそうに笑った。 「あはは!」 かつり。かつり。 かつり。 早くなる足音が追うように近づく。まるで狂犬のそれだった。 「混ざってきたんじゃないか?」 「そろそろ溢してくれればいいんだが」 きっと立ち上がれない貴方の、その余裕すらないだろう貴方の周囲をぐるぐると回る。獣が獲物を追い詰める時の動き。 判断力を低下させて間違った答えを選ばせるための動き。 この犬は、貴方から答えを狩り取ろうとしている。 本当に? それだけだろうか。 男の声には、喜悦が滲む。 ────だからこそ責め苦は続くのだ。 貴方が気を失うか、男が満足するか、時間が来るまで。 貴方が床に右手を着いているなら、次に狙うはそこ。 剥き出しの指先を、押し潰すように叩くつもり。 (-607) 2023/09/23(Sat) 12:54:09 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ体力だけはある方だ。 執念だけは強い方だ。 突き止めると決めた物事を突き止めるまでとことんやる。 そういう男の性格は貴方も知ったところだろう。そして、 その性質は今この場においては、貴方に都合の悪いもの。 既に口には入っているのだ。 飲み込まないなら、溶けるまでこのまま待つだけのこと。 しかしそうはならなかった。素直に貴方が飲み込む気配で、男はぶらりと手を離す。 そうして身体の位置を戻すだろう。しかし席にはつかないまま、再びの無表情で貴方を見つめている。 実のところ、男自身もこれが何の薬なのかは知らない。 これは今朝、あるマフィアから押収されたものの一部。 内容物としては興奮剤、精力剤、自白剤、睡眠剤らしいが、 それを見分ける術を男は持たない。 だから効果を知るのは貴方が先。 盛られたのは、睡眠剤だった。 ▽ (-610) 2023/09/23(Sat) 13:12:49 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ程なくして。 貴方を、強い眠気が襲うだろう。ぐらりと視界が歪み、身体も傾ぐはず。 しかしそれに追従することを男の手が許さない。 彼は貴方の肩を掴んだ。起こす仕草で椅子の背に強かに打ち付けさせた。 「外れか。」 「まあいい。」 眠らせない拷問というものもこの世にはある。 自白剤を盛るつもりだったが、違うなら違うで手を変えるだけのこと。 (-611) 2023/09/23(Sat) 13:15:40 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ独占欲。支配欲。執着。マーキング。 どうとでも形容することは出来る。重なり連なったそれはほとんど首輪のよう。 それでも男にそんな意識はなかった。少なくとも意識の上にはなかった。思考より先、目的より先、食らいたいという欲求があるだけ。 貴方をまるごと腹に収めてしまいたいという強い衝動があるだけ。貴方の全てを貪欲に強欲に欲しているだけ。 「は、……」 荒い息を注げば細い髪が揺れるだろうか。赤い頬が美味そうで、また舌で触れていた。 貴方の胎の中にこれを必要とする臓器などない。それでも繰り返して穿つ。楔を打つように、熱と形ごと刻むように幾度もそうする。そうする。繰り返し。 求められることが心地いい。 与えられる刺激が心地いい。 貴方の何もかもが心地いい。 抽挿が激しく強くなる。 貴方は喉を、背を反らして喘ぐだろうか。 ならばそのまま追うように。身体をぴったりと合わせ喉元に噛み付いて、貴方の内側に膨れた欲を放とうと。 (-614) 2023/09/23(Sat) 13:36:15 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノ奇妙な可笑しさがこれの喉を転がる。 それは空気を揺らして笑いになった。 貴方の顔がさっと青褪める。 大きな双眸から涙が落ちる。 唇が開いて音もなく震えた。 男はペンから手を離した。 両手で包むように貴方の頬に触れる。大きな厚い手のひらだ。貴方とこの男では一回りも二回りも体格が違う。伴って当然、男の手は貴方の頭に比して大きい。 貴方の手は自由になった。 今なら抵抗することは出来る。 しないのであれば、再びの口づけが寄越されることは明白だ。 貴方にとっては目的も分からない、ただ恐怖を想起するだけの口づけが。 (-619) 2023/09/23(Sat) 13:53:25 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロ「『何を』。」 ふん、と男は鼻を鳴らした。 歪む視界の真ん中で笑ったようだった。 「皆そう聞くな。やっぱり脳みそが足りないのか?」 「何も何故もない。法に則り、裁くための手続きだよ。」 「お前たちも従ってきたはずだ。どうしてわからない?」 ぐらり。ぐらり。眠気で頭が揺れる度。 男の声が反響する。判断力を失わせる。 瞼が重たく帳を降ろそうとする。 貴方が耐えられず首を振らすなら、 今度はその頬に男の拳が飛ぶ。 (-622) 2023/09/23(Sat) 14:03:10 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ引き絞れるような声が耳に届けば、男は口の端を軽く歪めた。 やはり不快そうだった。不愉快そうだった。 つまらなそうだった。 とはいえ、これは仕事だ。 快不快で判断して辞めていいものではない。 貴方の口が僅かも開いたなら。 男はその隙を見逃さなかった。 錠剤をひとつ。 手のひらで覆うようにして放り込む。こうすれば貴方はもう逃げられない。 口の中に入りさえすればこっちのものなのだ。飲み込まずとも溶け切るまでこのまま待つだけのこと。傾いた天秤は一層男に利する。 どうあれ長い根比べが始まるのは明白だった。 男は、貴方の口に入った薬の効果を知らない。 途中で一緒くたにされてしまった錠剤の見分けを知らない。 ただ、先程の警官の言葉によれば。 この場にあるのは 興奮剤 と自白剤 の二種類で、貴方が感じた効果によると────それは興奮剤の方だ。 (-626) 2023/09/23(Sat) 14:29:10 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 月桂樹の花 ニコロその通り。するわけがない。 貴方に対する男の行いは、平静なら一発で逮捕だ。 つまり、男だってそう。尋問の経験はあれど拷問の経験は浅い。 「……。」 顔を歪める貴方を見、男は思案するように顎に手をやった。 貴方を実験材料にして、男は学習している。 「さすがに向きませんね。」 「もっと時間があればいいんですが。」 首を右に、左に倒し。呟いた男は、再び錠剤を手に取った。そうして貴方の方へ手を伸ばす。眠気から緩慢になった動作は好都合だ。きっと難なく捕まえることが出来る。 そうして男の思うようになったなら、 これは貴方の鼻を摘んだ。 そこは人体が空気を取り込む場所の一。 もう片方を開かせたいのなら、ほかの入口を塞ぐのが近道だ。 (-631) 2023/09/23(Sat) 14:46:15 |
![]() | 【墓】 幕の中で イレネオがん。 がん。 がん。 それは憤りだった。 男の義憤が牢を打ち檻を揺らした。 食い締めた歯がぎりと鳴る。奪われ消された子どもたちのことを思ってまた心が逆立った。「────くそ野郎が」 呻きに似た響きが落ちる。 まったく男は正義の徒であった。 (+9) 2023/09/23(Sat) 15:32:26 |
イレネオは、真面目な警官だ。自他ともにそう認めるように。 (c27) 2023/09/23(Sat) 15:32:53 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ手のひらに濡れた感触。 それを感じた男は、反射的に貴方の頬をその手で打った。 まったく拷問官にあるまじき態度。口に物を入れさせておいて、あまつさえ吐き出させかねない真似をする。 男がこういった行為に慣れていないのは明白だ。そもそも感情的すぎる、筋道だってそう整えられていない。 そうしたとて貴方は笑っているのだろう。 優位を取ったと思っていた男は、再び鋭い舌打ちを。不機嫌そうに視線を一度逸らせば、唾液と共に吐き出された薬が目に入るだろうか。 (-640) 2023/09/23(Sat) 15:49:44 |
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![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネ踏みつけた肩。前のめりになる身体。それだけ近づく顔。 逆光だろうと薄暗かろうとよく見えるはずだ。男の表情が歪む。歪む。歪む。 それは怒りであって、それは憎しみであって、それは嫌悪であって、それは恨みであって、それは蔑みであって、それは侮りだった。 貴方が囀る。 歌う。歌う。歌う。 それが。 やっぱり男には、酷く不快だった。 聞くに堪えない。だから、 ▽ (-649) 2023/09/23(Sat) 16:45:17 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 歌い、歌わせた カンターミネぐぶ。 靴先が沈んだのはその腹だ。 不安定な肩から足を退け立ち上がった男は、見下ろす形で貴方の腹を蹴りつけた。 女の腹、肉の薄さは別にしてはらわたの柔らかさのある腹。特有の臓器を内包する身体の部位。 男の足は大きい。時々はみぞおちに衝撃が入ったかもしれない。一度。 二度。もう一度。 尋問でもなければ拷問ですらないただの暴力を貴方に加えている。 いくらアドレナリンが効いていたって衝撃をすべて緩和できるわけではない。貴方はうめき声をあげただろう。時々は小さく悲鳴をあげたかもしれない。胃の中のものが出たかもしれないし、呼吸が乱れたかもしれない。それとも、その全てをやりすごす術を知っているというなら話は別だけれど。 どうあれ貴方は、少しは大人しくなるはずで。 そうなれば再び、男はその身体に馬乗りになるのだ。 床に散った唾液に浮かぶ錠剤を拾い上げ、 貴方の舌に塗り込もうとする────無意味な嫌がらせ。 (-650) 2023/09/23(Sat) 16:46:01 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 暗雲の陰に ニーノそれは、柔らかく。 引き攣った部分を食むように。 強く引き寄せて、触れ方だけは優しく齎された。 男は笑っている。 これ程の力差があって、その気なら無理矢理続けることも出来ただろうに。 貴方のあえかな抵抗に従って離れ、再びそのまま笑っていた。 男は貴方に欲情していない。 これ以上の行為を強いるつもりは毛頭ない。 だからこれは、ただ高揚からだけ来る行動。 弱り切った獲物を甚振って嗤う、肉食の獣。 「はは」 「震えてるな。可哀想に」 「────あいつと関係なんて持たなければ」 「こんな目に遭うこともなかったのに」 話す言葉ばかりは穏やかなのに、 ぎらついた瞳は貴方を離さない。 わざと優しく撫でる手のひらは、 嫌がらせをよっぽど含んでいた。 最早、尋問など意識の外なのだ。 目的のない責め苦に終点はない。 あるとすればそれは男の満足か、 熱のある貴方の身体が倒れた時。 (-657) 2023/09/23(Sat) 17:13:30 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 笑う カンターミネ大抵の場合、力を手に入れた者は傲慢になる。 それが公に認められた物なら尚更。是非を問うものもいるが、どうあれ新法は認められこの国で力を持った。 警察とマフィアの力関係を完全に傾かせる悪法だ。それでもそれは大々的に公布され施行された。 警察は力を手に入れた。賛成派はマフィアに裁定を下すガベルを手に入れた────お前は悪である。 力を手に入れた人間は、それを誇示するためにどんなことでもするものだ。 そして。 その優位性を脅かす背教者に対し、徹底的に冷酷に、残虐に接するものだ。 既に尋問を損じたことを、男も薄ら気づいている。 認められない頑固さが、新たな目的を作り出した。 この生き物 には罰が必要だ。それも、とびきりの。▽ (-662) 2023/09/23(Sat) 17:42:23 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → 笑う カンターミネ吐きかけられた唾は男の顎から頬にかけて散っただろう。 それを男は甘んじて受け入れた。先程までの激昂から一転、酷く冴えた表情がそこにある。 貴方は笑っている。 覆い被さった男は、その笑みを更に広げさせるようにした。 笑っているということは、もちろん口は開いているんだろう。 口の両端に親指を差し込み閉じ切らないようにする。 貴方の舌が動かないように固定する。 そして、 それまでの間に何か手を打たなかったのであれば、 男の影が貴方に重なるようにして────ひとつ。 愛も情も好意もあるはずのない口づけを、貴方に。 (-663) 2023/09/23(Sat) 17:42:58 |
![]() | 【秘】 幕の中で イレネオ → オネエ ヴィットーレ「楽しいわけがないだろう」 本当に? 「嘆かわしいよ。こんなことに時間を取られて」 本当に? ひゅん。 がん。 男に最早自制も内省もない。 それらの声は聞こえない。けだものの息遣いが染めて聞こえない。 装甲のない先端に金属の平面が降った。 問いすらない。あるのは痛みだけ。 貴方が逃れようとしないのならば、 男もまた、逃れる選択を与えない。 (-671) 2023/09/23(Sat) 18:15:42 |
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