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【人】 未國 聖奈あたしの声はまだ怒っていて、 まだ悲しんでいて、 どうしたってすれ違うそれを、 埋められないのだ、って気づいた。 だってそれは あたしとかなちゃんのずるさの基準が 多分圧倒的に違うから。 やめてよかなちゃん あたしにかなちゃんを嫌いにならせないで (350) 2022/10/23(Sun) 14:07:58 |
【人】 未國 聖奈こんなに話すつもりはなかった こんなに気持ちを届けるつもりはなかった 旧校舎の幽霊は、きっとどこかで見てるんだよ かなちゃんの願い事は、叶ったんだよ。 だからもう、この次はないのだ、って あたしは心のどこかで、分かってる。 二度も叶えてもらおう、なんて都合が良すぎる。 二度も叶えてもらったら、罰が当たるよね、きっと。 (351) 2022/10/23(Sun) 14:08:17 |
【人】 未國 聖奈でも、あたしの願いは叶っていないのかな かなちゃんの心の声は聞けていないのかな それとも、聞けたのかな。 もう、……わからないや。 (352) 2022/10/23(Sun) 14:08:31 |
【人】 未國 聖奈そして、ひときわ大きな声で言うのだ 「 この三日間のこと、何もかも忘れられたらいいのに 」 ふたつ目の願い事を叶えてもらうのは、だめかな。 ひとつ目の願い事が叶った保証もないから もしかしたら、なんて思うんだ。 今度こそ、あたしはずるいね。 昨日は絶対に願わない、と心に誓ったお願い事だ。 あたしは今度こそ、あたしの心を守るためにお願いをする。 清く澄んだ月影に、秘められることのない想いを告げて、 あたしたちはその場を後にした。 ** (355) 2022/10/23(Sun) 14:10:40 |
【人】 未國 聖奈── 夜 ── ふたつ目のお願い事が 叶えられる保証はどこにもなかったけれど あたしは、それでも、 何もかもリセットしたいって思ったんだ 世良とのことも、かなちゃんとのことも、 願い事、なんていう 欲 あたしたちの関係はきっとこじれた。 こじれたなんて思っているのも、 あたしだけかもしれない 三日間に送ったメッセージは すべて、スマホから削除することにした グループを抜けなかったのは、 それでもどこか繋がっていたかったから、 そう思ってしまったからかもしれないね 三日間、いろんな人といつもよりも話して いろんな人といつもよりも悩んで 普段よりもずっとずっと大切な時間だった。 ── それくらい、あたしにもわかるよ。 わかるけど………… 辛いんだよ。 (356) 2022/10/23(Sun) 14:37:18 |
【人】 未國 聖奈ふと世良の言ったことを思い出す。 人ならざるものに願う程の いくらの代償を支払っても叶えたい願い そんなもの、普通はないんだよ ああ、そっか。これが 代償を支払っても叶えたい願いなのか、って 家に帰ってから、思い出して、小さく笑うの。 (357) 2022/10/23(Sun) 14:37:39 |
【人】 未國 聖奈深夜、あたしは高熱を出した 普段風邪もひかないようなあたしが 三日三晩魘され続けて生死の境を彷徨った それは、二度もお願いをした あたしへの代償だったのかもしれないし ただ単純に、運悪く 流行り病にかかっただけなのかもしれない。 (360) 2022/10/23(Sun) 14:39:13 |
【人】 未國 聖奈── 三日後・近くの市立病院 ── あたしが目を覚ましたのは三日後。 あたしはぼんやりと、スマホを手に取る グループメッセージには相変わらず何か スタンプやらコメントやらが飛び交っていたかな 最初にメッセージが送られているのは ちょうど、一週間前のことだ。 窓の外を見る。 秋晴れの空がきらきらと輝いていて あたしは、─── それを、写真に収める。 ** (361) 2022/10/23(Sun) 14:39:40 |
【人】 未國 聖奈幸い面会は許可されていた。 どうやらあたしの熱は 他に伝染るような類のものではない らしいもちろん他にも面会に来たい、 っていうメッセ―ジが来てたら 拒むことは一切なかったと思うんだ。 思うところはいろいろあった とりあえずここではそれは置いといて… (426) 2022/10/23(Sun) 18:54:30 |
【人】 未國 聖奈大木がやってきたなら あたしは笑顔でそれを出迎える。 まるで何事も、無かったかのように。 大木の目には、きっとあたしはそう映るだろう。 (427) 2022/10/23(Sun) 18:55:18 |
【人】 未國 聖奈「 あの 三日間のこと、憶えてないんだ 」そういう言葉を大木が耳にするのは、 病室に入って、暫く言葉を交わして、 間もなくのことだったはず。 * (428) 2022/10/23(Sun) 18:55:42 |
【人】 未國 聖奈── 三日後・病室にて。大木と ── 「 えーありがとー 大木が!花!気が利く! 」 ばかにしてるわけではない。 決してばかにしているわけではない(二度言いました)。 ちなみにあたしも花言葉なんて知るわけがない。 そんなやり取りまで、以前までのあたしたちのまま あたしの指はスターチスを撫でる。 (450) 2022/10/23(Sun) 20:15:41 |
【人】 未國 聖奈「 ……そ。憶えてないの。 高熱が続いた後遺症だって、お医者さんは言うの 短期間の記憶が飛んじゃうようなこと、 高熱のあとは、ないわけではないんだって。 」 あたしの表情はそこまで深刻には映らないだろう 何せ文化祭のあとのたった三日間の記憶だけだ。 ………少しぐらい、記憶がなくても、支障はない。 ただ、そのあと少しだけあたしは顔を曇らせた。 (451) 2022/10/23(Sun) 20:15:57 |
【人】 未國 聖奈「 あたし、知ってるよ 文化祭の後、旧校舎に行ったでしょ そこに、大木も居たんでしょ 文化祭の前までは、記憶があるから 誘われたこと、憶えてるし、 あたしのスマホには、 グループのメッセージがちゃんと残ってる 」 (452) 2022/10/23(Sun) 20:16:12 |
【人】 未國 聖奈「 何かを、願ったのかもしれない 何も、願わなかったのかもしれない ……記憶がなくなったのは 何かの代償なのかもしれない。 でも、今となっては、 ……… 、 ……、 わからなくても、いいのかな なんとなく、そんな気もするの。 」 手元に握られたままのスターチスの花束に あたしは視線を落として言うんだ。 言葉に滲むのは、諦観だろうか、悲しみだろうか それとも ──────────── 、 (453) 2022/10/23(Sun) 20:16:41 |
【人】 未國 聖奈── 三日後病室・大木と ── 「 ……そっか。 願い事、しにいったんだね 」 どんなに大木の言葉に耳を傾けても あたしが何を願ったのか聞くことはない 大木が、言葉を選ぶのがわかるから あたしも、ひとつひとつ、言葉を選んでいく ………、 丁寧に、あたしは適切な言葉を探す。 あたしだって 記憶を失っていることに あまりこれ以上触れたくなかったから 探して、探して、そうして「ああ」と 言葉を見つけて、小さく呟いて。 (470) 2022/10/23(Sun) 21:03:14 |
【人】 未國 聖奈「 ……あたしは、何か大木の役に立てた? 」 空白の三日間。 あたしは、誰かの役に立てていたのだろうか。 せめて見舞いに来てくれた大木くらいには *何か役に立てていたらいいな、…なんて。 …………、 ………あたしはね、思うよ。 (471) 2022/10/23(Sun) 21:03:43 |
【人】 未國 聖奈大木のすがすがしい笑顔に、 あたしはもうひとつだけ、踏み込んでみようと思った。 多分、聞いても許される。 多分、聞いても あたしが傷つくことはない そんな気がしたんだ。 「 ……大木は、願い事、できた? 」 願わなかったんだ、って グループメッセ―ジとかに送られていたなら それはあたしが見落としているだけだ。 大木の顛末をしらなかったあたしは、 勇気を出して、 (509) 2022/10/23(Sun) 21:48:25 |
【人】 未國 聖奈── 三日後病室・大木と ── 「 そっか。 」 穏やかな声に、ただ、頷いた>>514 それはあたしのおかげだったらしいってこと、 改めて、言葉にされて、少しだけ戸惑う。 嫌な戸惑い方じゃない だけどそれを忘れている、という状態に、 ほんのすこしだけ、心が痛んだ 「 願い事なんて、 急に言われても思いつかないよね。」 あたしの返事は、あの日をなぞる>>0:570 多分ね、あたしの顔はほんの少しだけ淋しそうに、 大木に向けられていた。 …………、 その意味を、問われたとて あたしには、答えられないだろうけれど。 ** (517) 2022/10/23(Sun) 22:32:48 |
【人】 未國 聖奈あたしにはわからなかった。 どうして高校をやめることが、 誇れる自分になれるのか、ということ 高校をやめたら、 夢の向こう側に行ける、ということ それがどうつながるのか全く分からなくて ましてやこの三日間は無かったことになっているから お礼を言われても、あたしは首を傾げただけ。 (669) 2022/10/24(Mon) 15:23:47 |
【人】 未國 聖奈「 そ、…っか。 かなちゃんが選んだ選択肢で、 かなちゃんが元気になるのなら。 」 ビンゴカードは自分の手で開くもの。 それはこの数日間を経ても経なくても変わらない。 勇気を出して幽霊に頼むのか、そうでないのか どんな手段を選ぶかは別の話。 (670) 2022/10/24(Mon) 15:24:03 |
【人】 未國 聖奈「 えっ、待って 」 去ろうとするかなちゃんをあたしは呼び止める。 早くない?こっちの話何も聞かずに出てくの? 近くに居た大木には曖昧に笑った。 あまりに出てくのが早すぎるじゃんねえ、って。 「 あのね あたし、旧校舎に行ったこと、憶えてないんだ。 かなちゃんが誘ってくれてたでしょ。 行けたら行く、なんて言って。 」 あたしの中に確かに残る、文化祭よりも前の記憶。 あの時、願い事なんて何もなかった。 だけど大木の話によれば、あたしは何かを願ったらしい。 (671) 2022/10/24(Mon) 15:24:32 |
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