82 【身内】裏切りと駆け引きのカッサンドラ【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
鑑賞室。三人の共犯者たちが隠れ家として使う場所。
人払いは済ませてある。今ここに立ち入ることが許されるのは自分と二人の共犯者と、それから仮面をつけた者たちのみ。
隔絶された空間で、体を震わせるものが一人。
「……ぁは、あははっ」
「私はこれがしたかった!だから自分はこの身を汚してでもどんな手段を使ってでもこの立ち位置を手に入れた!
自分より偉い人間、強い人間、穢れのない人間。
みぃんなみんな、妬ましい。妬ましくて仕方がない。
だから……自分は。私は。
皆等しく地に落ちるこの瞬間が見たかったんだッ!!!」
「ああ、愉しい。最ッ高に愉しいよ!
こんなにも清々しい気持ちは久しぶり。自分じゃ到底敵わない地位や力を持った人間を私の土俵で打ち負かした時と同じくらい気持ちがいい!」
財産、権力、日常。
自分には無いものを持っている人間が妬ましかった。
それは共犯者の"暴食"に対しても例外ではなく。
憎悪、憤怒、嫉妬。
自分が持つものを持っていない人間が妬ましかった。
それは共犯者の"怠惰"に対しても例外ではなく。
「ねえグラトニー、スロウス。……どうして私がギャンブル好きなのか分かる?
煌びやかな社交の場。本職を全うするだけでは決して巡り会えないような縁遠い者とも出会い、遊べる華やかな娯楽場。
皆が天に身を任せ、勝った負けたと一喜一憂する……ある意味で理不尽で、ある意味で公平なシステム!
……言い換えれば。
地位も力もないこの私が、本来顔を拝むことすら出来ない恵まれた奴の悔しがる顔を間近で見ることができるんだよ!
ぁは、あははははッ!これほど素敵なことはない!どんなに偉い奴も、強い奴も!皆等しく負けるんだ!何も持たない私の目の前で!ざまあみろ!!!あははははははッ!!!!!」
仮面の下に隠してきた本性。長く、長く溜め込んできた嫉妬の思いが姿を現す。
もう止まらない。止められない。
ポーカーフェイスをかなぐり捨てて、"エンヴィー"は獰猛に吠えて、嗤う。
「見ているか、地に落ちた者たち!
私達はこれからも船の人間たちを裏切り、陥れ、引き摺り込んでいく!
チップは己の心身だ!
私達が消えてしまうか、君達が喰われるか!さあ、二人とも賭けるといい!
もうルーレットは止められない!もう誰も降りれやしない!
『個』を押し込められた仮面越しに、このゲームの結末をその目に焼き付けろ!!!」
「…………ああ、そういえばさ。
私、色んな人間が妬ましくて仕方ないけれど……何より一番許せない人がいるんだよね」
先程までの態度とは一変。
ただ酷く極めて静かに胸中を吐露する。
「私は手段の為にギャンブルを選んだ。
でも、その人はもはや生きる意味そのものとしてギャンブルを楽しんでいる」
許せなかった。
「勝った数より負けた数の方が多いのに、すぐ自分の全てを賭けようとするほど馬鹿なのに。勝つときはいつも華々しい逆転劇で周りを巻き込んで。結果がどう転んでもいつも楽しそうで。多くを失って地に落ちてもなお輝いていて」
ずるい。ずるいよ。
どうしてそんな姿でいられるの?
羨ましい。妬ましい。
許せない、許せない。
「私……私さ」
艶めく唇が弧を描く。
怒りも苦しみも憧憬も喜びも。
全て嫉妬で包み込んで。
たった一人に、放り投げる。
「……"研修"の準備をしてくる。
グラトニー、スロウス。私の分は時間がかかるから、好きに動いてて」
それだけを吐き捨てて、"嫉妬"はくるりと踵を返してその場を去る。
カツカツと鳴らされる靴音は忙しなく、苛立たしげで。持ち主の今の気持ちを如実に表しているようだった。
「……全てぶち撒けたのに、どうしてこんなに腹が立つんだろう。
………………ああ、妬ましいなあ」
「素敵だ。なんて素敵なのだろうね、『エンヴィー』。
欲を解放し、己の胸に渦巻く全てを燃やした君は、貴方は……とっても、愛しい」
まるで積年の愛を向けた恋人にそうするように、『グラトニー』はうっとりと声を投げかけた。
真っ赤なドレスは針金でしっかりと形を保っていながら、袖と裾以外、前は完全に開いている。
そこから乳房が、桃色の乳首が露出し。そればかりか女性器と、男性器の両方が完全に見えている。
『エンヴィー』の吠え声を聞いて蜜を滴らせる肉の割れ目にくち、と指を差し込んだ。
"研修"を前に下ごしらえされる、その前の二人の表情を見て舌なめずりをする。
その顔の前には、堂々と屹立した、睾丸の無い竿竹の陽芯がそそり立つ。
「『エンヴィー』、貴方の研修を決して奪わないようにするよ。
なにせ貴方の大事な獲物だ、それにこの踊り子……教育のしがいがありそうだものな。
どちらもたいへんな上玉だ、お客様の希望にお答えしないと、ねえ、『スロウス』?」
カーペットを刺すようなピンヒールが、絨毛の中にうずまる。
「………あなたはそれで満たされた?」
"嫉妬"の去った鑑賞室で独りごちる。
"怠惰"は誰の答えも求めていない。
「いいえ、あなたは未だ餓え続けている。
内に秘めるものらの発露の先を、獲物を捜し求めている。
ああ、実に好都合ですね。」
たった一人地に落として、それっきり満足するような
この船が、そのような人間を寄越すはずがない。
空腹を紛らわす為の獲物は他に幾らでも居る。
一度毒牙に掛けたものを、気が済むまで冒涜し続ける事もできる。
それでいい。
我らに満足する事など許されていないのだから。
「あなた達がその餓えを失わない限り、勝つのは僕達です」
片一方の瞳を閉じて、何処か確信を持った声色で
あるいはそうである事を祈るように、そう呟いた。
「……ええ、研修に関しては、その通り。
僕もあなたの意見に賛成です、『グラトニー』。」
今夜も扇情的な装いの、
けれど新たな遊戯を前に沸き立つ少女のような声色の
共犯者の言葉に僅かに嘆息するような息を吐いた。
「今、この場はあなたに任せます。
僕はお客様からの『ご意見』を伺ってから動くとしましょう」
次の『標的』も決めなければならない。
二人が特別な獲物を見付けたのであれば、話は別だけど。
グラタンfoodとカルーアミルクsakeを手に唖然としている。
/*カンカンカンカンカーーーン!
全員集合!お嬢様会議の時間ですわ!!
現在あがっている話題ですが、複数人での連絡の都合上、赤窓を使った方がスムーズかなと思ったのですがいかがでしょうか!
ちょっと空気ぶち壊しではなくって!?という感じでしたらわたくし引っ叩いてくださいまし!!!
/*
よくってよ!
どうせエピローグ入ったら独り言や秘話と混ざって大乱交ですわ!
双方に伝えた通り、スロウス個人としては【OK】でしてよ!
/*
こちらもよくってYO YO おまたせしました。
概要あらまし聞いておりますので、いい感じにまとめてまいりましょう!
| (a4) 2021/07/03(Sat) 22:04:50 |
| ラサルハグは、家族に見せられるものは増えるだけ良い、と語った彼が"当選"した事に、よかったな、と思った。 (a5) 2021/07/03(Sat) 22:05:02 |
| 相変わらず食べるものに迷ういつも通りの朝だ。 テーブルに並ぶパリジャンfoodを見て、それからボルシチfoodを見て その次に、見覚えのある手書きのポップとパイが視界に入った。 添えられたカードも。
それらを見て、とっくり数分考えた後 懲りずにパイを一切れと、 それから一杯目のコーヒーを持って席に着いた。
さくりとフォークを差し入れたパイからは、 ダークグリーンジルコンgemを模した飴が零れ落ちた。 (12) 2021/07/03(Sat) 22:15:17 |
| 甘いものは頭が冴えるから好きだ。 とろけるように甘いパイもさくさくと食べ進めて、 平然とコーヒーのおかわりをしに行った。 ダークグリーンジルコンの石言葉は『平安』。 この休暇も、そうであるといいのだけど。 ついでに、なんとなく気になってボルシチをもらって来た。 やはりボルジュウは無いのだろうか? (15) 2021/07/03(Sat) 22:25:32 |
「さて、お二方。貴方がたはこれより、船のための"もてなし"を受けていただくのだけれどね。
ワイルドなギャンブラー殿、それに皆を釘付けにした踊り子のきみ。
あなた方はなにより、お客様のモノであるから、彼らに気に入られるように仕立てなければ。
そこでだ、まずあなた方を選びになった方々、あなた方に魅了された彼らに。
あなた方のどのような姿を見たいのかというのを、見ていただこうじゃないか」
本格的な研修を控え、まずは従業員となった二人が、どのように求められているのか。
それを見せつけようと、観賞室の奥にVIP達の声を映写する。
その間にも陶酔したようにあなた達を見下ろし、肩に触れ、仮面越しの頬を撫で。
ほとんど裸と言っていいような体にきらびやかなアクセサリを付けた『グラトニー』は、
二人がどうなるかを想像しただけで、色素の沈着した男根をいきりたたせた。
『グラトニー』にとってもまた、研修は大変に楽しみなものなのだ。
/*
ということで、ご自身がどんな人物であるかはそれぞれがよくお知りだと思いますわ。
秘匿の形、或いはお客様の声というロールプレイで、どのような路線がいいかなどあれば、
ご本人からのリクエストなど募りたいところですの。
もちろん全ておまかせのコースにしていただいても、こちらで色々と工夫を凝らしますわ!
これは『エンヴィー』の特別研修コースとは別のお楽しみですのでお気軽に……。
| ラサルハグは、初めて目の当たりにするボルキュウの存在に感銘を受けた。 (a9) 2021/07/03(Sat) 22:37:11 |
その"剛直"を喉奥まで突き入れられ、地面に血泡を吐いた。
踊り子なのだから、傷を付けるべきではない。
いや、付けるべきだ。そういう存在にこそ映えるものだ。
―――どちらにせよ、見世物の真似事が得意なのだから。VIPルームに閉じ込めておくには勿体ないだろう。
仮面を付けた青年に向けられた声は、おおむねそのような意見で固まっていった。
内容は問わず、公開で辱めを受けるのが良いだろう と。
/*
ちなみに返答は「OK!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」です。
いい感じに回していくことをお約束いたしますわよ。
「ハッ……何を勘違いしてるか、知らねえが。
誰が望み通りテメェらの悪趣味に付き合うかよ……。
誰が都合よくテメェらの飼い駒になるかってんだ……」
お前らがそういうつもりなら。
こっちだって己の尊厳をテーブルに乗せる自由くらいはある。
目の前に映る悪趣味な客たちに向けて、画面越しに唾を吐く。
こちらが嗤うと、何が楽しいのかそいつらも笑声を上げた。
屈服を、屈従を、この獣に与えよ。
肉体と精神、貞操と尊厳、全ての官能的な破壊を。
口々に好き勝手なことを俺に求める、
ぜい肉を蓄えたこの船の賓客に思った。
コイツらの方が、よっぽどオレなんかよりイカれてやがると。
/*グラトニーによるナフとムルイジの希望の研修調査ロールと並行しつつ、こちらでドッキリ襲撃計画の進行もしておきますわね〜
という事で、ちょっと気になっていたことをナフから伺ったので代理で記載させていただきますわね
☆以下、ナフ側からの連絡☆
ロールは概要だけやり取りを済ませておりますわ!(ロール自体はペースがのんびりでゆっくり進めており全然終わってないので、合わせて変えていけるかとおもいます〜
対象者―――××様(魔術師じいやとムルイジPLさん誰が襲われるのかドキドキしながら待っててね)からは墓下に連れていっていただけるなら自由で大丈夫ですと頂いておりますわ!
☆
とのことでした!
/*
ひとまず連絡事項から!
把握いたしましたわ〜、順番的には実行はスロウスにお任せいたしましょうか。
それぞれで行われただろうロールをつつがなく受け継ぐためにも、この仕事請け負いましょう。
全体的にゆっくり進行しつつそのへんも依頼者とロールで出来ると自然なのかしら……。
ロールでやり取りはしたくないな〜! とかあったら言ってくださいましね。
/*
襲撃対象に関しては了解しましたわ。
その方は我々狼お嬢様が責任を持ってお連れするとして、
あとは担当者ですわね。
エンヴィーは休養日、グラトニーは研修として
そろそろスロウスも働くべきかしら?
せっかくならこうしたい、こうしてほしい等
ご要望があったら依頼者お嬢様も遠慮なく仰ってね。
多分これスロウスが何も考えず担当すると
かなりの割合で曇らせ及びメンタルリョナに振れるので…
/*
依頼ロールについてはもし抱えてる秘話とかが大変だったら
軽くフックだけ投げてもらうくらいでも全然大丈夫ですわ。
或いは客から指定があった事にしてもいいですわね。
色々とやりようはあるので
被襲撃側含む各々のこうしたいを極力尊重したく思いますわ。
「貴方たちは思ったより大変に手強いひとたちのようだ。
けれどね、この研修は全く意味のないものではないんだよ。"従業員"として必要なのさ。
自ら望んで、彼らのために働き、傅くことを当たり前としなくちゃいけない」
優しい手付きで二人の髪をそうっと撫でる。"準備"の為に不要な衣服は取り外し。
いかにも悪趣味な衣装や、毒々しい色の性玩具がモニターにうつされる。
見るに下品なローターから性器を象った尾付きのディルド、痛々しいピアス。
それは今仮面をつけた彼らのために用意されたものだ。
「せっかく二人いるのだから、ノン・ゼロサムゲームを講じるのもいいかもしれないね。
例えば双方の歯に、双方の毒そのものが解毒薬になるような毒を埋め込む。
手を縛り付けてワイヤーで固定し、向かい合わせる。口付け合わねば解毒は行えない。
牡犬が二人で睦まじくする様子は、客にも喜ばれるだろうね。そうしなければ、
君たちは死ぬ
」
――不意に二人の膝の裏をヒールが蹴った。躱すことをしてもいいだろう。
軽い蹴りが当たったなら、床に膝をついて跪くことになるだろう。
「己の命を優先した者から先に死ぬ。助け合う二人は、美しいだろう?」
後ろから蹴られ、グッ、と地面に這いつくばりながら牙を剥いた。
「最悪だな、テメエ……。
何が沸いてる脳してたらそんなこと思いつくんだよ……」
……悪趣味が過ぎる。ナフをチラリと見た。
「……こうなるなら、コミュニケーションくらいは取っておくべきだったな」
仮面を付けた、もう一人の"従業員候補"に顔を向ける。
その声は、その容姿は。見覚えがあったから。
露わになった身体を隠す事はしなかった。
それが今求められている動作ではない事を、青年は理解していた。
一方で、淫猥な玩具や衣装に興味を示さなかった。そういった物には疎かったからだ。
膝を蹴られ、床に膝をぶつけると その端正な顔が痛みに歪む。
「……おれは、毒の類が…あまり効かない。そういう体に、なっている。他の方法を、取った方が…楽しめるんじゃないか」
「………………」
観賞室の扉を背に凭れ掛かり、成り行きを眺める。
冷たく無感動な瞳がただ人間が当たり前に持つ権利を剥奪され、
人が人以下に堕とされるさまを見ている。
二人の"研修生"が妙な気を起こして逃げ出さないように。
静かに獲物を呑む機を窺う蛇が、
番人の如く、逃げ道を塞いでいる。
「だとよ。残念だったなァ?
そうなりゃオレはともかく、コイツの"研修"にゃなんねー。
そうだろ……オイ?」
裸に剥かれて、古傷まみれの肌が、床で新しい擦過を作る。
なんだっていい、コイツの体質とかも関係ねェ。
悪趣味に並べられたソレをブチ込まれるのも、
雄狗同士で何かをやらされるのも、ゴメン被る。
| >>21 テンガン 「そっか」 返答は短いものだった。 けれど確かにしみじみとした響きもあって、 言葉を舌の上で転がすような間の後に再度口を開いた。 「……うん、仕事中よりは、ずっと。 寝たい時に眠れるし、迷う余裕もある、し こうして、きみと話す暇もある。」 そう言って、やや表情を綻ばせた…ように、見える。 感情表現が不得意だから、言葉を尽くして伝えようとする。 そういう意味では、何だかんだと言って 相性は良い方になるのかもしれない。 それから、そうだ、と殆ど独り言のような声を零した。 「きみの方は…『船の謎』に関しては、どうだった?」 (22) 2021/07/04(Sun) 1:26:28 |
「おれは…、…あまり、面白みのない人間だと思う。
あんた達の、期待通りの反応が出来るかは…保証が出来ない」
同期―――と呼ぶのが相応しいかどうかはさておいて
彼とは違い、このような扱いを受ける事自体に抵抗はないようで。
「ああ、でも―――痛い事は、あまり得意じゃない」
| >>31 テンガン 「………え、趣味…?船長の……?」 いつかの朝食の際に一部の乗客が大騒ぎしていたのを思い出した。 食べ物にはあまり頓着しない方だけど、 昆虫食だとかは流石にかなり際どいものだとわかる。 下らない与太話には素直に濁されてくれたようで、 趣味なんだ…… ともう一度呟いた。 「…んん……そっか、そう…だよね 私も……あまり、収穫は無かった。でも… きっと、何の根拠もない話、では…ない、んだよね?」 前髪に覆われていない方、凪いだ湖面のような右眼が覗き込む。 あなたが根も葉もない噂を信じ込むようには思えなかった。 であれば、それに至るだけの『何か』が確かにあるのだと。 人々がその根も葉もない噂、に踊らされないように 先んじてそれを解き明かす、というのであれば別だけど。 (33) 2021/07/04(Sun) 2:28:19 |
「エンターテイメントさ。
私はこれまで、この船や別のクラブにて、何十年に渡って客を楽しませてきた。
彼らがどんな種類の血と性に飢え、見下ろして愉しむか。私はたいへんに知っている。
ナフ。貴方はとても従順だから、あまり手荒く扱いたくないな。傷も少なくしたいね……」
彼はムルイジに比べれば随分と協力的だ。よしよしと、白く塗った爪が頭を撫でていく。
まるで犬のようだ。『グラトニー』はムルイジの牙に少しも気分を害した様子は無かった。
質の良さそうなドレスの裾が、まるでオーケストラ指揮者の燕尾服のように歩くたびに舞う。
『グラトニー』は少しばかり『スロウス』に目を向けて、かるく微笑んだ。
「ふたりとも偉丈夫だもの、きみの負担も軽くしないとね、『スロウス』。
さて……とはいえ見た目が派手でわかりやすいほど、ショウが盛り上がるのも本当。
ただあなた達ふたりをステージに放り出しても、コトが進まず時間を食うばかりだろう」
そばに置かれたトレイから取り出したのは、まずは銀色のワイヤーリングだ。
フラフープのような輪を脱がせた彼らの膝の裏まで通すと、端を引いて膝を強く締めた。
細い輪は歩いても落ちないようにぴったりと形を合わせられ、外せそうにない。
「それはスイッチで電流を流す装置だ。君たちが暴れたり不興を買えばオンにされる。
心臓から遠いから命には関わらないよ、出力は獣用だけれどね。
でも、ご覧。それだけでは大変地味だろう。お客様は楽しくない。そこでだ」
モニターにぱ、と舞台装置が映される。ステージのフチにはアクリルの壁がある。
逃亡防止のためと、もう一つの役割があることを賢いあなた方は悟るだろう。
なぜならその上には、大掛かりな……回転ノコギリに繋がっている。それは天井から下がっている。
取り付けた板は丈夫で、滑車の動きに従って舞台にまっすぐに降りるようになっていた。
「ムルイジ! 貴方はとっても……自分を高く見積もっているようだ。
私は貴方をみくびっていたかもしれない。それを謝罪させてほしい。
貴方が知る貴方の価値。そして並ぶナフの価値……貴方が価値を決めると良い。
あなた方がセックスショウをするのはこのノコギリの下。
これは観客たちからのチップの重さと天秤になっていて、
盛り上がるほどノコギリが降りるのは遅くなる。一定に達すれば、ノコギリは止まる。
でも貴方がもし自分の価値を高く積み上げることが出来なかったなら……。
ノン・ゼロサムゲームだ。どちらかの利益がどちらかの損失になることはない。
互いの足を引っ張らず、協力し合えばどちらもが利益を得ることができるだろう。
大切な同期だ、仲良くしなさい? お客様に気に入っていただけるよう、しっぽを振ってね……」
撫でられること、それ自体は嫌いではなかった。
しかし、膝に通されたワイヤーリングと、頭上の回転ノコギリを見て
初めて、不安に瞳を揺らしている。
より刺激的に、より官能的なショウを演じることができれば 自分の身にも、同期の身にも危害が及ぶことはない。のだろうあ。
「…ムルイジ」
できそうか?と、反抗的な態度の彼に問いを投げた。
/*
ちなみにここは観賞室を貸し切った紅組控室、
舞台はソレゾレの研修によって変わるのは大前提として、地下のホールを予定してますわ!
なおかつ研修と『エンヴィー』の特別研修どちらが先になるかもこう……いい感じに調整します。
/*今起きたエンヴィーですおはようございます赤窓ご覧いただいている皆様
グラトニーの研修最高すぎてわたくしのハードルぶちあがっていませんこと!?
一晩考えましたけどようやくまとまりましたわ〜ムルイジとナフ二人分あります!
でも研修二人分やると墓下組流石にロールするエネルギー的にも大変かな?と思うので悩みどころですわね……
その辺りはナフPLさんとムルイジPLさんのご予定も考慮しつつなんかこう……いい感じにやりましょう!(いきあたりばったり)
「……エンヴィーだよ。入るね」
コンコンコン、と控えめなノック。
不動の番人を務めるスロウスに声をかけ、別世界とも呼ぶべき異様な熱を含み始めた鑑賞室に戻ってくる。
「自分の研修の手配は済ませてきた。いつでもいける……おや。
これはまた随分ドキドキするようなものが始まっているね」
逃げ道を塞ぐ蛇の隣に並び、ぴんと背筋を伸ばしたまま腕を組んで静観する。凛とした佇まいは表の仮面を被った時と同じままだが、その口元だけは嗜虐の楽しみにゆるく弧を描くように歪んでいる。
上を見上げ、回転のこぎりの直接的な死の存在感に、
乾いた笑いが出た。…本当にどいつもこいつもイカれてやがる。
まな板の上で悪趣味どもの興を買って、
天秤のもう片方にチップをねだれば、
死そのものの降下を遅延させられる最悪の天秤
がこれだ。
男と抱き合う趣味はない。男と交わる趣味ならなおさらない。
だが最初から、俺たちに選択肢なんか残されていない。
「……ああ。分かってるよ」
同類のお前に言われなくても。"やる"しかないんだろうが。
可能な証左として、その端正なナフの頬に触れ、体を寄せ合う。
肌と肌が触れると、外気に触れた肌同士がやけに冷たくて、
互いの心の温度を思わせた。心から不本意な温度を共有する―。
「…お疲れ様です」
近付く足音とノックに気付き、番人は一時その場を空けた。
やって来た共犯者の一人と事務的な挨拶を交わし、
再び、地獄──哀れな犠牲者達にとっては天国へと繋がる門を
守護するように、ただその場に佇むだろう。
溺れるように互いの躰を貪り合い、
共に享楽に耽ったあなた達共犯者なら目にしていたはずだ。
今は"スロウス"と呼ばれる一人の共犯者の身体の随所には
大小さまざまな手術痕が走り、その存在を主張していた。
後天的に手を入れられ、そうあるように誂えられた証。
様々な状況に対応できる、工作員として。
哀れな犠牲者達が、たとえ訓練を受けた偉丈夫であろうと
"スロウス"には然程大した事ではない。
眼前で繰り広げられる狂った饗宴の先触れをただ見下ろし、
ただ、暴力装置として必要とされる時を待っている。
けれど、今はその時ではないと知っている。
そして同時に、その時が近い事も知っている。
「ああ、『エンヴィー』。準備は終わったかな。
いいや、こちらは後に回したっていいのさ。なにせいつだって構わないのだから、私は。
メインステージは『エンヴィー』によるものだ、そちらを先にやろう」
ぱ、と仕掛けは取り下げられる。船旅は長い。そればかりが演目ではないのだ。
ニコリと微笑みかけて、二人の顔を仮面をつけた『エンヴィー』の方へと向けた。
「……」
一度、スロウスの様子を横目で見やり。けれどすぐに視線を異様な熱気に満ち始めた男二人の元へと戻して進み出る。
深い夜をそのままぶちまけたような暗い色の燕尾服。素顔を覗かれる事を拒むかのようなペストマスク。自分をひた隠しにするような姿をした共犯者は、この空間を見守る賓客たちに向けて優雅に一礼して見せる。
「我が同胞グラトニーが執り行うショーを先延ばしにしてしまったこと、心からお詫び申し上げます。
ですがお楽しみをすぐ食べるのではなく、後にとっておくのもまた一興かと。
またすぐにでもこの偉丈夫二人の睦合いが見れることかと思いますので、今は暫し私にお時間をくださいませ」
「──さて!
代わりに私エンヴィーが行わせていただきます演目は踊り子とギャンブラーの魅力を活かした素敵なゲーム!従業員として躾ける為だけではなく、お客様達にも遊戯に興じることができるでしょう!
この非日常的な空間を観覧なさるお客様達も参加できる……特に踊り子の為に用意したゲームに至っては"乗船客"さえも巻き込んだ大規模なものとなっております!
ぜひ皆様、奮ってご参加くださいませ!」
ぱん、と一つ手を打ち鳴らせば、すぐさま仮面の従業員達が躍り出てゲームのセッティングを始めていく。
放置された踊り子とギャンブラーは、折角決めた覚悟を嘲笑うかのように踏み散らされながら引き離される事だろう。
ギャンブラーはそのままステージの上に。
踊り子は仮面の者に連れられて舞台袖へ。
勝負師だけ残されたステージの上には、男にとって非常に見慣れた光景がみるみるうちに出来上がっていく。
カードを配るための大きなテーブル。集められたトランプ。積み上げられたチップ達。
「踊り子は"仕込み"があります故、一旦下がっていただきましょう!なに、出番が来る頃には非常に美味しい姿となっておりますので是非お楽しみに!
今ギャンブラーの彼に行ってもらうものは──
──そう、ブラックジャック!」
仮面を身につけた大男達に合図して、勝負師を無理やりテーブルの前に引きずりだすだろう。
ギャンブラーを連行する時勝負師として最悪の一手を取った"嫉妬"は、平然とした様子で再びディーラーとしての位置に立つ。
「っく、ふ……」
褐色の肌に映える、肩から沿うように施された白い入れ墨が露わになる。
誰のものなのかも分からない手が体に触れるたび、くすぐったさと微弱に感じられる気持ちよさが襲う。ローションで滑りが良くなっていることも、一助しているのだろうか。
無意識に体に入る力を抜くように、息を吐いている。
少しでも余裕を残そうと、快楽から気を逸らそうと試みる。それがうまくいくかどうかは、さておいて。
「……『エンヴィー』、『グラトニー』。
あの踊り子とは、少しばかり"取引"をしています」
その取引の対価として、
研修を甘んじて受け、『お客様』を楽しませると。
職務に忠実な"怠惰"は、決してその言葉を覆させはしない。
「もし研修中に激しく抵抗するようなら、如何なる罰を与えても
その"取引"の取り止めを仄めかしても構いません
あなた達の判断に任せます。」
踵を返し、俄に盛り上がりを見せる余興に背を向ける。
恰幅の良い仮面の従業員を呼び付け、代わりに扉の前に立たせた。
「僕は少し調べ物をして来ます
次にお連れする方は既に決まっていますので、ご心配なく
あなた達はあなた達の役割に殉ずるといい」
狡猾な白蛇は、獲物を求め去って行く。
『スロウス』は、決して不確定要素のある賭けは好まない。
| ラサルハグは、 (5)1d10杯目のコーヒーを飲み終えた。 (a30) 2021/07/04(Sun) 13:49:29 |
| (a31) 2021/07/04(Sun) 13:50:22 |
| (a32) 2021/07/04(Sun) 13:50:46 |
| (a33) 2021/07/04(Sun) 13:50:57 |
その褐色に走る煽情的な白線は、
指先でなぞれと導線を引かれている気分になる。
女にするように指の背でツメの先で引くようにそれを撫ぜると、
相手に快楽の鳥肌が立つのが分かる。
「………」
反吐が出る。明らかに年下の肌に快楽の道筋を立て、
薄い背中を仰け反らせてでも生きたがる己の性に。
テーブルに己の人生を乗せることはあっても、
こうやって誰かの人生まで能動的に乗せたことはない。
男女の交わりのようなそれを囃し立てる声。
――ああ、じゃあ。望み通り狗らしくしてやるよ。
少しだけ我慢しろ、少年。
思いながら、滑る肌で這い上がるように動き、
ナフの褐色の喉に仮面を少し上げて、噛みつく。
歯形を、牙痕を、罪科を、かつての自分に残すように。
唐突に鎖を引かれ、呻きを上げながら引きはがされる。
無理やり引きはがされる。
こっちの都合なんかお構いなしってことかよ。
遊興は次の段階に移行したらしい。
見慣れたテーブル。生涯向き合うはずだった賭け台。
その上に命も含めた全てを載せてきたはずのそれが、
今他人の顔で目の前に鎮座している。
腐っても、そして腐らせてもギャンブラーである自分に、
未だここに座らせられることが、どれだけ屈辱か。
「……上等ォ、だ。
そっちがその気なら、どこまででもヤってやるよ……」
青年―――否、青年を装っていた少年は、毒物にこそ耐性があるものの。
"その他の薬物に対する耐性"を持ってはいない。
あくまで、自分が死なないための訓練で手に入れたものなのだ。
そして、少年の目には それが"媚薬"であると気が付けない。
酔うくらいなら、いいだろうと。浮ついた頭で、それでも従順に―――研修を終えるために。
口に捻じ込まれる液体を嚥下する。刺激に体が震え、口端から漏れる媚薬すらも 周りを興奮するための材料になる。
くらり、頭が揺れる。
「っ、は……ぁ…?何、だ……っぁ…うっ」
じわり、汗が滲む。頬が紅潮し、息が上がる。
その間にも、愛撫の手は止まらず 抑え込めなかった甘い声が漏れる。
混乱する脳内が、快楽に染まって 思考がぐちゃぐちゃとまとまらなくなっていく。
>>ムルイジ
去っていく『スロウス』を一瞥し、すぐにショーへと視線を戻す。かの者らしいと思った。
「ディーラーは私エンヴィーが務めます!
互いにカードを引き、出た数字を合計して21に近づけていく非常にシンプルなゲーム!
それでは参りましょう。
まずはディーラーの1枚目から!」
そう告げてテーブルの上に乗せたシューからカードを引く。
……スペードのQ。絵札は全て10扱いとなる。
「さあ、華々しい活躍をするギャンブラーはどんな戦いを見せてくれるのか!それではカードをどうぞ!」
/*
(ムルイジ側のみ実際にミニゲームを行ってもらいます。なおディーラー側は数字が決まっている出来レースです。
[[/card]]で一枚引くレスの後、エンヴィーのレスを待たずに続けて2枚目以降を引いたりストップしたりして構いませんわ!オッケーそうならエンヴィーの2枚目のカード引きますわね!)
「……あんまり舐めてくれんなよ」
ショーの喝采に。……一気に。
意識がギャンブルのテーブルの上に載る。
相手を射殺すような絶対零度の眼が対面の相手を睨む。
殺意を真正面から向けた。
何度も。
何度もこんな死線は潜り抜けてきた。
もっと酷薄で救いのない場所でだって、カードを捲ってきた。
ブラフとラックだけで渡り歩いてきた。
包帯の撒かれた右手ではなく左手で。
右手と遜色なく動くその利き手ではない方の手でカードを捲る。
▼
続けて、二枚目も裏返した。
ここが分水嶺。ただ食われるかそうでないかの境。
――オレの望んだ、ギリギリの勝負。
最善ではなく、最良でもなく。
だがただ食われるわけでもない、
――敗者が喉笛に噛みつくための一手。
やはり命をテーブルの上に乗せなければ、
賭けに命は宿らない。
見たかよ餓鬼ども。
見ろよ肥え太った醜い豚ども。
これが――
『ギャンブラーの生き方』
だ。
「――これで勝負だ。
命を賭けるには、悪くねェな」
>>ムルイジ
「そうですか。それでは、今度は私の番。
カードをめくりましょう──いざ!」
威勢のいい掛け声と共に明かされるディーラー側の2枚目のカード。その中身は──
──クラブの7。
ディーラー側の合計は17。ルール上、17以上となった場合ディーラー側はもうカードを引くことができない。
ディーラー側は17。
プレイヤー側は20。
なんてことない、ギャンブラーの余裕の勝利だ。
▼
>>ムルイジ
「
── おめでとう
──Nice win!
おめでとう!貴方の勝利です!いやあ余裕すぎたでしょうか?
それでは配当を出しましょう。華麗に勝利を収めた貴方にはこちら!」
ディーラーはぱんと手を叩いて合図する。
>>ムルイジ
ギャンブラーの前に現れたショットグラス。
本来テキーラなどアルコール度数の高い酒が注がれるはずのグラスには、下品なピンク色の液体が注がれていた。
「即効性の媚薬です。20の数字を出したので、20本用意いたしました。これら全て貴方のものです!独り占め!よかったですね!
それでは祝いの美酒ならぬ媚薬を召し上がっていただきましょう!折角ですので、手を使わず狗のように!」
エンヴィーが言うや否や、大柄な仮面の男性従業員がギャンブラーを囲んでその両腕を後ろで拘束するだろう。
つまり、口でグラスを咥え、上を向いて呷って飲み干せと言う事らしい。
「……は?」
信じられないものを見て、目を見開く。
勝ちを手にしたはずが、その手にした勝ちによって、
己の首が閉まるこの状況は。もはやギャンブルでもなんでもない。
抗議するまでもなく背後から自分の腰回りほどの腕を持つ、
複数の従業員が締め上げる。
クソが。
どこまで腐って
――。
牙を剥いて唸るも、後頭部を押さえられ、
"それ"に顔を近づけさせる。少しでも抵抗を見せると、
締め上げられる後ろ手が、ギリギリと痛む。
本当に。――悪趣味の塊が過ぎる。
▼
押さえつけられたまま、一つ、二つ、飲み干し、
四つ、五つ飲めば、自身が存在の主張を始める。
十、十一と飲めば、呑んだ液体に反比例して、喉が渇く。
まるで押さえつけられるようにされた股間の怒張が、
逃げ場をなくして生き物のように左右に擦れることすら、
脳髄を焼くレベルの快楽が押し寄せてくる。
ズボンの中に全部ぶちまけられれば、どれだけ楽になるか。
十九、二十。
自身の出したカードの数字の数だけ飲んだ媚薬
に。
全身が灼熱の湯の中にぶち込まれたように熱い。
手が自由でないから、触れることすらままならない。
口の端からは無様に涎が零れ、
発情した狗のように、荒い息が鼻から、口から洩れる。
触れられればたやすく絶頂に至るほどに昂められた躰は、
情欲の逃げ場を探して、男たちの腕の中で左右に藻掻いた。
傷だらけの背筋に男たちの服が触れてすら、
着衣の中に欲帽を全部ぶちまけて、果ててしまいそうだッ……。
>>
ムルイジ
「──誰が勝手に果てていいと言いました?」
力強く靴音を響かせて男の元にエンヴィーは遠慮なく衣服の下に隠れた男根めがけて平手打ちを一つ。
その衝撃で絶頂してもしなくても、まるでどうでもいいと言わんばかりにディーラーはくるりと踵を返す。
20本も飲んだのだ、1度の射精だけでは高ぶりなど静まるはずあるまい。
「──さて!ここからが皆さんが参加できるゲームです!
従業員の皆さん、お願いします!」
軽やかにそう告げてもう一度手を鳴らす。
▼
>>ムルイジ
合図と共にギャンブラーの体が従業員たちによって卓上に乗せられる。そして男の様子などお構いなしに服を次々と剥いていくだろう。
そうしてギャンブラーの裸体を客人たちに見せるようにした後、両腕両足を金属製の器具で固定する。
あろうことかテーブルの上は片付けられていないままだ。ギャンブラーが出した会心の数字のカードたちも、カジノでよく見るチップたちも、道具は全てテーブルに乗せられたまま。
このままではきっと汗や精液で道具が汚れてしまうかもしれない。
「それでは今度は皆様がゲームに参加する番です!
今から従業員たちに愛撫されるこのギャンブラーが次は何分後に絶頂するか、賭けていただきましょう!
なお、10分経過してからは1分ごとに同じ媚薬を飲んでもらいます。いったいギャンブラーはどこまで耐えるんでしょうか!楽しみですね!」
「ーーッッ……」
怒張に鋭い手打ちを浴びせられると、痛みよりなにより、
爆発的な快楽が背筋を雷のように貫く。
歯を限界まで食いしばって耐えたが、
両足の間に無理に快楽を抑えた代償として激痛が走り続ける。
全身を冷や汗が流れ落ちる。脱がされるまま脱がされていく。
限界まで張り詰めた躰はどこに触れられても快楽の棘を残していく
両脇を抱えられて器具に両手足を拘束されると、
より一層自分の反り返る昂りが露わになる。
小刻みに、収斂しながら、自分の腹を抉るほどに仰け反る自身は、
何かの拍子に中ほどから爆発しそうなくらいに熱い。
――心の底からフザケてやがる。
何が賭けだ、何がギャンブルだ。
こんなもんただの、見世物じゃねェか……ッ。
▼
そんなオレの憤りなど気にも留めない、
無遠慮な手が四方八方から伸びる。
「アッ……ガッ、
や、めっ、触っ……っッッ!!」
視界が真っ赤に染まるほどの射精感。
無遠慮に撫で、握り、ほじり、引っかくだけの愛撫で、
身体が意識とは関係なくくの字に折れ曲がろうとする。
両手両足を卓に拘束された状態では、
ギシギシとその拘束を揺らすだけで、
快楽からの逃げ場がどこにもない。
やめろ。
やめろやめろやめろ!!
フザけんな。殺してやる。
こんな、無理やり、賭けと関係ないことで――。
「ぐ、あっ、ガァ!!
ざっ、け……アッ……!!」
――オレ自身の薄汚ェ雄の欲望で、
オレの愛した神聖な賭けのテーブルを、汚させるんじゃねェ……!!
どれだけ憎悪が膨れあがろうと、どれだけ殺意が芽生えようと。
ギャンブラーの心境など関係ない。そんなものディーラーの知ったことではない。
"嫉妬"が陵辱しようとしているのはその肉体だけじゃない。世界で一番許せない男の魂もだ。
エンヴィーは仮面の下で吐き捨てる。
「さあどんどんお賭けください!いやあ愉しいですね、ギャンブラーもなかなか耐えている様子!」
ギャンブラーはいつ果てるだろうか。
もし10分以上耐えるようなら、"嫉妬"自らが同じようにショットグラスに入った媚薬を飲ませていくだろう。
ガンッ、ガガンッと拘束を揺らして、卓が動く。
あらん限りの力で足掻き、暴れるが、拘束は硬い。
テーブルの上で自分の出した役が、チップが、音を立てて崩れていく。
暴れるたびに別の生き物のように己の怒張が、
欲望を辺りにまき散らそうと震える。
イきたくない。イかせてくれ。楽になりたい。なりたくない。
賭け師のプライドを捨ててまで、オレがオレでなくなっても
生きていたいなんて思ってない。
「ウ"ウ"ウウ"ゥウウ"ルルル………」
一つ、二つと媚薬が追加され、もはや嚥下も難しいくらい自分を見失い。
動物のような唸りを上げていたが、完全に意識の外側から、
薬によって押し上げられた性感が、無理やり腰骨を裏から叩いていった。
その衝撃に、大きく体が仰け反ると、
まるでかつて勝負師だったころに上げた勝鬨の人差し指のように、
高く、高く己自身が持ち上がって、それに下卑た歓声が沸いた。
▼
――限界は。
突然訪れた。
もはや耐える耐えないの話を超越して、
人間の身体が媚薬に耐えきれず、
張り詰めた糸が千切れるようにして、
仰け反って小刻みに震える躰から、まるで女人の潮吹きのように。
「―――――――ア」
長く。
永く。
高く、粘性の低い白濁が吹き上がり、
それを追い越す様に濃縮された濃い液体が。
中空を殴りつけるように広がった。快楽で、脳が、壊れる。
上に出せば、それは降ってくる。
思考を焼き切るほどの快楽の衝動が、躰の弛緩を許さない。
そこに降る最悪の雨が、躰を、テーブルを、トランプを。
――愛した賭け台の全てを、無様に、問答無用に濡らし、汚していく。
敗北感と。射精欲の充足。
己の矜持全てが、その一回の絶頂で、
バキバキに罅が入る音を聞いた。
やがて永遠に続くようなその頂きへの昇りつめも収まると、
己の出したもので無様に汚れた、横たわる男の虚ろな目だけがそこにあった。
>>ムルイジ
「…………………………あは」
仮面の下で"嫉妬"が嗤う。
それはそれは心から幸せそうに。
「──皆様ご覧ください!ギャンブラーの愛したカジノのテーブルが、ギャンブラーの欲望で汚れる様を!
とても気持ちのいい果てっぷりでしたね!」
高らかに、唄うように破壊者は告げる。
「結果は十五分!当たった方はいらっしゃったでしょうか?それでは只今からスタッフ達がお客様に配当のチップをお渡ししますので、そのままお待ちください〜!
本日はお集まりいただきありがとうございました!司会進行は私エンヴィーが務めさせていただきました〜!」
弾むような声で締めの挨拶をして、恭しく一例をする。
一人の男を散々凌辱した狼はそのまま従業員にギャンブラーを担がせ、撤収を始めるだろう。
"特別研修"の片方はこれにて閉幕。
次の獲物は、美しき踊り子だ──。
「んぐ、ぅ……ふ、うぅ…っ」
ショットグラスの中身を体内に入れる度に敏感になっていくようで、口の中をかき回されるだけでゾクゾクとした快感が背筋をのぼり 指でこじ開けられた唇から漏れる声に吐息が混じる。
脚の間のそれも、天を仰ぎ先走りを床に滴らせている。
「なに、ぁ…あ、あぁっ…!?」
乳頭を挟むクリップの痛み―――否、痛みは感じなかった。少年を襲ったのは、強い強い快感だ。
薬によってより増幅された快楽が、少年を絶頂へ導く。
びく、と背を反らせて。ぱた、ぱたと床に白濁が飛び散った。
くたりと力の抜けそうになる体を、周りにいる男たちが腕を引いて支える。
それでも、まだ。体を焦がす熱は収まらなくて、ローターが取り付けられ 穴を広げるように玩具が挿入されるのを感じると、少年のそれはまた勃ち上がっていく。
まだ、準備段階であるというのに 空気が肌に触れるだけで感じてしまいそうで。
未熟な少年は、理性をギリギリのところで繋ぎとめることしかできない。
声を掛けられて。ふる…と体を震わせてそちらに顔を向ける。
「けん、しゅう…あ、あ…分かった…
それが…お客、様の…要望、だったな…」
手が一度離れていけば、少しばかり余裕を取り戻そうと呼吸を整える。
いつもの衣装よりも露出が多く、落ち着かないが フェイスベールを身に着け、"踊り手"としての自分をほんの少しだけ取り戻す。
過敏な体は昂ぶりを訴えるが、今は役目を全うしなければと気を張って抑えつける。
ショーを無事に終えることが出来れば、それでいいのだから。
>>ナフ
地下のホールは冷たい空気で満ちている。媚薬と愛撫によって既に蕩かされている少年の体はもしかするとその外気が肌に触れる感覚だけで快感を得てしまうかもしれない。
『さあここだよ。この地下ホールの中心。そこに設けたステージで踊るんだ』
エンヴィーは移動の途中でいなくなった。代わりに、従業員が音声通話を繋いで貴方に声を届けている。
『面白そうだから他の乗船客による救出劇を可能にした筋書きを作ったけど──
──いいかいナフ。もし私の素性を助けてくれた乗船客に話しでもしたら。その客や君と仲のいい人から優先的に君と同じ地の底に引き摺り込んでいくからね。
それじゃあショーの始まりだ。期待しているよ』
▼
>>ナフ
中心のステージがライトアップされる。貴方はそこで踊るよう指示されるだろう。
そこに人の形をした観客などいなかった。
無数のカメラが、ステージを取り囲んでいる。
無機質なガラス。その向こうに少年を熱く邪な目で見ている人間たちがいる。
『なんとこれは淫らな』
『本当にこれで十五歳なのですか?』
あちこちのスピーカーからカメラから貴方を覗く賓客の声が聞こえてきます。
『──さあ、ナフ。開幕だ。皆が期待している。
"ちゃんと"踊るんだよ?』
エンヴィーはそれだけ告げて通信を切りました。
そして。入れ替わるように流れ始める音楽。貴方のための舞踏曲が流れます。
貴方はこれまでに身につけた踊りを、自由にのびのびと踊ってください。
──もっとも。
無事にショーを終わらせるつもりなど、初めからないのですけれど。
ここで失敗してしまえば『取引』を無駄にしてしまうかもしれない。
少年は、主催の言葉を聞いて素直に頷いた。
仲の良い人間も、特にいはしないのだけれど。
「…よろしく、お願いします」
カメラに映されることには、慣れている。
少しばかり、普段よりも風を敏感に感じてしまうくらいで。
音楽に合わせてしなやかに体を動かして、舞いを踊り始める。
指先までピンと伸ばした腕、床を軽く蹴ってはアクセサリーを揺らしている。
擦れる布に息は上がり、再び起き上がる股間のそれが主張しているのがよく見える。
>>ナフ
「…………ふうん。招待されただけの事はあるね」
カメラ越しに見ていたエンヴィーは独り言ちる。
エンヴィーには踊りに関する知識などなかった。ただなんとなく眺めているものの、それでも少年の舞には惹かれるものがあった。
あれだけ"仕込み"を行っても自分の役割を全うしようとする姿。
その艶姿にスピーカーから聞こえる歓声はどんどん熱がこもっていて。
純粋な喝采が、湧き上がっている。
「…………」
▼
>>ナフ
「……ずるいな」
舌打ちをして手元のスイッチを弄る。
それは踊り子の体に取り付けられた玩具の電源を切り替えるもの。
女の指が容赦なくスイッチを押し込んだ瞬間。
少年の体を蝕む玩具たちは一斉に激しい振動を始めることだろう。
いける。盛り上がりの声も、聞こえている。
このまま続ければ と、優雅な舞いを続けている。
続けようと、した。
「は、ぁあ…っ!?や、な、っ…!」
ガタン!
と大きな音がしたかと思えば、舞台の上で蹲る少年の姿が見えるだろう。
嬌声を上げ、逃がせない快楽を直に受けて欲をその場で吐き出す。
まだ、音楽は続いているのに。 立てない。
乳首を噛むクリップが激しく揺さぶる。
男根に絡むローターが酷く震える。
後孔を苛むバイブが荒々しく暴れる。
例え少年がどれだけ果てようと、責め立てているのは玩具だ。無機物だ。
止めてと言っても止まることなどなく、ただひたすらにその役割を果たすだけ。
どれだけ少年が泣こうが喚こうが、その空間にいるのはたった一人。観客さえも見当たらない。
それなのに視線と歓声の雨だけはずっとずっと少年に向けて降り注がれている。
▼
>>ナフ
「そうこなくちゃ」
カメラの向こう、"嫉妬"は満足げに嗤う。
胸に仄暗い喜びが満ちる。自分より優れた者が無様な姿を見るのはやはり気持ちがいい。
「……これ、もう要らないや。捨てておいて」
エンヴィーは従業員にスイッチを渡し、席を立った。
この"研修"はこれでいい。ギャンブラーの時のような撤収は必要ない。
少年への道は開放していた。
写真をばら撒いた時に炙り出された者たちが後はなんとかしてくれるだろう。
それもカメラに映るだろうから、賓客は救出劇も堪能できる筈だ。
今回の"嫉妬"の特別研修はこれで全て終わり。
──次に毒牙にかかるのは、いったい誰だろう?
/*狼お嬢様たちへ
(大変好き勝手してしまいました!!!!)
土下座謝罪侍になりますわ……すみません、めちゃくちゃ好き勝手しましたわ……
グラトニー、順番譲ってくださりありがとうございます……
スロウス、見守ってくださり感謝ですわお熱大丈夫……?
わたくしもう満足すぎるのであとはお二人のやりたいことをサポートする事に徹しますわね……二人ともありがとう……!
/*
♡よくってよ♡
お二人から出てくるわたくしにはできないえっちの福利厚生に
わたくし毎秒マジ尊敬«リスペクト»ですのよ
熱はとりあえず頭は大丈夫になりましたわ!!元からダメですわ
こちらの襲撃ロールも多分、
あと一往復くらいで終わりそうな気がしますの。
締めとなったらいい感じに業務連絡ロールを入れますわ。
あと次の犠牲者の方もエッチがあると嬉しいタイプだそうなので
もしよかったら遊んであげて頂けるとわたくしが嬉しくってよ。
本当にこの社畜エッチを抜きませんわ。無作法ですわ。
「ひっ、ぁあ…!!とめ…っ!」
縋るように床に爪を立てて、猫のように腰を高く上げている。
強すぎる快楽から逃れるための姿勢は、秘部を無意識のうちに慣習に晒すことにもなっている。
役目を果たさなければ、と思うのに。
このまま客の声がブーイングに変わってしまう事を恐れているのに、体にちっとも力が入らない。
気持ちとは裏腹に、体は玩具の刺激で絶頂へ駆け上り 二度、三度と吐き出したもので、自身の真下の床に白濁の粘ついた水溜まりを作っていく。
助けてくれ、の声も出せずに 仮面の下からぽたりと透明な水がこぼれた。
/*
ブラボー……素敵でしたわ! ここから先は表舞台の出番ですわね。
エンヴィーもいっぱいおもてなしお疲れさまでした。
スロウスも下ごしらえお疲れさまでしたのよ……。
残りの半時間は体を休めつつやっていきましょう。最高でしたわよ……Kiss
/*
人狼疑い晴らしの為に馳せ参じるか、役者が五人揃って飲むのを見守るか迷っておりますの……
うまいこと座が全部人間で埋まると嬉しいですわね(参加者が増えることがいちばんうれしいため)
/*私も迷ってるんですのよねえ……でもこれ、多分五人揃うよりやる気ある男たちでノルマ5本全部飲みそうな気もしますわよわたくし……
/*
戦略性をとるならサクラを一人混ぜるのがいいのかもしれないのですけれど、
わたくし男達の乱交が見たいわ。
/*すっげえ同感ですわね。わたくしも男たちの乱交めちゃくちゃ見たいですわ
/*
これ、ダンスに対する観客の声とか匿名メモで投げてもよろしいですかしら。
あと会場にこぞってる白の皆様は見せ物にしてよろしいのかしら。
私も匿名メモであそぼうかと思いまして……
/*
焚き付けナイスプレーですわご同輩お嬢様。
わたくしどうせこの後賞味期限切れですし、
カモフラも兼ねるならお二人のどちらかが適任かしら。
いや本当に何かの間違いでこの三人で組んず解れつして頂けたら
約束された絶景なのですけれどもね。
非実在オーディエンスもそれを求めてますわよ!!多分
/*あら!最高ですわねそれ!!盛り上げてくださるのとっても嬉しいですわ!!観客の声とっても嬉しいのでガンガンいってほしいです!
見せ物というと具体的にどんな感じかしら?(今回薬飲ませてナフ救出させるのを目的としている為それ以外何も考えておりませんでしたの)
/*
向こうに能動的なロールを求めるとお忙しくしてしまうと思うので、
VIP達が「彼らが踊り子を助けにきたことを知っている」という形で巻き込んでヤジる感じですかしらね。
薬を飲んでる姿をサブモニターでVIP達に中継されてるとか。
薬で乱れる姿を見たいわ! と騒ぐモブがいる感じになりますわね。
/*
そして超スピードで消化されんとしてますわね。
乗り込もうかしら。乗り込みます。(二人の返事を待ってから)
/*うーん我らがグラトニー、流石の行動力ですわね。いってらっしゃーい!
/*
ダビー、本当に"持って"らっしゃいますわね……
どちらもゴーですわ!やっておしまいなさい!
/*最高ですわよありがとう……やはりグラトニーあなた最高のエンターテイナーですわ……
/*
体の秘密も唇の秘密も赤窓とは関係のない親切設計です。
秘密の多い女だ。
観客は沸いていた。
もちろんメインはナフの踊りと痴態に。少しだけ、サブの副次的な催しの混乱ぶりに。
そして一部は、女の悪い癖に。
『またエンターテイナーのクセが出ましたな。どうやら処女の子宮では足らないようですぞ』
『ほほ、女の従業員が降りてきていませんからね。あの子も飢えているのではないかしら?』
『あと一歩早ければあの御令嬢の柔肌に存分に噛み付けましたね彼女は! はは、惜しい惜しい』
『まあ、また壊れた従業員があればくれてやりましょう。踊り子達の心が砕けるのが見ものですね』
……古株のVIP達はどうやら、女の悪癖をようく知っているようだった。
どうやら完全に壊れて心の動きを失い、客を楽しませられなくなった従業員達の行き先は……穢れた豺狼の、胃の中であるらしい。
完璧な演技をして見せる女を囲む男達の困惑をも、客達は見世物としている。まるで、ドラマティックな映画のように。
────短く、通信が入る。
「………あなたが交わした取引を」
「どうかお忘れなきように」
それは『誰か』へ向けた警告。
たとえその場に姿が無かろうと
退路を塞ぐ白蛇は、その顛末を見ている。
/*
と社畜は言うておりますけども、
実際どうするかというところはどうか皆様で
相談してロール的に良きようにしてくださいませね!!
「オーダーは通ったようだ。さあ、踊り子さん。手を取るのかな、きみは」
声はその場ではなく、裏の一室に響いた。項垂れ気味の表情に隠し、柔かな声をスピーカーに届けている。
からかうような声は、従業員となった二人に向けられた。
二人の心を揺り動かすためだけにだ。
「いいね、人当たりよく、愛されるものというのは……それが何であれ、助けてもらえるのだから。
そう思わないかい? ムルイジ。シルバーキーが開けた扉は君宛ててはなかった。
ナフが手を取ったならば、ジョーカーは枯れて、君は、ようこそ、最下層(ボトム)へ」
/*朝も連絡しましたが狼お嬢様Aはイベント後のナフのあれそれどうするか何も決めていないので、何もかもアクアリウムブルーさんのお好きなようになさってくださいね!good luck!
何かを伝えたそうにテンガンを見て、小さく首を横に振った。
「そして、最後の輝きだ」
崇め、見上げるような視線が、彼の罪悪感を苛みますように。
/*
『グラトニー』も選択はどうぞご自由に……と述べておきます!
どちらの選択をするにしてもいい感じにシステム処理はやっていきましょう。
「ムルイジはえらばれなかったの?そうなの?ざんねんだったね!
でもだいじょうぶ。ムルイジがさびしくなったら、ううん、そうじゃなくてもわたしがおせわするよ!だってわたしムルイジがだいすきだもの!
ぐらとにー、すろうす、わたしちゃんとできるよ!」
「……『グラトニー』。
くれぐれも、『エンヴィー』の事は任せましたよ」
簡潔に、それだけを残して通信を切る。
それは、きっと夜が更ける前の事。
余興の場に姿を見せなかった、怠惰な仕事中毒者は
まだ"取引"の前準備に奔走している頃だろう。
「ええ、いいでしょうとも。貴方はとっても、いい子……。
存分に、彼の運命は貴方に預けよう。そのほうがきっと双方も嬉しいだろう。
彼の価値は、貴方が決めるといい」
穏やかな表情で、少女のようになってしまった『エンヴィー』をなだめる。
そこに嘘は一片もなく、貴方の能力を認めているのだから。それを窘める必要はない。
「ええ、『スロウス』、貴方も気をつけて。
……いいや、この言い方はふさわしくないね。"期待しているよ"」
踊り子の選択を視界の端でしっかりと確かめ、それで観客が喜んでいることをしかと見て。
彼らを巻き込んでの舞台にした『エンヴィー』の腕前を、改めて評価した。
うるさい。うるさい。うるさい。
ごめんなさい。
苦しいけれど、本当は逃げ出してしまいたいけれど。
それは、今ではない。それだけの、話。
少年は痴態を晒しながら、もう一度だけ決意を固める。
「信じらんねえ…あの、ガキ…」
度重なる凌辱で憔悴した顔で、
壁にもたれかかりながら掠れた声で囁く。
悪魔のような奴らの嘲りを聞きながら。
「まだ……テメェは、ガキだろうがよ……」
『かつての自分』をそこに重ねながら、暗がりで呻いた。
「…………あーあーテステス。グラトニー。スロウス。聞こえますか。
ああ、いえ。些細な連絡なので聞かなくてもいいんですけど。
私が薬飲んでる間に喋ったことは忘れてください。
忘れてくださいお願いします。
切実に!!!
……以上です。それでは、また」
通信はそれきり切られた。動揺しすぎて口調が表向きのままだった。
| >>69 テンガン 「そっか」 殆ど独り言のように、ぽつりと呟いて 同じく視線を水面に落とし、考えるような間。 「……そうだね」 もう一度そちらを見て、短く肯定した。 「逃げ場が無い、のは…謎も、私達も、同じ事だ きみは……きっと、私よりずっと、強い、し…真実に近い、 或いは、その…より確かに、近付く意思があるのだと、思う。」 「でも…だからこそ、気を付けて」 もう一度、憚るようにやや眉を下げて それから、来た時と同じように、ふらりと腰を上げた。 この船は、興味本位で関わるには 少々腹に抱えたものが大きすぎるのかもしれない。 そしてこの日の夜、予感は確信へと変わる事になる。 (78) 2021/07/05(Mon) 16:50:00 |
────そして、消灯時間を疾うに過ぎた頃。
簡素な連絡が共犯者の元へ届く。
「──『スロウス』より業務連絡です
取引、及び次の"標的"の身柄は無事完了しました。
これより研修の為の準備が始まるでしょう。
研修に関しては、できるならあなた達二人に任せたい。
僕は彼に随分と嫌われてしまったようなので。ただ…」
「
調べによれば、彼は一部記憶処理を受けています。
要点はこちらで纏めておきました。必要であれば参照する事。
それを再び顕在化させるような行為はよく考えて行うように。
せっかくこうして修復され、戻ってきた玩弄物を
またすぐに壊してしまっては芸が無いですから」
連絡事項を簡潔に伝えて、報せは一度打ち切られるだろう。
この船の夜は深く、そしてこれからだ。
「うん、わかった。ありがとうスロウス、お疲れ様」
淡々と返す。
「すぐ壊さないようにか……難しいね。少し考えておくよ。公開抽選で連れてこられた人を見てからでもいいだろうし。夜はまだまだ長いのだから」
自分は激情のままに、そして欲望のために動いている。
どれだけ相手を傷つけて心を折るかを主に考えているから、今回は加減に気をつけなくては。
共犯者のまとめてくれたデータを見ながら悩み、一旦置いてスロウスを労った。
「本当に薬にどっぷりかかっていたのだなあ」
自分も決して影響を受けていなかったわけではないが、気軽にお気楽に、少し前の通信を受けてにこにこ。
そして、大事な連絡を受けて通信機に応答した。
「嫌われた? ふふ、だれにでもかの人はアイロニカルな反応をしめすのじゃないかい。
時が来るまで、それにVIPのリクエストがあるまでそれは少し置いておこう。
我々の誰が上の不興を買うのか、いつどうなるかはわからないのだしね」
送付された資料をもとに、しばし考え込んでいるような間があった。
少しばかり思いつきはあったようで、続けられた声はそう困ったふうでもない。
「あたらしいことでもしてみればいいのかもね。過去の心傷を引出さぬよう……。
VIPが再び壊れゆく様子を見たいと言い出さないことでも願おうか。
お疲れ様、『スロウス』。きみにしばしの休息のあるように」
二人に続いて、やはり『グラトニー』の通信も切れた。
「──いやあ、残念だったねナフ。救出劇は失敗だ。私としては本当に助けてもらってもよかったんだけどね?
君は乗船客と接触し、助けを求めることができたかもしれないチャンスだったけど。みぃんな薬で倒れてしまった。
それじゃあ迎えに行こう。チップもカードも客の金も、きっちり回収するのがディーラー【このわたし】だ」
少年は、未だ止まらない玩具の刺激に体がもたず
濡れた床に倒れ込んで、びく、と時折大きく跳ねるように体を震わせている。
意地で声だけは抑え込んでいるものの、絶頂に伴い吐き出される精はもう薄く量も少なくなっていた。
仮面越しに、近づいてくる声の方に目を向ける。
| ラサルハグは、結局シアターへ足を向ける事は無かった。 (a117) 2021/07/05(Mon) 19:44:39 |
| (a118) 2021/07/05(Mon) 19:44:48 |
| (a119) 2021/07/05(Mon) 19:44:58 |
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