【独】 歌うのが怖くとも カンターミネ>>-374 >>-403 「もう何も、一切、全部、 我慢しないでほしい ん、だけど……」言葉尻を濁すのもまた、珍しいもので。 「いやその……伝わり辛いよな、えーっと……なんて言ったらいいんだろ……エリーさ、脱獄の時とかそうだったけどちゃんと……そう、わがままっていうか、自分の言いたい事?やだとか、一緒にいて、ってのを言ってくれたじゃんか。俺、あれすっげー嬉しくて……だから、えーと……他のさ。例えば痛いとか、辛いとか、やだとか怖いとかお仕事休みたいとか、そういう細かいのもデッカイのもぜーんぶ、……言ってくれたらなー、とか、思ってたり、するん、だ……よな」 とつとつと語る。ちらと顔を盗み見るような仕草。 やっぱり、悪い事をした子供のように。 「……いや、突然言われても難しいし、『今?』って感じだよな、ごめん。……でもほら、真面目な話って中々しないだろ?それに……その、今の内に少しでも言いたい事を言う練習が出来たら、って思ってたんだけど……」 窓の外を見やる。夕陽が創る海上の赤い世界が揺れていた。 「……まあ、なんだ。俺の為だと思ってさ。言いたい事あったら、言ってよ。なんでも……それこそ、夜ごはん何がいいとか……あー……そう、結婚式いつがいいとか、あればさ」 場を和ませるため、とばかりにそんな事を言って。 言っている内に、車は緩やかに停車する。 「……練習、してくか?その……俺で。 何か言いたい事とか……我慢してる事とか……」 今言った、お願いの内容を。これからする、『お話』を前に。 口を滑らかにする作業は必要だろうか? あなたからの返事があればそのようにしたあとで。 ないのなら、少し待ってから。 わかった、と口にして、車を降りる事だろう。 (-404) 2023/10/01(Sun) 18:03:42 |