【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ>>-56 「……ええと……」 これは怒っている。 笑顔だけど、怒っている……気がする。 言ったらどうなるというんだろうか。……主に、後輩が。 彼がこれまでやってきた事を、何一つしらない男は、流石に言いづらそうに視線を彷徨わせた。 流石にこの件で喧嘩しに行く、なんてことはないと思いたいのだが。 「ぼ、僕が頼んだ、ことだから」 「意識が落ちるまでしてくれたら、薬も酒もなしに寝れるんじゃないかって…………だから」 彼は何も、悪くないからね? と、できる限りの念を押して。 仕事にだけは行かねばならぬと、ぼそぼそと小さな声で名前を告げた。 「イ……イレネオ・デ・マリア……僕が教育係をしてたひとつ下の後輩だよ」 「ひどく見えるかもだけど、本当に心配をしてくれただけだからね」 これは大分頑張って庇っていた。可愛い後輩のために。 あなたからしてみれば、その名を聞けば思う所はきっとあるだろう。 だが、男から見た彼は、ただの大型犬であった。 この意識の差を埋めるのは、かなり困難なハードルだ。 (-58) 2023/09/28(Thu) 2:09:55 |